リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第六話 みずほ先輩と学園祭に輝く七つの星】

【6-7】

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 はてしなく善良で後輩想いの宇和野先輩に、俺は涙があふれそうになる。でも、俺はそんな宇和野先輩を正々堂々と負かし、頼りになる男だと安心させたい。

「大丈夫っすよ、俺。宇和野先輩とみずほ先輩に勝負を挑めるなんて最高の栄誉っす」
「そうよねー、黒澤君。私は絶対このままがいいー!」

 南鷹先輩は頑としてチーム構成を崩そうとしないつもりだ。

「なっ、南鷹ァァァ! 余計なことをォォォ!」
「宇和野先輩、俺みたいなポンコツが相手とはいえ、全力でお願いします。そしていままで一緒に仕事してきたみずほ先輩と一緒に楽しい思い出を作ってくださいよ」
「くっ! そうか、そうだよな。ならば黒澤、お前には絶対勝たせないからな!」
「俺も全力でいきます。そして俺が勝てたら――俺から宇和野先輩に命令させてください!」

 俺は心底、一度でいいから尊敬する宇和野先輩と固い握手を交わしたい。

「へっ、おっ、俺に命令か⁉ ああ、そうか、そうか。じゃあいいや!」

 なんと、宇和野先輩は険しい表情を崩し、俺の願いを聞き入れてくれた。なんて広大なふところの持ち主なんだ!

「ありがとうございます! じゃあ、対決では胸をお借りします!」
「ああ、よしんば俺らが負けたら、お前の命令は瑞穂ではなく、この俺が受け止めるからな! 絶対だぞ!」
「手は抜かないでくださいよ!」
「もちろんだ、これは男と男の約束な!」

 という経緯があり、生徒会内で『どっちが先に売り切れ御免になるか競争』の火蓋が落とされることとなった。



「さあ、今年もやってきました、城西高等学校学園祭。お集まりくださいました皆様には――」

 放送部のナレーションに続き、会場中からクラッカーの音が鳴り響く。

 アップテンポな曲が流れ、舞台のイベントが始まる。

「最初はラグビー部による女装大会です!」

 屈強な肉体の自称美女たちが姿を現した。ブレザーやセーラー服、ワンピースのドレスなど、衣装を凝らした格好をしていて、くねくねと奇妙な動きで舞台の上を闊歩する。ひとりひとりが舞台袖から登場するたびに、打ち寄せる波のようなどよめきが上がる。

 同級生の意外な姿にある者は感嘆し、ある者は恐れおののき、そしてある者は瞳をハートマークにしていた。

「さっそく盛り上がってますね」
「男子の中には絶対、女装したくてやっているひとがいるのよね。かつき君がやったら美人になりそうだけど」
「いっ、いや、俺は遠慮しますよ。どうせ怪物にしかならないっすよ。それより俺たちは肝心の屋内イベントを見に行きましょうよ」
「そうよね、それぞれの部活が謎かけしているか、ちゃんと確かめなくちゃ」

 今日のみずほ先輩は一眼レフではなく、ハンディカメラを手にしている。学園祭の様子を動画に収めるつもりなのだ。

「あとで編集して校内放送で流すつもり。来年の参考にもなると思うし」
「よっしゃ、じゃあ俺はナレーションしますね」
「お願いね、かつき君。名言、期待してるわ」

 そうして俺たちは屋内のイベントへと向かった。

 本館の校舎は三階建てで、カステラに似た横長の直方体の形をしている。向かって左からルームABC……と並んでいて、それが十部屋もある。一番右側の二階はルーム2J。そこが道場となっている。

「じゃあ、まず剣道部から行ってみますか」

 二階右端のルーム2Jへと向かう。道場の入口には、でかでかとキャッチフレーズが掲げられている。

『剣の道を極めろ!』

 長い半紙に墨汁で書かれたその字はけっして上手くない。

 けれど、生徒会が指定したキャッチフレーズを掲げていたのでほっとした。

「ちゃんと約束は守ってくれたみたいですね」
「よかったぁ~。ここは大丈夫だったね」

 見ると防具を纏った剣道部の部員が竹刀を交えている。審判もいて、真剣勝負の試合を催しているようだ。

 さっそく、たくさんの生徒たちが集まっていた。

「ウオオオオォォォォ!!」
「セイヤァァァァァァ!!」

 まじかで見る剣道部の試合は建物を揺らすような迫力がある。観客は皆、固唾を飲んで見守っている。

 竹刀が激しい音を立ててぶつかり合う。みずほ先輩はビデオを向け、俺は小声でナレーションを吹き込む。

「ただいま道場では剣道部の戦いが繰り広げられています! 情熱の炎がほとばしり、会場は熱気に包まれています! 互いに神速の攻撃を繰り出しており、一瞬も気を緩めることができません! さあ、試合の行方は――」

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