リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第六話 みずほ先輩と学園祭に輝く七つの星】

【6-2】

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「えーと、屋内に割り当てられた部活は……パソコン部、美術部、ダンス部、弓道部、軽音学部、合唱部、それに剣道部の七つね」

 みずほ先輩は学園祭実行委員の作成した企画書に目を通しながら答える。

「――ところでかつき君、何やってるの?」

 俺は生徒会室に置いてある、ヒラメをデザインした座布団を頭上に掲げ、スローダンスを踊っていた。

「雨乞いならぬ閃き乞いっすよ。ヒラメだけに閃いてくれるかもって」
「そういう宇和野先輩みたいなギャグ、むしろ神様の逆鱗に触れるわよ」

 頬杖をついたまま口を尖らせ忠告するみずほ先輩。

「俺は真剣なんすよ! 絶対、いい方法を考えつきますよーに!」
「その気持ちだけは受け止めたよ。でも語尾がやっぱり神頼みね」

 学園祭では校庭の中央に舞台が配置され、その周囲に屋台とテーブルが並べられる。

「校舎の中まで見に来るひとって、やっぱり少ないんですか」
「そうなのよ。屋外では舞台を見ながら屋台で買った食事が楽しめるしね。だから現実的に、人数の多い部活を優先させなきゃいけないじゃない」
「かといって、少人数の部活を無下にできないってことっすね。タイムテーブル的には厳しいんすか」
「舞台を使うイベントの予定はぎっしりよ。ほとんどが人気の運動部で、最後は恒例のアンサンブル部の演奏。どうしても三分の一は屋内になっちゃうのよね」

 舞台を用いる時間はひとつの部活あたり三十分で、ほとんどの部活でイベントの予定が決まっていた。

 屋内への変更はおろか、使用時間の短縮でも図れば、生徒会が非難の的となることうけあいだ。

「去年もクレーム来たんですか」
「そうらしいんだけど、きっとあのひとのことだから、のらりくらりとかわしたんだわ」
「ああ、宇和野先輩なら神回避のスキルがありそうっすね」

 みずほ先輩は真剣な表情で考え込んでいる。根が真面目だからこそ、真っ向から受け止めてしまうようだ。

「「お待たせー!」」

 円城先輩と家須先輩が生徒会室に顔を出した。

 遅いよ先輩たち、できれば肝心なときにいてほしかったのに、と心の中で独り言ちる。

 円城先輩は不思議そうな顔で尋ねる。

「清川、さっきすれ違った三年生が言ってたけど、学園祭で舞台を使う部活の割り当て、変更するんだってな」
「えっ⁉ そんなこと誰も言ってないんだけど」
「生徒会公式の発言だって聞いたぞ。清川じゃないのか?」
「いえ、そういうつもりじゃ……」

 聞いてぞっとした。みずほ先輩の顔を見ると、やっぱり青ざめていた。

 俺のその場しのぎの発言がまずかったのか? それとも、勝手にそう解釈した三年生たちが悪いのか?

 けれどみずほ先輩は俺のせいだとは言わなかった。

「どうしよう……。ほんとは学園祭の実行委員に決めてほしい案件なんだけど……」

 困惑するみずほ先輩。厄介な問題はなんでも生徒会に流れてくると聞いていたが、この件もそういう類か。

 なぐさめるように円城先輩が声をかける。

「清川に対して集中砲火なんて卑怯極まりないな、あのモブキャラどもら」
「上級生にモブ言わないの。まぁ、あのひとたちの気持ちはわかるんだけどね」
「清川はほんと、ひとがいいよなぁ。俺と違って」
「それより円城君、先輩たちが引退したんだから、円城君が頼りなのよ。だから返事をするときは一緒にいてくれない?」
「いや、俺はいないほうがいいんだよ、話に加わると絶対炎上するからさ。対外交渉は清川に任せる」

 円城先輩ひでえ! 自分自身の口の悪さを言い訳にして逃げたっ!

「はぁ、そうかぁ。そうだよねぇ円城君は」

 みずほ先輩、納得しちゃってる! って、かく言う俺も納得しかない。

「ところで家須君はいいアイディアないかな」
「うーん、要は屋内で開催したとしても、観客が集まればいいんだろ」
「そうなんだけどねー。毎年宣伝してるみたいだけど、焼け石に水らしいのよね」

 みずほ先輩は大きなため息をついた。

「一週間後に返事をしなくちゃいけないのよ」
「「「うーむ」」」

 皆、まるで抜け道のない袋小路に追い詰められたようだ。

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