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第二章 盲狐の嫁入り
三
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まずは、巫女たちが「花嫁を見つけた」と本殿まで雪見を連れて行くところからだ。
「雪見が狐に憑かれたってぇのは本当か?」
あれほど外で騒いでいたのだ。本橋屋や親族、野次馬たちは、当然それを疑っている。そんな彼らの前で、雪見はただ事ではない様子を見せる。ひとまず、「妾はこの女子にとり憑いた妖狐なり」と主張してもらうことにした。これで完全に狐が憑いたと信じたことだろう。
「こりゃ大変だ! 狐落としができる者など、この辺りにいるのか?」
そうなったところでこちらの出番だ。
「お取込み中のところ失礼っ!」
最近声を張ることなどないせいか、声が少し裏返った。それでも平静を装い、人だかりをすり抜けていく。あたかも今通りがかった者という風に。
「私は『狐落とし専門家』でございます。こちらに狐憑きの気配を感じ、馳せ参じました」
刹那の小さな手を半ば無理やり引きながら、様子のおかしい花嫁を演じている雪見の前までやって来た。それはもう、神職らしい恰好で。
「おい……貴様に矜持はないのか?」
刹那の憐れみを帯びた囁きに、せっかく装っていた平静が崩れそうになる。
「しっ! 頼みますから、静かにしていてください」
まさか男に生まれたこの身で、『神がかりの巫女』に化けるなど思いも寄らなかったが――女装が今更なんだというのか。万が一野次馬に顔見知りが混ざっていたら大惨事なため、念入りに変装した結果だ。
「こちらの花嫁が狐憑きのようですね。私がこの方の体から妖狐を追い出し、手伝いが退治してみせましょう」
何とか「只者ではなさそうな微笑み」を絶やさず、頭の中の台本を読み上げた。隣の刹那は、生気のない顔でそっぽを向いている。
「狐落としの専門家だとぉ? こんな童が?」
「銭を騙し取るつもりかもしれんぞ」
次々と湧き上がる疑念の声も想定内だ。
「ご安心を。今回料金はいただきません。私たちは無事婚礼の儀を済ませていただきたいという一心で、こちらに参った次第です」
これで何とか不満を収める予定だったのだが、疑いの目はまだ続いていた。
「あの娘から、何やら妙な気配を感じるのぅ」
折り重なる声にも負けないそのしわがれ声は、聞き覚えのあるものだった。群衆の中、刹那に真っすぐ指先を向けるのは、社に来て最初に見たお婆さんだ。
「えー、とにかく! 妖狐が体から出ていく様子は、皆さまにもご覧いただけるかと思います。それが狐落とし成功の証となるでしょう」
始めてしまえばこちらのものだ。白無垢を引き裂く勢いで悶える雪見に向き直り、祈祷の道具役をしてくれる八咫を掲げた。さらに後ろで待機している遣い狐たちに、目で合図を送る。
「古狐 古狐 はや立ちかへれ 本の社へ」
以前、助六じいさんとした雑談の中にあった祈祷(?)を唱える。この出鱈目な呪文を合図に、雪見の後ろから巨大化した遣い狐が姿を現すことになっている。なっているのだが……。
遣い狐は動こうとしない。痺れを切らした野次馬がざわめきだしても、そのままだった。
「やはり我らにはできん! 人に真の姿を晒すなど」
雪見の足元に巻き付いて離れない遣い狐の姿に、言葉が詰まる。
そうだ。自分の本性を現すことは、とても恐ろしいことだ。何でもいいからやれ、などと俺が言えたことではない。
それでも――。
「あなた方は雪見さんのために、この作戦に乗ってくれたのでしょう? 俺も同じ気持ちです。雪見さんにもあなたたちにも、幸せになってほしいから」
励ましにもなっていないかもしれない。
それでも「雪見のため」、という言葉を改めて掛けると、遣い狐たちは頷いてくれた。
「おおっ……! まさか、本当に……!」
無数の視線、どよめきの中、巨大な白狐は姿を現した。雪見の背後から飛び上がった狐は、台本通り刹那に向かっていく。居眠りを始めていた刹那もまた、遣い狐が表に登場すると狐の尾を捕まえてくれた。そのまま本気でやっつけてしまわないか雪見は心配していたが、そこは大丈夫だ。枷が発動しているおかげで、刹那の力は幼子並みになっている。
やがて巨大な狐の姿が跡形もなく消えると、見物人たちはしんと静まり返った。
「さて、旦那様。きちんと妖狐を落とせたかどうか……お嫁様に触れて確かめてくださいませ」
狐が自分に憑くことを恐れれば、若旦那は雪見に触れようとしないはず。しかし雪見のことを誠に思うならば――嫌な試し方だが、今はこれしか思いつかない。一仕事終えた後の狐たちと刹那に目を配り、最後に若旦那へ視線を戻した。
「雪見……? 雪見なのか?」
ためらいなく近づく本橋屋に向けて、雪見は泣きそうに微笑んだ。
「はい、旦那様。ご心配おかけいたしました」
「雪見!」
良かった、良かった、と雪見を抱き寄せる本橋屋の様子に、自然と顔が綻んだ。あの女好きは、今は雪見のことを本気で想っているらしい。遣い狐たちにもそれが分かったのか、涙ぐむ本橋屋を温かく見つめている。それにしても、「演じる」ことについては俺も多少なりと自信があったつもりだが、雪見の演技力には自信を無くしそうだ。
狐憑きから回復した花嫁とそれを喜ぶ花婿に向けて、野次馬から歓声が巻き起こる中。
「咲。しばしよろしいですか? 最後に頼みたいことがあるのです」
離れようとしない本橋屋をなだめ、祝福の的になっている雪見が近づいてきた。
「お色直しをお願いします」
お色直しといっても、崩れた化粧を直すくらいのことだろう。花嫁の衣裳部屋になっている座敷へ向かうまでは、そう思っていたのだが。
「この晴れの日に相応しい化粧を、どうかもう一度、其方にしてほしいのです。我――私では上手くいかなくて」
立派な漆塗りの鏡台を前に、雪見は深々と頭を下げた。変装用の化粧、それから父の舞台用の化粧などは何度もしてきたが、花嫁に化粧をするのは初めてだ。
「お……私で良いのでしょうか」
「咲にお願いしたいのです」
雑誌で見た絵を思い出せば、何とかそれっぽくなるだろうか。
嫁入り道具として揃えたという雪見の化粧道具を借りて、初めての大仕事へ挑む。元の姿に戻った刹那は急かすことを諦めたのか、八咫をこちらに押し付け、「その辺で暇をつぶしてくる」と出ていってしまった。
化粧の最中。雪見は時に笑顔を見せながら、時に寂しげなため息を吐きながら、本橋屋との馴れ初めについて語る。神と人の恋物語は、以前雑誌で読んだものと同じ道筋だった。出会い、惹かれ、結ばれる――人同士と何ら変わりない。
「やはり主様は、あの男を本意から慕っていると仰るのですね?」
化粧を見学している狐のうち一匹が声を上げると、その中心にいる雪見は微笑んだ。
「ええ。私が人となったことが何よりの証でしょう。愛するものと同じ世に下り、共に歩めるようにしていただいたのです。此方の咲――化粧師様に」
穏やかな雪見の横顔に、緊張していた背中がより真っ直ぐになった。
「神粧の儀は六神への罰と聞き及んでおりましたが、私にとってはむしろ有り難きことでした。不誠実な受け止め方をしてしまい、主神には申し訳が立ちませんが」
雪見の神粧を、ただの罰という言葉で片づけてはいけない。雪見は望んで人となったが、やはり覚悟して己の姿――在り方を変えたに違いないのだから。
「全て承知いたしました。皆、よろしいですね?」
ある一匹の鳴き声を合図に、白狐たちは一斉にこちらへ集まってきた。勢いあまって膝に飛び乗ってきた狐もいる。
「咲様、いえ化粧師様。どうか我らに、神粧の儀を施していただけませんでしょうか」
狐たちは揃って、これからも雪見の傍で仕えたいと申し出た。こちらを見上げる琥珀の瞳は、不安と期待に満ちている。
「本当にそうしたいって言うのなら、良いですけど」
すると狐たちの歓喜に混じって、八咫の豪快な笑い声が響いた。
『やったな咲! 完全に色師の千里眼を覆しやがったか』
雪見の花嫁化粧が何とか終わった後。ずっと膝で丸まっていた一匹の狐を降ろし、板間の隅に置いてある化粧箱を取りに行った。
「では、始めます」
一列に並ぶ狐たちを前に、色具の支度をする。昨日、雪見に使って余った「純白」の色具だ。
神粧の儀は、人にする化粧とは違う。色師の神力が混ざっているという色具を、ただ神の顔に乗せれば良い。そうすれば自動的に、人の顔が浮かび上がる。
みんな同じ顔にならないよな、これ――?
一匹目の狐に刷毛を向けながら、ふと不安が過った。五つ子程度ならば何とかなりそうだが、流石に十を超える同じ顔は誤魔化しきれない。
いざ、と乳白の毛に刷毛をつけたその時。視界に薄もやが立ち込めた。八咫に問いかける間もなく、何も見えなくなってしまう。今認識できるのは自分の声と、それから鼻をくすぐる甘い匂い――。
『雪見、こっちへおいで。土産があるんだ』
真っ白な中からの声が、次第にはっきりとしてくる。それが男の声であると分かった途端、視界いっぱいに晴天が広がった。確かに自分は屋内の座敷にいたはずだ。それが今は、殿の縁側らしき場所に座っている。
『まぁ××様。美味しそうなお団子ですね』
女の声がしたと認識した瞬間、隣に一組の男女が現れた。男は時代遅れの髷に上等な袴、女は巫女の格好をしている。縁側に並んで腰かけ、団子の包みを広げているところだった。
「雪見が狐に憑かれたってぇのは本当か?」
あれほど外で騒いでいたのだ。本橋屋や親族、野次馬たちは、当然それを疑っている。そんな彼らの前で、雪見はただ事ではない様子を見せる。ひとまず、「妾はこの女子にとり憑いた妖狐なり」と主張してもらうことにした。これで完全に狐が憑いたと信じたことだろう。
「こりゃ大変だ! 狐落としができる者など、この辺りにいるのか?」
そうなったところでこちらの出番だ。
「お取込み中のところ失礼っ!」
最近声を張ることなどないせいか、声が少し裏返った。それでも平静を装い、人だかりをすり抜けていく。あたかも今通りがかった者という風に。
「私は『狐落とし専門家』でございます。こちらに狐憑きの気配を感じ、馳せ参じました」
刹那の小さな手を半ば無理やり引きながら、様子のおかしい花嫁を演じている雪見の前までやって来た。それはもう、神職らしい恰好で。
「おい……貴様に矜持はないのか?」
刹那の憐れみを帯びた囁きに、せっかく装っていた平静が崩れそうになる。
「しっ! 頼みますから、静かにしていてください」
まさか男に生まれたこの身で、『神がかりの巫女』に化けるなど思いも寄らなかったが――女装が今更なんだというのか。万が一野次馬に顔見知りが混ざっていたら大惨事なため、念入りに変装した結果だ。
「こちらの花嫁が狐憑きのようですね。私がこの方の体から妖狐を追い出し、手伝いが退治してみせましょう」
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「狐落としの専門家だとぉ? こんな童が?」
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次々と湧き上がる疑念の声も想定内だ。
「ご安心を。今回料金はいただきません。私たちは無事婚礼の儀を済ませていただきたいという一心で、こちらに参った次第です」
これで何とか不満を収める予定だったのだが、疑いの目はまだ続いていた。
「あの娘から、何やら妙な気配を感じるのぅ」
折り重なる声にも負けないそのしわがれ声は、聞き覚えのあるものだった。群衆の中、刹那に真っすぐ指先を向けるのは、社に来て最初に見たお婆さんだ。
「えー、とにかく! 妖狐が体から出ていく様子は、皆さまにもご覧いただけるかと思います。それが狐落とし成功の証となるでしょう」
始めてしまえばこちらのものだ。白無垢を引き裂く勢いで悶える雪見に向き直り、祈祷の道具役をしてくれる八咫を掲げた。さらに後ろで待機している遣い狐たちに、目で合図を送る。
「古狐 古狐 はや立ちかへれ 本の社へ」
以前、助六じいさんとした雑談の中にあった祈祷(?)を唱える。この出鱈目な呪文を合図に、雪見の後ろから巨大化した遣い狐が姿を現すことになっている。なっているのだが……。
遣い狐は動こうとしない。痺れを切らした野次馬がざわめきだしても、そのままだった。
「やはり我らにはできん! 人に真の姿を晒すなど」
雪見の足元に巻き付いて離れない遣い狐の姿に、言葉が詰まる。
そうだ。自分の本性を現すことは、とても恐ろしいことだ。何でもいいからやれ、などと俺が言えたことではない。
それでも――。
「あなた方は雪見さんのために、この作戦に乗ってくれたのでしょう? 俺も同じ気持ちです。雪見さんにもあなたたちにも、幸せになってほしいから」
励ましにもなっていないかもしれない。
それでも「雪見のため」、という言葉を改めて掛けると、遣い狐たちは頷いてくれた。
「おおっ……! まさか、本当に……!」
無数の視線、どよめきの中、巨大な白狐は姿を現した。雪見の背後から飛び上がった狐は、台本通り刹那に向かっていく。居眠りを始めていた刹那もまた、遣い狐が表に登場すると狐の尾を捕まえてくれた。そのまま本気でやっつけてしまわないか雪見は心配していたが、そこは大丈夫だ。枷が発動しているおかげで、刹那の力は幼子並みになっている。
やがて巨大な狐の姿が跡形もなく消えると、見物人たちはしんと静まり返った。
「さて、旦那様。きちんと妖狐を落とせたかどうか……お嫁様に触れて確かめてくださいませ」
狐が自分に憑くことを恐れれば、若旦那は雪見に触れようとしないはず。しかし雪見のことを誠に思うならば――嫌な試し方だが、今はこれしか思いつかない。一仕事終えた後の狐たちと刹那に目を配り、最後に若旦那へ視線を戻した。
「雪見……? 雪見なのか?」
ためらいなく近づく本橋屋に向けて、雪見は泣きそうに微笑んだ。
「はい、旦那様。ご心配おかけいたしました」
「雪見!」
良かった、良かった、と雪見を抱き寄せる本橋屋の様子に、自然と顔が綻んだ。あの女好きは、今は雪見のことを本気で想っているらしい。遣い狐たちにもそれが分かったのか、涙ぐむ本橋屋を温かく見つめている。それにしても、「演じる」ことについては俺も多少なりと自信があったつもりだが、雪見の演技力には自信を無くしそうだ。
狐憑きから回復した花嫁とそれを喜ぶ花婿に向けて、野次馬から歓声が巻き起こる中。
「咲。しばしよろしいですか? 最後に頼みたいことがあるのです」
離れようとしない本橋屋をなだめ、祝福の的になっている雪見が近づいてきた。
「お色直しをお願いします」
お色直しといっても、崩れた化粧を直すくらいのことだろう。花嫁の衣裳部屋になっている座敷へ向かうまでは、そう思っていたのだが。
「この晴れの日に相応しい化粧を、どうかもう一度、其方にしてほしいのです。我――私では上手くいかなくて」
立派な漆塗りの鏡台を前に、雪見は深々と頭を下げた。変装用の化粧、それから父の舞台用の化粧などは何度もしてきたが、花嫁に化粧をするのは初めてだ。
「お……私で良いのでしょうか」
「咲にお願いしたいのです」
雑誌で見た絵を思い出せば、何とかそれっぽくなるだろうか。
嫁入り道具として揃えたという雪見の化粧道具を借りて、初めての大仕事へ挑む。元の姿に戻った刹那は急かすことを諦めたのか、八咫をこちらに押し付け、「その辺で暇をつぶしてくる」と出ていってしまった。
化粧の最中。雪見は時に笑顔を見せながら、時に寂しげなため息を吐きながら、本橋屋との馴れ初めについて語る。神と人の恋物語は、以前雑誌で読んだものと同じ道筋だった。出会い、惹かれ、結ばれる――人同士と何ら変わりない。
「やはり主様は、あの男を本意から慕っていると仰るのですね?」
化粧を見学している狐のうち一匹が声を上げると、その中心にいる雪見は微笑んだ。
「ええ。私が人となったことが何よりの証でしょう。愛するものと同じ世に下り、共に歩めるようにしていただいたのです。此方の咲――化粧師様に」
穏やかな雪見の横顔に、緊張していた背中がより真っ直ぐになった。
「神粧の儀は六神への罰と聞き及んでおりましたが、私にとってはむしろ有り難きことでした。不誠実な受け止め方をしてしまい、主神には申し訳が立ちませんが」
雪見の神粧を、ただの罰という言葉で片づけてはいけない。雪見は望んで人となったが、やはり覚悟して己の姿――在り方を変えたに違いないのだから。
「全て承知いたしました。皆、よろしいですね?」
ある一匹の鳴き声を合図に、白狐たちは一斉にこちらへ集まってきた。勢いあまって膝に飛び乗ってきた狐もいる。
「咲様、いえ化粧師様。どうか我らに、神粧の儀を施していただけませんでしょうか」
狐たちは揃って、これからも雪見の傍で仕えたいと申し出た。こちらを見上げる琥珀の瞳は、不安と期待に満ちている。
「本当にそうしたいって言うのなら、良いですけど」
すると狐たちの歓喜に混じって、八咫の豪快な笑い声が響いた。
『やったな咲! 完全に色師の千里眼を覆しやがったか』
雪見の花嫁化粧が何とか終わった後。ずっと膝で丸まっていた一匹の狐を降ろし、板間の隅に置いてある化粧箱を取りに行った。
「では、始めます」
一列に並ぶ狐たちを前に、色具の支度をする。昨日、雪見に使って余った「純白」の色具だ。
神粧の儀は、人にする化粧とは違う。色師の神力が混ざっているという色具を、ただ神の顔に乗せれば良い。そうすれば自動的に、人の顔が浮かび上がる。
みんな同じ顔にならないよな、これ――?
一匹目の狐に刷毛を向けながら、ふと不安が過った。五つ子程度ならば何とかなりそうだが、流石に十を超える同じ顔は誤魔化しきれない。
いざ、と乳白の毛に刷毛をつけたその時。視界に薄もやが立ち込めた。八咫に問いかける間もなく、何も見えなくなってしまう。今認識できるのは自分の声と、それから鼻をくすぐる甘い匂い――。
『雪見、こっちへおいで。土産があるんだ』
真っ白な中からの声が、次第にはっきりとしてくる。それが男の声であると分かった途端、視界いっぱいに晴天が広がった。確かに自分は屋内の座敷にいたはずだ。それが今は、殿の縁側らしき場所に座っている。
『まぁ××様。美味しそうなお団子ですね』
女の声がしたと認識した瞬間、隣に一組の男女が現れた。男は時代遅れの髷に上等な袴、女は巫女の格好をしている。縁側に並んで腰かけ、団子の包みを広げているところだった。
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