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第二章 盲狐の嫁入り
一
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乱暴で、身勝手で、不機嫌。鏡を盗んだことを今だに怒っているのか、赤い女は常時こんな調子だ。
「獣の神は昨晩終わっただろうが。何故会いに行く必要がある」
お咲の顔で愛想笑いをしつつ、何とか楼閣の玄関口まで誘導してきたものの、刹那の機嫌は最悪だった。
「だからあの後、雪見さんに問題が起こったみたいなんです。放っておいたら私は……」
あの未来図を思い出すだけで、体の芯から震えが湧いてくる。どう伝えたものか、と口を開閉させていると、手のひらの鏡がぼんやり光った。
『雪見の遣い狐共に喰い殺されるもんなぁ?』
人を煽るような言い方は気に入らないが、その通りだ。
「知るか。貴様一人で何とかしろ」
神粧の儀に不備があったのか。それとも、獣の神とそのお供たちの間ですれ違いがあったのか。色師に訊いても、「アタシは見えた光景をそのまま彫っただけさ」と首を傾げるだけだった。
「俺が喰われたら、神粧の儀は誰がやるんですか?」
「……さっさと奴の棲み処まで行くぞ」
舌打ちと共に、刹那は玄関横に備え付けられている水瓶へ飛び込んでいった。
『ほら、お前も続け。吾をしっかり掴んどけよ』
手のひらの鏡が急かす中、息を深く吸い、止める。底の見えない水瓶に顔をつけ、玄関の石畳を強く蹴った――。
「小僧、また気絶したのか?」
ぼやける視界に、鋭い光を放つ赤眼が浮かぶ。
「……っ、あたま、痛った……」
気がつけば、眉根を寄せた暴力神に顔を覗き込まれていた。上には突き抜けるような晴天、下には硬い石の感触がある。
『おいおい頼むぜ。移動のたんびに気絶されたんじゃ、吾が悪いことしてるみてぇじゃねぇか』
「口の上手い鏡だ。貴様に人を憐れむ心などないだろう」
『ギャハハハ! バレちまったか。まぁお前も同類だけどな』
少しはまともかと思ったが、やはりこの鏡も刹那と同じだ。神を名乗るクセに慈悲もない。しかしこの八咫という鏡のおかげで、最初にドブ川へ落とされた理由が分かった。八咫いわく、水鏡は神と人の世を繋ぐ通り道らしい。その言通りここは現世なのだろう。石の鳥居が連なる奥には、女化(おなばけ)大社の本殿が見える。毎年父に無理やり連れられて初詣に行く、あの場所だ。
「雪見さんがいるという本殿へ行ってみましょう」
立ち並ぶ鳥居をくぐって進むと、本殿を取り囲んでいる人波が見えてきた。厳かな笛や太鼓の音まで聞こえてくる。
「何だあれは。縁日か?」
「いえ、今は社に入れないと父が言っていたような」
それはどうしてだったか、と先日の会話を思い出している間に、人だかりの外側へ着いた。
「今人は神社で祝言を挙げるそうじゃ。それにしても、妙な寒気がするのぅ」
不吉なことを言うお婆さんを追い越し、目的の本殿を目指すことにする。
嫌々ながらもついてくる刹那を横目に、野次馬の中へ割り込んでいった。
「まさか、あの好色漢が正妻迎えるたぁね。どんだけ器量良しの、懐の広いカミさんなんだか」
「そのカミさんになるってぇのは、ここの神主様だとよ」
噂話のおかげで、婚礼に関する事情は大体分かった。さて、雪見と会うついでに主役を見ておこう、と背伸びをしたその時。
「神職の娘と好色息子が婚姻かぁ。本橋屋はこの大社の土地が欲しいと聞いたが、本当かね」
巫女二人を先頭に、本殿までの石畳を渡る行列。紅番傘の下にいる婿は――。
「本橋屋の若旦那!?」
『おいおい、傑作だぜこりゃあ! 花嫁さん見てみろよ』
本橋屋の隣を歩く花嫁は、見間違えようもない。昨日見た……否、作ったばかりの顔だ。
「雪見さん……?」
自ら人に下る罰を受けに来たのは、本橋屋に嫁入りするためだったのか。そうだとしても、何故この後俺が喰われる展開になるのだろう。
「きゃあぁ!」
背後からの悲鳴に振り返ると、青ざめた女が「今、化け狐があそこに!」、と本殿の屋根を指さしていた。しかしその先には、澄んだ晴天が広がっているだけだ。
野次馬がざわつく中、地の底から響くような声が聞こえてきた。
『許さぬ……許さぬ……』
花嫁行列の方だ。振り返ると、真っ白な狐の群れが雪見を取り囲んでいる。しかし行列に参加している親族や野次馬、花嫁の横にいる本橋屋すら異常に気づいていない。
「刹那さん、あれは……」
振り返ろうとした瞬間。狐たちに纏わりつかれていた雪見が、ふいっと消えてしまった。
「雪見? おい、どこ行ったんだ!?」
何もいない屋根を見上げていた野次馬たちは、本橋屋の叫びでようやく騒ぎ出した。動揺と混乱の中、「花嫁が消えた!」、「狐憑きだ!」と騒ぎ立てる人混みを、刹那がすり抜けていく。
頭が追いつかない。それでも足は、人を容赦なく置き去りにする神を追って走り出していた。
速い。速すぎる。女の着物は走りにくいというのもあるが、そもそも人の足で、あの暴力神に追いつけるわけがない。
「刹那さ、ちょっ、待っ!」
どこへ行くのか尋ねても、刹那は一向に足を止めようとしない。あちらの方には確か、旧殿があるはずだ。今は神事に使う道具を収納する場所だと、以前父から聞いたことがある。
殿の二階にある格子の隙間から、刹那は中へ消えていった。人間ではあそこから中へ入れない。どうしたものかと殿の周りを観察していると、正面の戸に巻き付いていた鎖が切れた。
「早くしろ」
促されるまま中へ入ると、そこは真っ暗闇だった。乱暴な手に導かれるうちに、ぼんやりとした光が見えてくる。
埃立つ広間を照らす行燈を小さな影が囲んでおり、その中心には白無垢の花嫁が座っていた。
狐だ。沢山の白狐が雪見を取り囲んでいる。
「お考え直しください主様! あの男の素行は童の頃からご覧になっているでしょう。好色でずる賢く、我らが社で願うことといえば女か金のことばかり。主様に婚姻を申し込んだことも、裏があるに決まっております」
どうやら本橋屋のことを話しているらしい。雪見が黙ったままでいると、今度は別の狐が鳴き声を上げた。
「そもそも勝手に人などに落ちられて……いくら主神の仰せといえど、主様が罰を受ける道理などありませぬ。『一個人と交わった罰』? 我らは『願い』を集めるため神主と巫女に化け、社をより繁栄させただけではございませぬか。あの好色男も、その中の一人に過ぎません」
そこの社務所でお札や絵馬を配っている巫女は、人ではなく遣い狐だったのか――。
それにしても、やっと話が見えてきた。雪見は本橋屋と婚姻をするために神粧の儀を受け入れたが、お供の遣い狐たちは納得していなかったのだ。
「我(わたし)はあのお方と結ばれるため、望んで罰を受け入れたのです」
「主様が正気とは思えませぬ。今すぐ儀を執り行った化粧師を喰い千切り、主神に物申しましょうぞ」
「報復などいけません! これは全て私が心より望んだことなのです」
真後ろにいるというのに、呼吸音すら聞こえない刹那を振り返る。「これからどうするか」と尋ねかけた口を、冷たい手に塞がれた。
「成程。これからあの瓦版に繋がるわけか。あの小狐たちも只人に下してしまえば、もう貴様を喰らうことはできないな」
「大人しくしていろ」、と耳元に残し、目をギラつかせた刹那は狐たちの会合に割っていった。
「其方、何者か!」
刹那は耳と尻尾を立てた遣い狐たちに笑いかけ、ぽかんと口を開けている雪見を抱え上げる。
「お前は退いていろ」
「貴女は主神の……!」
刹那は鞠でも放るかのように、雪見を俺の方へ投げてきた。咄嗟に受け止めようと構えたが、あまりの勢いに後ろへ吹き飛ばされる。
「痛っ……何なんだあの暴力神は」
何とか雪見を抱えることはできたが、床板に腰を思い切りぶつけた。ひとまず雪見が傷ひとつないことを確かめ、ズキズキ脈打つ腰を持ち上げる。
「咲ではありませんか! 何故我が社に?」
「ええと、これには深刻なわけがありまして」
瓦版のことを話したら、雪見は責任を感じてしまうかもしれない。どうしたものか、と首を捻っていると、視界に灰色の点がチラつくようになった。頬や手の甲に舞い落ちる点は雨よりも冷たい。
「これは、雪?」
今は春先。そもそも、ここは屋内だ。
「不味い……咲、早くあの神と共に逃げて。このままでは遣い狐たちに喰われてしまいます。あれらはかつて神であった我と、同格の神力をもっている。無名神とは神階(しんかい)の差があり過ぎるのです」
上位の神々は、刹那のような無名神よりも強い。色師の言葉を今になって思い出した。
あの暴力神、格上の相手へ喧嘩を売りに行ったというのか。
「刹那さん待って! ここは一度引き上げま……」
薄暗い板間だった部屋は、果てしない雪原と化していた。およそ現実とは思えない光景に、制止の言葉が出てこない。
『主を人へ落とした不埒者共……許さぬ……許さぬ……!』
激しい吹雪の中、遣い狐たちが一箇所に集っていく。一匹がもう一匹を取り込み、乳白の毛玉が膨れ上がる。みるみる内に巨大化した白狐を前に、刹那はというと――。
「『伏せ』はできるか? 犬っころ」
笑っていた。
「獣の神は昨晩終わっただろうが。何故会いに行く必要がある」
お咲の顔で愛想笑いをしつつ、何とか楼閣の玄関口まで誘導してきたものの、刹那の機嫌は最悪だった。
「だからあの後、雪見さんに問題が起こったみたいなんです。放っておいたら私は……」
あの未来図を思い出すだけで、体の芯から震えが湧いてくる。どう伝えたものか、と口を開閉させていると、手のひらの鏡がぼんやり光った。
『雪見の遣い狐共に喰い殺されるもんなぁ?』
人を煽るような言い方は気に入らないが、その通りだ。
「知るか。貴様一人で何とかしろ」
神粧の儀に不備があったのか。それとも、獣の神とそのお供たちの間ですれ違いがあったのか。色師に訊いても、「アタシは見えた光景をそのまま彫っただけさ」と首を傾げるだけだった。
「俺が喰われたら、神粧の儀は誰がやるんですか?」
「……さっさと奴の棲み処まで行くぞ」
舌打ちと共に、刹那は玄関横に備え付けられている水瓶へ飛び込んでいった。
『ほら、お前も続け。吾をしっかり掴んどけよ』
手のひらの鏡が急かす中、息を深く吸い、止める。底の見えない水瓶に顔をつけ、玄関の石畳を強く蹴った――。
「小僧、また気絶したのか?」
ぼやける視界に、鋭い光を放つ赤眼が浮かぶ。
「……っ、あたま、痛った……」
気がつけば、眉根を寄せた暴力神に顔を覗き込まれていた。上には突き抜けるような晴天、下には硬い石の感触がある。
『おいおい頼むぜ。移動のたんびに気絶されたんじゃ、吾が悪いことしてるみてぇじゃねぇか』
「口の上手い鏡だ。貴様に人を憐れむ心などないだろう」
『ギャハハハ! バレちまったか。まぁお前も同類だけどな』
少しはまともかと思ったが、やはりこの鏡も刹那と同じだ。神を名乗るクセに慈悲もない。しかしこの八咫という鏡のおかげで、最初にドブ川へ落とされた理由が分かった。八咫いわく、水鏡は神と人の世を繋ぐ通り道らしい。その言通りここは現世なのだろう。石の鳥居が連なる奥には、女化(おなばけ)大社の本殿が見える。毎年父に無理やり連れられて初詣に行く、あの場所だ。
「雪見さんがいるという本殿へ行ってみましょう」
立ち並ぶ鳥居をくぐって進むと、本殿を取り囲んでいる人波が見えてきた。厳かな笛や太鼓の音まで聞こえてくる。
「何だあれは。縁日か?」
「いえ、今は社に入れないと父が言っていたような」
それはどうしてだったか、と先日の会話を思い出している間に、人だかりの外側へ着いた。
「今人は神社で祝言を挙げるそうじゃ。それにしても、妙な寒気がするのぅ」
不吉なことを言うお婆さんを追い越し、目的の本殿を目指すことにする。
嫌々ながらもついてくる刹那を横目に、野次馬の中へ割り込んでいった。
「まさか、あの好色漢が正妻迎えるたぁね。どんだけ器量良しの、懐の広いカミさんなんだか」
「そのカミさんになるってぇのは、ここの神主様だとよ」
噂話のおかげで、婚礼に関する事情は大体分かった。さて、雪見と会うついでに主役を見ておこう、と背伸びをしたその時。
「神職の娘と好色息子が婚姻かぁ。本橋屋はこの大社の土地が欲しいと聞いたが、本当かね」
巫女二人を先頭に、本殿までの石畳を渡る行列。紅番傘の下にいる婿は――。
「本橋屋の若旦那!?」
『おいおい、傑作だぜこりゃあ! 花嫁さん見てみろよ』
本橋屋の隣を歩く花嫁は、見間違えようもない。昨日見た……否、作ったばかりの顔だ。
「雪見さん……?」
自ら人に下る罰を受けに来たのは、本橋屋に嫁入りするためだったのか。そうだとしても、何故この後俺が喰われる展開になるのだろう。
「きゃあぁ!」
背後からの悲鳴に振り返ると、青ざめた女が「今、化け狐があそこに!」、と本殿の屋根を指さしていた。しかしその先には、澄んだ晴天が広がっているだけだ。
野次馬がざわつく中、地の底から響くような声が聞こえてきた。
『許さぬ……許さぬ……』
花嫁行列の方だ。振り返ると、真っ白な狐の群れが雪見を取り囲んでいる。しかし行列に参加している親族や野次馬、花嫁の横にいる本橋屋すら異常に気づいていない。
「刹那さん、あれは……」
振り返ろうとした瞬間。狐たちに纏わりつかれていた雪見が、ふいっと消えてしまった。
「雪見? おい、どこ行ったんだ!?」
何もいない屋根を見上げていた野次馬たちは、本橋屋の叫びでようやく騒ぎ出した。動揺と混乱の中、「花嫁が消えた!」、「狐憑きだ!」と騒ぎ立てる人混みを、刹那がすり抜けていく。
頭が追いつかない。それでも足は、人を容赦なく置き去りにする神を追って走り出していた。
速い。速すぎる。女の着物は走りにくいというのもあるが、そもそも人の足で、あの暴力神に追いつけるわけがない。
「刹那さ、ちょっ、待っ!」
どこへ行くのか尋ねても、刹那は一向に足を止めようとしない。あちらの方には確か、旧殿があるはずだ。今は神事に使う道具を収納する場所だと、以前父から聞いたことがある。
殿の二階にある格子の隙間から、刹那は中へ消えていった。人間ではあそこから中へ入れない。どうしたものかと殿の周りを観察していると、正面の戸に巻き付いていた鎖が切れた。
「早くしろ」
促されるまま中へ入ると、そこは真っ暗闇だった。乱暴な手に導かれるうちに、ぼんやりとした光が見えてくる。
埃立つ広間を照らす行燈を小さな影が囲んでおり、その中心には白無垢の花嫁が座っていた。
狐だ。沢山の白狐が雪見を取り囲んでいる。
「お考え直しください主様! あの男の素行は童の頃からご覧になっているでしょう。好色でずる賢く、我らが社で願うことといえば女か金のことばかり。主様に婚姻を申し込んだことも、裏があるに決まっております」
どうやら本橋屋のことを話しているらしい。雪見が黙ったままでいると、今度は別の狐が鳴き声を上げた。
「そもそも勝手に人などに落ちられて……いくら主神の仰せといえど、主様が罰を受ける道理などありませぬ。『一個人と交わった罰』? 我らは『願い』を集めるため神主と巫女に化け、社をより繁栄させただけではございませぬか。あの好色男も、その中の一人に過ぎません」
そこの社務所でお札や絵馬を配っている巫女は、人ではなく遣い狐だったのか――。
それにしても、やっと話が見えてきた。雪見は本橋屋と婚姻をするために神粧の儀を受け入れたが、お供の遣い狐たちは納得していなかったのだ。
「我(わたし)はあのお方と結ばれるため、望んで罰を受け入れたのです」
「主様が正気とは思えませぬ。今すぐ儀を執り行った化粧師を喰い千切り、主神に物申しましょうぞ」
「報復などいけません! これは全て私が心より望んだことなのです」
真後ろにいるというのに、呼吸音すら聞こえない刹那を振り返る。「これからどうするか」と尋ねかけた口を、冷たい手に塞がれた。
「成程。これからあの瓦版に繋がるわけか。あの小狐たちも只人に下してしまえば、もう貴様を喰らうことはできないな」
「大人しくしていろ」、と耳元に残し、目をギラつかせた刹那は狐たちの会合に割っていった。
「其方、何者か!」
刹那は耳と尻尾を立てた遣い狐たちに笑いかけ、ぽかんと口を開けている雪見を抱え上げる。
「お前は退いていろ」
「貴女は主神の……!」
刹那は鞠でも放るかのように、雪見を俺の方へ投げてきた。咄嗟に受け止めようと構えたが、あまりの勢いに後ろへ吹き飛ばされる。
「痛っ……何なんだあの暴力神は」
何とか雪見を抱えることはできたが、床板に腰を思い切りぶつけた。ひとまず雪見が傷ひとつないことを確かめ、ズキズキ脈打つ腰を持ち上げる。
「咲ではありませんか! 何故我が社に?」
「ええと、これには深刻なわけがありまして」
瓦版のことを話したら、雪見は責任を感じてしまうかもしれない。どうしたものか、と首を捻っていると、視界に灰色の点がチラつくようになった。頬や手の甲に舞い落ちる点は雨よりも冷たい。
「これは、雪?」
今は春先。そもそも、ここは屋内だ。
「不味い……咲、早くあの神と共に逃げて。このままでは遣い狐たちに喰われてしまいます。あれらはかつて神であった我と、同格の神力をもっている。無名神とは神階(しんかい)の差があり過ぎるのです」
上位の神々は、刹那のような無名神よりも強い。色師の言葉を今になって思い出した。
あの暴力神、格上の相手へ喧嘩を売りに行ったというのか。
「刹那さん待って! ここは一度引き上げま……」
薄暗い板間だった部屋は、果てしない雪原と化していた。およそ現実とは思えない光景に、制止の言葉が出てこない。
『主を人へ落とした不埒者共……許さぬ……許さぬ……!』
激しい吹雪の中、遣い狐たちが一箇所に集っていく。一匹がもう一匹を取り込み、乳白の毛玉が膨れ上がる。みるみる内に巨大化した白狐を前に、刹那はというと――。
「『伏せ』はできるか? 犬っころ」
笑っていた。
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