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『普通にはもう飽きた。』瀬戸宮雛菜乃と不思議な猫<餌付け>編 ~ 7 ~
しおりを挟むゲオルグ「今日も喜んで食べてたよ。」
料理人「クスクス。良かったですね。」
俺は今調理場に来ている目的は少し前に付いてきてしまった神獣こと白い毛並みが美しく、尻尾がピンクの猫を餌付けするべく朝飯を用意してやっているところだ。
料理人「残さず食べてくれてるようですね。」
ゲオルグ「ああ。最初はこんなに味が薄い物でいいのかと思ったが、流石だな。」
当然ですと料理人は胸を張る、動物にやる餌はかなりの薄味で俺が食べても美味しくない。
だが間違っていなかったようで猫に一皿振る舞うと魚の煮物に必死で食いつき、皿のひとしずくまで綺麗に舐め取っていた。
初日はよほど腹が減っていたのかすごい勢いだった。きっと知らない土地に迷い込んで餌を取れなかったのだろう。
料理人「夜の分も用意しましょうか?」
ゲオルグ「いや、それは止めておこう。下手に厚遇して狩りを忘れられても困る。」
完全に飼育下に置くならそれでもいいが、俺にはそこまでする時間はない。
ゲオルグ「飢餓状態だと可愛そうだからな。俺に出来るのはここまでさ。」
料理人「そうですか……。では、明日は肉にしておきます。」
ゲオルグ「すまんが頼んだ。俺はこれから少し忙しくなるからな。」
料理人「はい。」
そう言って俺は調理場を後した。
激しい熱気が発せられるそこは砦の内部にある訓練場だ。新人は他の団員より早起きしてここで汗を流している。
老団員「全員停止!ゲオルグ団長に敬礼」
新人団員「「「おはよう御座います」」」
俺が姿を見せると全員がピタリとと止まり、敬礼する。
ゲオルグ「ああ、おはよう。」
老団員「続いて対稽古!組になって始め!」
老団員がキビキビと指示を出して新人達に指示を出していく。
新人達も慣れてきたものだ。最初の頃は朝稽古は眠そうで疲労を隠せなかった物だ、まあそれも毎年のこと。
ゲオルグ「今年はなかなか良いな」
老団員「一昨年などは酷かったですからな。」
一昨年、つまりルル達が入団してきた時期のことだ。
この砦の地元の人間や、志願者とは別に、中央から貴族のぼちゃんたちを何故かこの砦ので預かることになり悲惨な事になった。
中央の貴族で大規模な粛清が行われたらしく。ごたごたから息子や家族を逃がすため新人騎士の訓練という名目でこの辺境のメルー地方に逃したようだ。
ゲオルグ「ああ。あんな事はもう二度とゴメンだな」
貴族の息子連中は忍耐を知らず、事あればすぐ権力を振りかざそうとしてくる。
そのたびに俺はあちこちに向かってそいつらをぶん殴る仕事をしていた。
騎士団の団長である俺は王族と領主を別にすれば貴族連中にも関係無く団員に指導することができる。
だが若手の他の団員は下手に貴族に手が出せない。
問題になると自分の地元に対して嫌がらせをされたりするのだ。
老団員「まったく。ルルを見習ってほしかったですな。」
ルルはそんな理不尽なことを言う貴族を意に返さず激しい訓練にも耐えていた。貴族の息子連中がピーピー泣いている間に黙々と実力を伸ばし、今では夜間の見回りや、近くの森に異変が無いかなどを調査する危険な任務にも従事している。
どっかりと椅子に座り老団員と苦労話するがやはりルルは目立っていたらしい。
近く、隊を一つ任せるか、レンが本当に入団するなら新人教育を任せるのも面白いかもしれない。
猫「みゃお。」
ゲオルグ「んん?」
鳴き声が聞こえてそちらを見るとなんとあの猫がいた。
ゲオルグ「何だお前入ってきちまったのか」
猫は尻尾見せ付けるようにフリフリしながら歩いてくる。
なんだなんだと新人達もその様子を見ている。
是迄寝ている間以外は近づけ無かったと言うのに、テテテと歩くとヒョイと椅子に座る俺の膝に飛び乗ってくる。
老団員「ほお、ゲオルグ団長は動物にも好かれるようですな。」
ゲオルグ「最近餌をやってたからだろうな、警戒心が解けたのかもしれんな。」
老団員「動きを止めるな!集中しろ!」
猫に注目を引かれた新人に激を飛ばす。
猫が声に驚いて逃げるかな?と思ったがそんなことはなく、俺の膝の上に立ったまま新人達を優雅に見守っている。
毛並みを触るともふもふとした細く柔らかい毛質で手を埋めるとその体温の高さを感じる。
猫「みー…?」
猫がこちらを何勝手に触ってんのとジト目で視線を向けてくるので、もう少しだけ触らせてくれとアイコンタクトを試す。
猫「まーお。」
しょうがないと言わんばかりに膝に座り込むので存分にもふる。
老団員「ほお。人慣れしておるようですな」
と言いながら手を伸ばし、猫の頭をガリガリ強めに掻いているが満更でもないらしい。頭のてっぺんは自分で触れないんだろうなと考えながらそのままにしておく。
和やかな時間が過ぎそろそろ朝練も終了という時間に声が響いた。
ルル「ああー!団長!ずるいです!」
そう結構なボリュームで叫ぶと小走りで駆けてくる。その様子に驚いたのか猫は
猫「ニャッ!!」
一鳴きすると膝から飛び降りどこかへ行ってしまった。
ゲオルグ「ルル、脅かしちゃ駄目じゃないか。」
ルル「な、なな、何を言ってるんです!いつの間に猫ちゃんとそんなに仲良くなったんですか!私には触らせてくれないのに!」
ゲオルグ「ははは。嫉妬か?」
ルル「うっ……。そ、それは……」
どうやら話を聞くとルルはルルで猫と仲良くなろうと色々していたらしい。まあ、すべて失敗したらしいが。
ルル「私まだ一回も触ってないのに団長だけ…。なんで」
ゲオルグ「ははは。ルルもまだまだ子供だな。」
そう言いながらルルの頭に乗せるように手をのせてやる。
ルル「むぅ……。」
頬を膨らませて不満げな顔をしているが、俺は構わずに言う。
ゲオルグ「仲良くなりたいなら調理場に言って餌を貰ってくるといい。喜んで食べてたぞ。」
そう言ってやるとパッと笑顔になる。
ゲオルグ「ただし、あまりやりすぎるなよ」
そう言ってやると、はい!と言って調理場へと走っていった。
元気なものだな。
ゲオルグ「さて、そろそろ俺も始めるか。」
俺は木刀を手に取ると訓練場の中心で構える。
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