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第5話 私に優しくしてくれる人
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次の日。
教室で千は何かまた言ってくると思ったが、彼女はいつも通り。
皆の前で微笑みながら次のお茶会のことを話している。
そう、いつも通りに咲奈のことなど見向きもしない。
あれは嘘だったのか。
嘘だと信じたい。
でも。
谷崎千と三島咲奈は紛れもなく会話をしていた。二人きりで。
でも、昨日の状況は咲奈が思い描いていたものではない。
咲奈は立ち上がると、凰華の待つ温室へと向かおうとした。
「あ、待って。三島さん!」
咲奈はびくりとして立ち止まる。
谷崎千の声。
優しくて明るい千の声。
咲奈が愛してやまない声。
「忘れ物よ?」
「わすれ・・・もの?」
千は微笑みながら、そっと咲奈に招待状を手渡す。
咲奈はそれを震えながら受け取る。
「それ、三島さんの大切なものよね。忘れてはいけないわ。」
今夜24時。
薔薇の温室で。
目をぎゅっと瞑ると、咲奈はそれを受け取って鞄の奥底へしまった。
「千さん?」
先ほどまで話していた少女にそう言われると千は咲奈を放っておいて、にこりと笑う。
「いいえ。お茶会って楽しいわよね。次のお茶会のお話ししましょう?」
少女は千に歩み寄る。
千と同じくらい背が高く、鼻筋の通った美しい容姿。緩やかなウェーブのかかった髪の女性らしい顔つきの少女だ。
彼女の名前を芥川(あくたがわ)そらという。千と同じクラスだ。
「千さん、いつもお茶会に呼んでくれてありがとう。」
「いいのよ。芥川さんは大切なお友達だもの。」
そらは、千のお茶会の常連であった。なぜなら彼女は千のお眼鏡に適っているから。
「千さん、私。千さんがもっと上に行けるように頑張るわ。勉強もスポーツも。私、千さんのために頑張るわ。千さんのお茶会に、ずっとお呼ばれされるように。」
熱っぽい目で見つめられ、千は一瞬きょとんとしたが、すぐにとびきりに優しい微笑みを返す。
そして、彼女の手にそっと自分の手を添えた。
「ありがとう、芥川さん。私のこといつも考えててくれて嬉しい。私は貴女みたいにみんなの喜ぶ顔が見たくて、お茶会するのよ。」
お茶会とは喜びの場。
千の悦びの場。
みんなから羨望の眼差しで見られる場。
それを咲奈はじっと見つめていた。
芥川そらは、美しいから。
勉強もスポーツもできるから。
きっと、千はこういう子が好きなのだろう。
そらが千を慕っているとしたら、なぜにこうまで違うのだろうか。
「こんなの嫌よ・・・谷崎さん・・・私を見て。」
そう呟くと咲奈は涙を浮かべながら走り去ったのだった。
「どうしたの? 浮かない顔。」
薔薇の温室。
咲奈は凰華にそう言われた。
「あ・・・何でもないんです。ただ、今日は少し調子が悪くて。」
「まぁ・・・。」
それを聞いて凰華は心配そうに咲奈の頬を撫でる。
「大丈夫? 今日はもう帰った方がいいわ。」
その言葉を聞いて、咲奈は慌てて凰華に抱きついた。
「大丈夫です! それよりも私、川端先輩に抱きしめて欲しいんです!!」
「咲奈?」
「お願いです・・・私をいつものように優しく抱きしめてください。谷崎さんとして。」
咲奈は泣きそうな顔で凰華を見つめる。
凰華は最初こそ驚いたが、すぐに微笑んで咲奈を抱きしめた。
「やっぱり咲奈は可愛いわ。」
咲奈はその言葉を聞くと、なぜか昨日のことを思い出してしまった。
そして我慢しきれず涙を流す。
それを見た凰華は、咲奈の首筋にキスしたのだった。
川端先輩は優しい。
川端先輩が抱きしめてくれる。
だって、川端先輩はあの時約束してくれたから。
川端先輩を谷崎さんと思えばいいって。
そうしたら、私は川端先輩を通して優しい谷崎さんに抱かれることができる。
咲奈がそう思っていると、今度は唇を凰華に塞がれた。
きっと。
こうすることが一番いいの。
もう谷崎さんは私を見てはくれやしないから。
咲奈はそう思って全てを委ねたのだった。
教室で千は何かまた言ってくると思ったが、彼女はいつも通り。
皆の前で微笑みながら次のお茶会のことを話している。
そう、いつも通りに咲奈のことなど見向きもしない。
あれは嘘だったのか。
嘘だと信じたい。
でも。
谷崎千と三島咲奈は紛れもなく会話をしていた。二人きりで。
でも、昨日の状況は咲奈が思い描いていたものではない。
咲奈は立ち上がると、凰華の待つ温室へと向かおうとした。
「あ、待って。三島さん!」
咲奈はびくりとして立ち止まる。
谷崎千の声。
優しくて明るい千の声。
咲奈が愛してやまない声。
「忘れ物よ?」
「わすれ・・・もの?」
千は微笑みながら、そっと咲奈に招待状を手渡す。
咲奈はそれを震えながら受け取る。
「それ、三島さんの大切なものよね。忘れてはいけないわ。」
今夜24時。
薔薇の温室で。
目をぎゅっと瞑ると、咲奈はそれを受け取って鞄の奥底へしまった。
「千さん?」
先ほどまで話していた少女にそう言われると千は咲奈を放っておいて、にこりと笑う。
「いいえ。お茶会って楽しいわよね。次のお茶会のお話ししましょう?」
少女は千に歩み寄る。
千と同じくらい背が高く、鼻筋の通った美しい容姿。緩やかなウェーブのかかった髪の女性らしい顔つきの少女だ。
彼女の名前を芥川(あくたがわ)そらという。千と同じクラスだ。
「千さん、いつもお茶会に呼んでくれてありがとう。」
「いいのよ。芥川さんは大切なお友達だもの。」
そらは、千のお茶会の常連であった。なぜなら彼女は千のお眼鏡に適っているから。
「千さん、私。千さんがもっと上に行けるように頑張るわ。勉強もスポーツも。私、千さんのために頑張るわ。千さんのお茶会に、ずっとお呼ばれされるように。」
熱っぽい目で見つめられ、千は一瞬きょとんとしたが、すぐにとびきりに優しい微笑みを返す。
そして、彼女の手にそっと自分の手を添えた。
「ありがとう、芥川さん。私のこといつも考えててくれて嬉しい。私は貴女みたいにみんなの喜ぶ顔が見たくて、お茶会するのよ。」
お茶会とは喜びの場。
千の悦びの場。
みんなから羨望の眼差しで見られる場。
それを咲奈はじっと見つめていた。
芥川そらは、美しいから。
勉強もスポーツもできるから。
きっと、千はこういう子が好きなのだろう。
そらが千を慕っているとしたら、なぜにこうまで違うのだろうか。
「こんなの嫌よ・・・谷崎さん・・・私を見て。」
そう呟くと咲奈は涙を浮かべながら走り去ったのだった。
「どうしたの? 浮かない顔。」
薔薇の温室。
咲奈は凰華にそう言われた。
「あ・・・何でもないんです。ただ、今日は少し調子が悪くて。」
「まぁ・・・。」
それを聞いて凰華は心配そうに咲奈の頬を撫でる。
「大丈夫? 今日はもう帰った方がいいわ。」
その言葉を聞いて、咲奈は慌てて凰華に抱きついた。
「大丈夫です! それよりも私、川端先輩に抱きしめて欲しいんです!!」
「咲奈?」
「お願いです・・・私をいつものように優しく抱きしめてください。谷崎さんとして。」
咲奈は泣きそうな顔で凰華を見つめる。
凰華は最初こそ驚いたが、すぐに微笑んで咲奈を抱きしめた。
「やっぱり咲奈は可愛いわ。」
咲奈はその言葉を聞くと、なぜか昨日のことを思い出してしまった。
そして我慢しきれず涙を流す。
それを見た凰華は、咲奈の首筋にキスしたのだった。
川端先輩は優しい。
川端先輩が抱きしめてくれる。
だって、川端先輩はあの時約束してくれたから。
川端先輩を谷崎さんと思えばいいって。
そうしたら、私は川端先輩を通して優しい谷崎さんに抱かれることができる。
咲奈がそう思っていると、今度は唇を凰華に塞がれた。
きっと。
こうすることが一番いいの。
もう谷崎さんは私を見てはくれやしないから。
咲奈はそう思って全てを委ねたのだった。
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