赤い月

夏目綾

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第七話

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それから夕飯の時間。
ユーリは断ったものの、ミハイルは一緒に食べようと言い出した。
ミハイルは少しでも兄弟たちとの距離を縮めたかったのだ。
テーブルになんとか兄弟はついたものの、案の定アレクサンドルは不機嫌で食べようとはしない。
「誰が貴様などと食べるものか!飢えて死んだほうがましだ。」
するとそれを聞いたユーリは静かに言う。
「食べなさい、サーシャ。」
「で、でも兄様・・・。」
今度はアレクサンドルを睨む。
「食べなさい。」
信頼し服従する兄にこう強く言われては仕方がない。アレクサンドルは悪態をつきながらもフォークを手にしたのだった。
それをみて、ミハイルはほっとする。
ありがとうとユーリを見て微笑んだが、ユーリはそれをちらりと見るとまた目線をそらしてしまった。

そんな経緯があったので食後、ミハイルはユーリを呼んだ。
「さっきは助かったよ。ありがとう。」
「別に、ミハイル様には従うのみです。」
思っていた答えと違ったものが返ってきたので、ミハイルはユーリに尋ねた。
「・・・君は私のことをどう思っているのだい?」
「命の恩人と・・・。」
「では、君は私を許してくれるのかい?」
ユーリはそれを聞くと見下したような目で見て、こう言った。
「許す・・・?貴方は確かに命の恩人です。でもだから絶対に許さない・・・貴方が僕たちに与えた屈辱は未来永劫消えることはないでしょう。その意味はどんなに愚かなあなたでもわかるでしょう。」
「ユーリ・・・。」
「話はそれだけですか?なら、失礼します。」
そう言うとユーリは足早に去っていった。
やはり彼らは許してはくれないのか・・・。
ミハイルは足元から全身が凍りそうなほどの深い罪悪感に苛まれた。
革命でどれほどの罪を自分は犯したのだろうか。
この兄弟たちだけではない。自分の行為で幸せになった人など本当に存在するのだろうか。

いや、だからこそ・・・。
今は誰かを助けたい。

そうすることが唯一の償いだとミハイルは信じていた。
過去の罪は一生消えないが、今、この兄弟たちと巡り会えたことは奇跡。神が与えたもうた試練だ。
彼らを救わなければ。
彼らに許しを得たとき、自らも救われる。
自分勝手なのは承知の上だ。
それでも・・・。

ミハイルはぐっと拳を握り締め雪荒ぶ間からのぞく金色の月をみあげながら固く決意したのだった。
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