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第十話
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「ミカエル様・・・。」
まるで教会の天使像を見つめるかのようにすみれはれいこを見つめる。
それに対してれいこは優越感に浸りながらも少し気に食わない。
「ねぇ、すみれちゃん。そのミカエル様って言うのやめてくれない?私には犬飼れいこっていう名前があるのだから名前で呼んで。」
「へ・・・?」
一瞬、れいこの言っていることが理解できなかったが、次第に冷静になってきて頭が追いついたところで、またすみれは理解できなくなった。
そして、首と手を高速で振り続けながら、珍しく声を張り上げて言う。
「無理です!無理です!!無理です!!!駄目です!そ、そんなことできるわけがありません!!」
「どうして?」
「どうしてって、当たり前です!ミカエル様は絶対的存在なのです!!それなのに私がそんなこと・・・。」
「じゃあ、絶対的存在が言うことは絶対なのよ。貴女は私に許されてるの。」
「は、はぁ・・・。」
なおもすみれが困っているのでれいこは、うーんと唸った後にすみれの手をそっと握った。そして耳元で優しく甘く囁く。
「名前、呼んで・・・?」
れいこの声に反応してすみれは耳まで真っ赤にさせ、目にいっぱい涙を溜めている。
やはり、すみれは感情が昂るとすぐ涙が出てしまうらしい。
それは感性が豊かという証拠なのだろうか。
れいこはそんなことを考えながら、最後の一押しと言わんばかりに、彼女に顔を近づけると瞳に浮かべた涙をそっと拭ってやった。
「呼んで・・・。」
するとすみれは暫く固まってしまったのち、恐る恐る声を発した。
「い・・・犬飼・・・先輩。」
れいこはそれを聞いてまだ不満気。頭を抱えながら首を振る。
「すみれちゃん、違うの。名前で!下の名前で呼んで頂戴。」
「え・・・。」
名字で呼ぶことすら躊躇われるのに下の名前で呼べとこの大天使様は言う。戸惑っていると、れいこはまたあの微笑み。
「れいこ。って呼んで。」
なぜだろうか、れいこの言葉は優しいが命令染みていて、そしてそれに逆らえない。先ほどもそうであったが、押し切られる。どうしても逆らえない。
ついに、すみれは彼女の名を呼んだ。
「れいこ・・・さん。あの・・・本当に許されるなら、呼ばせてください。」
それを聞いてれいこは満面の笑み。これは取り繕った笑顔ではない。心の底から悦びに満ちた顔である。
「いい子ね。」
れいこはすみれの頭を撫でてやると、彼女は恐縮しながらも上目遣いでじつとれいこを見た。
純粋でいて、だが熱っぽく。
「私、本当はとても嬉しいです・・・。」
そう、この目!この目なのよ!!
れいこは悦びで震えそうになる身体をぐっと抑えた。
震えているのはすみれも同じで、れいこはその震えるすみれの甘い野いちごのような唇に触れようとした。
だが、触れようとしたところで手を止めた。手を止められたという方が正しいが。
「ミカエル様!テーブルの片付けも全て終わりました。」
みちるは割って入るようにわざと大声で言ってきた。その声にすみれも我にかえり慌てて立ち上がる。
「も、もう帰らないと。なおも心配しますし・・・。これ以上はご迷惑をかけしてしまいます。」
「荒牧さんって本当に貴女の保護者なのね。羨ましい関係。」
「いえ!なおとはそんな関係じゃないです・・・ないんです。ただ、なおが過保護なだけなんです。」
過保護ね・・・。
れいこは気に食わなかったが、ひとまず笑顔で繕う。
「そうね、あまり引き止めると荒牧さんに怒られちゃう。送っていきましょうか?」
「いえ!大丈夫です。1人で帰れます。私もそこまで馬鹿ではありませんから。あの・・・今日はありがとうございました。れ、れいこ・・・さん。」
まだ言い慣れず遠慮しながらすみれは、れいこの名前を呼んだ。
それがまた一段と愛らしい。
そして、すみれは何度も頭を下げると帰っていった。
まるで教会の天使像を見つめるかのようにすみれはれいこを見つめる。
それに対してれいこは優越感に浸りながらも少し気に食わない。
「ねぇ、すみれちゃん。そのミカエル様って言うのやめてくれない?私には犬飼れいこっていう名前があるのだから名前で呼んで。」
「へ・・・?」
一瞬、れいこの言っていることが理解できなかったが、次第に冷静になってきて頭が追いついたところで、またすみれは理解できなくなった。
そして、首と手を高速で振り続けながら、珍しく声を張り上げて言う。
「無理です!無理です!!無理です!!!駄目です!そ、そんなことできるわけがありません!!」
「どうして?」
「どうしてって、当たり前です!ミカエル様は絶対的存在なのです!!それなのに私がそんなこと・・・。」
「じゃあ、絶対的存在が言うことは絶対なのよ。貴女は私に許されてるの。」
「は、はぁ・・・。」
なおもすみれが困っているのでれいこは、うーんと唸った後にすみれの手をそっと握った。そして耳元で優しく甘く囁く。
「名前、呼んで・・・?」
れいこの声に反応してすみれは耳まで真っ赤にさせ、目にいっぱい涙を溜めている。
やはり、すみれは感情が昂るとすぐ涙が出てしまうらしい。
それは感性が豊かという証拠なのだろうか。
れいこはそんなことを考えながら、最後の一押しと言わんばかりに、彼女に顔を近づけると瞳に浮かべた涙をそっと拭ってやった。
「呼んで・・・。」
するとすみれは暫く固まってしまったのち、恐る恐る声を発した。
「い・・・犬飼・・・先輩。」
れいこはそれを聞いてまだ不満気。頭を抱えながら首を振る。
「すみれちゃん、違うの。名前で!下の名前で呼んで頂戴。」
「え・・・。」
名字で呼ぶことすら躊躇われるのに下の名前で呼べとこの大天使様は言う。戸惑っていると、れいこはまたあの微笑み。
「れいこ。って呼んで。」
なぜだろうか、れいこの言葉は優しいが命令染みていて、そしてそれに逆らえない。先ほどもそうであったが、押し切られる。どうしても逆らえない。
ついに、すみれは彼女の名を呼んだ。
「れいこ・・・さん。あの・・・本当に許されるなら、呼ばせてください。」
それを聞いてれいこは満面の笑み。これは取り繕った笑顔ではない。心の底から悦びに満ちた顔である。
「いい子ね。」
れいこはすみれの頭を撫でてやると、彼女は恐縮しながらも上目遣いでじつとれいこを見た。
純粋でいて、だが熱っぽく。
「私、本当はとても嬉しいです・・・。」
そう、この目!この目なのよ!!
れいこは悦びで震えそうになる身体をぐっと抑えた。
震えているのはすみれも同じで、れいこはその震えるすみれの甘い野いちごのような唇に触れようとした。
だが、触れようとしたところで手を止めた。手を止められたという方が正しいが。
「ミカエル様!テーブルの片付けも全て終わりました。」
みちるは割って入るようにわざと大声で言ってきた。その声にすみれも我にかえり慌てて立ち上がる。
「も、もう帰らないと。なおも心配しますし・・・。これ以上はご迷惑をかけしてしまいます。」
「荒牧さんって本当に貴女の保護者なのね。羨ましい関係。」
「いえ!なおとはそんな関係じゃないです・・・ないんです。ただ、なおが過保護なだけなんです。」
過保護ね・・・。
れいこは気に食わなかったが、ひとまず笑顔で繕う。
「そうね、あまり引き止めると荒牧さんに怒られちゃう。送っていきましょうか?」
「いえ!大丈夫です。1人で帰れます。私もそこまで馬鹿ではありませんから。あの・・・今日はありがとうございました。れ、れいこ・・・さん。」
まだ言い慣れず遠慮しながらすみれは、れいこの名前を呼んだ。
それがまた一段と愛らしい。
そして、すみれは何度も頭を下げると帰っていった。
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