2 / 55
第1章 とても古い屋敷のなかで
2
しおりを挟む
おばあさんは満足げにうなずき、それから体の向きをかえ口元に両手をあてると、
「進一郎どの―っ」
とよく通る声をあげた。
お堂にいた男子が顔をあげてこちらを見た。
正面から見るとメガネをかけているのがわかった。
すぐに、
「なんですか、津江さん」
という声が聞こえた。
「この子を書庫へ案内おしーっ」
進一郎がミチを見た。そしてうなずいた。
津江さんがミチの手を引いて歩きだした。津江さんの手はかさかさと乾いていた。
ミチはたずねた。
「津江さんもあの屋敷に住んでいるんですか」
「いんや。うらはボランティア」
急にカタカナの言葉が津江さんの口から出てきたので、ミチは変な気分になった。
「ボランティアですか」
「ひごめ館には何人もボランティアがいるえ。お客にガイドをしたり、焚火を焚いてみせたり、子どもにお手玉を教えたり。ああ、そう、焚火え。火を焚いていたら見つけたのよ」
津江さんが早足になった。
池のほとりまで来るとかがんだ。ミチは津江さんの手元を見た。
そこにはたしかに焚火のあとがあった。
ただし津江さんが拾いあげたのは、燃えた木切れや炭ではなかった。
津江さんは焚火のあとのすぐそばの土の上から、小石をひとつ、つまみあげた。
小指の爪ほどの、本当に小さな石だった。
しめった土にまみれたその石はくすんだ赤茶けた色をしていた。
津江さんはひとさし指の腹で小石から土をぬぐうと、池にその石をつけた。津江さんが水から引きあげたとき、ミチの目にはその小石がきらきらと輝いて見えた。
くすんだ色だったはずの小石はあざやかな赤い色に変化していた。
「これは、ひごめ石のかけら」
津江さんはその小石をつまんだままで親指とひとさし指をよりあわせるように動かした。何度もだ。
ミチの目の前で、津江さんの指の腹が赤くなっていった。
(小石の色が指にうつったのかな。)とミチは考えた。
津江さんが言った。
「こっちをお向き。そういえば、お前さまの名前は」
「道生です。仕田道生。前の学校ではミチって呼ばれてました」
津江さんは、何度目になるかわからないが、ミチの顔をつくづくとながめた。
特に目をのぞきこむようにして。
「どうやらお前さまは良い子どものようだ」
ミチはパチパチとまばたきをした。日ごろ褒められることが少ないので、どういう表情をしていいのかわからなかったのだ。
その間に津江さんの右手がミチの短い前髪をかきあげた。
そして津江さんは左手のひとさし指、赤くなった指をミチの額に押しつけた。
「さ、まじないぞ」
津江さんの指がぐいっと右から左へ動き、ミチの額に一本の線が引かれた。
さらにその線の下にもう一本。
なんだこれは、とミチは思った。
津江さんの指がなぞったところに自分の指でふれようとすると、津江さんがそれを止めた。
「これ、さわるでない。せっかくつけたのに消えてしまうぞえ」
「なんですか、これ」
「まじないと言ったえ。いいかえ、万が一アヤと出会っても、決して目を合わせぬようにしや」
「教えてください、アヤってだれですか」
津江さんの視線がミチからはずれた。
「ああ、進一郎どの、来たの。お前さまにも」
津江さんが赤くなったひとさし指を向けると、屋根つき橋をわたってやってきた進一郎は顔をしかめた。
「いや、いいです。このままで」
「まじないえ」
「自分のうちでおまじないは変ですよ。もうすぐ稽古がはじまりますし」
「ふむ、熱心でよいこと。さあ進一郎どの、この子はミチ。書庫まで頼むぞえ」
「こっちだ」
進一郎がミチをうながした。ミチはぺこりと頭をさげた。
「お願いします」
数歩進んでミチがふりかえると、津江さんが焚火のあとがあった場所でかがんでいるのが見えた。
ミチは津江さんの様子をじっと見た。
どうやら津江さんはさっきの赤い石のかけらをもとの場所へもどしているようだ。
焚火のあとの、すぐそば。
それから津江さんは顔をあげてこちらを見た。
ミチは津江さんにもぺこりと頭をさげてまた歩きだした。
津江さんに気をとられたぶん進一郎とのあいだに距離ができてしまったので、いそいで足を動かした。
すると、ほどなくしてあの屋根つき橋にたどりついた。
屋根つき橋は池の岸から先にものびていた。
津江さんがミチに隠居屋だと教えてくれた棟まで、ほそながい橋げたと屋根がつづいている。岸のうえに建つ部分は橋げたというより本当に渡り廊下だ。
進一郎が屋根の下を突っきって横断した。ミチもつづいた。
ミチはつぶやいた。
「あのおばあさん、変わってる」
進一郎が歩く速度をゆるめてミチを横目で見た。
「津江さんに会ったの、はじめてか。このへんの子じゃないな」
「転入生です。おとつい引っ越してきました」
「ああ。小学生か」
「六年です」
「ひごめ南、それとも北か」
「南。ひごめ南小学校です。ここからすぐのところ」
「おれも南小だったよ。」
「進一郎さんは高校生ですか」
「高校一年」
進一郎の言葉はひとつひとつが短いけれど、冷たくなかった。ミチはそう感じた。
ただしそれはここまで、ミチが気になっていたことをたずねるまでだった。
「稽古って剣道ですか?」
そのとたんに進一郎がふきげんな顔になった。
「ちがう。合気道」
「ええと、はい、あいきどう」
なじみのない単語をミチは声に出した。ぎこちない言いかたになった。
進一郎がじろりと横目でミチをにらんだ。
少なくともミチはにらまれたと感じた。
進一郎が言った。
「なんだ、君は剣道がやりたいのか。たしかにひごめ道場には剣道部もあるけど。あと柔道部も」
「ぼくはべつに剣道がやりたいわけじゃないです。ただ進一郎さんが袴をつけているから剣道かなと思いました」
ミチが正直に言うと、進一郎がますますむくれた顔になった。
「袴を見たら剣道だと思うなんて安直だ」
顔に出やすい人だなとミチは感じたが、同時に、自分がもの知らずなのはたしかだとも思った。
「ごめんなさい。合気道をよく知りません」
これはもっとやぶへびだった。進一郎はとうとうむっつりとだまりこんだ。
話せば話すほど進一郎の機嫌が悪くなっていくのをミチは感じた。
(知らなかったものは仕方ないのに)と思ったが、こういうときどうすれば相手の機嫌が直るのかわからないので、ミチは口を閉じた。
そしてこのあとは二人ともだまってひたすら足を進めた。
進一郎が足早にすすんだ。
ミチはあらためて、
(山のすぐそばだ)
と、屋敷をながめた。
ほんの間近に山がせまっている。ごく低い山だが、とにかく山にはちがいない。
建物のすぐそばに大きな木が立っているためもあって、屋敷の端っこはまるで山のなかにめりこんでいるように見えた。
ミチと進一郎は屋敷のなかでいちばん大きな棟、母屋へ近づいた。
この棟だけでふつうの家数件ぶんの広さに見える。
一階がぜんぶ縁側で囲われており、縁側の奥にガラス戸が並んでいた。
ガラス戸のサッシは黒ずんだ木だ。
西日のさしこみはぎりぎり縁まで届いてそこでおしまいだ。
奥の部屋はうす暗い。
そしてしずまりかえっていた。
(だれもいないのかな)とミチは考えた。
進一郎は母屋の端っこまでたどりつくと履きものを脱いで縁にあがり、ミチにもおなじことをするようにうながした。
母屋のどこかでボーンという音がした。
進一郎が言った。
「四時半。さっさとあがってくれ、五時に稽古がはじまるんだ」
「進一郎どの―っ」
とよく通る声をあげた。
お堂にいた男子が顔をあげてこちらを見た。
正面から見るとメガネをかけているのがわかった。
すぐに、
「なんですか、津江さん」
という声が聞こえた。
「この子を書庫へ案内おしーっ」
進一郎がミチを見た。そしてうなずいた。
津江さんがミチの手を引いて歩きだした。津江さんの手はかさかさと乾いていた。
ミチはたずねた。
「津江さんもあの屋敷に住んでいるんですか」
「いんや。うらはボランティア」
急にカタカナの言葉が津江さんの口から出てきたので、ミチは変な気分になった。
「ボランティアですか」
「ひごめ館には何人もボランティアがいるえ。お客にガイドをしたり、焚火を焚いてみせたり、子どもにお手玉を教えたり。ああ、そう、焚火え。火を焚いていたら見つけたのよ」
津江さんが早足になった。
池のほとりまで来るとかがんだ。ミチは津江さんの手元を見た。
そこにはたしかに焚火のあとがあった。
ただし津江さんが拾いあげたのは、燃えた木切れや炭ではなかった。
津江さんは焚火のあとのすぐそばの土の上から、小石をひとつ、つまみあげた。
小指の爪ほどの、本当に小さな石だった。
しめった土にまみれたその石はくすんだ赤茶けた色をしていた。
津江さんはひとさし指の腹で小石から土をぬぐうと、池にその石をつけた。津江さんが水から引きあげたとき、ミチの目にはその小石がきらきらと輝いて見えた。
くすんだ色だったはずの小石はあざやかな赤い色に変化していた。
「これは、ひごめ石のかけら」
津江さんはその小石をつまんだままで親指とひとさし指をよりあわせるように動かした。何度もだ。
ミチの目の前で、津江さんの指の腹が赤くなっていった。
(小石の色が指にうつったのかな。)とミチは考えた。
津江さんが言った。
「こっちをお向き。そういえば、お前さまの名前は」
「道生です。仕田道生。前の学校ではミチって呼ばれてました」
津江さんは、何度目になるかわからないが、ミチの顔をつくづくとながめた。
特に目をのぞきこむようにして。
「どうやらお前さまは良い子どものようだ」
ミチはパチパチとまばたきをした。日ごろ褒められることが少ないので、どういう表情をしていいのかわからなかったのだ。
その間に津江さんの右手がミチの短い前髪をかきあげた。
そして津江さんは左手のひとさし指、赤くなった指をミチの額に押しつけた。
「さ、まじないぞ」
津江さんの指がぐいっと右から左へ動き、ミチの額に一本の線が引かれた。
さらにその線の下にもう一本。
なんだこれは、とミチは思った。
津江さんの指がなぞったところに自分の指でふれようとすると、津江さんがそれを止めた。
「これ、さわるでない。せっかくつけたのに消えてしまうぞえ」
「なんですか、これ」
「まじないと言ったえ。いいかえ、万が一アヤと出会っても、決して目を合わせぬようにしや」
「教えてください、アヤってだれですか」
津江さんの視線がミチからはずれた。
「ああ、進一郎どの、来たの。お前さまにも」
津江さんが赤くなったひとさし指を向けると、屋根つき橋をわたってやってきた進一郎は顔をしかめた。
「いや、いいです。このままで」
「まじないえ」
「自分のうちでおまじないは変ですよ。もうすぐ稽古がはじまりますし」
「ふむ、熱心でよいこと。さあ進一郎どの、この子はミチ。書庫まで頼むぞえ」
「こっちだ」
進一郎がミチをうながした。ミチはぺこりと頭をさげた。
「お願いします」
数歩進んでミチがふりかえると、津江さんが焚火のあとがあった場所でかがんでいるのが見えた。
ミチは津江さんの様子をじっと見た。
どうやら津江さんはさっきの赤い石のかけらをもとの場所へもどしているようだ。
焚火のあとの、すぐそば。
それから津江さんは顔をあげてこちらを見た。
ミチは津江さんにもぺこりと頭をさげてまた歩きだした。
津江さんに気をとられたぶん進一郎とのあいだに距離ができてしまったので、いそいで足を動かした。
すると、ほどなくしてあの屋根つき橋にたどりついた。
屋根つき橋は池の岸から先にものびていた。
津江さんがミチに隠居屋だと教えてくれた棟まで、ほそながい橋げたと屋根がつづいている。岸のうえに建つ部分は橋げたというより本当に渡り廊下だ。
進一郎が屋根の下を突っきって横断した。ミチもつづいた。
ミチはつぶやいた。
「あのおばあさん、変わってる」
進一郎が歩く速度をゆるめてミチを横目で見た。
「津江さんに会ったの、はじめてか。このへんの子じゃないな」
「転入生です。おとつい引っ越してきました」
「ああ。小学生か」
「六年です」
「ひごめ南、それとも北か」
「南。ひごめ南小学校です。ここからすぐのところ」
「おれも南小だったよ。」
「進一郎さんは高校生ですか」
「高校一年」
進一郎の言葉はひとつひとつが短いけれど、冷たくなかった。ミチはそう感じた。
ただしそれはここまで、ミチが気になっていたことをたずねるまでだった。
「稽古って剣道ですか?」
そのとたんに進一郎がふきげんな顔になった。
「ちがう。合気道」
「ええと、はい、あいきどう」
なじみのない単語をミチは声に出した。ぎこちない言いかたになった。
進一郎がじろりと横目でミチをにらんだ。
少なくともミチはにらまれたと感じた。
進一郎が言った。
「なんだ、君は剣道がやりたいのか。たしかにひごめ道場には剣道部もあるけど。あと柔道部も」
「ぼくはべつに剣道がやりたいわけじゃないです。ただ進一郎さんが袴をつけているから剣道かなと思いました」
ミチが正直に言うと、進一郎がますますむくれた顔になった。
「袴を見たら剣道だと思うなんて安直だ」
顔に出やすい人だなとミチは感じたが、同時に、自分がもの知らずなのはたしかだとも思った。
「ごめんなさい。合気道をよく知りません」
これはもっとやぶへびだった。進一郎はとうとうむっつりとだまりこんだ。
話せば話すほど進一郎の機嫌が悪くなっていくのをミチは感じた。
(知らなかったものは仕方ないのに)と思ったが、こういうときどうすれば相手の機嫌が直るのかわからないので、ミチは口を閉じた。
そしてこのあとは二人ともだまってひたすら足を進めた。
進一郎が足早にすすんだ。
ミチはあらためて、
(山のすぐそばだ)
と、屋敷をながめた。
ほんの間近に山がせまっている。ごく低い山だが、とにかく山にはちがいない。
建物のすぐそばに大きな木が立っているためもあって、屋敷の端っこはまるで山のなかにめりこんでいるように見えた。
ミチと進一郎は屋敷のなかでいちばん大きな棟、母屋へ近づいた。
この棟だけでふつうの家数件ぶんの広さに見える。
一階がぜんぶ縁側で囲われており、縁側の奥にガラス戸が並んでいた。
ガラス戸のサッシは黒ずんだ木だ。
西日のさしこみはぎりぎり縁まで届いてそこでおしまいだ。
奥の部屋はうす暗い。
そしてしずまりかえっていた。
(だれもいないのかな)とミチは考えた。
進一郎は母屋の端っこまでたどりつくと履きものを脱いで縁にあがり、ミチにもおなじことをするようにうながした。
母屋のどこかでボーンという音がした。
進一郎が言った。
「四時半。さっさとあがってくれ、五時に稽古がはじまるんだ」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
その溺愛は伝わりづらい
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
幽霊横丁へいらっしゃい~バスを降りるとそこは幽霊たちが住む町でした~
風雅ありす
児童書・童話
5歳の女の子【あかり】は、死んだ人の姿を見ることができる。
亡くなった母親の姿も幽霊としてあかりの傍に居てくれたのに、
ある日突然、姿が見えなくなってしまう。
消えてしまった母を捜して、あかりは一人、バスに乗る。
それは、死んだ人たちだけが乗ることのできる特別なバスだった。
果たして、あかりは、無事に母親に再会できるのか――――?
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
恋の三角関係♡探偵団 ~私、未来を変えちゃった!?~
水十草
児童書・童話
未来には無限の可能性が広がっている。
オトナはそう言うけど、何にでもなれるはずない。六年生にもなれば、誰だって現実ってものがわかると思う。それがオトナになるってことだと思ってた。
でもあの事件が起こって、本当に未来が、私たちの運命が大きく変わったんだ――。
ミステリー作家志望の真琴と荒っぽいけど頼りになる直人、冷静沈着で頭脳明晰な丈一が織りなす、三角関係な学園恋愛ミステリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる