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第5章 初めてのお祭り

3.

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ウィリアムお兄様の腕からパキッパキッと微かな音が聴こえてくる。
「チェリニー、痛い…… 痛いってば、腕折れちゃう折れちゃう❗」
ウィリアムお兄様はたったの2分程で弱音をあげて、パッとチェリニーを地面に降ろしていた。
チェリニーはぐぐっと伸びをするとお兄様のお腹目掛けて大きなキックをした。
「うっ❗」
お兄様は声にならない声をあげてその場にしゃがみこんでしまった。
流石はうさぎと言うべきかチェリニーの、いや、チェリーラビットの一蹴りはとても痛く力強いのだ。
そのため、普段はとても体の丈夫なお兄様ですらこうなる。
フンッと鼻を鳴らしたチェリニーは、ぴょんっと大きく跳ぶとフィンリお兄様の腕の中に大人しく収まった。
「なっ、なんだったんだ⁉️今のは…」
お兄様は、ショックを受けつつも お腹 を押さえた
「きっと行動を止められたから怒っていたのよ。 それにしても本気で蹴られなくて良かったわね。 本気で蹴られていたらきっとウィリアムの骨なんか木っ端微塵よ?」
お母様はクスクスと笑いながらそう言っているが、自分の息子の心配は微塵もしていないように見える。
それを見て、チェリニーを抱いたフィンリお兄様は苦笑いをしていた。
そしてこっそりとチェリニーに蹴らないように頼んでいた。



   ***


【やはりホワイトキャットは闇商人達によって売られているっぽいぞ】
【他にもパッと見ただけでブルーウルフやサニータートルなんかもいたわ】
そう教えてくれたのは、気配を消して近くまで偵察に行ってくれていたエレンとエレナだ。
やはり闇商人達だったか。
にしてもホワイトキャットだけでなくブルーウルフやサニータートルなんて珍しい種の魔獣ばかり何処で集めているんだ?
しかも、それぞれ生息地が全然違うときた…
【ねぇハロルド、この問題は解決しないとミユキに害をなすの?】
エレナは一刻も早くミユキの元へ戻りたいという雰囲気を滲ませながらもそう聞いてきた。
私はほんの少し考えてから頷いた。
「ミユキ自体には害がないだろうが、フェンリルであるスズナや妖精の中でも珍しい光と闇の妖精であるタポポとヌレバは狙われるだろう。 そうすれば必ずミユキは傷付くだろうな」
私がそう言い終えるとほぼ同時に、エレナとエレンは顔を見合せ頷きあっていた。
だが、2人の手を良く見てみると拳が固く握られていた。
【では、行ってくる】
【じゃあ行ってくるわね】
2人は息ぴったりでそう言うと何処かへ向かって歩きだした。
「ああ分かった。 じゃなくてえっと、まっ、待て❗ 2人とも何処へ行く気だ」
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