嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす

柴ちゃん

文字の大きさ
上 下
46 / 50
1章妖精の愛し子

42.

しおりを挟む
リュクスはシャラーティルの腕の中に収まると、おやすみなさいと言って顔を脇に突っ込んだ。
「ちょっと、そんなところに顔をいれないでよ。 って、もう遅いか… おやすみリュクス、どうかいい夢見てね」


   ***


「リリーフィア、起きてよ… リリーフィア、ねぇってば」

すやすやと眠るリリーフィアの頬をツンツンと鼻先で突つく者がいた。
リュクスは翼をバサリと広げると、リリーフィアの胸の上に降り立つ。
そして、足踏みを始めたのだ。
「ねぇってば、リリーフィアったらお寝坊さんなんだから」
「ぅ、うぅん… むにゃ…」
「ねぇってば!」

「うりゅしゃいなの!」
何度も声をかけるうちにリリーフィアに怒られてしまったリュクス。

「リリーフィア? ほっぺがおもちみたいになってるよ?」
そう言ってリリーフィアの頬をつつくシャラ-ティル。

不快な朝を迎えたせいか頬がぷくぅ~と膨れていたリリーフィアは、涙目でシャラ-ティルに訴える。
「だって… だって、うましゃんが…」
「リュクスだよ! ペガサスのリュクス。 これからよろしくね、愛し子様」

空気を読まないリュクスは、勝手に自己紹介を始めた。

「そんなこときいてないなの! フィアはおこってるの!」
リリーフィアはプイッと横を向くと、布団の中に潜ってしまった。

「あ~あ、リリーフィアが拗ねちゃった」
シャラ-ティルは諦めの境地に陥り、両手を上にあげて降参の意を示した。

─カラン

ドアにかかっている飾りがなんとも言えない、気の抜けるような音を立てる。
こんな時に誰が来たのかと、シャラ-ティルが視線を向けた先にいたのは、我らの救世主、フィーディアンであった。

「なにをしてる、リリーフィアを起こすだけにどれほど時間をかける気だ」
言われたことひとつも出来ないシャラ-ティルに、フィーディアンは小さな怒りが芽生える。
「違うんだ、リリーフィアが拗ねちゃっただけであって、僕はちゃんと起こそうと…」
「言い訳はいい、とにかくそこのペガサスを連れて外に出てろ」
役立たずふたり組は、フィーディアンによって外に追い出された。

静かになった部屋の中は、リリーフィアとフィーディアンのふたりだけが残った。
フィーディアンは、ベッドに腰掛けながら、リリーフィアの頭があるであろう位置を撫でる。
「そろそろ顔を出したらどうだ? 布団の中は暑いだろ?」
「………ぃや、なの」
布団の中からくぐもってかすかに聞こえるリリーフィアの声。
それは、確かな否定を表していた。
これは骨が折れそうだと思いつつ、フィーディアンは小さなため息をついた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】真実の愛はおいしいですか?

ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。 稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。 王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。 お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。 でも、今は大きくなったので見えません。 ―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語 ※童話として書いています。 ※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ
ファンタジー
魔法学校の教師として働いていたコレット・クラインは不慮の事故によって夢半ばで急逝したが、ある朝目覚めると初めて教師として採用された日に戻っていた。 「これは……やり直しのためのチャンスなのかも!」 一度目の人生では出来なかった充実した生活を取り戻すために奔走するコレット。しかし、時同じくして、セレスティア王国内では志を共にする者たちが不穏な動きを見せていた。 捻くれた生徒から、変わり者の教師陣。はたまた自分勝手な王子まで。一筋縄ではいかない人たちに囲まれても、ポンコツ先生は頑張ります!

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

処理中です...