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1章妖精の愛し子
30.
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「そうか、でも私は公爵がいなくなると困るのだが…」
「そんなの知らないよ。 そっちでどうにかして?」
シャラーティルが興味なさそうに返すと、どこからともなくフィーディアンがカギを取り出した。
「では妖精の国へ行くとするか。 共に行くのなら俺らの傍に集え」
フィーディアンがカギをなにもない宙に挿してまわすと、カチャリと音がして目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
歪んだ空間の向こうには、一本の大木が植わっていた。
その中へ妖精達が次々と飛び込んでいくと、そのあとを追ってシャラーティルとリリーフィアが、そしてフィーディアンが入っていく。
共に入ろうとしたグラウィルは、足を踏み出した瞬間に弾かれてしまった。
「なんでだ? やっぱり妖精の国へは行けないのか?」
「そんなわけないだろ。 カギを取り出したのか?」
フィーディアンは溜め息をつきながら戻ってくると、グラウィルの胸元に手を当てた。
「愛し子の時の力の使い方の感覚を思い出せ。 そうしたらカギが取り出せる」
「そんなの分かるわけないじゃないか」
「諦めるな、思い出せ」
フィーディアンはグラウィルに自分の力、妖精の魔力を流した。
愛し子の使う力は人の持つ魔力とは違い、妖精だけが持っている特別な魔力を使って妖精だけの魔法を使う。
そして元愛し子も妖精の魔法、フェアリーマジックを使うことが出来る。
「思い出した。 そうだ、フェアリーマジックはこう使うんだったな」
グラウィルの言葉と同時に使い方を思い出すと、辺りに風が舞い上がる。
これはフェアリーマジックを使えるようになった印だ。
「フェアリーキーをこの手に」
グラウィルが手のひらを上に向けながら魔法の言葉を唱える。
声に魔力を乗せて言うと実際の現象になるフェアリーマジック。
妖精や当代の愛し子は言葉を唱えなくても使うことができるが、使うことに馴れていない場合は口に出して言うことがほとんどだ。
そして元愛し子は使う感覚を完璧に取り戻すまでは口に出さないといけないという決まりがある。
それほどまでにこのフェアリーマジックは扱いが難しく、一歩間違えるととても危険なのだ。
グラウィルは取り出した、持つ部分が四つ葉の形をしている可愛らしいカギをフィーディアンの開けた空間にかざした。
カギが光を放つ同時に、妖精の国へと足を踏み入れた。
「待ってくれ、公爵よ」
妖精の国へと消えていくグラウィルの背に、国王は声をかけたが、その声がグラウィルに届くことはなかった。
「そんなの知らないよ。 そっちでどうにかして?」
シャラーティルが興味なさそうに返すと、どこからともなくフィーディアンがカギを取り出した。
「では妖精の国へ行くとするか。 共に行くのなら俺らの傍に集え」
フィーディアンがカギをなにもない宙に挿してまわすと、カチャリと音がして目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。
歪んだ空間の向こうには、一本の大木が植わっていた。
その中へ妖精達が次々と飛び込んでいくと、そのあとを追ってシャラーティルとリリーフィアが、そしてフィーディアンが入っていく。
共に入ろうとしたグラウィルは、足を踏み出した瞬間に弾かれてしまった。
「なんでだ? やっぱり妖精の国へは行けないのか?」
「そんなわけないだろ。 カギを取り出したのか?」
フィーディアンは溜め息をつきながら戻ってくると、グラウィルの胸元に手を当てた。
「愛し子の時の力の使い方の感覚を思い出せ。 そうしたらカギが取り出せる」
「そんなの分かるわけないじゃないか」
「諦めるな、思い出せ」
フィーディアンはグラウィルに自分の力、妖精の魔力を流した。
愛し子の使う力は人の持つ魔力とは違い、妖精だけが持っている特別な魔力を使って妖精だけの魔法を使う。
そして元愛し子も妖精の魔法、フェアリーマジックを使うことが出来る。
「思い出した。 そうだ、フェアリーマジックはこう使うんだったな」
グラウィルの言葉と同時に使い方を思い出すと、辺りに風が舞い上がる。
これはフェアリーマジックを使えるようになった印だ。
「フェアリーキーをこの手に」
グラウィルが手のひらを上に向けながら魔法の言葉を唱える。
声に魔力を乗せて言うと実際の現象になるフェアリーマジック。
妖精や当代の愛し子は言葉を唱えなくても使うことができるが、使うことに馴れていない場合は口に出して言うことがほとんどだ。
そして元愛し子は使う感覚を完璧に取り戻すまでは口に出さないといけないという決まりがある。
それほどまでにこのフェアリーマジックは扱いが難しく、一歩間違えるととても危険なのだ。
グラウィルは取り出した、持つ部分が四つ葉の形をしている可愛らしいカギをフィーディアンの開けた空間にかざした。
カギが光を放つ同時に、妖精の国へと足を踏み入れた。
「待ってくれ、公爵よ」
妖精の国へと消えていくグラウィルの背に、国王は声をかけたが、その声がグラウィルに届くことはなかった。
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