32 / 50
1章妖精の愛し子
28.
しおりを挟む
「久しいな、クレイセル。 今はグラウィルと呼ぶべきか?」
黒の羽を持つ妖精がグラウィルに話しかけるが、グラウィルは困惑していた。
「すまないが、私はあなたを知らない。 どこかで会ったことがあるか?」
「まあ、僕らのこと覚えてなくてもしょうがないよね。 だって会ったのは前世だもの」
「はっ? 前世だと?」
グラウィルは軽く目を見開いて金の羽の妖精を見つめた。
「……勝手に話を進めないで貰えるか?」
話に置いてかれた国王が控え気味に声をかけてくる。
「すまなかった、人の国の王よ。 俺は黒の妖精フィーディアンだ」
「僕は金の妖精シャラーティルだよ。 改めてよろしくね、人の国の皆さん」
フィーディアンは素っ気ない挨拶だが、シャラーティルは人懐っこそうな笑みを浮かべて手を差し出した。
その手を握った国王の腕を引っ張り、シャラーティルは耳許に口を近付けた。
「愛し子に手をだそうものなら次は容赦しないからね、国王様?」
「何のことか分からないな?」
シャラーティルは肩をすくめると、声を低くして言う。
「だって、あわよくば愛し子を国に有利になるように使おうとしてたんでしょ? 道具としてね」
「な、何を言って…」
正解だと言っているも同然な国王の様子を見てにっこりと笑うと、シャラーティルは国王の傍から離れていった。
「で、話を戻すが前世で会ったとはどういうことだ?」
「…その前に、部屋を変えましょうよ」
「てぃ、ティファニー!? いつの間に復活したんだ?」
立ち上がってドレスの汚れを払っているティファニーの一言で部屋を移動しながらも、グラウィルは驚きを隠せないようだ。
「私が治したの! だってフィーディアン様が動く度に邪魔そうにしてたんだもん」
そう言って手を上げたのはハヤテと同じ若葉色の妖精だった。
「そうか、気を遣ってくれて感謝する。 確かに邪魔だったから助かった。 で、なぜ俺らがグラウィルを知っているかだったな」
移動し、全員ソファーに腰かけたことを確認すると、フィーディアンはすぐに話を切り出した。
「それは俺らが妖精であり、グラウィルが愛し子だったからだ」
「「はっ? 愛し子?」」
この場にいる大人全員が一斉に驚きの声をあげる。
そして驚きの声をあげたのは人だけではなかった。
リリーフィアの傍にいた妖精達もみんな声をあげたのだ。
逆に声をあげなかったのは、グラウィルの愛し子時代を知っているシャラーティルと、なぜか唯一平然としていたシャルロッテだけだろうか。
「愛し子って、どういうことだ?」
「どうもなにも、グラウィルの前世はクレイセル・シャロンだ。 シャロン公爵であり、妖精の愛し子だった」
黒の羽を持つ妖精がグラウィルに話しかけるが、グラウィルは困惑していた。
「すまないが、私はあなたを知らない。 どこかで会ったことがあるか?」
「まあ、僕らのこと覚えてなくてもしょうがないよね。 だって会ったのは前世だもの」
「はっ? 前世だと?」
グラウィルは軽く目を見開いて金の羽の妖精を見つめた。
「……勝手に話を進めないで貰えるか?」
話に置いてかれた国王が控え気味に声をかけてくる。
「すまなかった、人の国の王よ。 俺は黒の妖精フィーディアンだ」
「僕は金の妖精シャラーティルだよ。 改めてよろしくね、人の国の皆さん」
フィーディアンは素っ気ない挨拶だが、シャラーティルは人懐っこそうな笑みを浮かべて手を差し出した。
その手を握った国王の腕を引っ張り、シャラーティルは耳許に口を近付けた。
「愛し子に手をだそうものなら次は容赦しないからね、国王様?」
「何のことか分からないな?」
シャラーティルは肩をすくめると、声を低くして言う。
「だって、あわよくば愛し子を国に有利になるように使おうとしてたんでしょ? 道具としてね」
「な、何を言って…」
正解だと言っているも同然な国王の様子を見てにっこりと笑うと、シャラーティルは国王の傍から離れていった。
「で、話を戻すが前世で会ったとはどういうことだ?」
「…その前に、部屋を変えましょうよ」
「てぃ、ティファニー!? いつの間に復活したんだ?」
立ち上がってドレスの汚れを払っているティファニーの一言で部屋を移動しながらも、グラウィルは驚きを隠せないようだ。
「私が治したの! だってフィーディアン様が動く度に邪魔そうにしてたんだもん」
そう言って手を上げたのはハヤテと同じ若葉色の妖精だった。
「そうか、気を遣ってくれて感謝する。 確かに邪魔だったから助かった。 で、なぜ俺らがグラウィルを知っているかだったな」
移動し、全員ソファーに腰かけたことを確認すると、フィーディアンはすぐに話を切り出した。
「それは俺らが妖精であり、グラウィルが愛し子だったからだ」
「「はっ? 愛し子?」」
この場にいる大人全員が一斉に驚きの声をあげる。
そして驚きの声をあげたのは人だけではなかった。
リリーフィアの傍にいた妖精達もみんな声をあげたのだ。
逆に声をあげなかったのは、グラウィルの愛し子時代を知っているシャラーティルと、なぜか唯一平然としていたシャルロッテだけだろうか。
「愛し子って、どういうことだ?」
「どうもなにも、グラウィルの前世はクレイセル・シャロンだ。 シャロン公爵であり、妖精の愛し子だった」
13
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】真実の愛はおいしいですか?
ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。
稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。
王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。
お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。
でも、今は大きくなったので見えません。
―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語
※童話として書いています。
※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい
おのまとぺ
ファンタジー
魔法学校の教師として働いていたコレット・クラインは不慮の事故によって夢半ばで急逝したが、ある朝目覚めると初めて教師として採用された日に戻っていた。
「これは……やり直しのためのチャンスなのかも!」
一度目の人生では出来なかった充実した生活を取り戻すために奔走するコレット。しかし、時同じくして、セレスティア王国内では志を共にする者たちが不穏な動きを見せていた。
捻くれた生徒から、変わり者の教師陣。はたまた自分勝手な王子まで。一筋縄ではいかない人たちに囲まれても、ポンコツ先生は頑張ります!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる