31 / 50
1章妖精の愛し子
27.
しおりを挟む
「私の代に妖精の愛し子が誕生するとは、実にめでたいな。 ところでシャロン公爵家は妖精のことをどう思っているんだ?」
「我々は妖精達によって助けられた身。 妖精は自由にさせるべきだと思っております」
「そんなの嘘よ! 妖精なんか人の手伝いだけをしていれば良いに決まっているわ! 自由にさせたって良いことなんてなにもないもの!」
グラウィルの言葉を否定するかのように国王の前で怒鳴り始めたティファニー。
「公爵夫人は考えが違うようだな」
「ええ、そもそもリリーフィアが大それたスキルを貰わなければ良かっただけですもの。 妖精の愛し子は人にとっても不利益な存在にしかなりませんわ!」
国王は荒れ狂うティファニーを止めるようにグラウィルに目で合図する。
「おっ、落ち着け… ティファニー落ち着くんだ」
グラウィルがティファニーの腕を掴むも、すぐに振り払われてしまう。
「あんたさえ… あんたさえいなければグラウィルの魅了が解けることもなかったのに! シャルロッテちゃんが妖精の愛し子ならば…! やっぱりあんたのせいよ! あんたさえ、あんたさえいなければ… すべて私の思い通りに!!」
そう叫んだティファニーはどこかから取り出した護身用の短剣を思いっきり振り上げると、リリーフィア目掛けて振り下ろした。
「リリーフィア!」
「おねえしゃま!」
グラウィルとシャルロッテが声を揃えて叫びながらリリーフィアに手を伸ばす。
あと数センチでリリーフィアにあたるというところで、短剣は何者かによって弾かれた。
「短剣を幼子に向けてはいけないと習わなかったようだな」
「大丈夫? 僕らの愛し子様」
「お待たせリリーフィア、あの方達を連れてきたよ!」
リリーフィア達の前に現れたのは、アロイとふたりの妖精だった。
ひとりは剣を持っているが、ティファニーに向けられていた切っ先はすぐに下げられた。
「あなた達が誰かは知らないけど、一緒に殺られたくなければそこを退きなさい!」
「それは無理だな。 俺らの役目は当代の愛し子、リリーフィアを守ることであって人の命令を聞くことではない」
傍にいた護衛の剣を奪い取ったティファニーが剣を持つ妖精に斬りかかる。
瞬時にティファニーの剣を弾くと一瞬で間合いを詰め、喉元に剣をあてた妖精は、声を低くして言い放った。
「死にたくなければ二度と愛し子に近付くな。 これは忠告だ。 次をやれば二度と陽の目を見ることはないと思え」
恐怖に声が出なくなったティファニーがその場にへたりこむ。
それを見届けた妖精は剣を一振した後、鞘に戻した。
そして鞘ごと剣は光の粒に変わると、あっという間に飛散して消えた。
「我々は妖精達によって助けられた身。 妖精は自由にさせるべきだと思っております」
「そんなの嘘よ! 妖精なんか人の手伝いだけをしていれば良いに決まっているわ! 自由にさせたって良いことなんてなにもないもの!」
グラウィルの言葉を否定するかのように国王の前で怒鳴り始めたティファニー。
「公爵夫人は考えが違うようだな」
「ええ、そもそもリリーフィアが大それたスキルを貰わなければ良かっただけですもの。 妖精の愛し子は人にとっても不利益な存在にしかなりませんわ!」
国王は荒れ狂うティファニーを止めるようにグラウィルに目で合図する。
「おっ、落ち着け… ティファニー落ち着くんだ」
グラウィルがティファニーの腕を掴むも、すぐに振り払われてしまう。
「あんたさえ… あんたさえいなければグラウィルの魅了が解けることもなかったのに! シャルロッテちゃんが妖精の愛し子ならば…! やっぱりあんたのせいよ! あんたさえ、あんたさえいなければ… すべて私の思い通りに!!」
そう叫んだティファニーはどこかから取り出した護身用の短剣を思いっきり振り上げると、リリーフィア目掛けて振り下ろした。
「リリーフィア!」
「おねえしゃま!」
グラウィルとシャルロッテが声を揃えて叫びながらリリーフィアに手を伸ばす。
あと数センチでリリーフィアにあたるというところで、短剣は何者かによって弾かれた。
「短剣を幼子に向けてはいけないと習わなかったようだな」
「大丈夫? 僕らの愛し子様」
「お待たせリリーフィア、あの方達を連れてきたよ!」
リリーフィア達の前に現れたのは、アロイとふたりの妖精だった。
ひとりは剣を持っているが、ティファニーに向けられていた切っ先はすぐに下げられた。
「あなた達が誰かは知らないけど、一緒に殺られたくなければそこを退きなさい!」
「それは無理だな。 俺らの役目は当代の愛し子、リリーフィアを守ることであって人の命令を聞くことではない」
傍にいた護衛の剣を奪い取ったティファニーが剣を持つ妖精に斬りかかる。
瞬時にティファニーの剣を弾くと一瞬で間合いを詰め、喉元に剣をあてた妖精は、声を低くして言い放った。
「死にたくなければ二度と愛し子に近付くな。 これは忠告だ。 次をやれば二度と陽の目を見ることはないと思え」
恐怖に声が出なくなったティファニーがその場にへたりこむ。
それを見届けた妖精は剣を一振した後、鞘に戻した。
そして鞘ごと剣は光の粒に変わると、あっという間に飛散して消えた。
1
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
与えてもらった名前を名乗ることで未来が大きく変わるとしても、私は自分で名前も運命も選びたい
珠宮さくら
ファンタジー
森の中の草むらで、10歳くらいの女の子が1人で眠っていた。彼女は自分の名前がわからず、それまでの記憶もあやふやな状態だった。
そんな彼女が最初に出会ったのは、森の中で枝が折られてしまった若い木とそして時折、人間のように見えるツキノワグマのクリティアスだった。
そこから、彼女は森の中の色んな動物や木々と仲良くなっていくのだが、その森の主と呼ばれている木から、新しい名前であるアルテア・イフィジェニーという名前を与えられることになる。
彼女は様々な種族との出会いを経て、自分が何者なのかを思い出すことになり、自分が名乗る名前で揺れ動くことになるとは思いもしなかった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
ハチ助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる