嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす

柴ちゃん

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1章妖精の愛し子

27.

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「私の代に妖精の愛し子が誕生するとは、実にめでたいな。 ところでシャロン公爵家は妖精のことをどう思っているんだ?」

「我々は妖精達によって助けられた身。 妖精は自由にさせるべきだと思っております」
「そんなの嘘よ! 妖精なんか人の手伝いだけをしていれば良いに決まっているわ! 自由にさせたって良いことなんてなにもないもの!」
グラウィルの言葉を否定するかのように国王の前で怒鳴り始めたティファニー。

「公爵夫人は考えが違うようだな」
「ええ、そもそもリリーフィアが大それたスキルを貰わなければ良かっただけですもの。 妖精の愛し子は人にとっても不利益な存在にしかなりませんわ!」
国王は荒れ狂うティファニーを止めるようにグラウィルに目で合図する。
「おっ、落ち着け… ティファニー落ち着くんだ」
グラウィルがティファニーの腕を掴むも、すぐに振り払われてしまう。

「あんたさえ… あんたさえいなければグラウィルの魅了が解けることもなかったのに! シャルロッテちゃんが妖精の愛し子ならば…! やっぱりあんたのせいよ! あんたさえ、あんたさえいなければ… すべて私の思い通りに!!」
そう叫んだティファニーはどこかから取り出した護身用の短剣を思いっきり振り上げると、リリーフィア目掛けて振り下ろした。
「リリーフィア!」 
「おねえしゃま!」
グラウィルとシャルロッテが声を揃えて叫びながらリリーフィアに手を伸ばす。
あと数センチでリリーフィアにあたるというところで、短剣は何者かによって弾かれた。

「短剣を幼子に向けてはいけないと習わなかったようだな」
「大丈夫? 僕らの愛し子様」
「お待たせリリーフィア、あの方達を連れてきたよ!」
リリーフィア達の前に現れたのは、アロイとふたりの妖精だった。

ひとりは剣を持っているが、ティファニーに向けられていた切っ先はすぐに下げられた。
「あなた達が誰かは知らないけど、一緒に殺られたくなければそこを退きなさい!」
「それは無理だな。 俺らの役目は当代の愛し子、リリーフィアを守ることであって人の命令を聞くことではない」

傍にいた護衛の剣を奪い取ったティファニーが剣を持つ妖精に斬りかかる。
瞬時にティファニーの剣を弾くと一瞬で間合いを詰め、喉元に剣をあてた妖精は、声を低くして言い放った。
「死にたくなければ二度と愛し子に近付くな。 これは忠告だ。 次をやれば二度と陽の目を見ることはないと思え」

恐怖に声が出なくなったティファニーがその場にへたりこむ。
それを見届けた妖精は剣を一振ひとふりした後、さやに戻した。
そして鞘ごと剣は光の粒に変わると、あっという間に飛散して消えた。
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