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1章妖精の愛し子

24.

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アロイは妖精の国中を一通り飛び回ったところでやっと思い出す。
「そういえば、あの方達ってどこにいるんだろう? ま、王城に行けばきっといるよね」
アロイは持ち前の明るさで、妖精の国のどこにいても見ることのできる王城に向かって飛んでいった。

「フィーディアン様、シャラーティル様、リューシティア様、いらっしゃいますか?」
アロイは、城の中の一室を覗いて声をかける。

「俺を呼んで、何用だ」
そう言いながら部屋の奥から出てきたのは黒い羽の妖精、フィーディアンだった。
妖精の中では一番頼れる存在であるフィーディアンだが、今はひとりしかいない黒の妖精だ。

「あの、リリーフィアを、当代の妖精の愛し子を、妖精の国に連れてきたいので… その~、力を貸して貰えませんか?」
アロイは自分よりも大きく強い相手を前に、少し言い淀みながらも言い切った。

「当代の妖精の愛し子を連れてくるだと? 妖精の愛し子は本来人の国で暮らすもの。 そのことわりを曲げてまでここに連れてくることは本当に愛し子の為なのか?」
フィーディアンは腕を組むと、アロイのことを見下ろした。

フィーディアンの厳しい問いに、アロイは身をすくめながらも許可を貰えるように頑張る。
「うっ、それは… で、でもリリーフィアは家族に虐げられていたんだ。 もしここに連れてくることがたとえ間違った選択だったとしても、あなた方ならリリーフィアを人の国に連れていけるでしょ?」

「だとしても…」
「お願いします! フィーディアン様お願いします!」
何か言おうとしたフィーディアンの言葉を遮るようにアロイは頼み込んだ。
「…………はぁ、分かった。 良いだろう、その代わり、愛し子のもとまで案内しろ。 それが条件だ」
フィーディアンは重い溜め息をつくと、準備をしてくると言って部屋の奥へと消えていった。

その間、アロイはひたすら部屋の前で待ち続けた。
「まだかな~? 待ち始めてからそろそろ一日が過ぎるんだけど…」
耳がキーンとなりそうなほどに静かな空間で、床にうずくまりながら、ただひたすらアロイは待ち続ける。

そしてフィーディアンを待ち続けて2日程たった頃、やっとフィーディアンはもうひとりの妖精を連れてやって来た。

フィーディアンと対照的な雰囲気を纏うのは金の妖精、シャラーティルだ。
明るい笑顔が素敵なシャラーティルも、今はひとりしかいない金の妖精だ。

静かなフィーディアンと元気いっぱいなシャラーティルのふたりと合流して、アロイはやっと出発できると安心したのだった。
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