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1章妖精の愛し子
23.
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「もちろんだ。 ほら冷めないうちに食べるといい」
リリーフィアは嬉しそうに目を輝かせると、いただきましゅと言って食べ始めた。
ふたりは黙々とご飯を食べ続けるが、そこには気まずい空気はなく、静かであってもどちらも嬉しそうだった。
「嬉しいね、こうやってふたりが仲良く食べているのを見るのは」
「嬉しいはみんなを幸せにするんだね。 だって、私は今幸せだもの」
妖精達はにこにこと笑いながらふたりの食べる様子を見守っていた。
リリーフィアがご飯を半分ほど食べ終えたところで、グラウィルは話を切り出す。
「……リリーフィアよ、今まですまなかったな。 ひどい扱いばかりして」
リリーフィアはきょとんとしながら手を止める。
そして口の中のものを飲み込むと、ゆっくりと、でもはっきりとした口調で言葉を紡いだ。
「なにが? フィアはなにもしゃれてないなの」
「そうか、そうだな… リリーフィアが、いや、フィアがそう言うのならばそうなのだろう」
グラウィルは顔をしわくちゃにして笑うと、リリーフィアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おとうしゃまになでられるのはひしゃしぶりなの」
リリーフィアはとても嬉しそうに笑いながら足をパタパタと動かす。
その姿は公爵令嬢というよりもただの幼女のようで、とてもかわいらしかった。
「はやくご飯を食べないと冷めちゃうよ?」
赤い羽の妖精がテーブルの上で寝っ転がり、頬杖をつきながらリリーフィア達を見る。
ふたりは一瞬妖精のことを見た後、またご飯を食べ始めのだった。
***
その頃のアロイはというと、妖精の国にやっとのことでたどり着いていた。
「あれアロイじゃん、今までどこ行ってたんだよ~」
少しチャラそうな口調で話すのは緑色の羽根をもつ妖精だ。
彼はアロイと生まれた時期が近く、アロイが妖精の国に居るときは毎日のように遊んでいた仲だ。
「いや、人のところにいたんだけど戻るための扉の場所を忘れてちゃって… 思いの外時間がかかったんだよね」
「そうだったのか」
のんきに談笑していた緑の羽の妖精はふと思い出したかのようにアロイの顔を見る。
「ところで、なんか急いでたみたいだけど大丈夫なのか?」
アロイはその一言に一瞬動きを止める。
「ああぁー! 僕、あの方達に会いに行くところだったんだ! 急いで行かないと! リーンまたね」
「あ、あぁ、またな」
突然の大声に驚いた緑の羽の妖精ことリーンは、呆気にとられながらも幼なじみの友を送り出した。
「ところで、あの方がどこにいるのか知ってるのか?」
リーンの呟きは、風に吹かれてかき消されたのだった。
リリーフィアは嬉しそうに目を輝かせると、いただきましゅと言って食べ始めた。
ふたりは黙々とご飯を食べ続けるが、そこには気まずい空気はなく、静かであってもどちらも嬉しそうだった。
「嬉しいね、こうやってふたりが仲良く食べているのを見るのは」
「嬉しいはみんなを幸せにするんだね。 だって、私は今幸せだもの」
妖精達はにこにこと笑いながらふたりの食べる様子を見守っていた。
リリーフィアがご飯を半分ほど食べ終えたところで、グラウィルは話を切り出す。
「……リリーフィアよ、今まですまなかったな。 ひどい扱いばかりして」
リリーフィアはきょとんとしながら手を止める。
そして口の中のものを飲み込むと、ゆっくりと、でもはっきりとした口調で言葉を紡いだ。
「なにが? フィアはなにもしゃれてないなの」
「そうか、そうだな… リリーフィアが、いや、フィアがそう言うのならばそうなのだろう」
グラウィルは顔をしわくちゃにして笑うと、リリーフィアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「おとうしゃまになでられるのはひしゃしぶりなの」
リリーフィアはとても嬉しそうに笑いながら足をパタパタと動かす。
その姿は公爵令嬢というよりもただの幼女のようで、とてもかわいらしかった。
「はやくご飯を食べないと冷めちゃうよ?」
赤い羽の妖精がテーブルの上で寝っ転がり、頬杖をつきながらリリーフィア達を見る。
ふたりは一瞬妖精のことを見た後、またご飯を食べ始めのだった。
***
その頃のアロイはというと、妖精の国にやっとのことでたどり着いていた。
「あれアロイじゃん、今までどこ行ってたんだよ~」
少しチャラそうな口調で話すのは緑色の羽根をもつ妖精だ。
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「いや、人のところにいたんだけど戻るための扉の場所を忘れてちゃって… 思いの外時間がかかったんだよね」
「そうだったのか」
のんきに談笑していた緑の羽の妖精はふと思い出したかのようにアロイの顔を見る。
「ところで、なんか急いでたみたいだけど大丈夫なのか?」
アロイはその一言に一瞬動きを止める。
「ああぁー! 僕、あの方達に会いに行くところだったんだ! 急いで行かないと! リーンまたね」
「あ、あぁ、またな」
突然の大声に驚いた緑の羽の妖精ことリーンは、呆気にとられながらも幼なじみの友を送り出した。
「ところで、あの方がどこにいるのか知ってるのか?」
リーンの呟きは、風に吹かれてかき消されたのだった。
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