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1章妖精の愛し子

17.

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「アロイは用が出来たと言って出かけていったぞ」
「すぐに戻るって言ってたから安心してね、リリーフィア」
サクラ達に説明されながらも歩みを進めるリリーフィアは、今までで一番可愛い格好をしていた。

サクラのお手製である桃色のふわふわとしたドレス風ワンピースにブローチを着け、靴には動きやすさを重視しつつ可愛さも取り入れる。
このブローチは、ハヤテが怪我を治すときに使う、癒しの魔法をひとつに纏めて作った若葉色の魔石で、それをサクラが加工したものだ。

そしてこのブローチ、サクラによって魔石の裏側に彫られた魔方陣のお陰で、ブローチを身に付けている間はリリーフィアの怪我がすぐに治るように仕組まれていた。

髪も編み込みをして結い上げ、パッと見は一国のお姫様と言われてもおかしくない。
そこにリリーフィアのにこにことした笑顔。
これにはもう、ここまで仕立て上げたサクラとハヤテの口角がずっと上がりっぱなしだ。

「おまたせしまちた、おとうしゃま、おかあしゃま」
リリーフィアは先に玄関で待っていたグラウィルとティファニーに声をかける。
二人はリリーフィアの可愛い服装を笑顔に圧倒され、固まる。
グラウィルとティファニーは、内心ではリリーフィアのことを可愛いと思っていても口に出さない。
なんせ二人はリリーフィアのことを嫌っているのだから。

「おまたせちまちたわおとうしゃま、おかあしゃま」
リリーフィアから少し遅れてきたシャルロッテは、水色でふわふわとした生地に青い花が縫い付けられた、それはもうきれいなドレスを着ていた。

首もとには小ぶりながらもキラキラと輝いて見える宝石を身に付けている。
雰囲気はもう、ザ・令嬢という感じだ。
「あらシャルロッテちゃん、とっても可愛らしくなったのね」
「良く似合ってるな、シャルロッテ」
リリーフィアに比べてシャルロッテはよく褒められる。
二人に愛情を込められ、何でも許されてきたシャルロッテは少しわがままに育ったが、二人にはそこも可愛いと褒められる。

「では行きましょうか?」
「そうだな、そろそろ行くか」
グラウィルの言葉により、リリーフィア達は外に控えている馬車に乗り込む。
馬車の屋根の上には、この公爵家に住む妖精全員が乗っていた。

今日ばかりはリリーフィアの一生に一度だけの特別な日ということで、妖精達は家の者の見張りをしなくてもいいのだ。
屋根の上からは楽しみという言葉がたくさん聞こえてくる。
「ふふ、妖精達もシャルロッテちゃんの儀式の結果が今から楽しみみたいですわよ?」
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