嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす

柴ちゃん

文字の大きさ
上 下
19 / 50
1章妖精の愛し子

15.

しおりを挟む
「でもそれだったら間に合わないかもしれないよ?」
「それもそうだな… なら、あの妖精達に迎えに来て貰うように頼むのはどうだ?」
「だ~か~ら~、愛し子をここから連れ出すか悩んでるからこうなってるんでしょ!?」
妖精達がやんややんやと言い合っていると、俯いていた妖精が顔をあげて大きな声でで叫んだ。

「あの方なら人間の国と妖精の国を自由に行き来できる!!」

一斉にみんなの視線を集めた妖精の後ろには、静かに近づいたサクラが握り拳を作って立っていた。
仲間にうしろ後ろ!と言われて振り返った妖精の頭に、サクラのげんこつが勢い良く落とされた。
「痛い!!」
「うるさい! リリーフィアが起きたらどうしてくれるの!?」
小声で言うサクラに、妖精は大きな声で謝った。
「だからうるさいんだってば!」
妖精はサクラからもう一度げんこつをくらうと、頭を抱えてその場にうずくまった。

「で? その、あの方が人間の国と妖精の国を自由に行き来できるって本当?」
さらっと何事も無かったかのように話を続けたサクラに答えたのはアロイだった。

「本当だよ、妖精王の許可がないと妖精の国から出ることができない僕らと違ってあの方達は自由に行き来ができるんだ。 でも、その代わりに必ず二人以上じゃないと行っちゃ駄目らしいけどね」
「なら、リリーフィアを妖精の国に連れていっても平気なんじゃない?」
「それもそうね。 それじゃあリリーフィアを妖精の国に連れていくべきではないと思う妖精はいる?」
サクラの問いかけに対して、手を上げるものは誰もいなかった。
よってリリーフィアは妖精の国に行くことになったようだ。

そういえば本人の意思を確認していなかったな、と妖精達が思い始めるのはまだまだ先の話である。


   ***


朝になり、珍しく自分から起きたリリーフィアが目を開けると、横には微かに微笑みながら眠るアロイの姿があった。

「あれ? リリーフィアもう起きちゃったの? まだ起きるには早いからもう少し寝ててもいいよ」
ベットのふちに腰を掛けていたサクラが近づいてきてリリーフィアのお腹の辺りをぽんぽんと優しく叩く。
リズミカルにぽんぽんとされていると、また眠気が襲ってきたリリーフィアが徐々に目をつむり始めた。

「リリーフィア、もう一度寝たのか?」
サクラと一緒にベットの淵に腰かけていたハヤテが聞く。
「うん、寝たよ。 それじゃあ私は朝の用意をしてくるからリリーフィアのことよろしくね」
「任せるといいぞ!」
ハヤテは親指を立てた手をサクラに突き出してそう言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるヒロインは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンや腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしヒロインはそれでもなんとか暮らしていた。  ヒロインの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はヒロインに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたヒロインは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 ※カクヨムにも投稿してます。カクヨム先行投稿。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※2023年9月17日女性向けホットランキング1位まで上がりました。ありがとうございます。 ※2023年9月20日恋愛ジャンル1位まで上がりました。ありがとうございます。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜

蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。 レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい…… 精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。 ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

処理中です...