嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす

柴ちゃん

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1章妖精の愛し子

15.

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「でもそれだったら間に合わないかもしれないよ?」
「それもそうだな… なら、あの妖精達に迎えに来て貰うように頼むのはどうだ?」
「だ~か~ら~、愛し子をここから連れ出すか悩んでるからこうなってるんでしょ!?」
妖精達がやんややんやと言い合っていると、俯いていた妖精が顔をあげて大きな声でで叫んだ。

「あの方なら人間の国と妖精の国を自由に行き来できる!!」

一斉にみんなの視線を集めた妖精の後ろには、静かに近づいたサクラが握り拳を作って立っていた。
仲間にうしろ後ろ!と言われて振り返った妖精の頭に、サクラのげんこつが勢い良く落とされた。
「痛い!!」
「うるさい! リリーフィアが起きたらどうしてくれるの!?」
小声で言うサクラに、妖精は大きな声で謝った。
「だからうるさいんだってば!」
妖精はサクラからもう一度げんこつをくらうと、頭を抱えてその場にうずくまった。

「で? その、あの方が人間の国と妖精の国を自由に行き来できるって本当?」
さらっと何事も無かったかのように話を続けたサクラに答えたのはアロイだった。

「本当だよ、妖精王の許可がないと妖精の国から出ることができない僕らと違ってあの方達は自由に行き来ができるんだ。 でも、その代わりに必ず二人以上じゃないと行っちゃ駄目らしいけどね」
「なら、リリーフィアを妖精の国に連れていっても平気なんじゃない?」
「それもそうね。 それじゃあリリーフィアを妖精の国に連れていくべきではないと思う妖精はいる?」
サクラの問いかけに対して、手を上げるものは誰もいなかった。
よってリリーフィアは妖精の国に行くことになったようだ。

そういえば本人の意思を確認していなかったな、と妖精達が思い始めるのはまだまだ先の話である。


   ***


朝になり、珍しく自分から起きたリリーフィアが目を開けると、横には微かに微笑みながら眠るアロイの姿があった。

「あれ? リリーフィアもう起きちゃったの? まだ起きるには早いからもう少し寝ててもいいよ」
ベットのふちに腰を掛けていたサクラが近づいてきてリリーフィアのお腹の辺りをぽんぽんと優しく叩く。
リズミカルにぽんぽんとされていると、また眠気が襲ってきたリリーフィアが徐々に目をつむり始めた。

「リリーフィア、もう一度寝たのか?」
サクラと一緒にベットの淵に腰かけていたハヤテが聞く。
「うん、寝たよ。 それじゃあ私は朝の用意をしてくるからリリーフィアのことよろしくね」
「任せるといいぞ!」
ハヤテは親指を立てた手をサクラに突き出してそう言った。
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