嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす

柴ちゃん

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1章妖精の愛し子

14.

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「ん、どこ? 次は怪我しないように気を付けるんだぞ?」
「わかったなの。 ハヤテ、なおちてくれてありあと」
ハヤテはどういたしましてと言ってリリーフィアの頭をくしゃくしゃっと撫でた。

リリーフィアは嬉しそうにしながらも眠たそうに目を擦っている。
「それじゃリリーフィア、そろそろお昼寝しようか」
サクラはベッドを整えると、リリーフィアの枕をとんとんと優しく叩いた。
「ほら、おいで」
サクラの優しい声に誘われるようにリリーフィアはベッドに向かって歩いていく。
スカイに助けて貰いながらもコロンと寝転がると、ハヤテが布団をかけてくれた。

「おやすみ、リリーフィア」
スカイはリリーフィアの頭を一撫ですると、部屋を出ていった。
部屋の中は途端に静まり返り、サクラの子守唄だけが聞こえる。
ハヤテはポンポンとリリーフィアのお腹をサクラの歌に合わせながら優しく叩いた。
これが寝るときの準備であり、リリーフィアを安心させる秘訣でもある。

三分程続ければ、リリーフィアは夢の中へ行った。
リリーフィアが寝ている間にサクラは新しいリリーフィアの服を作ったり晩御飯の下準備をし、ハヤテとアロイは屋敷の様子を確認していた。
それぞれがすべきことをし、また、そのお陰でリリーフィアの暮らしは保たれていた。


   ***


今日も夜が更け屋敷の者達がみんな寝静まったあと、リリーフィアの部屋にて妖精達は会議を開いていた。
今日の議題は、「リリーフィアはここに居るべきか、妖精の国に行くべきか」だ。

「リリーフィアは妖精の国に行くべきだと思う。 だってここの暮らしは酷すぎるもん」
メイドに付いている黄色い羽の妖精は、軽く身を乗り出しながらそう言う。
「俺はここに居るべきだと思う。 ここなら良くも悪くも本当の家族がいる」
料理人に付いている赤い羽の妖精は顔を俯ける。

結果、屋敷に居た方がいいと言った者と、出ていくべきと言った者の数は半々だった。
屋敷に居るべきだと言った者達も、心の奥底では、リリーフィアには安全な妖精の国に行って欲しいと思っていた。
だがここには、リリーフィア幸せだった頃の思い出もあれば、虐げられる辛さもある。
どちらを取るべきかは誰にも分からないのだ。
それ故、会議は難航した。

「なら、リリーフィアが本当に危険なときに妖精の国につれていけば?」
難しい問題に直面しているなか、口を開いた妖精がいた。
小さな妖精の中に一人、中くらいの妖精が居るのはなんとも不自然だが、不思議なことになんの違和感もなく溶け込んでいたアロイだ。
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