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1章妖精の愛し子
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妖精の愛し子って知ってるかしら?
妖精の愛し子は妖精に好かれ、愛される存在よ。
およそ千年程前にこの国、シルビアント王国に居たとされているわ。
そうね、あなた達が産まれるずっとずっと前ね。
話を続けるわよ?
そして愛し子であった彼女はすべての人を、妖精を愛したの。
人と妖精も彼女のことを愛したのよ。
彼女は人と妖精の架け橋となった。
そして仲良くなった人と妖精は物を交換し始め、いつしか人は妖精から魔法というものを与えられた。
そして今までよりも生活が豊かになった人は、徐々に力をつけていったわ。
そして人は妖精を裏切った。
妖精よりも知恵と力をつけた人間は、妖精を捕まえて言うことを聞かせ始めたの。
妖精が飛べないように羽を少し破いたり、逃げ出さないように奴隷にしたりしたのよ。
それでも妖精は人のことを恨むことなく今までと同じように接し続けた。
そんな人の態度に怒った神様は、もう一度妖精の愛し子となる存在を生み出し、人と妖精の仲を持たせたの。
でも今度の愛し子は妖精を思い通りに使うことしか考えていなかった。
その影響もあってこの国はいつしか妖精を道具として扱うようになったわ。
ぞんざいな扱いをされ、中には人を恨んでいる妖精も居るかもしれない、それでも大半の妖精は人を恨むこともなく今も過ごしているのよ。
周りの人たちに流されることなく、あなた達は妖精のことを大切にしてね。
なんせこの家は、妖精のおかげでここまで豊かに暮らせるようになったのだから。
私達くらいは妖精に感謝しないとね。
おやすみなさい、愛しい子達…
***
部屋のなかに優しい朝陽が挿し込み、爽やかな風が吹き抜け、外からは小鳥のさえずりが聴こえてくる。
「起きて…リリーフィア起きて」
「朝だぞ、リリーフィア」
そう言いながらリリーフィアの頬をぺちぺちと叩くものがいた。
体の大きさは約十五センチ、透き通るような羽に輝く不思議な光を纏わせた彼らは妖精だ。
「うう~ん。 おはようなのサクラ、ハヤテ」
そう言って目を開けたのはリリーフィア・シャロン。
彼女はさらさらで綺麗な金髪にぱっちりと大きな青い瞳、透けるような透明感のある白い肌に子供らしいふくふくとした頬を持つ可愛い幼女だ。
その姿はまるでフランス人形のようにも見える。
シャロン公爵家の令嬢である彼女の歳は三つ、一歳の時に実の母親を亡くしたリリーフィアは双子の妹であるシャルロッテ、父親、継母と共に暮らしていた。
「なんか今、なちゅかしいゆめをみたの。 おかあしゃまがいきていたころのゆめだったのよ?」
そう言ってにっこりと笑うリリーフィアに、サクラとハヤテもにっこりと笑いかける。
サクラは薄ピンクの羽にこれまた薄いピンクの光を纏わせている可愛い女の子の妖精だ。
ハヤテは若葉色の羽にこれまた若葉色の光を纏わせている男の子の妖精だ。
これから分かるように、妖精の羽と纏う光の色は同じだ。
そしてハヤテも可愛いらしい容姿をしているが、本人は可愛いと言われるのを嫌う。
「ねぇリリーフィア、今日は何するの? 今日もリリーフィアのお部屋にずっと居るの?」
「そろそろ外に出た方がいいんじゃないか?」
「でも、おそとにでたりゃあたらちいおかあしゃまにおこられちゃうよ… いちゃ!」
リリーフィアの少し悲しそうな横顔に、おもいっきりぶつかってきた妖精がいた。
「ご、ごめんリリーフィア… でっ、でも特報だよ!」
そう言って部屋に飛び込んできた妖精の名はスカイ。
空色の羽を持つ女の子だ。
「とくほー?」
リリーフィアはスカイを小さな手のひらの上にのせながらそう繰り返す。
「そう、とくほー。 なんと今日はティファニーが出かけるんだって! ティファニーが今日は家に居ないんだよ!」
「あたらちいおかあしゃまが?」
スカイはリリーフィアの手の上でくるくるとまわりながらそう!っと言った。
継母、ティファニーが居ない日は外で遊べる日。
そう知っているリリーフィアは、嬉しそうにベットから飛び降りた。
妖精の愛し子は妖精に好かれ、愛される存在よ。
およそ千年程前にこの国、シルビアント王国に居たとされているわ。
そうね、あなた達が産まれるずっとずっと前ね。
話を続けるわよ?
そして愛し子であった彼女はすべての人を、妖精を愛したの。
人と妖精も彼女のことを愛したのよ。
彼女は人と妖精の架け橋となった。
そして仲良くなった人と妖精は物を交換し始め、いつしか人は妖精から魔法というものを与えられた。
そして今までよりも生活が豊かになった人は、徐々に力をつけていったわ。
そして人は妖精を裏切った。
妖精よりも知恵と力をつけた人間は、妖精を捕まえて言うことを聞かせ始めたの。
妖精が飛べないように羽を少し破いたり、逃げ出さないように奴隷にしたりしたのよ。
それでも妖精は人のことを恨むことなく今までと同じように接し続けた。
そんな人の態度に怒った神様は、もう一度妖精の愛し子となる存在を生み出し、人と妖精の仲を持たせたの。
でも今度の愛し子は妖精を思い通りに使うことしか考えていなかった。
その影響もあってこの国はいつしか妖精を道具として扱うようになったわ。
ぞんざいな扱いをされ、中には人を恨んでいる妖精も居るかもしれない、それでも大半の妖精は人を恨むこともなく今も過ごしているのよ。
周りの人たちに流されることなく、あなた達は妖精のことを大切にしてね。
なんせこの家は、妖精のおかげでここまで豊かに暮らせるようになったのだから。
私達くらいは妖精に感謝しないとね。
おやすみなさい、愛しい子達…
***
部屋のなかに優しい朝陽が挿し込み、爽やかな風が吹き抜け、外からは小鳥のさえずりが聴こえてくる。
「起きて…リリーフィア起きて」
「朝だぞ、リリーフィア」
そう言いながらリリーフィアの頬をぺちぺちと叩くものがいた。
体の大きさは約十五センチ、透き通るような羽に輝く不思議な光を纏わせた彼らは妖精だ。
「うう~ん。 おはようなのサクラ、ハヤテ」
そう言って目を開けたのはリリーフィア・シャロン。
彼女はさらさらで綺麗な金髪にぱっちりと大きな青い瞳、透けるような透明感のある白い肌に子供らしいふくふくとした頬を持つ可愛い幼女だ。
その姿はまるでフランス人形のようにも見える。
シャロン公爵家の令嬢である彼女の歳は三つ、一歳の時に実の母親を亡くしたリリーフィアは双子の妹であるシャルロッテ、父親、継母と共に暮らしていた。
「なんか今、なちゅかしいゆめをみたの。 おかあしゃまがいきていたころのゆめだったのよ?」
そう言ってにっこりと笑うリリーフィアに、サクラとハヤテもにっこりと笑いかける。
サクラは薄ピンクの羽にこれまた薄いピンクの光を纏わせている可愛い女の子の妖精だ。
ハヤテは若葉色の羽にこれまた若葉色の光を纏わせている男の子の妖精だ。
これから分かるように、妖精の羽と纏う光の色は同じだ。
そしてハヤテも可愛いらしい容姿をしているが、本人は可愛いと言われるのを嫌う。
「ねぇリリーフィア、今日は何するの? 今日もリリーフィアのお部屋にずっと居るの?」
「そろそろ外に出た方がいいんじゃないか?」
「でも、おそとにでたりゃあたらちいおかあしゃまにおこられちゃうよ… いちゃ!」
リリーフィアの少し悲しそうな横顔に、おもいっきりぶつかってきた妖精がいた。
「ご、ごめんリリーフィア… でっ、でも特報だよ!」
そう言って部屋に飛び込んできた妖精の名はスカイ。
空色の羽を持つ女の子だ。
「とくほー?」
リリーフィアはスカイを小さな手のひらの上にのせながらそう繰り返す。
「そう、とくほー。 なんと今日はティファニーが出かけるんだって! ティファニーが今日は家に居ないんだよ!」
「あたらちいおかあしゃまが?」
スカイはリリーフィアの手の上でくるくるとまわりながらそう!っと言った。
継母、ティファニーが居ない日は外で遊べる日。
そう知っているリリーフィアは、嬉しそうにベットから飛び降りた。
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