美しき終末歌集

ゆみず

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輝魚

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 そらを泳ぐ…否、宇宙そらを泳ぐその「魚」の姿を見れば、今この世に何が起こっているのかは一目瞭然であった。
 満点の星空。雲は一つとしてない。風も吹いておらず、月も出ていない。そして、草木はなく、人間もおらず、あるのは荒廃した大地だけであった。


宇宙を泳いでいる「魚」は、本当に魚だった。しかし、「魚」に目はなく、見えるのは神々しいまでの光を放ったシルエットだけだった。
 夜空のまんてんの星空。万点まんてんあって100点まんてんの星空。その星たちは、まるで滑らかに宇宙を泳いでいるその「魚」の鱗のようにも見えた。「魚」が放つその光は、周りを昼間太陽のように照らすことはなく、輝きは月光を思わせるように静かに、それでいて激しく地上に降り注いでいた。
 見惚れていたわけではない。魚は確かに宇宙を泳いでいるのだが、それが視界から消えることはなかった。視界の半分をも埋め尽くすような大きな魚。しかしその輝きは優しく、この世界を包み込んでいる。またそれに続く稚魚達は、喜ぶように輝いている。
しかしそれ以上に、夜が世界を包み込む。むしろその中でこそ魚の光が輝くように。

 「魚」は動きを早めた。その光は残像を成して、宇宙に光る航跡波を描いた。稚魚達がまた生まれ、まばゆい光を放った。「魚」は背を向けて動きを早めて遠ざかってゆく。しかしその時間はあまりにもゆっくりに感じられた。まるで今までの人生を回顧させられるかのように。そして煌魚は残り灯を残して去っていった。
しかし「魚」の残した光は永遠に残り続けた。この夜の世界を夜だと存在証明するかのように。「魚」の輪郭は未だに見える。視界も永遠にそこから目を離すことはなかった。ただひたすらに光を見続け、稚魚の成長に想いを寄せていた。


 刹那、闇に包まれた。
しかし光は、
私の中にいた。
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