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第三十二話 『お前は……オイディプス・マカオン・アンギティア……』
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頭の中で監視スキルの声が響き、虫除け結界が発動された。 カラトスの罠は爆破魔法だった様だ。
優斗たちは、結界のお陰で飛び込んだ大木のウロだけが残り、無傷だった。
光と全ての轟音が止み、静寂が訪れた後、結界が解除されて優斗たちは大木のウロから出た。 周辺の様子を見渡し、優斗たちの表情が曇った。 愕然とする優斗と華、後から出て来た戦士隊の2人も愕然とした表情をしていた。
ドリュアス跡地を中心として、周囲の森や生い茂った草花、木々が全て薙ぎ倒されていた。
「華、大丈夫か? 何処も怪我してないっ?」
「うん、大丈夫……すごいね、これ……」
「……っ」
濛々と土煙が上がっている周囲の状況に唖然と呟く優斗と華、戦士隊の2人は言葉も出ない様だった。
「ああ……大掛かりなミステリーサークルみたいだなっ」
「……っうん……仁奈たちは無事かな……」
ドリュアス跡地の周囲を見回し、目視で瑠衣たちを探す。 戦士隊の2人は、優斗と華の声で我に返った後、隊服の懐から通信機を取り出していた。
通信機からクリストフの声が聴こえたと同時に、優斗の耳元でトプンと水音が落ちる。
優斗の魔力が周囲に拡がると、通信機からクリストフの声が聴こえた事で、皆が無事だと分かり、瑠衣たちの魔力を感じ取る事が出来た。 優斗も瑠衣たちが居るであろう方向に視線を向ける。
『こっちは問題ない、そっちはどうだ?』
「こちらも問題ありません。 まだ、煙と砂埃が酷くて、視界はぼやけていますがっ」
『分かったっ。 ……っ』
何かが遭ったのか、クリストフの声が途切れた後、瑠衣たちが向かった方向で大きな音が鳴り響いた。 間違いでなければ、濁流に似た音が何かにぶつかる音だった。
瑠衣たちの魔力の他にカラトスの魔法の気配を感じる。 しかし、カラトス本体の魔力は感じなかった。
優斗の白銀の瞳が歪む。 戦士隊の2人から動揺が広がった。
「……っく、カラトスは副隊長の方へ行ったようだ。 俺たちも応戦するぞ」
戦士隊の2人が駆け出しそうとしたところで、監視スキルの警報がなった。
『ユウト、新手だ! カラトスじゃない奴だっ! 微かに魔力の揺らぎあったっ! 攻撃が来るっ!』
「2人共っ、待ってくだっ」
優斗が言い切る前に戦士隊の駆け出した先に、黒い人影がぼやけて見えた。
「駄目だっ! 2人とも避けてっ!」
溢れ出る魔力と風圧だけで、優斗たちは後方へ吹き飛ばされていく。 戦士隊の2人はまともに食らい、草地に転がった。
優斗は華を抱きかかえ、庇いながらフィルとフィンも一緒に後方へ飛んだ。
頭の中で監視スキルの信じられないと言う声が響いた。
『こいつらっ、検索にかからない。 敵認定しても感知できないっなんてっ』
吹き飛ばされながら、優斗の脳内で立体型の地図が拡がる。 優斗と華の人型の表示だけが示され、青く点滅しながら、もの凄い速度で後方に移動していた。
優斗の視線の先に居るはずの黒い人影の表示はされていなかった。
「確かに、敵認定したんだな?」
『うん、今の状況だと、ルイたちの所にカラトスが居るはずだけど、カラトスも感知できない。 魔法の気配はするけどね。 感知妨害の魔法か何かを使っているんだよっ』
(俺の魔力感知にも反応なかったし……警戒してたのにっ)
一陣の風が吹き、舞い上がっていた土埃が治まり、視界が晴れて黒い人影の姿形が露わになった。
草木と土が舞い上がり、緑と土臭い香りが鼻を突く。 ドリュアス跡地周辺をはっきりと視界に捉えた。
優斗の瞳が細められる。
薙ぎ倒された大量の大木を背に、嫌な笑みを浮かべて黒装束の男が立っていた。
優斗は会った事がないエルフだった。
黒装束を着た容姿は、まるで忍者の様だった。 自身が誰なのかを見せつけるように、男は黒いフードを取る。 男は口元に薄い笑みを浮かべていた。
直ぐ後ろで『あれ?』と華の声が耳に届いた。
「あの、黒装束……子供の頃に、私が作った防具だわっ!」
「「「えっ!」」」
優斗とフィル、フィンは揃えて間抜けな声を出した。 華はポカンと口を開けて黒装束のエルフを見つめている。
戦士隊の2人も『ああ、そう言えば』と何かを思い出しのか、遠い目をしていた。
華が言うには、12歳以前に、知り合いのエルフにインスピレーションを感じて、余り布を使い、手縫いで黒装束を何組か制作したそうだ。
優斗は華に恐る恐る訊いてみた。
「……もしかして、認識阻害とか……感知不能とかの能力付けた?」
「ううん、そんなの付けてないよ。 その頃は、そこまで能力が無かったはずっ……でも、強化魔法とかは付けたかも……昔の事だし、勢いで作った覚えがっ……」
「そうか……」
華は思いっきり顔を横に振った後、眉を下げて暗い表情を浮かべた。 誰に黒装束を作ったかは分かっているだろうから、襲撃の犯人が華には分かったのだろう。
(華じゃないなら……後付けしたのかもな)
『だね』
戦士隊の2人は、華が誰に黒装束を作っていたか思い出して『信じられない』と、驚きの表情を浮かべていた。 黒装束の男は目深に黒いフードをかぶり直し、怪しい光を瞳に宿す。
「……っまさか、しかし、それなら本部はっ」
「お前は……オイディプス・マカオン・アンギティア……」
戦士隊の呟きを聞き、口元に歪な笑みを浮かべると、背中に背負っている剣を取り出した。 身体から武器を取り出さなかった所を見ると、彼は戦士ではない様だ。
「おぼえられないね、なまえ」
ボソッとフィルの声が頭の上から落ちて来た。 後ろで強くフィンを抱きかかえた華の表情が陰る。 フィンも心配気に華を見上げている様子が、優斗の脳内のモニター画面に映し出された。
「確か、彼はディプスって呼ばれてた。 従弟のティオスの幼馴染だったと思う。 彼は術者の名門アンギディア家の次男で、術者として目覚めたって聞いてたんだけど……」
フィルの呟きに華が答えた。 華の表情は暗いままだ。
「次期里長っ! エレクトラアハナ様を連れて逃げてくれっ! 奴は術者だが、あの様子だと悪魔を取り込んでいるはずっ。 あいつの魔法はっ」
戦士隊が言い切る前に地面が揺れ、大量の土が持ち上がっていく。 ハッとして優斗たちは、ディプスの方へ振り返った。
ディプスの周囲で、拳大の大量の土の飛礫が浮いていた。
ディプスが剣を振り下ろすと、大量の土の飛礫が優斗たちに放たれた。
◇
一方、瑠衣たちの方もカラトスから攻撃を受けていた。 視界を塞ぐ煙が漂う中、突然、黒い水竜が襲い掛かってきた。
轟音と水竜の形をした濁流が目の前に迫る。
仁奈と風神を背に庇う瑠衣の前にクリストフが立ち塞がり、6本の爪に魔力を纏う。 クリストフから魔力が溢れ出す風圧だけで、黒い水竜を吹き飛ばしてしまった。
クリストフは、目の前で僅かに瞳を見開いたカラトスを睨みつけていた。
黒装束を見たクリストフは、眉間に皺を寄せている。 一瞬だけクリストフの身体が硬直した様に見えた。 黒装束に何かあるのかと、瑠衣はクリストフの様子で直ぐに分かった。
「おいっ、あんたっ!」
「クリストフって呼べよ、ルイ坊。 あぁ、それか、トウフでもいいぞ」
ムッとした表情をした瑠衣は、じっとカラトスを見つめた。 悠長にしている間は無く、カラトスの攻撃が直ぐに放たれる。
瑠衣の後ろで仁奈を庇っている風神の声が頭の中で響く。
『主、あの黒装束には、魔力感知を防御する魔法が掛けられている。 しかも、僅かだがハナの魔力も感じるぞ』
(何だってっ、華ちゃんの魔力がっ? という事は、あの忍者の装束は華ちゃんが作ったって事か……まぁ、華ちゃんらしいけどっ)
『ああ、そういう事になるな』
「ルイっ! あの黒装束は、エレクトラアハナ様が幼少期に作った代物だ。 作った相手も知っているっ」
「隊長」
憤りを感じたようにクリストフが叫び、戦士隊が悲哀の混じる声を出した。
突然、戦士隊と頷き合ったクリストフが瑠衣と風神が会話していた内容の事を話しだした。 顎に手を当てて考え込むクリストフは、戦士隊に指示を出した。
「お前は、本部へ飛べ。 この事を秘密裏に里長へ報告するんだ。 もしかしたら、もう遅いかもしれんがっ……お前も気を付けろ。 駄目な時は迷わず撤退しろ、何としても次期里長を守る為にも俺たちと合流しろっ」
「了解しましたっ、では、ご武運を」
戦士隊が悔しそうな表情を浮かべたが、転移魔法で転移して行った。 クリストフは瑠衣と向き合うと、真剣な表情で瑠衣に話しかけて来た。
「もしかしたら、もう本部は襲撃の首謀者に乗っ取られている可能性がある」
「えっ、それはどう言う事だ?」
クリストフの返事は無かった。
カラトスからの次の攻撃が襲って来たからだ。 瑠衣は風神に首根っこを噛まれ、立っていた場所から飛び退いた。
背中には仁奈が乗っていた。 同時にクリストフも違う方向へ飛び退いた。
瑠衣たちが居た場所に黒い水刃が突き刺さり、草地を抉っていく。
『油断するな、主。 いついかなる時も周囲の警戒を怠るな』
(うっ、わりぃ、風神。 助かったっ)
「瑠衣っ! 大丈夫?!」
「ああ、大丈夫だっ」
風神に騎乗していた仁奈の声が落ちて来る。 草地に転がって着地した瑠衣は、カラトスを見つめる。 離れた場所でクリストフが爪を構えた気配を感じる。
(くそっ、首謀者って誰だよっ)
次なる攻撃の為に、カラトスの手が振り上げられる。 瑠衣は反射的に自身のショートボウガンを構えた。 風神の馬上で仁奈の竪琴が鳴らされる。
◇
草地に大量の土魔法の飛礫が降り注ぐ。
華の虫除け結界が発動し、光の粒が煌めきながら、球体の結界を作り出していく。
結界に弾かれて土魔法の飛礫が消し飛ばされていく音が鳴り響いた。
華には、念の為にフィンの中にも入ってもらう。 必ず、守るつもりでいる優斗だが、もしもの事があれば、華だけで逃げ出せるように準備をしておく。
「土魔法かっ」
「はい、しかし、彼の魔法はここまで強くないのですがっ」
「……っ悪魔のお陰ってやつかっ」
「……ディプスっ」
戦士隊の2人が無言で頷いた。
華はフィンの中で不安な表情を浮かべていた。 ディプスの攻撃は止む事無く続いている。
「首謀者が誰か教えてくれますか?」
「首謀者は、恐らく、イグナティオス・テラ・ファウヌス様です」
「え、えと、イグナス……ティオス……」
「イグナティオス・テラ・ファウヌス様です」
「その人は……」
「私の従弟なの」
「華……従弟って……」
無言で頷いた華は、悲痛な面持ちだ。
話によると、ティオスは術者の名家ファウヌス家の三男、第5夫人の子だ。
父親同士が兄弟で、弟がファウヌス家の婿に入ったらしい。
秘術に目覚めたティオスだが、家を継げないらしい。 能力で言えば、華の方が格上なので、里長にもなれない。
次点のティオスは、華に何かあった時の為に本部で留め置きの状態になるのだと。
ティオスは秘術に目覚め、華とは一緒に幼い頃から修行や勉強をし、遊んでいた従弟だ。 姉弟の様に育ったのだという。
一緒に寝食を共にしていて、ティオスも華に懐いていた様だ。
「とても仲の良いお二人でしたね」
戦士隊がうんうんと頷くそばで、『ふ~ん』と感情の籠っていない声を出した優斗の周囲から、冷気が溢れ出していく。
身体を震わせ、華と戦士隊の2人は背筋を伸ばした。 何故、周囲の空気が冷たくなったのか、戦士隊の2人は周囲を見回しているが、華は焦った表情で優斗を見た。
フィルとフィンの呆れた冷たい視線が優斗に突き刺さる。
(気にしない。 気に入らないものは、気に入らないからな)
『あんまり、冷気を漏らさないでね。 虫除けスプレーが漏れるから』
(分かってる)
華の伺うような視線を感じるが、笑顔で話の先を促した。
「あ、あの、でも、何故か12歳を境にあまりティオス……従弟とは遊ばなくなったんだけどね」
「そう言えば、その頃からですね。 ティオス様が熱心に何かをお調べになり、部屋で籠るようになったのは」
「まさか……悪魔を取り込む方法を考えていたとか……」
「その辺で、ティオス様に何かあった?……」
『なるほど、12歳前後で部屋に籠る何かがあったんだね』
呑気に会話している間にもディプスの攻撃があったが、結界を全く壊せない事にディプスが切れてしまった。 ディプスの魔力を込めた怒鳴り声が周囲に響いた。
「おいっ!! お前らっ! いつまでも結界の中で隠れているつもりだっ! 正々堂々と戦えっ!」
土魔法の飛礫攻撃が止み、優斗たちはディプスの方へ視線を向けた。
「その答えを出す前に、奴を倒さないといけないな」
戦士隊の2人も頷き、華には結界の中でじっとしていてもらう事にした。
今世の華は、前世で使っていた魔道具を持っていない。 グラディアス家が持たせてくれなかったのだとか。
(華なら隠し持ってそうだけど……)
「ハナはじっとしていてね。 ハナのしごとは、いざというときに、あしでまといにならないように、にげだすことよ」
華はフィンに諭され、悔しそうに言葉を詰まらせた。 華は前世の時から、自身が足手まといになる事をとても嫌がっていた。
優斗と戦士隊の2人は結界から飛び出して、ディプスと対峙した。
◇
やっと出来た優斗と戦士隊の2人に厭味を含んだような笑みを浮かべるディプス。
次期里長だと言われる優斗に、ディプスは不快感でいっぱいだった。 ティオスの話によると、エレクトラアハナは優斗に騙されているのだと言う。
(こいつがエレクトラアハナ様を騙している奴かっ。 見た目はエルフにしては普通だな、ティオスの方が美男だ。 『エキゾチックな雰囲気が素敵だ』と、そこそこ女性に人気があるようだが……。 エルフは見た目よりも能力が全てだっ! 無能は要らんっ!)
ディプスの手の中で土魔法が作り出されていく。 優斗たちの白銀の瞳に自身の土の剣が映し出されると、ディプスは不敵に嗤った。
(驚けばいいっ! 俺は術者になどなりたくなかったっ。 だから、密かに剣術を磨いてきたんだ)
土の剣が作り出され、構えると同時に優斗へ攻撃を仕掛ける。 振り上げた剣は、優斗の木製短刀でガードされた。
魔力で強化しているのか、とても硬くて折れる様子はなかった。
舌打ちを零し、左右を盗み見ると、戦士隊が突っ込んでくる所だった。 優斗と戦士隊の2人から距離を取る為に後方へ飛ぶ。 ディプスの頭の中で、低くて禍々しい声が聴こえる。
『おい、手伝ってやろうか? 俺様が代わりにこいつらを殺してやるぞ』
「うるせぇ、黙ってろっ! お前は俺に力を貸すだけでいいんだよ!」
優斗と戦士隊の2人の動きが止まった。
土の剣を薙ぎ払うと、黒いオーラを纏わせる。 身体の中から、悪魔の力がみなぎって来る。 ディプスの全身から、黒いオーラが染み出して溢れ出た。
「俺がエレクトラアハナ様を誑かしているこいつを殺して、ティオスに褒めてもらうんだからなっ!」
ディプスを見つめて来る優斗の白銀の瞳が鋭く光ったのを見て、胸の奥から沸き上がって来る感情が何なのか分からないが、とても高揚した。 今まで感じた事のない感情胸の奥で灯ったのをディプスは不思議に感じていた。
後でカラトスに指摘され、好敵手に出会って心が喜んだのだと分かった。
優斗たちは、結界のお陰で飛び込んだ大木のウロだけが残り、無傷だった。
光と全ての轟音が止み、静寂が訪れた後、結界が解除されて優斗たちは大木のウロから出た。 周辺の様子を見渡し、優斗たちの表情が曇った。 愕然とする優斗と華、後から出て来た戦士隊の2人も愕然とした表情をしていた。
ドリュアス跡地を中心として、周囲の森や生い茂った草花、木々が全て薙ぎ倒されていた。
「華、大丈夫か? 何処も怪我してないっ?」
「うん、大丈夫……すごいね、これ……」
「……っ」
濛々と土煙が上がっている周囲の状況に唖然と呟く優斗と華、戦士隊の2人は言葉も出ない様だった。
「ああ……大掛かりなミステリーサークルみたいだなっ」
「……っうん……仁奈たちは無事かな……」
ドリュアス跡地の周囲を見回し、目視で瑠衣たちを探す。 戦士隊の2人は、優斗と華の声で我に返った後、隊服の懐から通信機を取り出していた。
通信機からクリストフの声が聴こえたと同時に、優斗の耳元でトプンと水音が落ちる。
優斗の魔力が周囲に拡がると、通信機からクリストフの声が聴こえた事で、皆が無事だと分かり、瑠衣たちの魔力を感じ取る事が出来た。 優斗も瑠衣たちが居るであろう方向に視線を向ける。
『こっちは問題ない、そっちはどうだ?』
「こちらも問題ありません。 まだ、煙と砂埃が酷くて、視界はぼやけていますがっ」
『分かったっ。 ……っ』
何かが遭ったのか、クリストフの声が途切れた後、瑠衣たちが向かった方向で大きな音が鳴り響いた。 間違いでなければ、濁流に似た音が何かにぶつかる音だった。
瑠衣たちの魔力の他にカラトスの魔法の気配を感じる。 しかし、カラトス本体の魔力は感じなかった。
優斗の白銀の瞳が歪む。 戦士隊の2人から動揺が広がった。
「……っく、カラトスは副隊長の方へ行ったようだ。 俺たちも応戦するぞ」
戦士隊の2人が駆け出しそうとしたところで、監視スキルの警報がなった。
『ユウト、新手だ! カラトスじゃない奴だっ! 微かに魔力の揺らぎあったっ! 攻撃が来るっ!』
「2人共っ、待ってくだっ」
優斗が言い切る前に戦士隊の駆け出した先に、黒い人影がぼやけて見えた。
「駄目だっ! 2人とも避けてっ!」
溢れ出る魔力と風圧だけで、優斗たちは後方へ吹き飛ばされていく。 戦士隊の2人はまともに食らい、草地に転がった。
優斗は華を抱きかかえ、庇いながらフィルとフィンも一緒に後方へ飛んだ。
頭の中で監視スキルの信じられないと言う声が響いた。
『こいつらっ、検索にかからない。 敵認定しても感知できないっなんてっ』
吹き飛ばされながら、優斗の脳内で立体型の地図が拡がる。 優斗と華の人型の表示だけが示され、青く点滅しながら、もの凄い速度で後方に移動していた。
優斗の視線の先に居るはずの黒い人影の表示はされていなかった。
「確かに、敵認定したんだな?」
『うん、今の状況だと、ルイたちの所にカラトスが居るはずだけど、カラトスも感知できない。 魔法の気配はするけどね。 感知妨害の魔法か何かを使っているんだよっ』
(俺の魔力感知にも反応なかったし……警戒してたのにっ)
一陣の風が吹き、舞い上がっていた土埃が治まり、視界が晴れて黒い人影の姿形が露わになった。
草木と土が舞い上がり、緑と土臭い香りが鼻を突く。 ドリュアス跡地周辺をはっきりと視界に捉えた。
優斗の瞳が細められる。
薙ぎ倒された大量の大木を背に、嫌な笑みを浮かべて黒装束の男が立っていた。
優斗は会った事がないエルフだった。
黒装束を着た容姿は、まるで忍者の様だった。 自身が誰なのかを見せつけるように、男は黒いフードを取る。 男は口元に薄い笑みを浮かべていた。
直ぐ後ろで『あれ?』と華の声が耳に届いた。
「あの、黒装束……子供の頃に、私が作った防具だわっ!」
「「「えっ!」」」
優斗とフィル、フィンは揃えて間抜けな声を出した。 華はポカンと口を開けて黒装束のエルフを見つめている。
戦士隊の2人も『ああ、そう言えば』と何かを思い出しのか、遠い目をしていた。
華が言うには、12歳以前に、知り合いのエルフにインスピレーションを感じて、余り布を使い、手縫いで黒装束を何組か制作したそうだ。
優斗は華に恐る恐る訊いてみた。
「……もしかして、認識阻害とか……感知不能とかの能力付けた?」
「ううん、そんなの付けてないよ。 その頃は、そこまで能力が無かったはずっ……でも、強化魔法とかは付けたかも……昔の事だし、勢いで作った覚えがっ……」
「そうか……」
華は思いっきり顔を横に振った後、眉を下げて暗い表情を浮かべた。 誰に黒装束を作ったかは分かっているだろうから、襲撃の犯人が華には分かったのだろう。
(華じゃないなら……後付けしたのかもな)
『だね』
戦士隊の2人は、華が誰に黒装束を作っていたか思い出して『信じられない』と、驚きの表情を浮かべていた。 黒装束の男は目深に黒いフードをかぶり直し、怪しい光を瞳に宿す。
「……っまさか、しかし、それなら本部はっ」
「お前は……オイディプス・マカオン・アンギティア……」
戦士隊の呟きを聞き、口元に歪な笑みを浮かべると、背中に背負っている剣を取り出した。 身体から武器を取り出さなかった所を見ると、彼は戦士ではない様だ。
「おぼえられないね、なまえ」
ボソッとフィルの声が頭の上から落ちて来た。 後ろで強くフィンを抱きかかえた華の表情が陰る。 フィンも心配気に華を見上げている様子が、優斗の脳内のモニター画面に映し出された。
「確か、彼はディプスって呼ばれてた。 従弟のティオスの幼馴染だったと思う。 彼は術者の名門アンギディア家の次男で、術者として目覚めたって聞いてたんだけど……」
フィルの呟きに華が答えた。 華の表情は暗いままだ。
「次期里長っ! エレクトラアハナ様を連れて逃げてくれっ! 奴は術者だが、あの様子だと悪魔を取り込んでいるはずっ。 あいつの魔法はっ」
戦士隊が言い切る前に地面が揺れ、大量の土が持ち上がっていく。 ハッとして優斗たちは、ディプスの方へ振り返った。
ディプスの周囲で、拳大の大量の土の飛礫が浮いていた。
ディプスが剣を振り下ろすと、大量の土の飛礫が優斗たちに放たれた。
◇
一方、瑠衣たちの方もカラトスから攻撃を受けていた。 視界を塞ぐ煙が漂う中、突然、黒い水竜が襲い掛かってきた。
轟音と水竜の形をした濁流が目の前に迫る。
仁奈と風神を背に庇う瑠衣の前にクリストフが立ち塞がり、6本の爪に魔力を纏う。 クリストフから魔力が溢れ出す風圧だけで、黒い水竜を吹き飛ばしてしまった。
クリストフは、目の前で僅かに瞳を見開いたカラトスを睨みつけていた。
黒装束を見たクリストフは、眉間に皺を寄せている。 一瞬だけクリストフの身体が硬直した様に見えた。 黒装束に何かあるのかと、瑠衣はクリストフの様子で直ぐに分かった。
「おいっ、あんたっ!」
「クリストフって呼べよ、ルイ坊。 あぁ、それか、トウフでもいいぞ」
ムッとした表情をした瑠衣は、じっとカラトスを見つめた。 悠長にしている間は無く、カラトスの攻撃が直ぐに放たれる。
瑠衣の後ろで仁奈を庇っている風神の声が頭の中で響く。
『主、あの黒装束には、魔力感知を防御する魔法が掛けられている。 しかも、僅かだがハナの魔力も感じるぞ』
(何だってっ、華ちゃんの魔力がっ? という事は、あの忍者の装束は華ちゃんが作ったって事か……まぁ、華ちゃんらしいけどっ)
『ああ、そういう事になるな』
「ルイっ! あの黒装束は、エレクトラアハナ様が幼少期に作った代物だ。 作った相手も知っているっ」
「隊長」
憤りを感じたようにクリストフが叫び、戦士隊が悲哀の混じる声を出した。
突然、戦士隊と頷き合ったクリストフが瑠衣と風神が会話していた内容の事を話しだした。 顎に手を当てて考え込むクリストフは、戦士隊に指示を出した。
「お前は、本部へ飛べ。 この事を秘密裏に里長へ報告するんだ。 もしかしたら、もう遅いかもしれんがっ……お前も気を付けろ。 駄目な時は迷わず撤退しろ、何としても次期里長を守る為にも俺たちと合流しろっ」
「了解しましたっ、では、ご武運を」
戦士隊が悔しそうな表情を浮かべたが、転移魔法で転移して行った。 クリストフは瑠衣と向き合うと、真剣な表情で瑠衣に話しかけて来た。
「もしかしたら、もう本部は襲撃の首謀者に乗っ取られている可能性がある」
「えっ、それはどう言う事だ?」
クリストフの返事は無かった。
カラトスからの次の攻撃が襲って来たからだ。 瑠衣は風神に首根っこを噛まれ、立っていた場所から飛び退いた。
背中には仁奈が乗っていた。 同時にクリストフも違う方向へ飛び退いた。
瑠衣たちが居た場所に黒い水刃が突き刺さり、草地を抉っていく。
『油断するな、主。 いついかなる時も周囲の警戒を怠るな』
(うっ、わりぃ、風神。 助かったっ)
「瑠衣っ! 大丈夫?!」
「ああ、大丈夫だっ」
風神に騎乗していた仁奈の声が落ちて来る。 草地に転がって着地した瑠衣は、カラトスを見つめる。 離れた場所でクリストフが爪を構えた気配を感じる。
(くそっ、首謀者って誰だよっ)
次なる攻撃の為に、カラトスの手が振り上げられる。 瑠衣は反射的に自身のショートボウガンを構えた。 風神の馬上で仁奈の竪琴が鳴らされる。
◇
草地に大量の土魔法の飛礫が降り注ぐ。
華の虫除け結界が発動し、光の粒が煌めきながら、球体の結界を作り出していく。
結界に弾かれて土魔法の飛礫が消し飛ばされていく音が鳴り響いた。
華には、念の為にフィンの中にも入ってもらう。 必ず、守るつもりでいる優斗だが、もしもの事があれば、華だけで逃げ出せるように準備をしておく。
「土魔法かっ」
「はい、しかし、彼の魔法はここまで強くないのですがっ」
「……っ悪魔のお陰ってやつかっ」
「……ディプスっ」
戦士隊の2人が無言で頷いた。
華はフィンの中で不安な表情を浮かべていた。 ディプスの攻撃は止む事無く続いている。
「首謀者が誰か教えてくれますか?」
「首謀者は、恐らく、イグナティオス・テラ・ファウヌス様です」
「え、えと、イグナス……ティオス……」
「イグナティオス・テラ・ファウヌス様です」
「その人は……」
「私の従弟なの」
「華……従弟って……」
無言で頷いた華は、悲痛な面持ちだ。
話によると、ティオスは術者の名家ファウヌス家の三男、第5夫人の子だ。
父親同士が兄弟で、弟がファウヌス家の婿に入ったらしい。
秘術に目覚めたティオスだが、家を継げないらしい。 能力で言えば、華の方が格上なので、里長にもなれない。
次点のティオスは、華に何かあった時の為に本部で留め置きの状態になるのだと。
ティオスは秘術に目覚め、華とは一緒に幼い頃から修行や勉強をし、遊んでいた従弟だ。 姉弟の様に育ったのだという。
一緒に寝食を共にしていて、ティオスも華に懐いていた様だ。
「とても仲の良いお二人でしたね」
戦士隊がうんうんと頷くそばで、『ふ~ん』と感情の籠っていない声を出した優斗の周囲から、冷気が溢れ出していく。
身体を震わせ、華と戦士隊の2人は背筋を伸ばした。 何故、周囲の空気が冷たくなったのか、戦士隊の2人は周囲を見回しているが、華は焦った表情で優斗を見た。
フィルとフィンの呆れた冷たい視線が優斗に突き刺さる。
(気にしない。 気に入らないものは、気に入らないからな)
『あんまり、冷気を漏らさないでね。 虫除けスプレーが漏れるから』
(分かってる)
華の伺うような視線を感じるが、笑顔で話の先を促した。
「あ、あの、でも、何故か12歳を境にあまりティオス……従弟とは遊ばなくなったんだけどね」
「そう言えば、その頃からですね。 ティオス様が熱心に何かをお調べになり、部屋で籠るようになったのは」
「まさか……悪魔を取り込む方法を考えていたとか……」
「その辺で、ティオス様に何かあった?……」
『なるほど、12歳前後で部屋に籠る何かがあったんだね』
呑気に会話している間にもディプスの攻撃があったが、結界を全く壊せない事にディプスが切れてしまった。 ディプスの魔力を込めた怒鳴り声が周囲に響いた。
「おいっ!! お前らっ! いつまでも結界の中で隠れているつもりだっ! 正々堂々と戦えっ!」
土魔法の飛礫攻撃が止み、優斗たちはディプスの方へ視線を向けた。
「その答えを出す前に、奴を倒さないといけないな」
戦士隊の2人も頷き、華には結界の中でじっとしていてもらう事にした。
今世の華は、前世で使っていた魔道具を持っていない。 グラディアス家が持たせてくれなかったのだとか。
(華なら隠し持ってそうだけど……)
「ハナはじっとしていてね。 ハナのしごとは、いざというときに、あしでまといにならないように、にげだすことよ」
華はフィンに諭され、悔しそうに言葉を詰まらせた。 華は前世の時から、自身が足手まといになる事をとても嫌がっていた。
優斗と戦士隊の2人は結界から飛び出して、ディプスと対峙した。
◇
やっと出来た優斗と戦士隊の2人に厭味を含んだような笑みを浮かべるディプス。
次期里長だと言われる優斗に、ディプスは不快感でいっぱいだった。 ティオスの話によると、エレクトラアハナは優斗に騙されているのだと言う。
(こいつがエレクトラアハナ様を騙している奴かっ。 見た目はエルフにしては普通だな、ティオスの方が美男だ。 『エキゾチックな雰囲気が素敵だ』と、そこそこ女性に人気があるようだが……。 エルフは見た目よりも能力が全てだっ! 無能は要らんっ!)
ディプスの手の中で土魔法が作り出されていく。 優斗たちの白銀の瞳に自身の土の剣が映し出されると、ディプスは不敵に嗤った。
(驚けばいいっ! 俺は術者になどなりたくなかったっ。 だから、密かに剣術を磨いてきたんだ)
土の剣が作り出され、構えると同時に優斗へ攻撃を仕掛ける。 振り上げた剣は、優斗の木製短刀でガードされた。
魔力で強化しているのか、とても硬くて折れる様子はなかった。
舌打ちを零し、左右を盗み見ると、戦士隊が突っ込んでくる所だった。 優斗と戦士隊の2人から距離を取る為に後方へ飛ぶ。 ディプスの頭の中で、低くて禍々しい声が聴こえる。
『おい、手伝ってやろうか? 俺様が代わりにこいつらを殺してやるぞ』
「うるせぇ、黙ってろっ! お前は俺に力を貸すだけでいいんだよ!」
優斗と戦士隊の2人の動きが止まった。
土の剣を薙ぎ払うと、黒いオーラを纏わせる。 身体の中から、悪魔の力がみなぎって来る。 ディプスの全身から、黒いオーラが染み出して溢れ出た。
「俺がエレクトラアハナ様を誑かしているこいつを殺して、ティオスに褒めてもらうんだからなっ!」
ディプスを見つめて来る優斗の白銀の瞳が鋭く光ったのを見て、胸の奥から沸き上がって来る感情が何なのか分からないが、とても高揚した。 今まで感じた事のない感情胸の奥で灯ったのをディプスは不思議に感じていた。
後でカラトスに指摘され、好敵手に出会って心が喜んだのだと分かった。
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