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第十話 『始まったブートキャンプ』
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オースターの中央広場では、新成人たちが集まり、見送りの家族たちやオースターのエルフたちが集まっていて、少しざわついていた。
集まった人々の中に、二人だけ違う服装の若者がいた。 優斗たちより少し年上に見える。 白銀の戦士服を身に纏った青年と女性だ。 隊服はフード付きのマント、昔、映画で見たアサシンの衣装に似ていた。 集まって来た人々に向かい合い、青年の方が口を開いた。
「ブートキャンプに参加する者は、こちらへ集まってくれ。 夕方までにキャンプ場へ着きたい、直ぐに出発する」
青年の声には、魔力が込められているのか、普通の声量なのに、広場全体へ青年の声が響いていた。 ブートキャンプへ参加する若者たちが、戦士隊がいる場所へ近づいていく。 優斗たちも若者に混じって戦士隊の元へと近づいた。 若者たちの中には、エカテリーニの姿もあった。
久しぶりに会う彼女は、優斗と視線が合うと、不機嫌な表情で視線を逸らした。
「……」
(機嫌悪っ。 これは、凄い面倒な事になりそうなっ……)
「ここからは徒歩でキャンプ場へ向かう。 皆、逸れないようについて来い。 私は今日から一月の間、君たちの指導官だ。 キャンプ場までしんがりを務める。 彼女が先頭で君たちの前を行く。 君たちは列を乱さず、先行せずに歩け」
最後の1人が到着すると、青年と女性は頷き合う。 女性が先行して歩き、少し距離を離してブートキャンプ参加者たちが歩き出した。 優斗たちも列の中ほどの位置で出発した。
◇
森の中で複数の草地を踏みしめる足音と、数頭の蹄の足音が小さく鳴る。
深い緑の匂い、複数の荒い息遣い、時折、一角馬の嘶きが聞こえて来る。 遠くでこちらを伺っている動物の気配がする。
深い緑の匂いの中、目の前で拡がる大自然に優斗の脳裏で昔の事が思い浮かぶ。
風神を挟み瑠衣と仁奈が左右で、前で優斗が進んで固まって歩いた。 最初は軽やかだった足取りも、徐々に疲労が出て来たのか、息づかいが荒くなって足取りも重くなる。 私語は禁止され、18人の人間と数頭の一角馬が黙って歩く様は、中々にシュールだ。
(もっと喋りながら、楽しく移動するものだと思ってたんだけど……)
優斗は、前世であった小学校の行事、『歩こう会』を思い出していた。
学校近くの山のハイキングコースを歩く遠足を、優斗と瑠衣が通っていた小学校では『歩こう会』と呼んでいた。 ハイキングコースだったが、『歩こう会』も小学生の優斗には厳しかったのを思い出した。
それでも、楽しかった事を覚えている。
次いで思い出されたのがエーリスの狩人たちと行った狩りだ。 狩でも小声ではあったが、少しくらい会話があった。
踏みしめられた草地を歩き、歪に並んだ大木を見上げる。
(木の枝を移動した方が早く着くんじゃっ。 いや、大人数で木の枝を移動するのは、返ってお互いが邪魔になるか)
「新成人、そこの大木の根元で15分の休憩だ」
しんがりを務めている戦士隊から声がかかった。 随分と後ろの方で声がするのに、前方の方まではっきりと声が聞こえてくる。 声に魔力を込めて話している様だ。 新成人たちは自然と知りあい同士が固まって休憩をしていた。
優斗たちは、皆から少し離れた場所で休憩を取る事にした。
腰元の水袋を外して、瑠衣が風神に水を飲ませている横で、仁奈はさっそく砂糖漬けのナツメグを頬張っていた。
優斗も風神に近づき、背を撫でながら瑠衣に声を掛ける。
「今、何時だろ? 半分くらい来たかな?」
「だな。 半分来たところで休憩するって言ってたしな。 時計がないの不便だよな」
「うん、エルフは時間なんて気にしないからな」
優斗も腰に引っ掛けた水袋を口に含み、喉を鳴らし一気に水を流し込んだ。
一息ついた所で厳しい視線を感じ、周囲を見回した。 優斗の視線の先で、睨みつけてくるエカテリーニが立っていた。
エカテリーニは白銀の髪を肩まで伸ばし、細身で瞳の大きな美少女だ。
エルフは美男美女しかいない。 美女が多い中で、エカテリーニの美貌は際立っている。 優斗たちはアジア顔なので美男美女のエルフの中では、埋もれてしまうのは否めない。 徐々にエカテリーニの表情が険しくなっていく。 エカテリー二の視線が優斗を外れた所で止まる。
頬が引き攣り、優斗の顔色が徐々に悪くなっていく。
(さっきよりも更に機嫌が悪くなってるっ)
「あのエカテリーニって子、こっちをすっごい睨んで来るんだけどっ……まさかとは思うんだけど、私とあんたの事、変な誤解してるんじゃないよねぇ」
エカテリーニの形相に仁奈も恐れ戦いている。 『美女は怒ると迫力あるな』と瑠衣は呑気な事を言っていた。 他人事だと思って内心で面白がっているに違いない。
鞄が歪な形を作り、凸凹が出来る。
鞄を開けて顔を出しやすく広げると、フィルが顔を出して丸い目を細めてじっとエカテリーニを見つめていた。 優斗が水袋をフィルの口元へ持っていくと、フィルは喉を鳴らして水を飲んだ。
水を飲み終えたフィルが再びエカテリーニへ視線を送る。
「あのこ、ちょっとあやういかんじだよね」
「……えっ、危うい感じって?」
優斗たちは顔を傾げてフィルを見た。
フィルはそれ以上は何も言わず、再び鞄の中へ入っていった。 3人は訝し気に目を合わせた。 瑠衣はお手上げ、という感じで肩を竦めている。
『かなり恨まれてるね、彼女に何したの?』
(……っ)
監視スキルは森の中に入ると静かだったのに、久方ぶりに話しかけて来たと思ったら、痛い所を突かれて言葉に詰まってしまう。 優斗としては、華以外と婚約する気はない。 どうすればエカテリーニが納得してくれるのか、全く分からなかった。
戦士隊が率いる新成人一行は、休憩を終えて残り半分の道のりを何事もなく進み、無事にブートキャンプ場へと辿り着いた。
ブートキャンプ場は二か所あり、森の中の開けた場所に設けられていた。 結界が張られ、魔物が入って来られず、セーフティーエリアになっているのだ。
奥と手前があり、優斗たちは奥のキャンプ場を指示された。 16人が二手に別れ、4人ずつのパーティーを組む。
優斗は瑠衣、仁奈、そして、コンスタンディノスヨルゴスの4人でパーティーを組むを事になった。
テントを張る前に自己紹介が始まった。
「よろしくな、ディノ。 俺の事はミドルネームのユウトって、気軽に呼んで」
「よろしく。 俺の事はルイでいいぞ」
「私はニーナね。 よろしく」
「は、はい、よろしくお願いします。 じ、次期里長と同じパーティーなんて……凄い、緊張しますっ!」
「えっ、ディノ。 同じ年なんだし、気軽にして」
「そうそう、優斗なんて、ただの思春期真っ只中の15歳だぞ」
「瑠衣っ、余計な事を言うなよっ! ディノも敬語じゃなくて、気軽に話して」
「は、はいっ! これは癖で、ぜ、善処しますっ」
ディノが緊張する中、空気の破裂音がして、フィルが鞄から飛び出して来る。
地面に降り立った時には、全身が銀色の美少年に変わっていた。 おかっぱの髪が揺れて、金属の擦れるような音が鳴り、ディノが目を剝いて驚いた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、ス、スライムが子供にっ! しかも、美少年ですっ」
「最初は、普通に驚くよな」
「風神も紹介しようと思ったのに……聞こえてねぇな」
「また、後にしよう」
ディノは術者でキュテーラ村の集落バッカス出身、平民で実家は酒蔵ネクタル酒造を営んでおり、三男なのだそうだ。
ネクタル酒造は薬湯部門もあるらしく、ブートキャンプを終えた後は薬湯部門で働くそうだ。
「早く、テント張ろうぜ。 そっち持て、仁奈」
「キャンプなんて、いつ振り? 楽しみ~」
「遊びで来てるんじゃないぞ」
「分かってるって、瑠衣。 華もいれば、もっと楽しいのにっ」
「ユウト! お腹空いたっ!」
「……フィル、お前はそればっかりだな」
「えっ! スライムってご飯食べるんですかっ?!」
再びディノが白銀の瞳を見開いて、驚いている。 仁奈の口から華の名前が出て来て瑠衣たちが騒ぐ中、華に想いを馳せる。
『ハナの位置は確認できないよ。 でも、遠くの方で首都ユスティティアは見えるよ』
監視スキルの声の後、脳内で立体型の地図が拡がった。 監視スキルの言う通り、華が居るであろう首都ユスティティアのツリーハウスが小さく見えた。 華も今頃は夕食時間かな、と考える。
(うん、少しだけ元気が出たかな。 サンキュー)
『どういたしまして』
人間らしい監視スキルに、心の中で小さく笑う。 ブートキャンプの1か月間、基本4人パーティーで行動する事になる。
本日は夕食の準備をし、パーティーごとにテントを張って明日に備える為、就寝する事になった。
指導官2人が指示を飛ばす声が聞こえてくる。
テント張りに苦労しているパーティーがいるのだろう。 エカテリーニとはパーティーが別になり、同じキャンプ場ではあるが、距離的には離れたので、優斗は心の底から安堵した。
◇
華が感知できない翌朝、監視スキルが何と声を掛けて起こすのかと思っていたら、華の声が脳内で囁かれ、優斗は声にならない叫び声を上げて飛び起きた。
『ユウト、起きて、朝だよ。 お寝坊さんね、ほら起きて』
しかも、優斗のお気に入りの華の秘蔵映像を再生させながら、監視スキルが華の声真似をしたのだ。 セリフは華が言いそうにないセリフ、優斗の羞恥心を鋭く刺したのは言うまでもない。
(お、お前~っ! 何、考えてんだっ!)
『だって、ハナに会えなくて寂しいだろうって思ってね』
監視スキルが前世よりも質が悪くなっている事に、優斗は愕然として肩を落とす。
そして、女子側のテント、仁奈が1人で使用しているが、優斗の声なき叫び声が聞こえていた様だ。
「ねぇ、すっごい叫び声が聞こえて来たけど、なんかあったの?」
「あ、いやちょっと優斗がな……おい、優斗。 大丈夫か? 集合だぞ……」
朝食の後、全員が共同広場に集合した。
修行の内容が説明され、戦士隊の青年が新成人たちを見回すと、口を開いた。
厳しそうな眼差しが、新成人たちの間に張りつめた空気を作る。
「おはよう。 今日から修行を開始する。 内容は至極簡単だ。 悪魔に憑りつかれた魔物、悪魔憑きの退治をしてもらう。 悪魔憑きは瘴気を出しているから、直ぐに分かると思う。 悪魔憑きを見つけ次第、悪魔を剥がし、悪魔を退治し、悪魔が抜けた魔物を浄化をしてもらう」
野生動物もまだ寝ていて森が静まり返っている中、新成人たちから息を呑む音が静かに草地に落ちる。 青年の説明は、淡々とした調子で続いた。
「戦士は悪魔の剥がしと、悪魔の退治を担当。 術者は悪魔を剥がされた魔物憑きの浄化を担当。 戦士は必ず、連携して悪魔を剥がして退治する事。 決して、1人で悪魔を退治するなどしない事だ」
青年の厳しい表情と眼差しに、新成人たちは改めて気を引き締める。
「後、知っている通り、悪魔憑きは浄化しても、直ぐに悪魔に憑りつかれやすくなる。 森へ帰す事はしない。 浄化をした魔物は自分たちのその日の晩飯になる。 悪魔憑きを狩れなかったパーティーは飯抜きになるから、肝に銘じて置くように。 当然だが、従魔は置いて行け」
新成人から不満の声が上がる。 従魔を連れている者も結構いるので、従魔の力を当てにしていた者もいたのだろう。
『僕は参加してもいいのかな?』
(いや、監視スキルは従魔じゃないだろっ)
不満の声を上げた新成人たちを、戦士隊の鋭い眼差しが黙らせた。 戦士隊からの説明はまだまだ続く。
「先ずは自分の能力を使いこなす事に集中しろ。 従魔との連携などはその後だ。 私たちは君たちの狩りを見て回る。 危うい時は助っ人するが、基本傍観に徹する。 自分たちだけで狩りを行ってくれ。 自己紹介が遅くなった。 私はクリストフォロスメノンだ。 戦士だ。 同僚のトリュファイナ・マトゥタ・カラトス。 彼女は術者だ。 ここでは私たちを教官と呼ぶように。 私はパーティーA・Bを担当する。 カラトスには、パーティーC・Dを担当してもらう」
指導官同士が視線を合わせると、女性指導官が一歩前へ出た。 両手を後ろで組んで、直立する姿は様になっている。
戦士隊の隊服は男女で区別がないので、女性も同じデザインの隊服だ。 白銀でフード付きのマント、アサシン風の隊服が良く似合っている。
確実に華が見たら興奮する案件だな、と戦士隊の隊服を凝視した。
「紹介に預かったトリュファイナ・マトゥタ・カラトスだ。 君たちは今日から1か月間、一時的に戦士隊の一員となり、ブートキャンプに参加する」
カラトスの白銀の瞳が細まり、視線が優斗で止まった。 視線に違和感を覚え、首を傾げた。
(……知り合いとかじゃないよな?)
『知り合いじゃないね。 ユウトの記憶にもないよ』
(そうか)
直ぐにカラトスの視線は他の新成人たちへと移動した。
「先ずは、隊服に着替えてもらう。 防御魔法が付与されているので、君たちが着ている服よりも防御力があると考えてほしい。 仕度が済み次第、パーティーごとに森の中へ入ってくれ。 昼休憩を1時間挟み、終了時間の夕方まで、報告以外はキャンプ場へ戻ってくる事は許されない」
休憩時間が1時間しかない事に、新成人たちは眉を下げて落胆した。
「それと、狩をしない日程がある。 各自自主練するも良し、術者の講義を受ける時間も設けている。 私の講義は、術者全員が参加するように」
カラトスの白銀の瞳が妖しく光り、術者たちは恐怖で身体を震わせていた。
隣でクリストフォロスメノンが呆れた様子で目を細めてカラトスを見た。
硬い空気が漂っていても気にしないのか、カラトスも淡々と話を続けた。
「では、隊服を配るので取りに来てくれ。 着替えは各々のテントでしてくれ」
皆が指導官の前へ並び、隊服を受け取る。 配られた隊服は、指導官が着ている隊服と色違いで、深緑の銀縁のフード付きマントだ。
優斗が隊服を受け取ると、先程の違和感は消えていて、カラトスも普通に隊服を手渡してくれた。
一旦、テントまで戻り、隊服に着替えてから、全員が共同広場に戻って来た。
そして、準備が済んだパーティーから森の中へと入って行った。
深緑のアサシン風の隊服の裾を摘まみ上げ、瑠衣がボソッと呟く。
「この隊服、絶対に華ちゃんが泣いて喜ぶな」
「嬉々として、カスタマイズする画も視えるよね。 私はスカートじゃなくて良かったけど」
「優斗のは、確実に竜が絡みつく様なデザインだろうな」
「ははっ」
乾いた笑いを漏らし、優斗も、内心で瑠衣と仁奈の意見に同意した。 和気藹々と話している優斗の背中に鋭い視線が突き刺さる。 今朝もエカテリーニからの視線が痛かったが、気づかない振りをした。
怖すぎて直視出来ない上に、話しかける事も出来ないでいた。 優斗たちは、エカテリーニのパーティーとは別の方向へ進んだ。 従魔を連れて行くのは禁止されたので、フィルと風神はテントでお留守番だ。
◇
『ユウト、悪魔憑きが森の奥に逃げるよ』
監視スキルの声で走るスピードを上げた。 足音もなく疾走する複数の影、深緑のマントがはためく。 進む先には大型のイノシシの悪魔憑き。 身体全体から瘴気が染みだし、地響きを鳴らして悪魔憑きが疾走する。
(ちっ!)
先行して追うのは、優斗だ。 大木の枝を音を鳴らさず、軽やかに蹴る。
着地する次の枝に銀色の足跡が輝く。
銀色の足跡は、優斗の体重と衝撃や音を吸収し、はためくマントの音も消し去る。
そして、次の跳躍の為の補助をしてくれる。 少し離れた位置で、音もなく草地を走る人の気配。
瑠衣が風魔法を使う気配を感じ、チラリと背後を気にする。 瑠衣の人差し指が口元で小さなつむじ風を起こし、指先が優斗へ向けられた。 つむじ風が優斗の耳元まで届き、耳元で少し呆れたような瑠衣の声が、つむじ風に混ざって聞こえてきた。
『優斗、先行し過ぎ! ディノが追いついてないから。 ちょっと、スピード緩めろっ!』
瑠衣の指摘に後方を振り返る。 ディノが苦しそうな顔をしてついて来ていた。
優斗はしまった、と足を緩める。
緩めた隙に、直ぐ横を一陣の風が吹いた。 優斗が足を止めた枝に、仁奈が着地してくる。
「今回の足止めは私で、剥がしはあんたでしょ」
「とどめが瑠衣だろ。 分かってるよ」
マントを翻し、仁奈が音もなく先行して跳躍する。 仁奈と瑠衣、ディノは瑠衣の風魔法で身軽になり、気配と音を消されている。 優斗は瑠衣の補助がなくても銀色の足跡がある上に、今までのエルフの狩り生活で気配と音を消す能力が身についていた。 ディノは集落の狩りには参加していなかったらしい。
『悪魔憑き、デカいわりに足が速いから、ニーナでは追いつけないんじゃないかな』
監視スキルの声に悪魔憑きが走る姿へ視線を向ける。 暫く、無言で悪魔憑きを追いかける。
先行した仁奈はまだ追いついていない。
後方ではディノと、ディノをフォローしている瑠衣が遅れを取っている。
(不味いな。 取り逃がすかもしれないっ。 このままじゃ、晩飯抜きの上、何も成果があげられないっ)
悪魔憑きから距離を取って大木を蹴ると、わざと大きな音を鳴らして草地に降り立った。
悪魔憑きは背後の物音に危険を察して、方向転換をした。 目深に被ったフードを取って悪魔憑きと睨み合う。 悪魔憑きは荒い鼻息を吐き出し、目も血走っている。
身体から噴き出す瘴気が増した様に見え、悪魔憑きが後ろ脚で草地を蹴ると、突進する体勢に入った。
悪魔憑きの頭上から葉が一枚、落ちて来る。
「仁奈、今だ!」
竪琴の音色が森の中で響き渡り、悪魔憑きの足元で魔法陣が描かれ、光り出した。
驚く悪魔憑きが逃げる間もなく、光の鎖が雷を発生させながら魔法陣から何本も飛び出し、悪魔憑きに絡みついて拘束する。
優斗は素早く、自身の武器を掌から取り出した。
集まった人々の中に、二人だけ違う服装の若者がいた。 優斗たちより少し年上に見える。 白銀の戦士服を身に纏った青年と女性だ。 隊服はフード付きのマント、昔、映画で見たアサシンの衣装に似ていた。 集まって来た人々に向かい合い、青年の方が口を開いた。
「ブートキャンプに参加する者は、こちらへ集まってくれ。 夕方までにキャンプ場へ着きたい、直ぐに出発する」
青年の声には、魔力が込められているのか、普通の声量なのに、広場全体へ青年の声が響いていた。 ブートキャンプへ参加する若者たちが、戦士隊がいる場所へ近づいていく。 優斗たちも若者に混じって戦士隊の元へと近づいた。 若者たちの中には、エカテリーニの姿もあった。
久しぶりに会う彼女は、優斗と視線が合うと、不機嫌な表情で視線を逸らした。
「……」
(機嫌悪っ。 これは、凄い面倒な事になりそうなっ……)
「ここからは徒歩でキャンプ場へ向かう。 皆、逸れないようについて来い。 私は今日から一月の間、君たちの指導官だ。 キャンプ場までしんがりを務める。 彼女が先頭で君たちの前を行く。 君たちは列を乱さず、先行せずに歩け」
最後の1人が到着すると、青年と女性は頷き合う。 女性が先行して歩き、少し距離を離してブートキャンプ参加者たちが歩き出した。 優斗たちも列の中ほどの位置で出発した。
◇
森の中で複数の草地を踏みしめる足音と、数頭の蹄の足音が小さく鳴る。
深い緑の匂い、複数の荒い息遣い、時折、一角馬の嘶きが聞こえて来る。 遠くでこちらを伺っている動物の気配がする。
深い緑の匂いの中、目の前で拡がる大自然に優斗の脳裏で昔の事が思い浮かぶ。
風神を挟み瑠衣と仁奈が左右で、前で優斗が進んで固まって歩いた。 最初は軽やかだった足取りも、徐々に疲労が出て来たのか、息づかいが荒くなって足取りも重くなる。 私語は禁止され、18人の人間と数頭の一角馬が黙って歩く様は、中々にシュールだ。
(もっと喋りながら、楽しく移動するものだと思ってたんだけど……)
優斗は、前世であった小学校の行事、『歩こう会』を思い出していた。
学校近くの山のハイキングコースを歩く遠足を、優斗と瑠衣が通っていた小学校では『歩こう会』と呼んでいた。 ハイキングコースだったが、『歩こう会』も小学生の優斗には厳しかったのを思い出した。
それでも、楽しかった事を覚えている。
次いで思い出されたのがエーリスの狩人たちと行った狩りだ。 狩でも小声ではあったが、少しくらい会話があった。
踏みしめられた草地を歩き、歪に並んだ大木を見上げる。
(木の枝を移動した方が早く着くんじゃっ。 いや、大人数で木の枝を移動するのは、返ってお互いが邪魔になるか)
「新成人、そこの大木の根元で15分の休憩だ」
しんがりを務めている戦士隊から声がかかった。 随分と後ろの方で声がするのに、前方の方まではっきりと声が聞こえてくる。 声に魔力を込めて話している様だ。 新成人たちは自然と知りあい同士が固まって休憩をしていた。
優斗たちは、皆から少し離れた場所で休憩を取る事にした。
腰元の水袋を外して、瑠衣が風神に水を飲ませている横で、仁奈はさっそく砂糖漬けのナツメグを頬張っていた。
優斗も風神に近づき、背を撫でながら瑠衣に声を掛ける。
「今、何時だろ? 半分くらい来たかな?」
「だな。 半分来たところで休憩するって言ってたしな。 時計がないの不便だよな」
「うん、エルフは時間なんて気にしないからな」
優斗も腰に引っ掛けた水袋を口に含み、喉を鳴らし一気に水を流し込んだ。
一息ついた所で厳しい視線を感じ、周囲を見回した。 優斗の視線の先で、睨みつけてくるエカテリーニが立っていた。
エカテリーニは白銀の髪を肩まで伸ばし、細身で瞳の大きな美少女だ。
エルフは美男美女しかいない。 美女が多い中で、エカテリーニの美貌は際立っている。 優斗たちはアジア顔なので美男美女のエルフの中では、埋もれてしまうのは否めない。 徐々にエカテリーニの表情が険しくなっていく。 エカテリー二の視線が優斗を外れた所で止まる。
頬が引き攣り、優斗の顔色が徐々に悪くなっていく。
(さっきよりも更に機嫌が悪くなってるっ)
「あのエカテリーニって子、こっちをすっごい睨んで来るんだけどっ……まさかとは思うんだけど、私とあんたの事、変な誤解してるんじゃないよねぇ」
エカテリーニの形相に仁奈も恐れ戦いている。 『美女は怒ると迫力あるな』と瑠衣は呑気な事を言っていた。 他人事だと思って内心で面白がっているに違いない。
鞄が歪な形を作り、凸凹が出来る。
鞄を開けて顔を出しやすく広げると、フィルが顔を出して丸い目を細めてじっとエカテリーニを見つめていた。 優斗が水袋をフィルの口元へ持っていくと、フィルは喉を鳴らして水を飲んだ。
水を飲み終えたフィルが再びエカテリーニへ視線を送る。
「あのこ、ちょっとあやういかんじだよね」
「……えっ、危うい感じって?」
優斗たちは顔を傾げてフィルを見た。
フィルはそれ以上は何も言わず、再び鞄の中へ入っていった。 3人は訝し気に目を合わせた。 瑠衣はお手上げ、という感じで肩を竦めている。
『かなり恨まれてるね、彼女に何したの?』
(……っ)
監視スキルは森の中に入ると静かだったのに、久方ぶりに話しかけて来たと思ったら、痛い所を突かれて言葉に詰まってしまう。 優斗としては、華以外と婚約する気はない。 どうすればエカテリーニが納得してくれるのか、全く分からなかった。
戦士隊が率いる新成人一行は、休憩を終えて残り半分の道のりを何事もなく進み、無事にブートキャンプ場へと辿り着いた。
ブートキャンプ場は二か所あり、森の中の開けた場所に設けられていた。 結界が張られ、魔物が入って来られず、セーフティーエリアになっているのだ。
奥と手前があり、優斗たちは奥のキャンプ場を指示された。 16人が二手に別れ、4人ずつのパーティーを組む。
優斗は瑠衣、仁奈、そして、コンスタンディノスヨルゴスの4人でパーティーを組むを事になった。
テントを張る前に自己紹介が始まった。
「よろしくな、ディノ。 俺の事はミドルネームのユウトって、気軽に呼んで」
「よろしく。 俺の事はルイでいいぞ」
「私はニーナね。 よろしく」
「は、はい、よろしくお願いします。 じ、次期里長と同じパーティーなんて……凄い、緊張しますっ!」
「えっ、ディノ。 同じ年なんだし、気軽にして」
「そうそう、優斗なんて、ただの思春期真っ只中の15歳だぞ」
「瑠衣っ、余計な事を言うなよっ! ディノも敬語じゃなくて、気軽に話して」
「は、はいっ! これは癖で、ぜ、善処しますっ」
ディノが緊張する中、空気の破裂音がして、フィルが鞄から飛び出して来る。
地面に降り立った時には、全身が銀色の美少年に変わっていた。 おかっぱの髪が揺れて、金属の擦れるような音が鳴り、ディノが目を剝いて驚いた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、ス、スライムが子供にっ! しかも、美少年ですっ」
「最初は、普通に驚くよな」
「風神も紹介しようと思ったのに……聞こえてねぇな」
「また、後にしよう」
ディノは術者でキュテーラ村の集落バッカス出身、平民で実家は酒蔵ネクタル酒造を営んでおり、三男なのだそうだ。
ネクタル酒造は薬湯部門もあるらしく、ブートキャンプを終えた後は薬湯部門で働くそうだ。
「早く、テント張ろうぜ。 そっち持て、仁奈」
「キャンプなんて、いつ振り? 楽しみ~」
「遊びで来てるんじゃないぞ」
「分かってるって、瑠衣。 華もいれば、もっと楽しいのにっ」
「ユウト! お腹空いたっ!」
「……フィル、お前はそればっかりだな」
「えっ! スライムってご飯食べるんですかっ?!」
再びディノが白銀の瞳を見開いて、驚いている。 仁奈の口から華の名前が出て来て瑠衣たちが騒ぐ中、華に想いを馳せる。
『ハナの位置は確認できないよ。 でも、遠くの方で首都ユスティティアは見えるよ』
監視スキルの声の後、脳内で立体型の地図が拡がった。 監視スキルの言う通り、華が居るであろう首都ユスティティアのツリーハウスが小さく見えた。 華も今頃は夕食時間かな、と考える。
(うん、少しだけ元気が出たかな。 サンキュー)
『どういたしまして』
人間らしい監視スキルに、心の中で小さく笑う。 ブートキャンプの1か月間、基本4人パーティーで行動する事になる。
本日は夕食の準備をし、パーティーごとにテントを張って明日に備える為、就寝する事になった。
指導官2人が指示を飛ばす声が聞こえてくる。
テント張りに苦労しているパーティーがいるのだろう。 エカテリーニとはパーティーが別になり、同じキャンプ場ではあるが、距離的には離れたので、優斗は心の底から安堵した。
◇
華が感知できない翌朝、監視スキルが何と声を掛けて起こすのかと思っていたら、華の声が脳内で囁かれ、優斗は声にならない叫び声を上げて飛び起きた。
『ユウト、起きて、朝だよ。 お寝坊さんね、ほら起きて』
しかも、優斗のお気に入りの華の秘蔵映像を再生させながら、監視スキルが華の声真似をしたのだ。 セリフは華が言いそうにないセリフ、優斗の羞恥心を鋭く刺したのは言うまでもない。
(お、お前~っ! 何、考えてんだっ!)
『だって、ハナに会えなくて寂しいだろうって思ってね』
監視スキルが前世よりも質が悪くなっている事に、優斗は愕然として肩を落とす。
そして、女子側のテント、仁奈が1人で使用しているが、優斗の声なき叫び声が聞こえていた様だ。
「ねぇ、すっごい叫び声が聞こえて来たけど、なんかあったの?」
「あ、いやちょっと優斗がな……おい、優斗。 大丈夫か? 集合だぞ……」
朝食の後、全員が共同広場に集合した。
修行の内容が説明され、戦士隊の青年が新成人たちを見回すと、口を開いた。
厳しそうな眼差しが、新成人たちの間に張りつめた空気を作る。
「おはよう。 今日から修行を開始する。 内容は至極簡単だ。 悪魔に憑りつかれた魔物、悪魔憑きの退治をしてもらう。 悪魔憑きは瘴気を出しているから、直ぐに分かると思う。 悪魔憑きを見つけ次第、悪魔を剥がし、悪魔を退治し、悪魔が抜けた魔物を浄化をしてもらう」
野生動物もまだ寝ていて森が静まり返っている中、新成人たちから息を呑む音が静かに草地に落ちる。 青年の説明は、淡々とした調子で続いた。
「戦士は悪魔の剥がしと、悪魔の退治を担当。 術者は悪魔を剥がされた魔物憑きの浄化を担当。 戦士は必ず、連携して悪魔を剥がして退治する事。 決して、1人で悪魔を退治するなどしない事だ」
青年の厳しい表情と眼差しに、新成人たちは改めて気を引き締める。
「後、知っている通り、悪魔憑きは浄化しても、直ぐに悪魔に憑りつかれやすくなる。 森へ帰す事はしない。 浄化をした魔物は自分たちのその日の晩飯になる。 悪魔憑きを狩れなかったパーティーは飯抜きになるから、肝に銘じて置くように。 当然だが、従魔は置いて行け」
新成人から不満の声が上がる。 従魔を連れている者も結構いるので、従魔の力を当てにしていた者もいたのだろう。
『僕は参加してもいいのかな?』
(いや、監視スキルは従魔じゃないだろっ)
不満の声を上げた新成人たちを、戦士隊の鋭い眼差しが黙らせた。 戦士隊からの説明はまだまだ続く。
「先ずは自分の能力を使いこなす事に集中しろ。 従魔との連携などはその後だ。 私たちは君たちの狩りを見て回る。 危うい時は助っ人するが、基本傍観に徹する。 自分たちだけで狩りを行ってくれ。 自己紹介が遅くなった。 私はクリストフォロスメノンだ。 戦士だ。 同僚のトリュファイナ・マトゥタ・カラトス。 彼女は術者だ。 ここでは私たちを教官と呼ぶように。 私はパーティーA・Bを担当する。 カラトスには、パーティーC・Dを担当してもらう」
指導官同士が視線を合わせると、女性指導官が一歩前へ出た。 両手を後ろで組んで、直立する姿は様になっている。
戦士隊の隊服は男女で区別がないので、女性も同じデザインの隊服だ。 白銀でフード付きのマント、アサシン風の隊服が良く似合っている。
確実に華が見たら興奮する案件だな、と戦士隊の隊服を凝視した。
「紹介に預かったトリュファイナ・マトゥタ・カラトスだ。 君たちは今日から1か月間、一時的に戦士隊の一員となり、ブートキャンプに参加する」
カラトスの白銀の瞳が細まり、視線が優斗で止まった。 視線に違和感を覚え、首を傾げた。
(……知り合いとかじゃないよな?)
『知り合いじゃないね。 ユウトの記憶にもないよ』
(そうか)
直ぐにカラトスの視線は他の新成人たちへと移動した。
「先ずは、隊服に着替えてもらう。 防御魔法が付与されているので、君たちが着ている服よりも防御力があると考えてほしい。 仕度が済み次第、パーティーごとに森の中へ入ってくれ。 昼休憩を1時間挟み、終了時間の夕方まで、報告以外はキャンプ場へ戻ってくる事は許されない」
休憩時間が1時間しかない事に、新成人たちは眉を下げて落胆した。
「それと、狩をしない日程がある。 各自自主練するも良し、術者の講義を受ける時間も設けている。 私の講義は、術者全員が参加するように」
カラトスの白銀の瞳が妖しく光り、術者たちは恐怖で身体を震わせていた。
隣でクリストフォロスメノンが呆れた様子で目を細めてカラトスを見た。
硬い空気が漂っていても気にしないのか、カラトスも淡々と話を続けた。
「では、隊服を配るので取りに来てくれ。 着替えは各々のテントでしてくれ」
皆が指導官の前へ並び、隊服を受け取る。 配られた隊服は、指導官が着ている隊服と色違いで、深緑の銀縁のフード付きマントだ。
優斗が隊服を受け取ると、先程の違和感は消えていて、カラトスも普通に隊服を手渡してくれた。
一旦、テントまで戻り、隊服に着替えてから、全員が共同広場に戻って来た。
そして、準備が済んだパーティーから森の中へと入って行った。
深緑のアサシン風の隊服の裾を摘まみ上げ、瑠衣がボソッと呟く。
「この隊服、絶対に華ちゃんが泣いて喜ぶな」
「嬉々として、カスタマイズする画も視えるよね。 私はスカートじゃなくて良かったけど」
「優斗のは、確実に竜が絡みつく様なデザインだろうな」
「ははっ」
乾いた笑いを漏らし、優斗も、内心で瑠衣と仁奈の意見に同意した。 和気藹々と話している優斗の背中に鋭い視線が突き刺さる。 今朝もエカテリーニからの視線が痛かったが、気づかない振りをした。
怖すぎて直視出来ない上に、話しかける事も出来ないでいた。 優斗たちは、エカテリーニのパーティーとは別の方向へ進んだ。 従魔を連れて行くのは禁止されたので、フィルと風神はテントでお留守番だ。
◇
『ユウト、悪魔憑きが森の奥に逃げるよ』
監視スキルの声で走るスピードを上げた。 足音もなく疾走する複数の影、深緑のマントがはためく。 進む先には大型のイノシシの悪魔憑き。 身体全体から瘴気が染みだし、地響きを鳴らして悪魔憑きが疾走する。
(ちっ!)
先行して追うのは、優斗だ。 大木の枝を音を鳴らさず、軽やかに蹴る。
着地する次の枝に銀色の足跡が輝く。
銀色の足跡は、優斗の体重と衝撃や音を吸収し、はためくマントの音も消し去る。
そして、次の跳躍の為の補助をしてくれる。 少し離れた位置で、音もなく草地を走る人の気配。
瑠衣が風魔法を使う気配を感じ、チラリと背後を気にする。 瑠衣の人差し指が口元で小さなつむじ風を起こし、指先が優斗へ向けられた。 つむじ風が優斗の耳元まで届き、耳元で少し呆れたような瑠衣の声が、つむじ風に混ざって聞こえてきた。
『優斗、先行し過ぎ! ディノが追いついてないから。 ちょっと、スピード緩めろっ!』
瑠衣の指摘に後方を振り返る。 ディノが苦しそうな顔をしてついて来ていた。
優斗はしまった、と足を緩める。
緩めた隙に、直ぐ横を一陣の風が吹いた。 優斗が足を止めた枝に、仁奈が着地してくる。
「今回の足止めは私で、剥がしはあんたでしょ」
「とどめが瑠衣だろ。 分かってるよ」
マントを翻し、仁奈が音もなく先行して跳躍する。 仁奈と瑠衣、ディノは瑠衣の風魔法で身軽になり、気配と音を消されている。 優斗は瑠衣の補助がなくても銀色の足跡がある上に、今までのエルフの狩り生活で気配と音を消す能力が身についていた。 ディノは集落の狩りには参加していなかったらしい。
『悪魔憑き、デカいわりに足が速いから、ニーナでは追いつけないんじゃないかな』
監視スキルの声に悪魔憑きが走る姿へ視線を向ける。 暫く、無言で悪魔憑きを追いかける。
先行した仁奈はまだ追いついていない。
後方ではディノと、ディノをフォローしている瑠衣が遅れを取っている。
(不味いな。 取り逃がすかもしれないっ。 このままじゃ、晩飯抜きの上、何も成果があげられないっ)
悪魔憑きから距離を取って大木を蹴ると、わざと大きな音を鳴らして草地に降り立った。
悪魔憑きは背後の物音に危険を察して、方向転換をした。 目深に被ったフードを取って悪魔憑きと睨み合う。 悪魔憑きは荒い鼻息を吐き出し、目も血走っている。
身体から噴き出す瘴気が増した様に見え、悪魔憑きが後ろ脚で草地を蹴ると、突進する体勢に入った。
悪魔憑きの頭上から葉が一枚、落ちて来る。
「仁奈、今だ!」
竪琴の音色が森の中で響き渡り、悪魔憑きの足元で魔法陣が描かれ、光り出した。
驚く悪魔憑きが逃げる間もなく、光の鎖が雷を発生させながら魔法陣から何本も飛び出し、悪魔憑きに絡みついて拘束する。
優斗は素早く、自身の武器を掌から取り出した。
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