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24話
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ラトと屋敷を探し回り、隠し部屋を見つけ出した。 隠し部屋は屋敷の地下にあった。 使用人通路の奥に石畳の階段があった。 ラトに手を引かれ、暗闇の中に足を踏み入れる。
ラトが古代語で呟くと、目の前の空中に光の球体が現れた。 光の球体は目の前にあるにもかかわらず、眩しもなく、光で目が潰されるという事もなかった。 優しくて暖かい光を放っている。
石畳みに、ラトとリジィの床を打ち付ける足音が鳴り、照らされた石造りの廊下に小さく響く。
前を歩くラトの背中を見ながら、リジィは先程から心臓が早鐘を打つ胸を押さえていた。 下へ降りるたびに、リジィの期待が膨らんでいく。 石畳みの階段の先に、きっと隠し部屋があると。
(まるで、宝探しみたいっ)
長く続くと思われた階段は突然、終わりを告げ、リジィとラトは一番下の段に辿り着いた。
目の前には、天井から床までの大きな扉が聳え立っていた。 見上げるリジィの喉から息を呑む音が鳴らされる。 隣のラトから確信に満ちた声が出された。
「隠し部屋はここに間違いない。 魔力の痕跡がある。 お父上の大事な物を仕舞う魔法が掛けられているんだろう。 しかし、どうやって扉を開けるかだなっ」
「魔力の痕跡ですか?」
リジィの口から心の底から感心するような溜息が吐き出された。 リジィには魔力がないので、痕跡などは全く感じられない。 じっと見上げた扉を眺め、記憶にある父親の言葉を思い出す。
『私には不思議な力があるんだよ。 きっとリジィにもあるはずだ。 私と同じ瞳をしているからね』
脳内で響いた父親の言葉に、リジィは内心で反論した。
(いいえ、お父様。 私に魔力はありませんでしたっ。 期待外れでごめんなさいっ)
心の中で父親に謝罪していると、ラトが扉を調べ始めた。 後ろでラトの様子を大人しく眺める。
残念ではあるが、リジィには魔法の知識はない。 15年間、生きて来て、自身に獣人の血が混じっている事をはっきりと知ったのは、つい先ほどだ。 今まで、自分の中に魔力があるかどうかも、確かめた事はない。 魔力の魔の字も、リジィが発動させた事はない。
自身の事なので、知識はないが、リジィもどうすれば扉が開けられるか、頭を捻って考えた。
「もしかして、玄関の扉が開いた時みたいに、取っ手に触れれば開くのでは?」
「いや、あれは多分、アーヴィングの血筋で開けられたものだ。 しかも、遠戚とかではなく、近親者、リジィたち親子でないと開けられない様になっていたと思う」
「なるほど」
「ああ、親兄弟、親戚だとしても一枚岩ではない。 一番、信頼出来るのが、何も知らないリジィだけだったんだろう」
ラトの見解に、リジィは感心するばかりである。
「推測だが、この扉を開ける方法は別の何かだ。 リジィ、この場に来ても、他には何も思い出せないか?」
ラトが言う様に、何も思い出さないが、リジィは自身の奥底に眠る記憶を探った。 脳内で先程思い出した続きなのか、別の日なのか、父親が何かを言っている記憶が呼び起された。
(う~ん、声が聞こえないっ。 あ、唇を読めばいいんじゃない。 もう、言葉も分かるし)
脳内で呼び起された父親の唇を読む事に集中する。 父親の唇は『取っ手に触れて』と動いていた。
(取っ手に触れる? やっぱり玄関の時みたいに、触れたら開くのかしら?)
父親の言う通りに、リジィは地下の扉の取っ手に触れた。 取っ手の上の部分には、魔法陣なのか、円形の文様が彫られていた。 一瞬だけ魔法陣が光を放った。
そして、再び、脳内で父親の声が聞こえて来た。
『いいかい、リジィ。 君の大事にしている物は、この扉の中にある』
脳内に呼び起された記憶の中で、父親は扉の前で得気な表情をして、小さいリジィに話しかけている。 小さいリジィは興味津々で扉を覗き込んでいた。
『リジィ、取っ手に触れてみなさい』
小さいリジィは父親の言う通りに、取っ手に触れて引いたり押したりしてみた。 しかし、小さいリジィには扉は大きすぎる。 引いても、押しても動かなかった。
『あかないよ、おとうさまっ』
『違うよ、リジィ。 取っ手に触れたままで、魔力を流して呪文を唱えるんだ』
『じゅもんっ?!』
『そう、呪文だ。 「開けゴマ」ってな』
得気な様子で腰に手を当て、父親は笑っている。 リジィの表情からスッと感情が抜け落ちて、瞳を細めた。 『開けゴマ』ってなんだと、何故か心の底から膨らんだ期待が萎んでいった。
記憶の中の小さいリジィも半眼で自身の父親を見つめていた。 リジィの様子に慌てた父親は、『今のは冗談だ』と狼狽えだした。
『本当の呪文は古代語だから、リジィには少しだけ早いかもな。 だが、教えておこう。 ちゃんと言えるようになるんだよ』
後に続いた古代語の呪文に、リジィの表情から再び感情が抜け落ちた。
(無理ですっ、お父様。 私には開けられませんっ、しかも、魔力も流せませんっ)
父親は、リジィにも魔力が目覚めると信じて疑わなかったのだろう。 リジィが魔力を持っていると想定した開錠方法だった。 取っ手に触れたっきりで、何も言わないリジィにラトが心配気に声を掛けて来る。
「大丈夫か? リジィ」
「はい、どうやって扉を開ければいいか、分かりました」
「そうか……どうやって開けるんだ?」
取っ手の上に彫られている魔法陣を指さして、ラトの方へ視線をやる。
「この魔法陣に魔力を流して、古代語の呪文を唱えると開くそうです。 父は私に魔力があると思っているみたいですね……」
「そ……そうかっ」
リジィの表情が強張っている様子に、ラトは気の毒そうに眉尻を下げた。
「……どうしましょう。 私、魔力なんて流せないのにっ」
「う~ん、そうだな」
ラトは何かを閃いたのか、指を鳴らした。
「リジィ、古代語の呪文は言えるか? ちょっと今、言ってみてくれるか?」
「はい」
リジィは父から教えられた古代語の呪文をラトに教えた。 古代語は簡単な物だった。 小さいリジィでは言えない呪文だっただけだ。 古代語の呪文を聞いたラトは、『なるほど』と呟いた。
「ラト?」
「リジィ、お父上はちゃんとリジィに魔力がなかった事を想定している。 今のリジィが言った古代語は、獣人族の古代語だ。 お父上はリジィが獣人の番を得る事を望んでいたんだな。 中々、ロマンティックな人だ」
「えっ、そうなんですかっ?!」
「ああ、リジィは魔法を使えないから、知らないのは仕方ないか。 獣人や亜人は、魔法を使う時は古代語を使うんだ。 で、人族には獣人や亜人の血が混じっていなくても、魔法が使える者たちもいる。 彼らは私たちの古代語は使わない。 というか、無詠唱ではないかな。 だから、人族は我々の古代語を知らないはずだ」
「そうなんですね、人族も魔法を使える人がいる事に驚きですっ」
「ああ、もう、かなり少ないらしいがな。 では、リジィ、そのまま取っ手に触れていくれ。 私が魔力を流そう」
リジィの返事を聞く前にラトはリジィの手に自身の手を重ねた。 ラトの金色の瞳に魔力が宿り、獣目に変わる。 そして、何か温かいものがリジィの手を通して魔法陣へ注がれた。
魔法陣は、ラトの魔力に反応して明るく光を放った。
「ほら、獣人の魔力に反応した。 きっと人族の魔力では無理なんだ」
「……っ」
「リジィ、古代語の呪文を唱えて」
「はいっ!」
リジィが古代語を紡ぐと、地下の扉が音もなく姿を消した。 リジィが握っていた取っ手も消えていて、何もない空気を握りしめていた。 初めて触れる魔法に、リジィの心が躍った。
少しだけ、皆の事を羨ましいと思っていた。 幼い頃から目の前で魔法を使うアヴリルたちをみて、自身も使ってみたいと思っていたのだ。 孤児院の裏でひっそりと試してみた事もある。
「リジィ、入ってみよう」
「はいっ」
ラトから促され、思考を現在に戻す。 リジィとラトが中へ入ると、扉が再び現れ、隠し部屋が閉じられた。 ちょっとびっくりしたが、開けられたのだから出る時も大丈夫だろうと、リジィとラトは隠し部屋の中を見渡した。 ラトは息を呑み、リジィは感嘆の声を上げた。
隠し部屋には沢山の資料と、宝物や宝石類、そして木箱一杯の魔石があった。 リジィは覚えていないが幼い頃の宝物らしきものがあった。 幼い頃のリジィが描いたのか、木箱に落書きしてあり、下手字で、『宝物入れ』と書かれていた。
中には、当時、リジィが遊び道具にしていた物が入っている。 リジィが宝物入れの中身を夢中になって見ている中、ラトは書類棚を確かめていた。 何冊か書類を読んだラトは、口元に笑みを広げる。
「リジィ、これで、お父上の容疑が晴れるぞ」
「……何か、重要な書類がありました?」
「ああ、ここに全てある。 お父上は、君がここに一人では来るとは考えていなかった様だ。 きっと番と一緒に訪れると思っていたんだ。 まぁ、自身の容疑を晴らしてくれるとまでは思っていないだろうけどな。 でも、魔石の鉱山を正しく使ってほしいと思っているだろうが……」
リジィはラトが何か危ない事を考えている様な気がして、不安な表情を浮かべた。
「リジィ、大丈夫だ。 悪いようにはしない。 リジィのお父上を陥れた者たちには、報いを受けてもわないとな」
「……報いって、ラト、あまり危ない事はっ」
「いや、お父上がリジィをシェラン国へ預けたのは、リジィを守るためだ。 大事な娘をリジィの番に託したんだよ。 俺はそう思う」
「ラトっ……」
「リジィの曽祖父の事も調べよう。 リジィの遠戚が見つかるだろう」
他には何があるのか調べる為、ラトは伝書の妖精を使い、ダレンとバトを呼びつけた。 二人だけでは、広い隠し部屋は調べつくせない。 合流した四人は、隠し部屋の大捜索を開始した。
ラトが古代語で呟くと、目の前の空中に光の球体が現れた。 光の球体は目の前にあるにもかかわらず、眩しもなく、光で目が潰されるという事もなかった。 優しくて暖かい光を放っている。
石畳みに、ラトとリジィの床を打ち付ける足音が鳴り、照らされた石造りの廊下に小さく響く。
前を歩くラトの背中を見ながら、リジィは先程から心臓が早鐘を打つ胸を押さえていた。 下へ降りるたびに、リジィの期待が膨らんでいく。 石畳みの階段の先に、きっと隠し部屋があると。
(まるで、宝探しみたいっ)
長く続くと思われた階段は突然、終わりを告げ、リジィとラトは一番下の段に辿り着いた。
目の前には、天井から床までの大きな扉が聳え立っていた。 見上げるリジィの喉から息を呑む音が鳴らされる。 隣のラトから確信に満ちた声が出された。
「隠し部屋はここに間違いない。 魔力の痕跡がある。 お父上の大事な物を仕舞う魔法が掛けられているんだろう。 しかし、どうやって扉を開けるかだなっ」
「魔力の痕跡ですか?」
リジィの口から心の底から感心するような溜息が吐き出された。 リジィには魔力がないので、痕跡などは全く感じられない。 じっと見上げた扉を眺め、記憶にある父親の言葉を思い出す。
『私には不思議な力があるんだよ。 きっとリジィにもあるはずだ。 私と同じ瞳をしているからね』
脳内で響いた父親の言葉に、リジィは内心で反論した。
(いいえ、お父様。 私に魔力はありませんでしたっ。 期待外れでごめんなさいっ)
心の中で父親に謝罪していると、ラトが扉を調べ始めた。 後ろでラトの様子を大人しく眺める。
残念ではあるが、リジィには魔法の知識はない。 15年間、生きて来て、自身に獣人の血が混じっている事をはっきりと知ったのは、つい先ほどだ。 今まで、自分の中に魔力があるかどうかも、確かめた事はない。 魔力の魔の字も、リジィが発動させた事はない。
自身の事なので、知識はないが、リジィもどうすれば扉が開けられるか、頭を捻って考えた。
「もしかして、玄関の扉が開いた時みたいに、取っ手に触れれば開くのでは?」
「いや、あれは多分、アーヴィングの血筋で開けられたものだ。 しかも、遠戚とかではなく、近親者、リジィたち親子でないと開けられない様になっていたと思う」
「なるほど」
「ああ、親兄弟、親戚だとしても一枚岩ではない。 一番、信頼出来るのが、何も知らないリジィだけだったんだろう」
ラトの見解に、リジィは感心するばかりである。
「推測だが、この扉を開ける方法は別の何かだ。 リジィ、この場に来ても、他には何も思い出せないか?」
ラトが言う様に、何も思い出さないが、リジィは自身の奥底に眠る記憶を探った。 脳内で先程思い出した続きなのか、別の日なのか、父親が何かを言っている記憶が呼び起された。
(う~ん、声が聞こえないっ。 あ、唇を読めばいいんじゃない。 もう、言葉も分かるし)
脳内で呼び起された父親の唇を読む事に集中する。 父親の唇は『取っ手に触れて』と動いていた。
(取っ手に触れる? やっぱり玄関の時みたいに、触れたら開くのかしら?)
父親の言う通りに、リジィは地下の扉の取っ手に触れた。 取っ手の上の部分には、魔法陣なのか、円形の文様が彫られていた。 一瞬だけ魔法陣が光を放った。
そして、再び、脳内で父親の声が聞こえて来た。
『いいかい、リジィ。 君の大事にしている物は、この扉の中にある』
脳内に呼び起された記憶の中で、父親は扉の前で得気な表情をして、小さいリジィに話しかけている。 小さいリジィは興味津々で扉を覗き込んでいた。
『リジィ、取っ手に触れてみなさい』
小さいリジィは父親の言う通りに、取っ手に触れて引いたり押したりしてみた。 しかし、小さいリジィには扉は大きすぎる。 引いても、押しても動かなかった。
『あかないよ、おとうさまっ』
『違うよ、リジィ。 取っ手に触れたままで、魔力を流して呪文を唱えるんだ』
『じゅもんっ?!』
『そう、呪文だ。 「開けゴマ」ってな』
得気な様子で腰に手を当て、父親は笑っている。 リジィの表情からスッと感情が抜け落ちて、瞳を細めた。 『開けゴマ』ってなんだと、何故か心の底から膨らんだ期待が萎んでいった。
記憶の中の小さいリジィも半眼で自身の父親を見つめていた。 リジィの様子に慌てた父親は、『今のは冗談だ』と狼狽えだした。
『本当の呪文は古代語だから、リジィには少しだけ早いかもな。 だが、教えておこう。 ちゃんと言えるようになるんだよ』
後に続いた古代語の呪文に、リジィの表情から再び感情が抜け落ちた。
(無理ですっ、お父様。 私には開けられませんっ、しかも、魔力も流せませんっ)
父親は、リジィにも魔力が目覚めると信じて疑わなかったのだろう。 リジィが魔力を持っていると想定した開錠方法だった。 取っ手に触れたっきりで、何も言わないリジィにラトが心配気に声を掛けて来る。
「大丈夫か? リジィ」
「はい、どうやって扉を開ければいいか、分かりました」
「そうか……どうやって開けるんだ?」
取っ手の上に彫られている魔法陣を指さして、ラトの方へ視線をやる。
「この魔法陣に魔力を流して、古代語の呪文を唱えると開くそうです。 父は私に魔力があると思っているみたいですね……」
「そ……そうかっ」
リジィの表情が強張っている様子に、ラトは気の毒そうに眉尻を下げた。
「……どうしましょう。 私、魔力なんて流せないのにっ」
「う~ん、そうだな」
ラトは何かを閃いたのか、指を鳴らした。
「リジィ、古代語の呪文は言えるか? ちょっと今、言ってみてくれるか?」
「はい」
リジィは父から教えられた古代語の呪文をラトに教えた。 古代語は簡単な物だった。 小さいリジィでは言えない呪文だっただけだ。 古代語の呪文を聞いたラトは、『なるほど』と呟いた。
「ラト?」
「リジィ、お父上はちゃんとリジィに魔力がなかった事を想定している。 今のリジィが言った古代語は、獣人族の古代語だ。 お父上はリジィが獣人の番を得る事を望んでいたんだな。 中々、ロマンティックな人だ」
「えっ、そうなんですかっ?!」
「ああ、リジィは魔法を使えないから、知らないのは仕方ないか。 獣人や亜人は、魔法を使う時は古代語を使うんだ。 で、人族には獣人や亜人の血が混じっていなくても、魔法が使える者たちもいる。 彼らは私たちの古代語は使わない。 というか、無詠唱ではないかな。 だから、人族は我々の古代語を知らないはずだ」
「そうなんですね、人族も魔法を使える人がいる事に驚きですっ」
「ああ、もう、かなり少ないらしいがな。 では、リジィ、そのまま取っ手に触れていくれ。 私が魔力を流そう」
リジィの返事を聞く前にラトはリジィの手に自身の手を重ねた。 ラトの金色の瞳に魔力が宿り、獣目に変わる。 そして、何か温かいものがリジィの手を通して魔法陣へ注がれた。
魔法陣は、ラトの魔力に反応して明るく光を放った。
「ほら、獣人の魔力に反応した。 きっと人族の魔力では無理なんだ」
「……っ」
「リジィ、古代語の呪文を唱えて」
「はいっ!」
リジィが古代語を紡ぐと、地下の扉が音もなく姿を消した。 リジィが握っていた取っ手も消えていて、何もない空気を握りしめていた。 初めて触れる魔法に、リジィの心が躍った。
少しだけ、皆の事を羨ましいと思っていた。 幼い頃から目の前で魔法を使うアヴリルたちをみて、自身も使ってみたいと思っていたのだ。 孤児院の裏でひっそりと試してみた事もある。
「リジィ、入ってみよう」
「はいっ」
ラトから促され、思考を現在に戻す。 リジィとラトが中へ入ると、扉が再び現れ、隠し部屋が閉じられた。 ちょっとびっくりしたが、開けられたのだから出る時も大丈夫だろうと、リジィとラトは隠し部屋の中を見渡した。 ラトは息を呑み、リジィは感嘆の声を上げた。
隠し部屋には沢山の資料と、宝物や宝石類、そして木箱一杯の魔石があった。 リジィは覚えていないが幼い頃の宝物らしきものがあった。 幼い頃のリジィが描いたのか、木箱に落書きしてあり、下手字で、『宝物入れ』と書かれていた。
中には、当時、リジィが遊び道具にしていた物が入っている。 リジィが宝物入れの中身を夢中になって見ている中、ラトは書類棚を確かめていた。 何冊か書類を読んだラトは、口元に笑みを広げる。
「リジィ、これで、お父上の容疑が晴れるぞ」
「……何か、重要な書類がありました?」
「ああ、ここに全てある。 お父上は、君がここに一人では来るとは考えていなかった様だ。 きっと番と一緒に訪れると思っていたんだ。 まぁ、自身の容疑を晴らしてくれるとまでは思っていないだろうけどな。 でも、魔石の鉱山を正しく使ってほしいと思っているだろうが……」
リジィはラトが何か危ない事を考えている様な気がして、不安な表情を浮かべた。
「リジィ、大丈夫だ。 悪いようにはしない。 リジィのお父上を陥れた者たちには、報いを受けてもわないとな」
「……報いって、ラト、あまり危ない事はっ」
「いや、お父上がリジィをシェラン国へ預けたのは、リジィを守るためだ。 大事な娘をリジィの番に託したんだよ。 俺はそう思う」
「ラトっ……」
「リジィの曽祖父の事も調べよう。 リジィの遠戚が見つかるだろう」
他には何があるのか調べる為、ラトは伝書の妖精を使い、ダレンとバトを呼びつけた。 二人だけでは、広い隠し部屋は調べつくせない。 合流した四人は、隠し部屋の大捜索を開始した。
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