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第三話 大伯父が突撃して来た

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 寝室のカーテンが強制的に開かれ、朝日がアルフの顔に直撃した。 気持ち良く睡眠を貪っていたアルフは、突然、瞼に突き刺した朝日が眩しくて、強制的に脳みそを覚醒させられた。

 「若様、朝です。 起きて下さい」
 
 直ぐ近くで、グランの声が聴こえ、眩しくて開けられない瞼を擦りながら、起き上がった。

 「……っん。 っグラン?」

 昨晩は食べた事もない夕食のメニューでお腹が満たされ、馬車の長旅で疲れていた身体に温かい風呂の湯が染みわたり、ベッドへ入った直後に貪ように寝てしまった。
 
 「はい、おはようございます。 若様、洗顔用のお湯をお持ちしました。 洗顔の後、お着替えの支度をお手伝い致します」

 普通はメイドの仕事だそうだが、貴族の暮らしに慣れていないアルフを考慮して、専属メイドのモナではなく、グランが朝の支度の手伝いに来た。

 きちっと子供用の執事服を着こみ、無表情で挨拶をしてくるグランが視界に映る。 対してアルフは、寝起きで朝日が眩しくて、目がしょぼついている。 視線が合うとグランは顔を傾げた。

 「どうされました? 若様」

 グランはいつもの様に無表情だった。 急に恥ずかしくなり、再びベッドに潜り込むと、容赦なくグランに掛け布団をはぎ取られた。 無表情で起きるようにと、迫って来るグランに根負けし、漸くアルフは起き上がった。 顔を洗って着替えをしていると、グランが本日の予定を読み上げる。

 因みに着替えの手伝いは、恥ずかしい上に1人で出来るので断固拒否した。 クローゼットを開けると、アルフが孤児院から持参して来た服がない。 アルフが持参した服は、洗濯して綺麗に補修をした後、マントイフェルの孤児院に寄付するそうだ。

 (男爵になる為、良い服を着ていないと駄目だとか……いつの間にか、次期男爵に?! 祖母と仲良くなる為に、暫く一緒に暮らすだけなんじゃ……)

 「ロイヴェリク家に恩義を感じられている王家の方々は、お忍びのでこちらに来られる事があります。 粗末な格好で、王家の方々をお迎えする訳にはいきません」
 「そんなに頻繁に来るの? 王家の人……」

 無言で無表情に頷きだけで返して来た。 失礼の無い様に、他の男爵家以上の服装や、教育が必要らしい。

 「本日のご予定です。 大奥様に朝のご挨拶の後、食堂で朝食。 直轄地マントイフェルの主要都市、ロームといいますが、王宮から代官が派遣されています。 若様が見つかった事をご報告に参ります。 後、若様の住民登録もして頂きます。 ご帰宅後は執事のノルベルトより、お勉強と魔法修行のお時間です」
 「えっ……勉強? 魔法?」

 アルフはグランの言葉に、目を見開いた。

 (えっ?! それ何の勉強?! まさか……)

 「はい。 それと、ご夕食は大奥様の体調がよろしければ、ご一緒に出来るそうです」

 「そう、おばあ様、元気だといいなっ……。 あの、勉強なんだけど……文字なら読めるし、書けるよ。 計算も孤児院で教えてもらったから、大丈夫だけど……」
 「そういうお勉強ではありません。 それに、文字や計算は出来て当たり前ですし、基礎ですね。 王家の成り立ちや、経済学、帝王学、後は武術、剣術、魔力制御なども『男爵』になる為にも、しっかりと学んで頂きます。 後、ダンスと礼儀作法もありますね」

 淡々と話すグランに、アルフは目が点になりながら、グランが言った事を心の中で反芻した。

 (知らぬ間に……外堀を埋められてるっ……)

 「……マジですかっ」
 「はい、若様がこちらに来られる前から、執事が張り切っておりました。 代官へのご挨拶も、前もって約束を取り付けておりますので、逃げられませんよ」
 「……っく」

 グランの濃紺の瞳が妖しく光り、アルフは言葉を詰まらせて後ずさった。

 「それに、お忘れかも知れませんが、若様は『祝福』を授かっておられますよね? 『祝福』を正しく使う為にも、魔法の勉強は必須です」
 「ああ、そうか。 あれかっ……」

 アルフは『祝福』を授かった時の説明書取扱書を思い出し、何とも言えない表情を浮かべた。

 「若様、支度が整えられましたら、大奥様にご挨拶へ行きますよ」

 グランに急かされ、アルフは諦めたように息を吐き出して、朝の支度を終えた。

 ◇

 今朝の祖母はとても気分が良さそうで、夕食は一緒に出来るそうだ。 折角、一緒に暮らしているのに、何も会話が無いのは寂しいし、仲良くもなれない。 祖母の楽し気な様子に安堵していた。

 豪華な朝食を終え、屋敷の事を家令のコンラートに頼み、アルフは御者のアッバス、執事のノルベルトとグランを乗せた馬車で主要都市であるロームへと向かった。

 何日もかけてマントイフェルへ馬車で来た為、身体が慣れたのか漸く馬車酔いもなく、快適に馬車に揺られていた。

 マントイフェルの代官の館は、中央広場にあるらしい。 色々な業務を行う場所であり、自宅でもあるそうだ。 ロイヴェリク家は曾祖父の代から、代官と協力しながらマントイフェルで暮らして来た。

 ロームの街はほぼ円形の形で、中央の広場を中心にして街が拡がっている。 主要都市であるロームは、アルフが思っていた以上に賑やかだった。 来た時も街を眺めながら通ったはずだが、馬車酔いでちゃんと街を眺める余裕がなかった。

 改めてロームの街を馬車の中から眺めると、アルフの口から感嘆の声が零れた。

 「ロームって大きな街なの?」
 「マントイフェルでは、一番大きいですね。 しかし、ローゼンダール王国全体を見えれば、小さい方です」

 ノルベルトの答えにアルフは『そうか』と答え、楽しそうに賑やかな街を眺めていた。

 ロイヴェリク家の馬車が珍しいのか、すれ違う人々がロイヴェリク家の家紋が入った馬車を盗み見ては、周囲の人と何かを話している。 首を傾げたアルフはノルベルトに問いかけた。

 「ねぇ、もしかしてなんだけど、貴族っていうか、ロイヴェリク家って一般の人から嫌われているの?」
 
 アルフの質問にノルベルトは顔を横に振った。

 「いいえ、きっと若様が見つかったと、噂しているのだと思います」
 「えぇっ?! じゃ、皆は僕の事を話しているのっ?!」

 ノルベルトは恭しく頷いた。 ずっとノルベルトに喋らせて黙っていたグランも、深く頷いている。 こめかみに一滴の冷や汗が流れる。

 (まじでっ?! 僕が見つかっただけで、そんな噂になるの?!)

 信じられない思いでいっぱいで、もう街の様子を眺められなくなった。 アルフの気持ちを知ってか知らずか、ノルベルトが追い詰めて来る。

 「若様、ちゃんと街の様子を見て下さい。 今後、街に何が必要か考えなくてはいけませんからね」
 「えぇぇ、それって……領主とかが考える事だよね? ロイヴェリク家は領主じゃないんだよねぇ?」
 「はい、ビンチェンツオ様の代から、領主となる事はお断りされております」
 「ビンチェンツオさま……って、曾祖父か。 じゃ、何で……今後の事を?」
 「……まぁ、言ってしまえば……代官の方から大奥様へご相談に来るというか、王家の強引な依頼で巻き込まれますというか……」
 「えぇっ?!」

 (何それっ、もの凄く断れない案件とかなのっ……とても嫌な事、聞いたよっ?!)

 しれっと答えたノルベルトは何も言わず、代官の館に着くまで黙り込んだ。 無言で馬車に乗る3人、最初の楽しい気分が台無しになったのは、誰の所為だろうか、アルフは自問した。

 ◇

 代官の館は広場の中央に建てられていた。 1階が役所になっており、多くのロームの街の住人が利用していた。 アルフたちは待合室に通され、代官に呼ばれるのを待つ。

 待合室の窓から見える役所を利用する住人には、色々な人がいた。 アルフと同じ位の少年少女もいた。 子供たちは役所の受付のお姉さんと楽しそうに話している。

 「ねぇ、ノルベルト。 あの子たちは何をしているの?」

 ノルベルトに問いかけた時、丁度、代官の秘書が呼びに来た。 少しだけ走って来たようで、荒い息を整えていた。 若いようなので、務めたばかりなのかもしれない。

 アルフは集まっている子供たちの事が気になり、後ろ髪を引かれるように若い秘書の後を着いて行った。 アルフが気になった訳は、子供たちが持っていた羊皮紙だ。 アルフにはとても心当たりがあった。

 代官はとても気さくな人だった。 しかも、とても若くて、ノルベルトと同じ年くらいに見えた。

 最近、前代官が引退をして、今の代官が王宮から派遣されて来た。 父親が生きていれば、ロイヴェリク家も10年前に世代交代があったそうだ。

 応接室のソファーで代官と向かい合わせで座り、一般的な礼節しか孤児院では教わってなかったアルフは、石の様に固まっていた。 気さくな代官とは、和やかな雰囲気で話が進んだ。

 アルフが話している間に住民登録が終わり、1階の受付の人が書類を持ってきてくれた。

 ノルベルトが確認をして、不備がないかじっくりと調べている。 チラリとノルベルトを見て、心配そうにピクリとこめかみを引くつかせている代官。 出て行った受付の女の人を思い出し、1階にいた子供たちの事を思い出した。

 「あの、代官さん。 つかぬ事をお聞きしますが……」
 「えっ……」

 アルフの年の割には、大人びた話し方に、僅かに目を見開き、慎重に答えた。

 「はい、何でしょう」
 「先程、同じ年くらいの子供達が、受付の1階で集まっていたのを見かけました。 何か行事とかがあるんですか? 皆、羊皮紙を持っていた様なんですが」

 最初はクエスチョンマークを飛ばしていた代官は、アルフの『羊皮紙』を持っていたという言葉で、思い至ったのか、頷いて納得した。

 「ああ、『祝福』を授かった平民の子供達の事ですね。 1月1日の祝福の義で『祝福』を授かった子供達が魔力制御の授業を受けるのですよ」
 「こちらでも平民の子が『祝福』を授かったんですか?」
 「ええ、マントイフェルでは多いかもしれませんね。 というか、王家直轄地には、と言った方がいいですね。 王家が治めてますので、治安も良いですし、職もありますからね。 貴族籍を外された元貴族の平民の人が移住してくるんですよ」
 「はぁ、そうなんですね」
 「ええ……元貴族の平民が何代も続くと、平民の中でも突発的に『祝福』を授かる子供が出るんです。 そういう子は血筋の貴族に引き取られたり、『祝福』によっては騎士団に勧誘されたりするんですが……」

 代官は眉尻を下げて困った顔をして続けた。

 「元貴族の血が遠すぎると、両親や親せきに『祝福』の授かった者が居ない子供達には、魔力制御の指導者がいないんです。 15で、無償で魔法学校へは行けますが、魔力制御が出来て『祝福』を使える者という条件があるんです。 なので、入学前に対象の子供達に講義するんですよ」

 代官の秘書が後を続ける。

 「1階で集まっていた子供達は、その講義の受付をしていたんです。 『祝福』の証でもある『取扱説明書』を提示していたのでしょう」
 「『取扱説明書』……」

 (やっぱりか、あの羊皮紙、何か嫌な感じがしたんだよね……)

 背後でノルベルトが書類の確認を終えると、秘書に浅く頷き、アルフに声を掛けてきた。

 「若様も参加されますか? 魔力制御も私がお教えしようと思っていましたが、同じ年の友達を作る事も必要でしょう。 グラン、お前も参加しなさい」
 「はい、父上」

 ノルベルトの隣で同じように立っているグランにも参加を促し、グランは躊躇いなく首肯した。

 (あ、これは有無も言わさずだ。 強制参加だっ!)

 講義は明日の午後から1週間行われる。 参加書類にアルフとグランがサインをして、一応『取扱説明書』を提示した。 グランの羊皮紙を覗き込むと、祝福は『暗器』と書かれていた。

 「ああ、僕の祝福は、アテシュ家の家系の物です」

 覗き見ているアルフに気づくと、グランはニヤリと笑ったように見えた。 アテシュ家の言い知れぬ恐怖を誘う理由が、たった今、分かった様な気がした。

 ◇

 疲れ果ててロイヴェリク家に戻ると、屋敷がざわついていた。 中央の短い階段を上って玄関ホールに入る。 メイドのモナに濡れタオルを渡され、顔や手を拭いた。

 モナの狼狽えた様子に首を傾げていると、アルフの帰宅の知らせを聞き、コンラートが玄関ホールに走り込んで来た。 コンラートにしては、珍しく慌てている。

 「若様、お帰りなさいませ」
 「どうしたんですか? コンラートさん」
 「若様、私に敬語は結構です。 コンラートとお呼び下さい」
 「あ、ごめんなさいっ」
 
 『父上、何か、あったんですか?』と眉を顰めたノルベルトが父であるコンラートに問いかけると、深く頷いてコンラートの半月眼鏡がキラリと光った。 コンラートがアルフの方へ向き直る。

 「若様、大奥様の兄上様なのですが。 若様が見つかったと聞き、ギファイ伯爵様が先程、お着きになりました」
 
 『……また、先ぶれもなくですかっ』とノルベルトは、呆れた様に大きく息を吐き出した。

 (は、伯爵様っ! 僕からしたら、めちゃくちゃお偉いさんじゃないかっ)

 「えと、まさかと思うけど……僕に、会いに来たとか?」

 アテシュ家の3人が同時にアルフを振り返り、見つめて来る。 アテシュ家の3人が無表情で、アルフを追い詰めて来た。

 「「「当たり前じゃないですか、それしかありませんよ」」」
 「……っぐ」

 (それしかないよねっ)

 1階の右側には、応接室と貴賓室がある。 アルフたちはコンラートに連れられて、大伯父が待つ応接室へと急いだ。 貴賓室は王家がお忍びで来る時しか使用されないらしい。

 中央の大階段の横に応接室がある。 コンラートが応接室の扉をノックすると、低い声で返事があった。

 「ギファイ伯爵、若様をお連れ致しました」
 「うむ、入れ」

 中々、偉そうな感じの声だ。 アルフの心臓は大きく鼓動し、爆発寸前だ。

 (今度は噛まない様にしないとっっ)

 「失礼します、ギファイ伯爵。 初めてお目にかかります、アルフレートと申します」

 胸に手を当てて、頭を下げる。 アルフは噛まずに言えた事で、心の中で拳を突き上げた。 頭上で鼻息を吹き出す音が鳴り、厳しい声が降りて来る。

 「平民の中で育った割には出来ているが、まだまだ教育が必要だな、ノルベルトよ」
 「……っ」

 ノルベルトとコンラートは扉の前で立っていて、無言で頭を下げた。 グランはアルフの直ぐ後ろで控えている。 大伯父が座っているソファーの後ろには、怖そうな騎士が2人立っていた。

 (仕方ないだろうっ、お貴族様となんか、話し事がないんだからっ)

 大伯父だという人は、厳しい表情をした怖そうな人だった。 きちっとした身なり、中肉中背で祖母と同じ瞳の色をしていたが、祖母とは違い、冷たそうな印象を受ける瞳だった。

 じっと見つめられ、アルフの肩が小さく跳ねる。

 心の中でだけ、小さく悲鳴を上げて恐怖を何とか耐えた。 嫌な空気が応接室で漂うと、アルフはどうすればいいのか、固まってしまった。

 (もの凄く怖いんだけどっ……誰か助けてっ!)

 助けを求めて周囲を見るが、皆と視線が合わない。 直ぐ後ろに立っているグランとも全く、視線が合わなかった。

 静まり返った空気に耐え消れなくなった頃、応接室の扉がゆっくりと開いた。

 「お兄様、そんなに怖い顔をしていれば、何も言えなくなりますよ。 ねぇ、アルフ」
 「えっと……」

 (おばあ様っ……そんな、答え辛い事、訊かないでっ)

 大伯父に対して祖母の何気ない軽口に、アルフは固まるばかりである。 上目遣いで大伯父を盗み見る。 目玉だけが鋭くアルフに向いた後、大伯父は直ぐに祖母へ優しい視線を送っている。

 「マルガ、起きて大丈夫なのか?」
 「ええ、折角、お兄様が来ているのだから、お迎えしないと」
 「無理をしなくても良い」

 大伯父に祖母の介助を任せると、メイド長のステフィはコンラートの隣に立った。 大伯父は祖母をソファーに座らせ、自身も向かいに座った。 祖母が自身の隣のスペースを手で軽く叩く。

 隣へ座れという合図だ。 アルフの喉が小さく鳴る。

 「は、はい、失礼しますっ」

 アルフがソファーに腰掛けると、グランはソファーの背後に立った。 早速、大伯父が今後の話を切り出した。 祖母は大伯父の話を黙って聞いていた。 所々、分からない言葉があったが、アルフも黙って聞いていた。

 「いいか、孫が見つかったからと言っても、私の考えは変わらんよ。 あの下宿屋は、色街にする」

 (ん? 色街? 色街ってなんだ?)

 「ここは林に囲まれているから、一目を避けられる。 屋敷に入ってしまえば、何が行われているか分からないからな」
 「お兄様、何度も言っていますが……。 ここには王家の皆さまも、お忍びで来られます。 色街など、不埒な経営はできません」
 「大丈夫だ、オレグに経営をさせる」

 祖母は、大伯父の言葉に深く溜め息を吐いた。

 「お兄様、オレグでは色街の経営は無理ですわ。 あの子は、何と言うか……、所謂、脳筋なんですから」
 「脳筋?」

 アルフの呟きを拾った祖母が説明をしてくれた。 何でも力で解決し、武力を以ってしか物事を考えられない人の事を指すのだそうだ。 大伯父が真っ赤になって叫んだ。

 「私の息子を馬鹿にするなっ! あれは脳筋ではないわっ」
 「平行線ですわね。 というか、ここの土地は、ロイヴェリク家の物であって、ギファイ家の物ではありませんのよっ!」
 「お前の病気の薬代を出しているのは、この私だっ! この土地を自由にする権利があるっ!」
 「そんなの暴論ですわっ! 裁判では勝てませんことよっ、お兄様っ!」
 「……っぬぐぅ」

 闘病しているというのに、祖母からとても大きな声が出た。 大叔父は、何か変な声を出した。

 「薬代を出して頂いているのは、とても感謝しています。 今、私が生きているのは、お兄様のお陰ですわ」
 「そうだろう、ならっっ……」
 「でも、これとそれとは全く、話が違いますっ! アルフも居るのです。 私はもう一度、下宿屋を開いて、あの時の賑やかだったレープハフトハイムを復活させたいのですっ! お義父様やお義母様と、エルストンとやって来たようにっ……」
 「……っその身体では無理だろうと言っているんだっ」

 祖母は必死になって大伯父に訴えている。 アルフは前庭を挟んで建つ建物の事を思い出し、頷いて納得した。 レープハフトハイムは賑やかなアパートという意味だ。
 
 (ちょっと、見てみたいな。 曾祖父母や、祖父母たちがやっていたレープハフトハイム)
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