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第二話 ロイヴェリク男爵家

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 ロイヴェリク家の始まりは、王家の窮地を救った事から始まる。 視察に訪れていた当時の王子が野盗に襲われ、毒が塗られたナイフで切り付けられ行き倒れた。 行商で通りがかったビンチェンツオいう青年が、倒れていた王子と多くのお付きの人達を発見し、助けた事がきっかけだった。

 後のアルフレートの曾祖父である。

 ビンチェンツオが連れていた事務員であるマレンは、下級貴族の末娘で、祝福である『植物会話』を授かっていた。

 「マレン、君の祝福で彼らを助けられないかっ?」
 「植物たちに解毒薬を訊いてみますっ。 直ぐに調合しますわっ!」
 「あぁ、頼む」

 倒れている身なりの良い青年を眺め、周囲で倒れている人々を見回して、ビンチェンツオはポツリと呟いた。

 「きっと彼は、何処かの偉いお貴族様だな」

 ビンチェンツオは行商人をしているが、まだまだ半人前で、営んでいるのは小さい商会だ。 勿論、王子や貴族とも会った事がない。 まさか、倒れていた青年がローゼンダール王国で、ただ一人の王子だとは気づかないでいた。
 
 下級貴族であるマレンも末娘であり、王族と会える事もないので、王子の顔を知らなかった。

 二人は後に、王家断絶の危機を救った事で、徐爵されて男爵位を賜り、下級貴族となった。 褒賞として、領地も与えると言われたが、丁寧に断りを入れた。 なればと、王子の気に入りの保養地と屋敷を与えると言われ、ビンチェンツオは有難く受け取った。

 代官が派遣されているのならば、領主にならなくてもいい。 ビンチェンツオは自身が領主など務まる訳がないと考えており、王家の保養地の管理人気分でいた。

 後に、王子は助けられた事をとても感謝して、お互いが亡くなるまで、王子がビンチェンツオの所へお忍びで会いに来ていた。

 ◇

 王子が気に入っていた保養地を下賜され、保養地の名をロイヴェリクと名付け、曾祖父が男爵となり、ロイヴェリクと名乗る事を王家から許された。

 保養地、王家の直轄地マントイフェルは、大きな街ロームと中くらいの街ロッシュ、デリエの3つの街がある。 そして、マントイフェルの端に、ロイヴェリクがある。

 ロイヴェリクの位置は、王都の端とも言われている。 元保養地のなで、屋敷は大きな林に囲まれていた。 曾祖父は王子から自由に使ってよいと言われ、林の入り口を切り開いて広く場所を空けて、下宿屋の建物を建てた。

 馬車で30分ほど王都の方角に走らせると、王立魔法学園がある。 遠くから通う学園生で寮に入れず、高い下宿代を払わらなくてはならない下級貴族や平民出身の生徒の為、曾祖父は格安の下宿屋を始めた。

 祖父の代までは下宿屋を営んでいたが、アルフレートの父親は騎士になると家を飛び出した。

 祖父はロイヴェリク家の行いに誇りを胸に、平民感覚の両親にしては貴族らしく育った。 ビンチェンツオに恩義のあるアテシュ家の教育のお陰でもあるだろう。 祖父は王家の人々もお忍びでやってくるロイヴェリクを失くしたくなかった。

 反対に息子のウ―ヴェは、祝福で授かった『チャクラム』で騎士として大成したい思いがあった。

 ウ―ヴェは飛び出して行ったまま、平民の娘と知り合い、結婚をして子供を授かったという事が、アテシュ家の調査で分かった。 報告を受けた数日後だった、息子夫婦と生まれたばかりの子供が馬車事故に巻き込まれたのは。

 薄暗い部屋で小さい息を吐き出し、弱々しい呼吸を繰り返す音が寝室のベッドの上で響く。

 4・5人ほどが寝られる大きなベッドは、備え付けてあるカーテンが引かれていた。 カーテン越しに映る人影は、今にも逝ってしまうのではないかと思われる程、弱々しく感じる。

 「そうですか……孫が見つかりましたか……」
 「はい、大奥様。 先ず、ご報告と若様をお迎えする為の準備の為、私が先に戻ってまいりました。 後日、ノルベルトと一緒に若様がお越しになられます」
 「そう……」

 ベッドの主であるアルフの祖母の声は暗い。 今まで13年間、放っておいたのだ。 怒っていてもおかしくはない。 マルガはアルフが受け入れてくれないのではないかと、不安で仕方がない。

 「……怒っていたんじゃないかしら? ずっと放っておいたから……」

 マルガの言葉を聞き、コンラートの半月型の眼鏡が光った。

 「若様の意思はまだ聞けていませんので、私には分かりかねます。 しかしながら、とても丁寧な話し方をされるので、それなりに教育を受けていた様です。 実年齢よりも、大人な考えを持っている方やもしれません」

 マルガは家令であるコンラートの話を何とも言えない表情で聞いていた。

 「苦労をしたから……大人にならざるを得なかったのかしらっ」
 「大奥様自身で、若様のお気持ちをお聞き下さい」

 コンラートは昔からここぞという時は、厳しい時がある。 マルガは諦めたように息を吐き出し、言葉を紡いだ。
 
 「分かったわ。 下がりなさい、少し休みます」
 「承知致しました」

 コンラートは頭を下げて寝室を出て行った。 扉が閉まる音を聴いてから、マルガは呟いた。

 「私たちの事、許してくれるかしら……」

 小さい溜め息が柔らかいベッドに落ちた。

 ◇

 車輪が街道の土を蹴り、馬の蹄の駆ける音が規則的に聞こえ、座席が小さく揺れて振動する。 馬車の揺れに合わせ、アルフの胃も小刻みに振動していた。 揺らされた胃が不快感を訴えて来る。

 先程、休憩で食べたチキンのサンドイッチが、食道をせり上がってくる不快感に、顔を青ざめて口元を押さえた。 何日も馬車で移動して来て、本日の昼過ぎに、マントイフェルに入る所だった。

 「ぐふっ……」

 (やばいっ……後、もう少しなのにっ、気持ち悪いっ……吐きそうだっ……っ。 こんな綺麗な服を着せてもらっているのにっ……馬車の中では……っ絶対に吐けないっ)

 祖母と対面する為、ノルベルトが貴族の子息が着るような服を用意していた。 今まで着た事が無い服に気後れしながら、宿屋で恐る恐る袖を通したのは、今朝の事だ。

 アルフの異変に、向かいで座っていたノルベルトが気づき、背後にある小窓を開けて、御者を務めるアッバスに馬車を止めるよう指示を出した。

 馬車を街道の端へ移動させ、行きかう馬車の邪魔にならない場所で、ゆっくりと止まった。

 「若様、こちらへ」

 速やかにアルフを抱きかかえ、アッバスが草叢に布を敷く。 優しく敷かれた布に寝かせられ、アルフは恥ずかしさで顔を真っ赤にした。 1月だというのに、少しだけ冷たい風が心地よかった。

 (くそっ……めちゃかっこ悪いっ)

 「す、すみませんっ」
 「いえ、若様は馬車に乗り慣れておられないでしょうから、想定内です」
 「……っ」

 乗り慣れない馬車の旅で、アルフは度々、体調を崩していた。 素早くアッバスに指示を出し、桶と濡らした布、飲み水を持ってこさせると、ノルベルトはさっとアルフの前へ持って来る。

 「さぁ、吐いてしまえば楽になりますから」
 「……ありがとう、ノルベルトさん、アッバスさん」
 「若様、我々に敬称は要りません。 呼び捨てでお呼び下さい」
 「……っ」

 アルフの背中を大きな手で擦られ、吐き気が再び起こり、桶へ盛大に吐いてしまった。 アルフの精神は羞恥心で削られ、大いに消耗した事は間違いない。

 アルフを乗せた馬車は、予定よりも遅くなり15時頃、漸くマントイフェルに入った。

 農耕都市であるロッシュ、道具屋街のデリエを通り過ぎ、大きな主要都市であるロームの街も通り過ぎた。 ロームの街の門を出て暫く走ると、林が見えて来た。 孤児院を出た事がないアルフは、どんな街なのか見てみたかったが、馬車酔いでそんな気分にならなかった。

 街道を暫く走り、大きな門が視界に入り、アルフは顔を上げた。 馬車は林の中を走っていた。

 「着きましたよ、若様」

 ノルベルトが馬車の扉を開け、先に降りてアルフに手を差し出す。 子供扱いに、少しノルベルトの手を取るのは躊躇われた。

 「まだ、体調が思わしくないでしょうから、私の手につかまり下さい」
 「あ、ありがとうござい……じゃなくて……。 ありがとう、ノルベルト」
 「いえ」

 アルフの返事に、ノルベルトは僅かに笑みを浮かべた。 体調の事を言われると、手を取るしかなくなる。 そっとノルベルトの手に掴まり、馬車を下りた。 ロイヴェリクの屋敷は、広い林の中に建てられている様で、周囲から屋敷は見えない様だ。

 屋敷の前に立つと、深い緑の香りがアルフを包み込み、緑の香りを吸い込んだ。

 前庭を挟んだ向こう側に、幾つもの建物が並んでいる。 手前の大きな建物の所為で、どの様に建物が並んでいるのか分からなかったが、人の気配がしない。 後で誰かに訊いてみようと、アルフは先に進むノルベルトの後を追った。

 ◇

 屋敷に入ると、自身の祖母だという人の部屋へ連れて行かれ、祖母と会う事になった。 アルフの心臓は、祝福の義の時の様に緊張し、鼓動が速くなった。

 (……っもの凄く緊張するっ)

 「若様」

 屋敷の4階の右端の大きな部屋が祖母の部屋で、左端にある同じくらいの大きさの部屋がアルフの部屋になるらしい。 家令のコンラートが祖母の部屋の扉の前で、アルフと向き合った。

 「大奥様は、ご病気で闘病されておられます。 あまり体調も良くありません。 あまり時間が取れませんが、よろしいですか?」
 
 アルフはコンラートの問いかけに無言で頷き、コンラートも静かに頷き返した。

 扉がノックされると、メイドが顔を出した。 メイド長をしているステフィは、祖母の専属メイドなのだそうだ。 紺色のメイド服を上品に着こなしている。

 祖母の部屋は、二間続きになっている様で、居間の奥に寝室の扉があった。

 ステフィに案内され、居間に入り、寝室に続いている扉の前に立った。 ノックの後にアルフが来ている事を告げられる。 返事は直ぐに返って来た。

 「お入りなさい」

 か細い声だったが、優しそうだと感じる声だった。

 「し、しつれいしあmす……っ」
 
 (緊張で噛んだっ!)

 咳払いで喉を調整し、もう一度、挨拶をした。 背後でコンラートとステフィが微笑ましそうに微笑んでいる気配が居たたまれない。

 「失礼します。 初めまして、おばあ様。 アルフレートと申します」

 ベッドまで近寄り、深々と頭を下げた。

 「初めまして、アルフレート……私は、貴方の祖母で、マルガ・エル・ロイヴェリクです。 慣れない馬車の旅で体調を崩したようですが、もう大丈夫なのですか?」
 「は、はい。 ノルベルトとアッバスが良くしてくれたので……大丈夫です」
 「そう、良かったわ。 もう少し近くに来て、よく顔を見せてくれないかしら」
 「は、はい」

 アルフは緊張しながら、ベッド脇まで歩を進めた。 顔を上げると、優し気に微笑む眼差しとぶつかる。 何となくアルフに似ていると、感じた。 祖母も思ったらしく、嬉しそうに小さく笑った。

 「ウ―ヴェの小さい頃に良く似ているわ。 あの子は母親似なのよ。 貴方もウ―ヴェに似て、美男子になるわね」
 「……っ」

 美男子になるかどうかは分からないが、じっと見つめられる事に恥ずかしくなり、顔を俯いた。

 「貴方の父親のウ―ヴェは、騎士になりたくてね。 祝福も折角、騎士になれる『チャクラム』を授かったのだから、騎士になって活かしたいと、いつも言っていたわ。 夫、エルストンは屋敷と男爵家を守る事に固執していて……っ意見が分かれてしまったの。 騎士になっても王家に貢献出来るって言って、ウ―ヴェは出て行ってしまった……」

 そっと優しく頭を撫できた祖母の手は皺だらけで、眼差しは優し気だが、何処か寂しそうだった。

 「ウ―ヴェは出て行ったっきりで、知らない間に結婚をしていて貴方を生んでいたわ。 そして、馬車事故が起こった。 貴方の死体は見つからなかったから、生きている事は分かっていた。 直ぐに探しのだけど、孤児院をたらい回しにされていたみたいで、どうしても見つからなかったの」

 祖母は今にも泣きそうな表情をしていた。

 「でも、生きているなら、貴方が13歳になった時、必ず見つかると思ったの。 祝福の義で貴方の居場所が分かると思って、探す事を止めてしまった。 それによって、貴方に辛い思いをさせてしまった……本当にごめなさいっ」

 祖母の懺悔を聞き、アルフはもういいかな、と思い始めていた。 祖母も辛い思いをしたのだろうと、物わかりの良い振りをしてしまったが、闘病中の祖母を責めるような鬼畜ではない。

 (ちゃんと会ってくれたし……僕の事を探してくれていたみたいだしね)

 「……確かに少しだけ恨んだ事もあります。 特に味の薄い豆スープの時はっ」

 拳を握りしめて言いつのったアルフの言葉に、祖母もコンラートとステフィも、口を開けて唖然としていた。 また、羞恥心に火がついたが、しどろもどろに自身の今の気持ちを口にした。

 「でも、まだ……許すとか、そんな事は言えないというか……その」
 「ええ、分かっているわ。 私たちはお互いに知り合う時間が必要だわ。 貴方さえ良ければ、暫く一緒に暮らしてくれないかしら……お互いを知る為に」
 「はい」

 アルフは笑顔で頷いた。 祖母のとの初対面を終え、ロイヴェリク家の屋敷の中を案内されたが、アルフが思っていた以上に屋敷は広かった。 今は使用人の紹介を受けている。

 使用人は家令のコンラートの家族で、アテシュ家の人々だ。 ノルベルトはアテシュ家の長男で執事、ノルベルトの妻、アンドレアもメイドとして働いている。 ノルベルトの息子でグラシアノは、アルフと同じ年で、ノルベルトに付いて執事見習いをしている。

 将来はアルフの家令になる為、修行中なのだとか。 無表情な少年の顔をじっと見つめた。

 (僕と同い年なのに、もう将来の事を決めてるのっ?!)

 後、コンラートには次男がいて、ロイヴェリク家の従士をしているのだが、今は武者修行中だとかで、居所を調べて呼びよせている最中だとか。

 厨房係は、老夫婦のエーリッヒとナデシュタ、2人とも白いコック服を着ている。 灰色の繋ぎ姿の3人は、庭師のホルストと養女のナディネ、弟子のウドだ。 一緒にロイヴェリク家まで御者を務めてくれたアッバスは、従者だという。 御者服から従者の服に着替えていた。

 (皆、夫婦か親子なんだな)

 一般の平民は、成人すると何も目指す物が無ければ、親や親せき、家の稼業を手伝うのが常識となっている。 1階の玄関ホールで使用人の人達と挨拶を交わした後、アルフの部屋へ向かった。

 案内をしてくれるのは、メイドのモナだ。 ノルベルトが別の家で奉公している時に見つけ、育てて連れて来たメイドだ。 アルフの専属のメイドになるそうだ。 ツインテールがトレードマークで、紺色のメイド服がとても似合っている少女だ。

 4階の左端の部屋がアルフの部屋なのだが、信じられないくらいの広さだった。

 普通の男爵家の屋敷だと、ここまで広くはないそうだが、元が王家の保養地という事で、男爵家としては考えられないくらい豪奢だという。

 アルフの部屋は二間続きで、居間と寝室、寝室の奥にクローゼット、寝室の反対側に風呂とトイレ、使用人の待機部屋がついている。 使用人の待機部屋には、アルフに付くグラシアノが使う様だ。
 
 自身の部屋を確認した後、アルフは唖然として口を開けた。 孤児院では大部屋で、8人くらいで1部屋を使っていた。 孤児院との落差に驚きで言葉が出て来ない。

 「……っこれ、僕が1人で使うの?」
 「はい、使用人部屋には、執事見習いのグラシアノが、常時待機する事になっています」
 「……そうっ」

 自身の部屋を一通り見たが、立派過ぎて気後れしてしまう。 モナは食事の準備も手伝う事になっているらしく、案内を終えると夕食準備の為、部屋を出て行った。

 体重を預けて、アンティーク調の高級なソファーに腰掛ける。 子供なのに重い音を鳴らした。

 部屋で1人になって、やっと息を吐き出し、落ち着いた。 コンラートの話では、一度、祖母と会ってみないかという話だったはずだ。 なのに、いつの間にか祖母と暮らす事になっている。

 「……解せない」
 「祖父は侮れないですよ。 油断していると、祖父の思いのまま動かされます」

 誰も居ないと思っていたはずなのに、背後から少年の声がかかり、驚いたアルフはソファーから飛び上がった。

 「だ、誰っ?!」
 
 アルフの必死の形相に少年は頭を下げた。 少年は子供用の黒い執事服を身に着けていて、濃紺の瞳に、薄茶色の髪を襟足だけ伸ばして、1つに結んでいる。 先程、紹介されたグラシアノだった。

 (良く見ると、もの凄い美男子だっ。 コンラートとノルベルトと同じ色だし……そして、同じ気配っ)

 「驚かせてしまい申し訳ありません。 先程はきちんと挨拶が出来ませんでしたが、私はアテシュ家の嫡男、グラシアノ・フォン・アテシュと申します。 若様の執事見習いを仰せつかりました」

 綺麗に従者の礼をして見せたグラシアノに、アルフは困惑しながらも頷いた。

 「あ、あぁ、よろしくお願いします」

 アルフも頭を下げたが、下げた頭を強引にグラシアノに持ち上げられた。

 「若様、使用人に頭を下げないで下さい。 私が祖父母と父母に叱責され、叔父に知られたら、殴られます」
 「えっ……」
 (それって……アテシュ家の皆じゃないかっ)
 「だから、私が家族の皆から怒られないようにして下さい」
 「えっ……あ、うん。 気を付けるよ?」
 
 グラシアノの言いように、二人の間で妙な間が生まれる。 どうすればいいのか分からなかったが、何事も無かったように、グラシアノが無表情で言葉を発した。

 「若様、今後はグランとお呼び下さい」
 「……うん、分かった。 僕の事もアルフって呼んで。 折角同い年なんだし、普通に話そうよ」
 「無理です。 家族全員から殺されます」
 「えぇっ! 全員からっ?!」

 無表情な顔で、無言で頷くグラン。

 (さっきから全く、笑わないんだよね……残念だ、仲良くしたいのにっ)

 「……分かったよ、グラン」

 コンラートとノルベルトを脳裏に思い浮かべ、グランの顔を見る。 深く首肯し、3人の雰囲気がそっくりなので、家族なんだと納得した。

 今後、ロイヴェリク家で上手くやって行けるのか、とても不安になった1日だった。
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