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41話 君の為なら、悪魔に身を落としても構わない。
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優斗たちは、主さまの手紙に書いてあった通り、結城真由と結婚したという、貴族の屋敷へ向かっていた。 途中で魔道具の街のギルドに寄り、華の回復薬を卸す事になった。 ギルドの伝書鳩が、回復薬が入用になったという事で、注文書を届けて来たのだ。 優斗たちは、街中の様子を見ながら、ギルドの出口で華を待つ事にした。
優斗の脳内では、華がギルドの職員と話している映像が流れてくる。 優斗は普通に視ているつもりだったが、若干、華のこめかみが引き攣っている。 優斗の視線が無意識に鋭くなっていたようだ。 瑠衣が呆れた顔をして、優斗に話しかけてきた。
「優斗! お前っ、めちゃ怖い顔になってるぞっ」
「王子、心配し過ぎ」
瑠衣に肩を引かれ、瑠衣の肩越しに呆れたような仁奈の顔が覗く。 しかし、優斗の意識が脳内の華の映像から離れた一瞬の隙を突かれた。
『花咲華の危険を感知しました。 黒い影が迫っています。 花咲華が攫われます』
監視スキルの声を聞くと、直ぐに身体が動いた。 優斗は背後にあるギルドの扉を乱暴に開けると、裏口へ急いだ。 瑠衣たちも、優斗の様子に後を追う。 フィルが優斗の頭上に乗ると、同化する感覚が全身を駆け巡った。
ギルドの裏口には薬品庫があり、華が回復薬を運んで行った映像が再生された。 優斗が薬品庫へ辿り着いた時には、華は黒い影に捕まっており、優斗の目の前で黒い影と一緒に消えた。
消え際にチラリと見えた華は、目を見開いて、言葉にならない叫び声を上げていた。 後には、華の叫び声が残っただけだった。
「華~!!」
『転送魔法陣を展開します。 転送先は花咲華の真上です』
監視スキルの声が脳内で響くと、薬品庫の床に転送魔法陣が展開される。 優斗は発動を待たずに魔法陣の中心部まで走り、瑠衣たちを振り返った。
「行って来る」
それだけ言うと、転送魔法陣が発動され、中心部に穴が開くと、優斗は転送魔法陣の中へ落ちていった。 残された瑠衣たちは理解が追いつかず、動けなかった。 瑠衣の脳裏で風神の声が響く。
『主! 転送魔法陣に入って、後を追え! 早くしないと魔法陣が閉じるぞ!』
風神の声で我に返った瑠衣は、ポケットからネックレスを取り出すと、隣で呆然としている仁奈の首に掛けた。 風神の方へ視線をやって合図を送る。 風神が頷くと、ネックレスが光を放ち、瑠衣の指輪もキラリと光る。
「くそっ! こんなタイミングで渡すつもりなかったのにっ! 大した物じゃないけど、仁奈を守ってくれるお守りだから、つけとけ! 『一生、外すな』 俺たちも行くぞ。 仁奈!」
瑠衣の迫力に負けて、訳も分からず仁奈は頷いて了承した。
「わ、分かった!」
仁奈の返事を聞いて瑠衣が駆け出した。 風神も後を追い、雷神の鳴き声でハッと我に返り、仁奈も瑠衣の後を追って転送魔法陣へ飛び込んだ。 仁奈が返事した後、再び仁奈のネックレスと瑠衣の指輪が光った事に、仁奈は気づかなかった。
――華が連れてこられたのは、豪華な屋敷の一室だった。
黒い影は華を部屋へ放り出すと、姿を消した。 いつぞやの既視感に、華は真由の仕業だと理解した。 しかし、誰も居ない様だった。 縛られてもいない。 華が移動しようかと思っていた所、天井で魔法陣が展開される音を聴き、見上げた先に必死な形相で降りて来る優斗の姿を捉えた。
――床に降り立った優斗が華へ駆け寄って抱きしめる。
「大丈夫か、華!」
「うん」
「あいつ?! 黒い影は何処へ行った?」
「分からないっ! この部屋に入ったら消えたの」
華が顔を振り、返事を返した。 優斗が周囲を見回していると、魔法陣から瑠衣と仁奈が風神に乗り、降りて来た。 雷神の鳴き声が聞こえ、仁奈の肩へ降り立つ。 全員が魔法陣を抜け、魔法陣が閉じられる音を室内に響かせた。
「ここは何処だ?」
優斗の脳内で地図が拡がり、屋敷の見取り図が開かれる。 優斗たちの転送先は大きな屋敷で、部屋数も多く、貴族でも家格の高い貴族の屋敷だと推測される。
『屋敷から悪魔の気配がします。 警戒して下さい』
地図を見ると、1階の大広間に『春樹の剣』の吹き出しが黒い点を指していた。 黒い影が連れて来た事を考えると、何か罠があるに違いない。 頭上からフィルの声が降りてくる。
「ユウト、ぜったいになにか、わながあるよ」
「ああ、でも本物だったら、必要だろう?」
瑠衣たちに、屋敷に春樹の剣がある事を説明すると、瑠衣たちも同じ意見だった。
「でも、確認は必要だな。 確認しに行こう、優斗」
「ああ、華たちはここに」
「「「勿論、私たちも行くわよ」」」
優斗と瑠衣は難色を示したが、一向に3人も引かないので、全員で行く事にした。 1階の大広間へ降りると、中央の台の上にガラスケースが置かれていた。 ガラスケースの中には、春樹の剣が飾られていて、黒いオーラが染みだしている。 黒い影も何処にも見当たらず、大広間は静寂に包まれていた。 優斗たちは、ゆっくりと春樹の剣に近づいていった。
『本物の勇者の剣です。 悪魔が剣に憑りついています。 触れないで下さい』
頭上からフィルが降りると、銀色の少年の姿へ変わる。 フィルがガラスケースに近づき、全員の喉が鳴った。 全員がフィルとガラスケースに集中している中、華の背後に気配もなく黒い影が近づく。
『黒い影が花咲華に接近しています』
「じゃ、開けるよっ」
監視スキルの声に、優斗の眉間に皺が濃くなる。 黒い影の手が華の肩に触れた瞬間、優斗の木刀が黒い影の身体を切る。 黒い影は、ゆらゆら揺れて歪んだだけで、優斗の攻撃は効かなかった。
華を背中で庇い、優斗は黒い影を見据えた。
「そんな、何度も同じ手は食わないよ」
華の足元で魔法陣が展開され、結界が発動された。 瑠衣と仁奈も武器を構えると、黒い影も戦闘態勢に入ったようだ。 黒い影が人影になり、誰の影なのか分かる姿になった。 ベネディクトだ。
黒い影が大鎌を作り出し、半月状の黒い刃を生成させる。 顔もない黒い影がニヤリと嗤ったような気がした。 華を後ろへ下げ、フィンに任せると、優斗は結界を飛び出した。
「フィン! 華を頼む!」
「ええ、分かったわ」
フィンが2メートル級の大きさへ変わると、華を飲み込み、結界がフィンごと包んだ。 フィルが頭の上へ飛び乗り、同化する感覚が全身を駆け巡り、優斗の魔力が上昇していく。
木刀に魔力を流すと、花びらが舞い、木刀が氷を纏っていく。 氷の刃を生成させた優斗は、黒い影に向かって放つ。 刃同士がぶつかり合い、火花が散ってせめぎ合った後、両方の刃が霧散した。
鞭のしなる音が大広間に響き、瑠衣の鞭が黒い影を捉える。 しかし、ゆらゆらと揺れて歪むと、瑠衣の鞭は黒い影を通り抜けていく。 黒い影を捉える為、仁奈の槍の鉾が煌めく、無情にも鉾は黒い影をすり抜けていった。 後に続いて放った瑠衣の矢も、すり抜けていった。
大広間の床が、瑠衣の矢が突き刺さる音を響かせた。 銀色の足跡を踏んで踏み込み、胴を打ちに行くが、優斗の木刀も黒い影の身体をすり抜けた。
「っくそ! やっぱり全然、手ごたえがない! どうする、優斗!」
「悪魔が憑りついてる春樹の剣なら、攻撃が通るかもっ」
「ダメだよ、ユウト! はるきのけんに、ふれたら、あくまにとりつかれる!」
優斗は舌打ちをして、別の作戦を考える事にした。 黒い大鎌の持ち手の部分が伸びていき、大鎌が大きく振り払われた。 大鎌に、華とフィンが結界ごと、天井高くに叩き飛ばされていった。
華とフィンの前には、優斗と瑠衣、仁奈と風神がいた。 にもかかわらず、大鎌は全員の身体を通り抜け、華とフィンだけを叩き飛ばしたのだ。
一瞬、何が起こったのか理解が追いつかず、優斗たちは動けなかった。 大広間の床に黒い渦の様な穴が開くと、華とフィンが穴へ吸い込まれるように落ちていった。
「華っ!!」
身体が反射的に動き、華を追う様に黒い穴へ飛び込む寸前、優斗の心臓が大きく跳ね、足に衝撃を感じて黒い穴の手前で転んだ。 フィルがいつの間にか銀色の少年へ姿を変え、優斗の足に縋り付いていた。 優斗が黒い穴に飛び込もうとしている事を察して、フィルが止めたらしい。
「ユウト、ダメだ! 穴の底は魔族と悪魔しか生息出来ない場所に続いてる。 落ちたら死んじゃうよ! 主さまに連絡を取るから待って!」
「華も危ないじゃないか! そんな悠長な事、言ってられない! 華を助けに行く!」
「ハナなら、大丈夫だよ! エルフの秘術を帯びた血が守ってくれる! ユウトの中のアンバーさんの血では、それは難しい!」
「アンバーさんの血?! そうか、もしかしたら、いけるかもしれない!」
優斗は背後を振り返り、春樹の剣を視界に捉えると、フィルを振り切ってガラスケースへ近づいて行く。 木刀で躊躇いなくガラスケースを割ると、春樹の剣を手に取った。 瑠衣たちは、優斗の気迫に押されて、言葉もなく動けなくなった。
(俺は、華の為なら、悪魔に身を落としても構わない)
春樹の剣に憑りついている悪魔は、エルフの血を感じ取り、黒いオーラが優斗の手を避けているようだった。 悪魔を見据えた優斗が問いかける。
「お前も、剣なんて無機物に憑りつくより、人間の俺に憑りつく方がいいだろう? エルフの血が入った人間に憑りつけたら、最強になれるかもしれないぞ。 さぁ、選べ! エルフの血で消されるか、俺に憑りつくか!」
優斗はエルフの血で悪魔を消した事はないが、悪魔を挑発する為にはったりをかました。 悪魔は消されるよりも、優斗に憑りつく方を選んだようだ。 黒いオーラが優斗を包み込んでいき、視界が暗くなる。 以前に取り込まれた時と同様に、闇に包み込まれるかと思われたが、心臓が大きく跳ねた。 優斗の全身が熱くなり、エルフの血が全身に駆け巡るのが分かった。 悪魔が優斗の心臓を捉えようとした寸前、エルフの血が悪魔をガシッと掴んだ。
エルフの血が悪魔を捕まえると、悪魔は一瞬震えて動かなくなった。 優斗は身体の奥で、不思議な感覚を感じていた。 確かに悪魔が同居しているのに、闇に心が捕らわれていない。 優斗の視界が晴れると、心配そうな顔で優斗の顔を覗く瑠衣たちの顔が視界に入った。
「大丈夫か、優斗!」
「俺、どれくらい気絶してた?」
「一瞬だけだ。 まだ、ゲートは開いてる。 何ともないのか?」
優斗からは、不思議だがグレーっぽいオーラが染み出していた。
「ああ、エルフの血が俺の心臓で悪魔を閉じ込めてる」
優斗の話を聞いて、フィルが目を見開いて驚いている。
「うそ! そんな事が出来るなんて!!」
「そうか。 なら、次は俺たちの番だな!」
瑠衣がそういうと、片目を瞑って明るく笑った。
「へ? 瑠衣たちの番って?」
優斗は眉を顰めて、理解が追いつかない表情をしている。 フィルと仁奈も、風神と雷神も、意味が分からない様子で瑠衣を見つめた。
「優斗が何ともないなら、俺たちを優斗が悪魔の力で操っても何ともないはずだろう? 優斗が操れば、俺たちも一緒に行ける。 ただし、ここに残れっていう命令は聞かないからな。 ここまで、一緒に来たんだ。 俺は最後まで、嫌だって言われても、優斗と一緒にいるからな! もし、優斗が死んだら骨は俺が拾ってやる。 だから俺が死んだら、俺の骨は優斗が拾ってくれ」
「当然、私もね」
瑠衣と仁奈の真剣な顔に、優斗は息を吐き出して瑠衣の言う通りにした。 瑠衣と仁奈にグレーっぽいオーラが放たれると、瑠衣と仁奈からは、優斗と同様にグレーっぽいオーラが染み出した。
瑠衣と仁奈も優斗と同じく、闇に捕らわれることなく、何ともないようだ。 ただ、何故か見た目が変わっていた。 優斗の背中からは、黒い蝙蝠みたいな翼が生えている。 おまけに、角も生えていた。 瑠衣と仁奈にも角が生えていたが、翼はない。 そして、フィルの白い羽根と、風神の角が黒に変わっていた。 優斗たちが思った事はひとつだ。
(((((華が見たら、絶対に泣いて喜ぶなっ!!)))))
フィルが『泣いて喜んで、ユウトの防具に翼を足しそうだよね』の一言に、一同が大きく頷いた。
春樹の剣は、優斗が倒れた時に床へ転がり、放置されたままだった。 春樹の剣に黒い影が忍び寄っている事に優斗たちは気づかなかった。 剣が床に擦れる音が背後で聞こえ振り向くと、黒い影が春樹の剣を抱えてゲートへ飛び込んだ所だった。
優斗たちは急いでゲートに飛び込み、悪魔と魔族しか生息できないエリアへと、落ちっていった。
――華が落ちた場所は、また、豪華な一室だった。
何度目かの既視感に、華の目が据わっている。 真由は何処でも、わがまま放題しているのだろうかと、呆れて目の前に立っている真由を見つめていた。 フィンとは落ちた時に逸れたらしく、側にはいない。 優斗たちも居ないので、華一人で真由と立ち向かわなくてはいけない。
華は覚悟を決めて真由を見つめた。 真由の口元が華の様子を見て、意地悪な笑みを作る。
「昨晩は、お楽しみだったようね」
真由の言葉に、華の顔から表情が無くなった。
(昨日、覗いてたのは、結城さんだったの?! どうやって覗いてたのかは置いといてっ)
「デ、デバガメしてたの?!」
「ちょっと! 人聞きの悪い事、言わないでよ! 偵察って言いなさいよ! あんたを攫う為に様子見してたら、あんたたちが勝手にイチャつきだしたんでしょが! 不可抗力よ! それよりも、ここが何処か分かってるの?」
「えっ」
「ここは、悪魔と魔族しか生きられない場所よ。 王子が来ても、ベネディクト様が王子をやっつけてくれるわ!」
真由の瞳が怪しく光り、何処か虚ろになっている。
(じゃ、何で私は平気なの? 結城さんは魔族に操られてるから平気だろうけど。 もしかして、エルフの血?)
「私、何ともないんだけど? 普通に息してるし」
「そんなの私が知ってるわけないでしょ! とにかく、あなたには死んでもらうから! じゃないと、ベネディクト様が安心して暮らせないのよ」
「結城さん。 もう、小鳥遊くんの事は好きじゃないの?」
「私に跪かない男には興味はないわ!」
(ベネディクトが結城さんに跪いてる所も想像できないけど)
華の背中にきつい視線が突き刺さり、優斗が視ている事に気づくと、華の身体が小さく跳ねた。
(こわっ! 『俺が結城に跪くわけないだろう』って思ってるよねっ。 背中が痛いよっ、小鳥遊くん!)
華が思っている事が顔に出ていたのか、真由の顔が真っ赤に染まる。
「ベネディクト様はいいのよ! 私の主なのだから! 私が跪く方よ。 もう、そんな事は貴方には関係ないわ! 貴方に死んでもらう前に、貴方の血を摂って調べるって言ってるから。 貰うわよ」
真由は注射器を持って、華に迫ってくる。 後ろへ逃げる華と、追いかけて来た真由が揉みあいながら、床へ転がった。 奮闘している間に、華の首に真由の手が掛かる。 華は息苦しさに顔を歪め、真由は瞬時に憎しみで顔を歪めた。
優斗の脳内では、華がギルドの職員と話している映像が流れてくる。 優斗は普通に視ているつもりだったが、若干、華のこめかみが引き攣っている。 優斗の視線が無意識に鋭くなっていたようだ。 瑠衣が呆れた顔をして、優斗に話しかけてきた。
「優斗! お前っ、めちゃ怖い顔になってるぞっ」
「王子、心配し過ぎ」
瑠衣に肩を引かれ、瑠衣の肩越しに呆れたような仁奈の顔が覗く。 しかし、優斗の意識が脳内の華の映像から離れた一瞬の隙を突かれた。
『花咲華の危険を感知しました。 黒い影が迫っています。 花咲華が攫われます』
監視スキルの声を聞くと、直ぐに身体が動いた。 優斗は背後にあるギルドの扉を乱暴に開けると、裏口へ急いだ。 瑠衣たちも、優斗の様子に後を追う。 フィルが優斗の頭上に乗ると、同化する感覚が全身を駆け巡った。
ギルドの裏口には薬品庫があり、華が回復薬を運んで行った映像が再生された。 優斗が薬品庫へ辿り着いた時には、華は黒い影に捕まっており、優斗の目の前で黒い影と一緒に消えた。
消え際にチラリと見えた華は、目を見開いて、言葉にならない叫び声を上げていた。 後には、華の叫び声が残っただけだった。
「華~!!」
『転送魔法陣を展開します。 転送先は花咲華の真上です』
監視スキルの声が脳内で響くと、薬品庫の床に転送魔法陣が展開される。 優斗は発動を待たずに魔法陣の中心部まで走り、瑠衣たちを振り返った。
「行って来る」
それだけ言うと、転送魔法陣が発動され、中心部に穴が開くと、優斗は転送魔法陣の中へ落ちていった。 残された瑠衣たちは理解が追いつかず、動けなかった。 瑠衣の脳裏で風神の声が響く。
『主! 転送魔法陣に入って、後を追え! 早くしないと魔法陣が閉じるぞ!』
風神の声で我に返った瑠衣は、ポケットからネックレスを取り出すと、隣で呆然としている仁奈の首に掛けた。 風神の方へ視線をやって合図を送る。 風神が頷くと、ネックレスが光を放ち、瑠衣の指輪もキラリと光る。
「くそっ! こんなタイミングで渡すつもりなかったのにっ! 大した物じゃないけど、仁奈を守ってくれるお守りだから、つけとけ! 『一生、外すな』 俺たちも行くぞ。 仁奈!」
瑠衣の迫力に負けて、訳も分からず仁奈は頷いて了承した。
「わ、分かった!」
仁奈の返事を聞いて瑠衣が駆け出した。 風神も後を追い、雷神の鳴き声でハッと我に返り、仁奈も瑠衣の後を追って転送魔法陣へ飛び込んだ。 仁奈が返事した後、再び仁奈のネックレスと瑠衣の指輪が光った事に、仁奈は気づかなかった。
――華が連れてこられたのは、豪華な屋敷の一室だった。
黒い影は華を部屋へ放り出すと、姿を消した。 いつぞやの既視感に、華は真由の仕業だと理解した。 しかし、誰も居ない様だった。 縛られてもいない。 華が移動しようかと思っていた所、天井で魔法陣が展開される音を聴き、見上げた先に必死な形相で降りて来る優斗の姿を捉えた。
――床に降り立った優斗が華へ駆け寄って抱きしめる。
「大丈夫か、華!」
「うん」
「あいつ?! 黒い影は何処へ行った?」
「分からないっ! この部屋に入ったら消えたの」
華が顔を振り、返事を返した。 優斗が周囲を見回していると、魔法陣から瑠衣と仁奈が風神に乗り、降りて来た。 雷神の鳴き声が聞こえ、仁奈の肩へ降り立つ。 全員が魔法陣を抜け、魔法陣が閉じられる音を室内に響かせた。
「ここは何処だ?」
優斗の脳内で地図が拡がり、屋敷の見取り図が開かれる。 優斗たちの転送先は大きな屋敷で、部屋数も多く、貴族でも家格の高い貴族の屋敷だと推測される。
『屋敷から悪魔の気配がします。 警戒して下さい』
地図を見ると、1階の大広間に『春樹の剣』の吹き出しが黒い点を指していた。 黒い影が連れて来た事を考えると、何か罠があるに違いない。 頭上からフィルの声が降りてくる。
「ユウト、ぜったいになにか、わながあるよ」
「ああ、でも本物だったら、必要だろう?」
瑠衣たちに、屋敷に春樹の剣がある事を説明すると、瑠衣たちも同じ意見だった。
「でも、確認は必要だな。 確認しに行こう、優斗」
「ああ、華たちはここに」
「「「勿論、私たちも行くわよ」」」
優斗と瑠衣は難色を示したが、一向に3人も引かないので、全員で行く事にした。 1階の大広間へ降りると、中央の台の上にガラスケースが置かれていた。 ガラスケースの中には、春樹の剣が飾られていて、黒いオーラが染みだしている。 黒い影も何処にも見当たらず、大広間は静寂に包まれていた。 優斗たちは、ゆっくりと春樹の剣に近づいていった。
『本物の勇者の剣です。 悪魔が剣に憑りついています。 触れないで下さい』
頭上からフィルが降りると、銀色の少年の姿へ変わる。 フィルがガラスケースに近づき、全員の喉が鳴った。 全員がフィルとガラスケースに集中している中、華の背後に気配もなく黒い影が近づく。
『黒い影が花咲華に接近しています』
「じゃ、開けるよっ」
監視スキルの声に、優斗の眉間に皺が濃くなる。 黒い影の手が華の肩に触れた瞬間、優斗の木刀が黒い影の身体を切る。 黒い影は、ゆらゆら揺れて歪んだだけで、優斗の攻撃は効かなかった。
華を背中で庇い、優斗は黒い影を見据えた。
「そんな、何度も同じ手は食わないよ」
華の足元で魔法陣が展開され、結界が発動された。 瑠衣と仁奈も武器を構えると、黒い影も戦闘態勢に入ったようだ。 黒い影が人影になり、誰の影なのか分かる姿になった。 ベネディクトだ。
黒い影が大鎌を作り出し、半月状の黒い刃を生成させる。 顔もない黒い影がニヤリと嗤ったような気がした。 華を後ろへ下げ、フィンに任せると、優斗は結界を飛び出した。
「フィン! 華を頼む!」
「ええ、分かったわ」
フィンが2メートル級の大きさへ変わると、華を飲み込み、結界がフィンごと包んだ。 フィルが頭の上へ飛び乗り、同化する感覚が全身を駆け巡り、優斗の魔力が上昇していく。
木刀に魔力を流すと、花びらが舞い、木刀が氷を纏っていく。 氷の刃を生成させた優斗は、黒い影に向かって放つ。 刃同士がぶつかり合い、火花が散ってせめぎ合った後、両方の刃が霧散した。
鞭のしなる音が大広間に響き、瑠衣の鞭が黒い影を捉える。 しかし、ゆらゆらと揺れて歪むと、瑠衣の鞭は黒い影を通り抜けていく。 黒い影を捉える為、仁奈の槍の鉾が煌めく、無情にも鉾は黒い影をすり抜けていった。 後に続いて放った瑠衣の矢も、すり抜けていった。
大広間の床が、瑠衣の矢が突き刺さる音を響かせた。 銀色の足跡を踏んで踏み込み、胴を打ちに行くが、優斗の木刀も黒い影の身体をすり抜けた。
「っくそ! やっぱり全然、手ごたえがない! どうする、優斗!」
「悪魔が憑りついてる春樹の剣なら、攻撃が通るかもっ」
「ダメだよ、ユウト! はるきのけんに、ふれたら、あくまにとりつかれる!」
優斗は舌打ちをして、別の作戦を考える事にした。 黒い大鎌の持ち手の部分が伸びていき、大鎌が大きく振り払われた。 大鎌に、華とフィンが結界ごと、天井高くに叩き飛ばされていった。
華とフィンの前には、優斗と瑠衣、仁奈と風神がいた。 にもかかわらず、大鎌は全員の身体を通り抜け、華とフィンだけを叩き飛ばしたのだ。
一瞬、何が起こったのか理解が追いつかず、優斗たちは動けなかった。 大広間の床に黒い渦の様な穴が開くと、華とフィンが穴へ吸い込まれるように落ちていった。
「華っ!!」
身体が反射的に動き、華を追う様に黒い穴へ飛び込む寸前、優斗の心臓が大きく跳ね、足に衝撃を感じて黒い穴の手前で転んだ。 フィルがいつの間にか銀色の少年へ姿を変え、優斗の足に縋り付いていた。 優斗が黒い穴に飛び込もうとしている事を察して、フィルが止めたらしい。
「ユウト、ダメだ! 穴の底は魔族と悪魔しか生息出来ない場所に続いてる。 落ちたら死んじゃうよ! 主さまに連絡を取るから待って!」
「華も危ないじゃないか! そんな悠長な事、言ってられない! 華を助けに行く!」
「ハナなら、大丈夫だよ! エルフの秘術を帯びた血が守ってくれる! ユウトの中のアンバーさんの血では、それは難しい!」
「アンバーさんの血?! そうか、もしかしたら、いけるかもしれない!」
優斗は背後を振り返り、春樹の剣を視界に捉えると、フィルを振り切ってガラスケースへ近づいて行く。 木刀で躊躇いなくガラスケースを割ると、春樹の剣を手に取った。 瑠衣たちは、優斗の気迫に押されて、言葉もなく動けなくなった。
(俺は、華の為なら、悪魔に身を落としても構わない)
春樹の剣に憑りついている悪魔は、エルフの血を感じ取り、黒いオーラが優斗の手を避けているようだった。 悪魔を見据えた優斗が問いかける。
「お前も、剣なんて無機物に憑りつくより、人間の俺に憑りつく方がいいだろう? エルフの血が入った人間に憑りつけたら、最強になれるかもしれないぞ。 さぁ、選べ! エルフの血で消されるか、俺に憑りつくか!」
優斗はエルフの血で悪魔を消した事はないが、悪魔を挑発する為にはったりをかました。 悪魔は消されるよりも、優斗に憑りつく方を選んだようだ。 黒いオーラが優斗を包み込んでいき、視界が暗くなる。 以前に取り込まれた時と同様に、闇に包み込まれるかと思われたが、心臓が大きく跳ねた。 優斗の全身が熱くなり、エルフの血が全身に駆け巡るのが分かった。 悪魔が優斗の心臓を捉えようとした寸前、エルフの血が悪魔をガシッと掴んだ。
エルフの血が悪魔を捕まえると、悪魔は一瞬震えて動かなくなった。 優斗は身体の奥で、不思議な感覚を感じていた。 確かに悪魔が同居しているのに、闇に心が捕らわれていない。 優斗の視界が晴れると、心配そうな顔で優斗の顔を覗く瑠衣たちの顔が視界に入った。
「大丈夫か、優斗!」
「俺、どれくらい気絶してた?」
「一瞬だけだ。 まだ、ゲートは開いてる。 何ともないのか?」
優斗からは、不思議だがグレーっぽいオーラが染み出していた。
「ああ、エルフの血が俺の心臓で悪魔を閉じ込めてる」
優斗の話を聞いて、フィルが目を見開いて驚いている。
「うそ! そんな事が出来るなんて!!」
「そうか。 なら、次は俺たちの番だな!」
瑠衣がそういうと、片目を瞑って明るく笑った。
「へ? 瑠衣たちの番って?」
優斗は眉を顰めて、理解が追いつかない表情をしている。 フィルと仁奈も、風神と雷神も、意味が分からない様子で瑠衣を見つめた。
「優斗が何ともないなら、俺たちを優斗が悪魔の力で操っても何ともないはずだろう? 優斗が操れば、俺たちも一緒に行ける。 ただし、ここに残れっていう命令は聞かないからな。 ここまで、一緒に来たんだ。 俺は最後まで、嫌だって言われても、優斗と一緒にいるからな! もし、優斗が死んだら骨は俺が拾ってやる。 だから俺が死んだら、俺の骨は優斗が拾ってくれ」
「当然、私もね」
瑠衣と仁奈の真剣な顔に、優斗は息を吐き出して瑠衣の言う通りにした。 瑠衣と仁奈にグレーっぽいオーラが放たれると、瑠衣と仁奈からは、優斗と同様にグレーっぽいオーラが染み出した。
瑠衣と仁奈も優斗と同じく、闇に捕らわれることなく、何ともないようだ。 ただ、何故か見た目が変わっていた。 優斗の背中からは、黒い蝙蝠みたいな翼が生えている。 おまけに、角も生えていた。 瑠衣と仁奈にも角が生えていたが、翼はない。 そして、フィルの白い羽根と、風神の角が黒に変わっていた。 優斗たちが思った事はひとつだ。
(((((華が見たら、絶対に泣いて喜ぶなっ!!)))))
フィルが『泣いて喜んで、ユウトの防具に翼を足しそうだよね』の一言に、一同が大きく頷いた。
春樹の剣は、優斗が倒れた時に床へ転がり、放置されたままだった。 春樹の剣に黒い影が忍び寄っている事に優斗たちは気づかなかった。 剣が床に擦れる音が背後で聞こえ振り向くと、黒い影が春樹の剣を抱えてゲートへ飛び込んだ所だった。
優斗たちは急いでゲートに飛び込み、悪魔と魔族しか生息できないエリアへと、落ちっていった。
――華が落ちた場所は、また、豪華な一室だった。
何度目かの既視感に、華の目が据わっている。 真由は何処でも、わがまま放題しているのだろうかと、呆れて目の前に立っている真由を見つめていた。 フィンとは落ちた時に逸れたらしく、側にはいない。 優斗たちも居ないので、華一人で真由と立ち向かわなくてはいけない。
華は覚悟を決めて真由を見つめた。 真由の口元が華の様子を見て、意地悪な笑みを作る。
「昨晩は、お楽しみだったようね」
真由の言葉に、華の顔から表情が無くなった。
(昨日、覗いてたのは、結城さんだったの?! どうやって覗いてたのかは置いといてっ)
「デ、デバガメしてたの?!」
「ちょっと! 人聞きの悪い事、言わないでよ! 偵察って言いなさいよ! あんたを攫う為に様子見してたら、あんたたちが勝手にイチャつきだしたんでしょが! 不可抗力よ! それよりも、ここが何処か分かってるの?」
「えっ」
「ここは、悪魔と魔族しか生きられない場所よ。 王子が来ても、ベネディクト様が王子をやっつけてくれるわ!」
真由の瞳が怪しく光り、何処か虚ろになっている。
(じゃ、何で私は平気なの? 結城さんは魔族に操られてるから平気だろうけど。 もしかして、エルフの血?)
「私、何ともないんだけど? 普通に息してるし」
「そんなの私が知ってるわけないでしょ! とにかく、あなたには死んでもらうから! じゃないと、ベネディクト様が安心して暮らせないのよ」
「結城さん。 もう、小鳥遊くんの事は好きじゃないの?」
「私に跪かない男には興味はないわ!」
(ベネディクトが結城さんに跪いてる所も想像できないけど)
華の背中にきつい視線が突き刺さり、優斗が視ている事に気づくと、華の身体が小さく跳ねた。
(こわっ! 『俺が結城に跪くわけないだろう』って思ってるよねっ。 背中が痛いよっ、小鳥遊くん!)
華が思っている事が顔に出ていたのか、真由の顔が真っ赤に染まる。
「ベネディクト様はいいのよ! 私の主なのだから! 私が跪く方よ。 もう、そんな事は貴方には関係ないわ! 貴方に死んでもらう前に、貴方の血を摂って調べるって言ってるから。 貰うわよ」
真由は注射器を持って、華に迫ってくる。 後ろへ逃げる華と、追いかけて来た真由が揉みあいながら、床へ転がった。 奮闘している間に、華の首に真由の手が掛かる。 華は息苦しさに顔を歪め、真由は瞬時に憎しみで顔を歪めた。
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