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25話 勇者の力は誰の手に(下)
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『ボス部屋に勇者春樹が突入しましたが、虫除け結界により侵入を阻まれました。 勇者春樹が虫除け結界を破ろうとしています』
(あいつ、もう着いたのか! まずいなっ、あいつ強そうだったし。 それと、もうそろそろ、結界って言ってもいいんじゃないか?)
『花咲華が虫除け結界を強化しました』
(頑なだな、おい!)
華たちのボス戦が優斗の脳内に流れてくる。
『駄目だ、瑠衣! 全然、槍の刃が入らない!』
『諦めるな! 何処かに弱点があるはずなんだ』
(瑠衣)
『あなたたちに気を取られている間に、わたしが薬瓶を取って来るわ!』
『フィン! でもっ!』
(ボスはゴーレムか。 装甲が硬くて攻撃が入らないんだな。 やっぱ、外側が駄目なら、内側に攻撃を入れるのが普通に思いつくことだよな、大蛇の時みたいに。 ゴーレムの口、開きそうにないな)
映像の中のゴーレムの口は、硬く閉じていて、簡単には開きそうにない。 優斗の脳内で華の悲鳴が鳴り響く。 流れてきた映像は、華とフィンがゴーレムに捕まり、握り潰されそうになっていた場面だった。
優斗の体中の熱が沸騰していくのが分かった。 どうやら、フィンが祭壇へ近づいた事に気づいたゴーレムが、フィンに襲い掛かり、華がフィンを庇った結果、2人とも捕まったらしい。
『花咲華の生命の危機を感知、次の跳躍の着地点に転送魔法陣を展開します。 転送先はゴーレムの真上です』
(よしっ! 来たっ!)
行く先の地面に、魔法陣が展開されていくのが見え、優斗は木刀に氷を纏わせていく。 銀色の足跡を踏んで跳躍すると、フィルと雷神に声を掛けた。
「フィル、雷神! しっかり掴まっとけよ!」
「うん!」
雷神は一声鳴くと、優斗の肩を足でガシッと掴んだ。 雷神の足の感触がした後、優斗は地面を蹴る。 優斗たちは、転送魔法陣の中へ落ちていった。
――ボス部屋内に華とフィンの悲鳴が響き渡る。
魔道具も効かず、華とフィンはあっさりと捕まってしまった。 華の周囲で桜の香りがして、優斗の気配を感じる。 何故か、華には分かった。 ゴーレムの頭上に転送魔法陣が展開されると、徐々に優斗の気配が強くなっていった。
(小鳥遊くんが来る!)
華が見上げた直後、ゴーレムの腕に人影が落ちる。 鉄板に何かが落ちたような音が辺りに響き渡り、白いマントがはためく人影を確認すると、思った通り優斗だった。 優斗は腕と手の隙間に木刀を突き刺すと、氷の魔法を放つ。 華とフィンと優斗から、白い息が吐き出され、優斗から漂う冷気にほんのりと殺気が混じっていた。
――ゴーレムの手と右肩が凍りつく。
ゴーレムの手が緩み、華とフィンが地面へ落ちていく。 『ぽよ~ん』とした衝撃と共に、フィンが2メートル級のスライムの姿で受け止めてくれ、地面への直撃は避けられた。 優斗もフィンの上へ降りてくると、衝撃でフィンの身体が波打つ。
「小鳥遊くん!」
「華! 大丈夫か!」
「うん、大丈夫。 心配かけてごめんっ!」
「いや、華のお陰で転送魔法のゲートが開いたから。 でも、もう無茶な事はするなよ。 間に合わないかと思った」
「うん」
「わたしがわるいのよ。 あとで、こうぎでもごはんぬきのけいでも、なんでもうけるわ」
「いや、そんな事はしないけど」
(フィン、ご飯抜きの刑なんて、お前には耐えられないだろう)
『虫除け結界が弱まります。 勇者春樹に、虫除け結界が破られそうです』
「ユウト! たいへん! けっかいがやぶられるよ!」
監視スキルとフィルの声で周囲を見回すと、華の気が緩んだのか、結界が緩んでいる。 綺麗な球体が維持で出来ていない。 ボス部屋の入り口付近で、春樹の剣が結界を突き刺しているのが見えた。
「華はここで結界を維持してくれ!」
華は大きく頷くと、表情に気合が入った瞳をした。 華が頷いたのを見て、優斗は瑠衣の方へ視線を向ける。 瑠衣はもう弓を構えて攻撃の準備をしていた。 先程の優斗の攻撃でヒントを得たみたいだ。
『花咲華により、虫除け結界が強化されました』
緩んでいた結界が綺麗な球体になり、キラキラと光り輝くと、春樹の剣は弾き返され、洞窟の壁にぶつかって転がっていく。 剣の転がる高い音が、洞窟内に響いた。 春樹はとても悔しそうに顔を歪め、どうにかして結界を破ろうと奮闘している。
「鈴木! 俺たちでゴーレムを押さえてる間に、薬瓶を取って来てくれ!」
「了解!」
瑠衣の左目側にユリを模した魔法陣が展開される。 複数の矢が空気を切り裂く音を鳴らし、矢がゴーレムの関節を目指して飛んでいく。 複数の矢がゴーレムの関節を貫き、壁に縫い留められた。
動きを封じ込められたゴーレムを確認してから、仁奈が祭壇へと駆け出していく。 優斗が木刀を首元の隙間に差し入れ、胸の装甲を剥がしにかかる。 ゴーレムから軋んだ機械音がなり、めり込む音が鳴り響く。 ゴーレムは火花を散らし、藻掻きながら抗議しているようだ。 胸の装甲を剥がし終えた優斗は、心臓部に木刀を突き刺して、凍結魔法を放った。
『全てを凍り尽くせ!!』
ボス部屋全体が音を立てて凍りついた後、天井が轟音と共に開いていく。 ゴーレムも動きを停止させた。 出口が現れた事でダンジョンを攻略した事が分かり、優斗たちから安堵の息が漏れた。
「瑠衣!」
仁奈が2本あるうちの1本を瑠衣へ投げて寄越した。
「華! 王子! ぼうっとしてないで! ここを出るよ! 雷神!」
雷神が一鳴きすると、巨大化していく。 瑠衣は仁奈から薬瓶を受け取ると、防具の懐に入れて風神に跨り、逃げ出す準備をした。 また、フィンが瑠衣の膝へ飛び乗る。
ボス部屋の入り口で、いつの間にか集まって来た勇者御一行と王国騎士団が騒いでいる。 春樹の剣で再び、優斗の氷の壁が壊されると、雷神が風神をガシッと掴んでホバリングする。 優斗の氷の棘と瑠衣の弓矢を、勇者御一行と王国騎士団を足止めする為に放つ。
雷神は強風を吹き上げ、ダンジョンを飛び立った。 雷神の強風に煽られ、祭壇の下にあった薬瓶が転がっていく。 転がった先は春樹の足元だ。 足元で当たった薬瓶に気づくと、春樹は薬瓶を拾い、口元に笑みを作った後、中身を一気に煽って飲み干した。 春樹の瞳が光り、力が宿る。
「これであなたを治せそうだ」
春樹の独り言は、勇者御一行と王国騎士団員の騒然とした声に掻き消えた。
――首尾よく薬瓶も手に入れ、ダンジョンを攻略した優斗たち。
『魔力の上昇を感知、危険を感知、ダンジョンが破壊されます。 衝撃波に備えて高度を上げて下さい。 虫除け結界を発動します』
「雷神! 高度を上げろ!」
結界が発動され、優斗たち雷神、風神が球体に包み込まれ、雷神が一鳴きして高度を上げた。 地上に視線をやると、空気の破裂音に似た轟音が鳴り響いていた。 ダンジョンの出口付近に、空気の波紋が拡がった。 瞬きの間に、ダンジョンの周囲の森の木々が、一瞬で音を立てて薙ぎ倒されていき、野鳥が一斉に飛び立っていった。
優斗たちは目を見開いて、口を開けて破壊されたダンジョンを見て呆然とした。 ダンジョンが破壊された光景に、優斗は嫌な予感がしてならなかった。 世界樹に視せられた、街が吹き飛ぶ映像の中で、勇者たちが放った魔法に似ていたからだ。
――隠れ家に帰って来た優斗たち。
優斗たちは隠れ家のリビングで2本の薬瓶と睨めっこしていた。 いつもは男女に分れてソファーに座るのだが、今回は、優斗と華、瑠衣と仁奈に分れて座った。 1日半掛けてダンジョン攻略をした結果は。
仁奈が薬瓶を飲もうとして、華が『あっ』と声を出して青ざめている。 優斗たちがどうしたんだと華を見つめた。 仁奈の向かいに座った華が青ざめているので、仁奈が心配気に声を掛けた。
「どうしたの? 華?」
「あ、だって。 入ってるんでしょ? 主さまの血が、その瓶にっ」
「「「「「!!!!!」」」」」
(((((まだ、信じてたのか)))))
「華」
「華ちゃん」
「華、あんた」
「フィン」
「ハナ、ごめん。 それ、嘘なの」
フィンは居たたまれなくなって、華から視線を外した。 華は、自分1人だけがフィンの言葉を信じていたのが恥ずかしくなり、真っ赤になって俯いていた。 一先ず、華の事は置いておいて、瑠衣が1本、薬瓶の蓋を開けた。
「何となく、ハズレっぽいけど。 飲んでみるわ」
先程のダンジョンが破壊された光景を見た優斗たちは、2本の薬瓶はハズレじゃないかと、確信に近い物を感じていた。 全員の視線が瑠衣に集まる中、瑠衣が薬瓶の中身を空けた。 皆が固唾を呑んで、天井を仰いでいた瑠衣を見つめる。 瑠衣が落胆の溜め息を吐くと、優斗たちも肩を落とした。
「ハズレだ。 くそっ! やっぱりか!」
「じゃ、次は私ね」
仁奈が深呼吸してから、一気に薬瓶の中身を喉に流し込んだ。 仁奈の全身が電気を帯びたようにぶるりと震えた。 仁奈が両手を眺めて目を見開いている。 もしかしてと期待したが、次の瞬間、仁奈は顔を横に振った。 結果、2本とも外れた。
『上空に高い魔力を感知、危険度は低。 何か落下します。 回避して下さい』
「皆! 伏せろ!」
隣の華をソファーに押し倒し、衝撃から庇って身を硬くする。 瑠衣は優斗の様子に何かを察して同じように仁奈を庇った。 フィルとフィンは軽い音を鳴らして、スライムの姿に戻り、ソファーの影に隠れる。
雷神と風神は森の中で、リフレッシュ中でリビングにはいない。 優斗たちがソファーに伏せた直後、隠れ家の屋根を突き破って何かが落ちてきた。 木材と壁が崩れる音と砂埃が舞い、ソファーの間に置いてあったローテーブルの割れた音がリビングに鳴り響いた。 全ての音が止んで、リビングが静寂に包まれる。
優斗と華は、こんな状態になるとは思わず、視線が絡まると、お互いに赤面した。 直後、華は強く瞼を閉じた。 優斗の脳内がピンク色に染まっていく。
(それって、キスの合図ですか?! まじですか! こんな状況なのにっ! いいのか、華)
華は至近距離で、優斗の顔を見る事に耐えられなくなり、瞼を閉じただけなのだが、キスのサインと勘違いした優斗の顔が近づく。 リビングの静寂を破って最初に動いたのは、フィルだった。
銀色の少年の姿へ変わり、割れたローテーブルを覗き込むと、叫び声を上げた。
「あああああああああああああああああ!」
何処かで聞いた事のある叫び声で、優斗の動きが止まった。 華は目を閉じていたので、当たり前だが、優斗の所業には全く気付いていなかった。 良かった事はただ一つ、瑠衣たちが優斗の所業を見ていなかった事である。 瑠衣に見られていたら確実に面白がられ、揶揄って来るに違いなかった。
(めっちゃ危なかったっ! 一瞬だけ、瑠衣たちがいる事、忘れてたっ)
瑠衣と仁奈がむくりと起き上がると、フィルのそばで立って、床を覗く。 優斗と華も慌ててローテーブルに近づき、覗いた4人の顔が『ああ、やっぱり』という表情になった。 ソファーの影から出てきたフィンが、華の横から顔を出して一言。 こちらもスライムから銀色の少女の姿に変わっている。
「主さまからの手紙ね」
リビングの床には、正に主さまの手紙が刻み込まれていた。 フィンが読み上げる。
『先ずはダンジョン攻略おめでとう。 ご苦労だった。 君たちが今回、手に入れた力は、使いように寄っては便利な物だ。 正しく使うように。 勇者の力を手に入れられなかったのは、残念だが、仕方ない。 勇者の力の薬瓶は3本あって、その内の1本が勇者春樹に渡ってしまった。 そして、勇者の力を手にしたのは、勇者春樹だ。 近日中に王国は帝国へ向けて、魔王討伐に向かうだろう。 何とか、阻止してほしい。 今の所、帝国の何処にも魔王の気配はない。 それと、帝国には王女を治す薬もない。 以上だ』
主さまの手紙はフィンが読み終わると、煙のように消えた。
((((((まじか! やっぱり、あれは勇者の力だったか))))))
「何か色々と考えないといけない事があるけど、取り敢えず隠れ家を直してから、今後の対策を考えよう」
「だな。 俺、腹減った。 今日の夕食当番は、仁奈と華ちゃんか。 出前とかあったらいいのにな」
「今は、心からそう思う。 しかも、私らの部屋、吹っ飛んでない?」
「うん。 木端微塵にね。 私のコレクションたちがっ」
華の泣きそうな声に、優斗は自身の等身大の立体映像が吹き飛んでいく姿を想像して、複雑な気持ちになった。 瑠衣と仁奈も、優斗と同じ気持ちだろう。
「「主さま」」
『ははっ』と乾いた笑いを漏らした。 優斗たちは屋根が吹き飛んで、空が見える天井を見上げると、泣きそうになっていた。 フィルとフィンは眉を下げて、主さまの名前を呟いていた。
もう直ぐ日が沈む夕暮れ時、冗談のようなタイミングで、カラスみたいな鳴き声が隠れ家の森の中に響いていた。
――王城の一室、豪華な部屋で真由は紅茶を楽しんでいた。
「そう、春樹が勇者の力を手に入れたのね。 やっと1つあの方の願いが叶ったわ。 後は帝国と王子を手に入れるだけね。 でも、王子もまだあの女と一緒にいるのね」
真由は異世界へ来てからというもの、昼間は煌びやかなドレスで着飾り、まるで本物の王女のような生活を王城で送っていた。 今はネグリジェ姿で、誰に見せるのか、胸元も大きく開いていて、黒子が2つ、魔道具の灯りで照らされている。 天蓋付きベッドに腰を掛け、真由の目の前には、黒い影がゆらゆらと揺れていた。
真由は優斗に振られた時の事を思い出していた。 部活をしている優斗を待ち伏せ、下駄箱で1人待っていた。 優斗は真由に気づくと、嫌そうな顔をして眉を顰めた。
『悪いな。 結城とは付き合えない』
『どうして?』
優斗の返事は予想出来ていた。 真由は瞳を潤ませ、上目遣いで優斗を見つめる。 これで落ちない男はいないと、真由は思っていた。 突然、ずいっと優斗が顔を近づけてきた。 真由と視線を合わせると、仄暗い笑みを浮かべる。 優斗の仄暗い笑みに、真由の身体が小さく跳ね、背中に悪寒が走る。
『俺は知ってるんだけど。 結城が俺に近づいて来る女子に嫌がらせしてる事。 それと、俺以外の男と遊びまわってるのも知ってる。 そんな女、好きになるわけないだろ。 2度は言わない、俺に関わるな』
それだけ言うと優斗はもう、真由には見向きもしなかった。 自分に冷たい優斗が、華にだけ優しい笑顔を向けるのを知っている。 優斗の言葉を思い出すと、唇を引き結んで歯ぎしりを鳴らす。
真由の家は代々続く資産家で、一人娘の真由は何でも欲しい物を与えられ、何不自由なく育てられてきた。 だから、当然の如く、優斗も手に入ると思っていたのだ。 真由は黒い影を見据えると言った。
「引き続き、王子たちの監視をして! どっちにしてもそろそろ、王都で会えるだろうけどね」
『ふふっ』と口元に怪しい笑みを真由は浮かべた。
隠れ家が無事に修復され、これから就寝する準備をしていた優斗の背中に、言い知れぬ悪寒が走ってふるりと震えた。 優斗の勘が言っている、嫌な予感がしてならないと。
今晩も監視スキルの『花咲華が就寝しました』の報告の後、嫌な予感に不安は募ったが、優斗は眠りについた。 異世界へ落とされて、19日目の夜が更けていった。
(あいつ、もう着いたのか! まずいなっ、あいつ強そうだったし。 それと、もうそろそろ、結界って言ってもいいんじゃないか?)
『花咲華が虫除け結界を強化しました』
(頑なだな、おい!)
華たちのボス戦が優斗の脳内に流れてくる。
『駄目だ、瑠衣! 全然、槍の刃が入らない!』
『諦めるな! 何処かに弱点があるはずなんだ』
(瑠衣)
『あなたたちに気を取られている間に、わたしが薬瓶を取って来るわ!』
『フィン! でもっ!』
(ボスはゴーレムか。 装甲が硬くて攻撃が入らないんだな。 やっぱ、外側が駄目なら、内側に攻撃を入れるのが普通に思いつくことだよな、大蛇の時みたいに。 ゴーレムの口、開きそうにないな)
映像の中のゴーレムの口は、硬く閉じていて、簡単には開きそうにない。 優斗の脳内で華の悲鳴が鳴り響く。 流れてきた映像は、華とフィンがゴーレムに捕まり、握り潰されそうになっていた場面だった。
優斗の体中の熱が沸騰していくのが分かった。 どうやら、フィンが祭壇へ近づいた事に気づいたゴーレムが、フィンに襲い掛かり、華がフィンを庇った結果、2人とも捕まったらしい。
『花咲華の生命の危機を感知、次の跳躍の着地点に転送魔法陣を展開します。 転送先はゴーレムの真上です』
(よしっ! 来たっ!)
行く先の地面に、魔法陣が展開されていくのが見え、優斗は木刀に氷を纏わせていく。 銀色の足跡を踏んで跳躍すると、フィルと雷神に声を掛けた。
「フィル、雷神! しっかり掴まっとけよ!」
「うん!」
雷神は一声鳴くと、優斗の肩を足でガシッと掴んだ。 雷神の足の感触がした後、優斗は地面を蹴る。 優斗たちは、転送魔法陣の中へ落ちていった。
――ボス部屋内に華とフィンの悲鳴が響き渡る。
魔道具も効かず、華とフィンはあっさりと捕まってしまった。 華の周囲で桜の香りがして、優斗の気配を感じる。 何故か、華には分かった。 ゴーレムの頭上に転送魔法陣が展開されると、徐々に優斗の気配が強くなっていった。
(小鳥遊くんが来る!)
華が見上げた直後、ゴーレムの腕に人影が落ちる。 鉄板に何かが落ちたような音が辺りに響き渡り、白いマントがはためく人影を確認すると、思った通り優斗だった。 優斗は腕と手の隙間に木刀を突き刺すと、氷の魔法を放つ。 華とフィンと優斗から、白い息が吐き出され、優斗から漂う冷気にほんのりと殺気が混じっていた。
――ゴーレムの手と右肩が凍りつく。
ゴーレムの手が緩み、華とフィンが地面へ落ちていく。 『ぽよ~ん』とした衝撃と共に、フィンが2メートル級のスライムの姿で受け止めてくれ、地面への直撃は避けられた。 優斗もフィンの上へ降りてくると、衝撃でフィンの身体が波打つ。
「小鳥遊くん!」
「華! 大丈夫か!」
「うん、大丈夫。 心配かけてごめんっ!」
「いや、華のお陰で転送魔法のゲートが開いたから。 でも、もう無茶な事はするなよ。 間に合わないかと思った」
「うん」
「わたしがわるいのよ。 あとで、こうぎでもごはんぬきのけいでも、なんでもうけるわ」
「いや、そんな事はしないけど」
(フィン、ご飯抜きの刑なんて、お前には耐えられないだろう)
『虫除け結界が弱まります。 勇者春樹に、虫除け結界が破られそうです』
「ユウト! たいへん! けっかいがやぶられるよ!」
監視スキルとフィルの声で周囲を見回すと、華の気が緩んだのか、結界が緩んでいる。 綺麗な球体が維持で出来ていない。 ボス部屋の入り口付近で、春樹の剣が結界を突き刺しているのが見えた。
「華はここで結界を維持してくれ!」
華は大きく頷くと、表情に気合が入った瞳をした。 華が頷いたのを見て、優斗は瑠衣の方へ視線を向ける。 瑠衣はもう弓を構えて攻撃の準備をしていた。 先程の優斗の攻撃でヒントを得たみたいだ。
『花咲華により、虫除け結界が強化されました』
緩んでいた結界が綺麗な球体になり、キラキラと光り輝くと、春樹の剣は弾き返され、洞窟の壁にぶつかって転がっていく。 剣の転がる高い音が、洞窟内に響いた。 春樹はとても悔しそうに顔を歪め、どうにかして結界を破ろうと奮闘している。
「鈴木! 俺たちでゴーレムを押さえてる間に、薬瓶を取って来てくれ!」
「了解!」
瑠衣の左目側にユリを模した魔法陣が展開される。 複数の矢が空気を切り裂く音を鳴らし、矢がゴーレムの関節を目指して飛んでいく。 複数の矢がゴーレムの関節を貫き、壁に縫い留められた。
動きを封じ込められたゴーレムを確認してから、仁奈が祭壇へと駆け出していく。 優斗が木刀を首元の隙間に差し入れ、胸の装甲を剥がしにかかる。 ゴーレムから軋んだ機械音がなり、めり込む音が鳴り響く。 ゴーレムは火花を散らし、藻掻きながら抗議しているようだ。 胸の装甲を剥がし終えた優斗は、心臓部に木刀を突き刺して、凍結魔法を放った。
『全てを凍り尽くせ!!』
ボス部屋全体が音を立てて凍りついた後、天井が轟音と共に開いていく。 ゴーレムも動きを停止させた。 出口が現れた事でダンジョンを攻略した事が分かり、優斗たちから安堵の息が漏れた。
「瑠衣!」
仁奈が2本あるうちの1本を瑠衣へ投げて寄越した。
「華! 王子! ぼうっとしてないで! ここを出るよ! 雷神!」
雷神が一鳴きすると、巨大化していく。 瑠衣は仁奈から薬瓶を受け取ると、防具の懐に入れて風神に跨り、逃げ出す準備をした。 また、フィンが瑠衣の膝へ飛び乗る。
ボス部屋の入り口で、いつの間にか集まって来た勇者御一行と王国騎士団が騒いでいる。 春樹の剣で再び、優斗の氷の壁が壊されると、雷神が風神をガシッと掴んでホバリングする。 優斗の氷の棘と瑠衣の弓矢を、勇者御一行と王国騎士団を足止めする為に放つ。
雷神は強風を吹き上げ、ダンジョンを飛び立った。 雷神の強風に煽られ、祭壇の下にあった薬瓶が転がっていく。 転がった先は春樹の足元だ。 足元で当たった薬瓶に気づくと、春樹は薬瓶を拾い、口元に笑みを作った後、中身を一気に煽って飲み干した。 春樹の瞳が光り、力が宿る。
「これであなたを治せそうだ」
春樹の独り言は、勇者御一行と王国騎士団員の騒然とした声に掻き消えた。
――首尾よく薬瓶も手に入れ、ダンジョンを攻略した優斗たち。
『魔力の上昇を感知、危険を感知、ダンジョンが破壊されます。 衝撃波に備えて高度を上げて下さい。 虫除け結界を発動します』
「雷神! 高度を上げろ!」
結界が発動され、優斗たち雷神、風神が球体に包み込まれ、雷神が一鳴きして高度を上げた。 地上に視線をやると、空気の破裂音に似た轟音が鳴り響いていた。 ダンジョンの出口付近に、空気の波紋が拡がった。 瞬きの間に、ダンジョンの周囲の森の木々が、一瞬で音を立てて薙ぎ倒されていき、野鳥が一斉に飛び立っていった。
優斗たちは目を見開いて、口を開けて破壊されたダンジョンを見て呆然とした。 ダンジョンが破壊された光景に、優斗は嫌な予感がしてならなかった。 世界樹に視せられた、街が吹き飛ぶ映像の中で、勇者たちが放った魔法に似ていたからだ。
――隠れ家に帰って来た優斗たち。
優斗たちは隠れ家のリビングで2本の薬瓶と睨めっこしていた。 いつもは男女に分れてソファーに座るのだが、今回は、優斗と華、瑠衣と仁奈に分れて座った。 1日半掛けてダンジョン攻略をした結果は。
仁奈が薬瓶を飲もうとして、華が『あっ』と声を出して青ざめている。 優斗たちがどうしたんだと華を見つめた。 仁奈の向かいに座った華が青ざめているので、仁奈が心配気に声を掛けた。
「どうしたの? 華?」
「あ、だって。 入ってるんでしょ? 主さまの血が、その瓶にっ」
「「「「「!!!!!」」」」」
(((((まだ、信じてたのか)))))
「華」
「華ちゃん」
「華、あんた」
「フィン」
「ハナ、ごめん。 それ、嘘なの」
フィンは居たたまれなくなって、華から視線を外した。 華は、自分1人だけがフィンの言葉を信じていたのが恥ずかしくなり、真っ赤になって俯いていた。 一先ず、華の事は置いておいて、瑠衣が1本、薬瓶の蓋を開けた。
「何となく、ハズレっぽいけど。 飲んでみるわ」
先程のダンジョンが破壊された光景を見た優斗たちは、2本の薬瓶はハズレじゃないかと、確信に近い物を感じていた。 全員の視線が瑠衣に集まる中、瑠衣が薬瓶の中身を空けた。 皆が固唾を呑んで、天井を仰いでいた瑠衣を見つめる。 瑠衣が落胆の溜め息を吐くと、優斗たちも肩を落とした。
「ハズレだ。 くそっ! やっぱりか!」
「じゃ、次は私ね」
仁奈が深呼吸してから、一気に薬瓶の中身を喉に流し込んだ。 仁奈の全身が電気を帯びたようにぶるりと震えた。 仁奈が両手を眺めて目を見開いている。 もしかしてと期待したが、次の瞬間、仁奈は顔を横に振った。 結果、2本とも外れた。
『上空に高い魔力を感知、危険度は低。 何か落下します。 回避して下さい』
「皆! 伏せろ!」
隣の華をソファーに押し倒し、衝撃から庇って身を硬くする。 瑠衣は優斗の様子に何かを察して同じように仁奈を庇った。 フィルとフィンは軽い音を鳴らして、スライムの姿に戻り、ソファーの影に隠れる。
雷神と風神は森の中で、リフレッシュ中でリビングにはいない。 優斗たちがソファーに伏せた直後、隠れ家の屋根を突き破って何かが落ちてきた。 木材と壁が崩れる音と砂埃が舞い、ソファーの間に置いてあったローテーブルの割れた音がリビングに鳴り響いた。 全ての音が止んで、リビングが静寂に包まれる。
優斗と華は、こんな状態になるとは思わず、視線が絡まると、お互いに赤面した。 直後、華は強く瞼を閉じた。 優斗の脳内がピンク色に染まっていく。
(それって、キスの合図ですか?! まじですか! こんな状況なのにっ! いいのか、華)
華は至近距離で、優斗の顔を見る事に耐えられなくなり、瞼を閉じただけなのだが、キスのサインと勘違いした優斗の顔が近づく。 リビングの静寂を破って最初に動いたのは、フィルだった。
銀色の少年の姿へ変わり、割れたローテーブルを覗き込むと、叫び声を上げた。
「あああああああああああああああああ!」
何処かで聞いた事のある叫び声で、優斗の動きが止まった。 華は目を閉じていたので、当たり前だが、優斗の所業には全く気付いていなかった。 良かった事はただ一つ、瑠衣たちが優斗の所業を見ていなかった事である。 瑠衣に見られていたら確実に面白がられ、揶揄って来るに違いなかった。
(めっちゃ危なかったっ! 一瞬だけ、瑠衣たちがいる事、忘れてたっ)
瑠衣と仁奈がむくりと起き上がると、フィルのそばで立って、床を覗く。 優斗と華も慌ててローテーブルに近づき、覗いた4人の顔が『ああ、やっぱり』という表情になった。 ソファーの影から出てきたフィンが、華の横から顔を出して一言。 こちらもスライムから銀色の少女の姿に変わっている。
「主さまからの手紙ね」
リビングの床には、正に主さまの手紙が刻み込まれていた。 フィンが読み上げる。
『先ずはダンジョン攻略おめでとう。 ご苦労だった。 君たちが今回、手に入れた力は、使いように寄っては便利な物だ。 正しく使うように。 勇者の力を手に入れられなかったのは、残念だが、仕方ない。 勇者の力の薬瓶は3本あって、その内の1本が勇者春樹に渡ってしまった。 そして、勇者の力を手にしたのは、勇者春樹だ。 近日中に王国は帝国へ向けて、魔王討伐に向かうだろう。 何とか、阻止してほしい。 今の所、帝国の何処にも魔王の気配はない。 それと、帝国には王女を治す薬もない。 以上だ』
主さまの手紙はフィンが読み終わると、煙のように消えた。
((((((まじか! やっぱり、あれは勇者の力だったか))))))
「何か色々と考えないといけない事があるけど、取り敢えず隠れ家を直してから、今後の対策を考えよう」
「だな。 俺、腹減った。 今日の夕食当番は、仁奈と華ちゃんか。 出前とかあったらいいのにな」
「今は、心からそう思う。 しかも、私らの部屋、吹っ飛んでない?」
「うん。 木端微塵にね。 私のコレクションたちがっ」
華の泣きそうな声に、優斗は自身の等身大の立体映像が吹き飛んでいく姿を想像して、複雑な気持ちになった。 瑠衣と仁奈も、優斗と同じ気持ちだろう。
「「主さま」」
『ははっ』と乾いた笑いを漏らした。 優斗たちは屋根が吹き飛んで、空が見える天井を見上げると、泣きそうになっていた。 フィルとフィンは眉を下げて、主さまの名前を呟いていた。
もう直ぐ日が沈む夕暮れ時、冗談のようなタイミングで、カラスみたいな鳴き声が隠れ家の森の中に響いていた。
――王城の一室、豪華な部屋で真由は紅茶を楽しんでいた。
「そう、春樹が勇者の力を手に入れたのね。 やっと1つあの方の願いが叶ったわ。 後は帝国と王子を手に入れるだけね。 でも、王子もまだあの女と一緒にいるのね」
真由は異世界へ来てからというもの、昼間は煌びやかなドレスで着飾り、まるで本物の王女のような生活を王城で送っていた。 今はネグリジェ姿で、誰に見せるのか、胸元も大きく開いていて、黒子が2つ、魔道具の灯りで照らされている。 天蓋付きベッドに腰を掛け、真由の目の前には、黒い影がゆらゆらと揺れていた。
真由は優斗に振られた時の事を思い出していた。 部活をしている優斗を待ち伏せ、下駄箱で1人待っていた。 優斗は真由に気づくと、嫌そうな顔をして眉を顰めた。
『悪いな。 結城とは付き合えない』
『どうして?』
優斗の返事は予想出来ていた。 真由は瞳を潤ませ、上目遣いで優斗を見つめる。 これで落ちない男はいないと、真由は思っていた。 突然、ずいっと優斗が顔を近づけてきた。 真由と視線を合わせると、仄暗い笑みを浮かべる。 優斗の仄暗い笑みに、真由の身体が小さく跳ね、背中に悪寒が走る。
『俺は知ってるんだけど。 結城が俺に近づいて来る女子に嫌がらせしてる事。 それと、俺以外の男と遊びまわってるのも知ってる。 そんな女、好きになるわけないだろ。 2度は言わない、俺に関わるな』
それだけ言うと優斗はもう、真由には見向きもしなかった。 自分に冷たい優斗が、華にだけ優しい笑顔を向けるのを知っている。 優斗の言葉を思い出すと、唇を引き結んで歯ぎしりを鳴らす。
真由の家は代々続く資産家で、一人娘の真由は何でも欲しい物を与えられ、何不自由なく育てられてきた。 だから、当然の如く、優斗も手に入ると思っていたのだ。 真由は黒い影を見据えると言った。
「引き続き、王子たちの監視をして! どっちにしてもそろそろ、王都で会えるだろうけどね」
『ふふっ』と口元に怪しい笑みを真由は浮かべた。
隠れ家が無事に修復され、これから就寝する準備をしていた優斗の背中に、言い知れぬ悪寒が走ってふるりと震えた。 優斗の勘が言っている、嫌な予感がしてならないと。
今晩も監視スキルの『花咲華が就寝しました』の報告の後、嫌な予感に不安は募ったが、優斗は眠りについた。 異世界へ落とされて、19日目の夜が更けていった。
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