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第二章 中宮殿
八ノ巻-収拾②
しおりを挟む「ああ、夕月。気が付いたんだね、良かった。姉上も心配されている。中宮様も御上までもだ」
晴孝様がいらっしゃった。内裏から退出されて、本当にすぐにお見えになった。なんと、ここ一週間毎日通われていたという。私のことが心配で来てくれたそうだ。
「晴孝様。本当にありがとうございました。お怪我はございませんでしたか?」
「ああ、大丈夫だ。私も常に鍛錬をしていたんでね。前回よりはかなり剣をつかえるようになっていた」
「そのようだな。晴孝ありがとう。夕月を守ってくれて」
「ああ、当たり前だ」
「当たり前か。お父上はなんと?」
晴孝様は赤くなって答えた。
「ああ、夕月に正式に通うことを許された。右大臣家の二の姫のことは夕月と相談する」
兄上は私のほうをじっと見ながら答えた。
「そうだな。お前以外に妹を預けられるものはいない。だが、お前の出自と婚姻はお前の勝手にはなるまい。夕月わかっているな」
「はい。もちろんです」
「……夕月、私には君だけだ」
まっすぐに御簾の向こうから彼が私を見ている。私もにっこりと彼に笑顔を返した。
見えていないかもしれないけれど。
「ありがとうございます。あとで相談いたしましょう」
私は嬉しかった。とうとう、左大臣様が私を認めてくださった。それだけでいい。
前にも言ったが晴孝様付の女房でも構わないのだ。
「それで、夕月に話しておこう。吉野の神官のことだ」
「……はい」
藤壺様は私の見舞いに来られたそうだ。身分的にもありえないことだ。
だが、近くの寺にお参りへという口実にうちへ方違えということで夕刻お寄りになったそうだ。
* * *
(兼近の説明)
彼女は几帳越しに本来なら絶対対面しない私と会った。謝りたいと言われたのだ。
「夕月様のお加減はどうです?」
「おそらく、明日辺りには目覚めるかと思います」
「私のところを出られた際に、父の式神がどうやら姫様についていったようです。私は気軽に外に出られなくなり、昔より感が弱くなりました」
「それは仕方のないことです」
「昔は、父をしのぐ力があったこともございます。でも、巫女は男君を受け入れると力がなくなります。私は強い力のせいで完全になくなりはしませんでしたが、半分以上の力が消失しました」
「……そうでしたか」
「父は夕月様との会談内容を知っていたと思います。あのあと、決して手を出さないでほしいと、もし何かこれ以上するようなら縁を切ると、命を絶つと申し上げました」
尚侍はつらそうに答えた。
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