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第一章 入社と出会い
鎖の行方ー2***
しおりを挟む「要は、俺がお前の仕事への愛に負ける程度の男ってことだな」
驚いた。そんなことを言う人ではないのに、言わせている自分は何様だと思う。
「仕事が俊樹さんより上なんて絶対ない。私だって俊樹さんが好きなのに。信じてもらえないの?」
上目遣いに彼を見た。すると彼は私の横へきてそっと私を抱き寄せた。
じっと見ていると彼に口づけられる。
彼が一度離れてからもじっと見つめ続けた。ふっと笑った彼は、気持ちの入った口づけをもう一度くれた。
「信じてるよ。だからこそ、俺の気持ちや秘密を話したんだ。そうだ、報告がある。役員室へ上がるが、俺の担当部署に業務部を来期も入れてもらうことにする。だから、お前は業務部の仕事を知ることができるぞ。行き来もできる」
「ホントに?」
うれしくて声が一段上がった私を見て、彼はほくそ笑んでいる。
「いつか、業務の仕事に携わることが来るかもしれないだろ。とりあえずは秘書一本にしてくれ。俺も忙しい。こちらでやるべきことを急ピッチでやらないといけないんだ。君の力を借りたい」
「……それって、お父様のご意向とかっていう?」
「そう。氷室商事のためにやるべきことをやるのが俺の仕事だ」
「で、いずれはその氷室商事に帰るのよね?私は残ってもいいんでしょ?」
「お前は人の話を聞いていないのか?お前は俺の側にいるんだよ。どこに行こうと付いてくるんだ」
「……私、それも嫌なんですけど」
彼は私を自分の膝の上に乗せて抱きしめながら、かんで含めるように話す。
「菜摘。お前の能力ならどんな仕事でも出来る。それもお前を選んだ理由なんだよ。業務の仕事より面白い仕事が山とある。自分を狭めるな。新しい世界へ俺と一緒に出よう」
なんて、口のうまい人なんだろう。そうかも、なんて思ってしまうじゃないの。はあ……。
私は彼の顔を正面からじっと見つめた。彼は頭をかしげて私を見た。なんて素敵なの。やっぱり彼から離れられないと思う。
私は彼の顔を両手で挟んで、自分からはじめて彼の唇にキスを落とした。
「っ菜摘!」
彼は不意をつかれたのだろう。赤くなった。
「わかった。何がわかったって、俊樹さんと離れられないと今わかった。だったら、取るべき道はひとつしかない。決めたわ」
彼は私を抱き上げるとベッドへ直行した。じゃれあいながら、お互いで服を脱がせていく。
あっという間に彼が重なってきた。しばらくして思いもよらない甘い声が自分から出た。
彼との行為にはじめて深い快感を覚えた。耐え切れず途中で理性を手放した。
彼は私の声を聞いて、嬉しそうにしている。
「ああ……ああ……どうしよう、ああ、だめおかしくなる」
「どうもしなくていいんだよ、そのまま感じてろ」
はじめて感じて乱れていく私に気づいた彼は、今まで手加減をしていたのだろう。急にあちこち触りながら私の様子を見てどんどん大胆に求めてくる。
新しいことをされるたびに身体は反応してしまう。彼はそれを見るとどんどん私を追い込んでいく。初めて頭がスパークして真っ白になり、境界がわからなくなった。
「好き……あん、好き……なの、俊樹さん」
すがりついた私に彼はキスしながら繰り返し大きく揺すり始めた。耳元で抱きしめながら息をきらした彼がつぶやく。
「知ってるよ、そんなこと……。ずっと言ってろ、一生な……」
ふたりの鎖は今繋がれたばかりだ。
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