彼は溺愛という鎖に繋いだ彼女を公私共に囲い込む

花里 美佐

文字の大きさ
上 下
19 / 44
第一章 入社と出会い

鎖の行方ー2***

しおりを挟む

「要は、俺がお前の仕事への愛に負ける程度の男ってことだな」

 驚いた。そんなことを言う人ではないのに、言わせている自分は何様だと思う。

「仕事が俊樹さんより上なんて絶対ない。私だって俊樹さんが好きなのに。信じてもらえないの?」

 上目遣いに彼を見た。すると彼は私の横へきてそっと私を抱き寄せた。

 じっと見ていると彼に口づけられる。

 彼が一度離れてからもじっと見つめ続けた。ふっと笑った彼は、気持ちの入った口づけをもう一度くれた。

「信じてるよ。だからこそ、俺の気持ちや秘密を話したんだ。そうだ、報告がある。役員室へ上がるが、俺の担当部署に業務部を来期も入れてもらうことにする。だから、お前は業務部の仕事を知ることができるぞ。行き来もできる」

「ホントに?」
 
 うれしくて声が一段上がった私を見て、彼はほくそ笑んでいる。

「いつか、業務の仕事に携わることが来るかもしれないだろ。とりあえずは秘書一本にしてくれ。俺も忙しい。こちらでやるべきことを急ピッチでやらないといけないんだ。君の力を借りたい」

「……それって、お父様のご意向とかっていう?」

「そう。氷室商事のためにやるべきことをやるのが俺の仕事だ」

「で、いずれはその氷室商事に帰るのよね?私は残ってもいいんでしょ?」

「お前は人の話を聞いていないのか?お前は俺の側にいるんだよ。どこに行こうと付いてくるんだ」

「……私、それも嫌なんですけど」

 彼は私を自分の膝の上に乗せて抱きしめながら、かんで含めるように話す。

「菜摘。お前の能力ならどんな仕事でも出来る。それもお前を選んだ理由なんだよ。業務の仕事より面白い仕事が山とある。自分を狭めるな。新しい世界へ俺と一緒に出よう」

 なんて、口のうまい人なんだろう。そうかも、なんて思ってしまうじゃないの。はあ……。

 私は彼の顔を正面からじっと見つめた。彼は頭をかしげて私を見た。なんて素敵なの。やっぱり彼から離れられないと思う。

 私は彼の顔を両手で挟んで、自分からはじめて彼の唇にキスを落とした。

「っ菜摘!」
 
 彼は不意をつかれたのだろう。赤くなった。

「わかった。何がわかったって、俊樹さんと離れられないと今わかった。だったら、取るべき道はひとつしかない。決めたわ」

 彼は私を抱き上げるとベッドへ直行した。じゃれあいながら、お互いで服を脱がせていく。

 あっという間に彼が重なってきた。しばらくして思いもよらない甘い声が自分から出た。

 彼との行為にはじめて深い快感を覚えた。耐え切れず途中で理性を手放した。

 彼は私の声を聞いて、嬉しそうにしている。

「ああ……ああ……どうしよう、ああ、だめおかしくなる」
 
「どうもしなくていいんだよ、そのまま感じてろ」

 はじめて感じて乱れていく私に気づいた彼は、今まで手加減をしていたのだろう。急にあちこち触りながら私の様子を見てどんどん大胆に求めてくる。

 新しいことをされるたびに身体は反応してしまう。彼はそれを見るとどんどん私を追い込んでいく。初めて頭がスパークして真っ白になり、境界がわからなくなった。

「好き……あん、好き……なの、俊樹さん」
 
 すがりついた私に彼はキスしながら繰り返し大きく揺すり始めた。耳元で抱きしめながら息をきらした彼がつぶやく。
 
「知ってるよ、そんなこと……。ずっと言ってろ、一生な……」

 ふたりの鎖は今繋がれたばかりだ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す

花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。 専務は御曹司の元上司。 その専務が社内政争に巻き込まれ退任。 菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。 居場所がなくなった彼女は退職を希望したが 支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。 ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に 海外にいたはずの御曹司が現れて?!

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

Home, Sweet Home

茜色
恋愛
OL生活7年目の庄野鞠子(しょうのまりこ)は、5つ年上の上司、藤堂達矢(とうどうたつや)に密かにあこがれている。あるアクシデントのせいで自宅マンションに戻れなくなった藤堂のために、鞠子は自分が暮らす一軒家に藤堂を泊まらせ、そのまま期間限定で同居することを提案する。 亡き祖母から受け継いだ古い家での共同生活は、かつて封印したはずの恋心を密かに蘇らせることになり・・・。 ☆ 全19話です。オフィスラブと謳っていますが、オフィスのシーンは少なめです 。「ムーンライトノベルズ」様に投稿済のものを一部改稿しております。

処理中です...