12 / 44
第一章 入社と出会い
正体ー2
しおりを挟む「ネックレスとても素敵です。ありがとうございます。俊樹さんのこと、おそらく私も好きです」
下を向いて話す。
彼は私の顔をつかんでじっと見つめた。
「さあ、デザートを食べて、バーへ移動しよう。じっくり話し合おうか」
そう言うと、フォークを皿へ向けた。
レストランを出て、最上階のバーへ連れてこられた。
すごい景色。さすがにクリスマス。カップルが大勢いる。
彼の顔を見ると、係の人が席を案内してくれる。奥の窓際。
カクテルを頼むと、彼は私の手を握りながら話し出した。
「菜摘。業務部の仕事は新村君に大分前から引き継ぎ内容を精査させている。彼の案に従ってやってもらうつもりだ」
ずるい。私が言い返せないように、最初から巧を引き入れたのね。
「どうして、そうなるの?嫌だと言ったはずです。私、業務部の仕事が大好きなのに。知ってるでしょ、俊樹さん。意地悪」
私が上目遣いに言うと、ハアとため息をつかれた。
「菜摘。小悪魔ぶりはやめてくれ。そんな風に見られたらこっちが腰砕けになる。いいかい、君は僕の秘書であり、政策秘書だ。分かっていると思うが君には普通の秘書がやらない業務をやらせてきた。それは君の能力を僕のために貸してもらうためだよ」
「だから、それが嫌だとは言っていないでしょ。秘書と業務部の仕事を両方させてください」
彼は私の両手をつかんで自分の膝へ引っ張った。
「菜摘。よく聞け。これは秘密だが、俺の本名は氷室俊樹。氷室商事の次男だ。永峰は母の旧姓。社長はいとこだ。父が氷室商事の社長だから、いずれ氷室へ帰る。ここにいるのは一時のことだ。しかも、役員になるのは前から決まっていたことなんだ」
私はびっくりして、目が丸くなるほど驚いた。どういうこと?氷室商事ってこの会社より大きい会社でしょ?え?次男?
「何それ?嘘ついて騙してたの、私のこと……」
「そうじゃない、落ち着いてくれ。三橋と氷室は遠縁だ。元々取引がある。この会社には父の意向もあって入ったんだ。もちろん、三橋の会長や社長も了承している。業務部にいたのも理由があるが、それはおいおい説明する。俺のものになったらね」
私は立ち上がって一歩下がった。彼は驚いた。
「話がおかしい。理解できません。私、そんなつもりじゃない。俊樹さんがそんな大きな会社の人だなんて、他へ戻るとか……」
パニックになっている私を彼は抱きしめて、荷物とコートを片手で持つと、私の手を引いてバーを出た。
エレベーターに乗せられるとすぐに壁に押しつけられた。
びっくりして顔を上げたら彼の顔が近づいてきた。
目をつむるとキスされていた。
息をしたらすぐに深いキスになった。
チンという音がして、ドアが開いた。
すると、私の手を引いて、奥の部屋の前まで来ると、カードキーを入れてドアを開ける。
押し込められて、またキスされた。
身動きひとつできやしない。
一度離れたがまた、角度を変えてキスをする。
腰が砕けてずるずる下がる私を足を入れて拘束する。
私はなすすべもなく、彼に堕ちた。
3
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説

次期社長と訳アリ偽装恋愛
松本ユミ
恋愛
過去の恋愛から恋をすることに憶病になっていた河野梨音は、会社の次期社長である立花翔真が女性の告白を断っている場面に遭遇。
なりゆきで彼を助けることになり、お礼として食事に誘われた。
その時、お互いの恋愛について話しているうちに、梨音はトラウマになっている過去の出来事を翔真に打ち明けた。
話を聞いた翔真から恋のリハビリとして偽装恋愛を提案してきて、悩んだ末に受け入れた梨音。
偽恋人として一緒に過ごすうちに翔真の優しさに触れ、梨音の心にある想いが芽吹く。
だけど二人の関係は偽装恋愛でーーー。
*他サイト様でも公開中ですが、こちらは加筆修正版です。
性描写も予告なしに入りますので、苦手な人はご注意してください。
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

君色ロマンス~副社長の甘い恋の罠~
松本ユミ
恋愛
デザイン事務所で働く伊藤香澄は、ひょんなことから副社長の身の回りの世話をするように頼まれて……。
「君に好意を寄せているから付き合いたいってこと」
副社長の低く甘い声が私の鼓膜を震わせ、封じ込めたはずのあなたへの想いがあふれ出す。
真面目OLの恋の行方は?
小さな恋のトライアングル
葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児
わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係
人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった
*✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻*
望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL
五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長
五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~
深冬 芽以
恋愛
あらすじ
俵理人《たわらりひと》34歳、職業は秘書室長兼社長秘書。
女は扱いやすく、身体の相性が良ければいい。
結婚なんて冗談じゃない。
そう思っていたのに。
勘違いストーカー女から逃げるように引っ越したマンションで理人が再会したのは、過去に激しく叱責された女。
年上で子持ちのデキる女なんて面倒くさいばかりなのに、つい関わらずにはいられない。
そして、互いの利害の一致のため、偽装恋人関係となる。
必要な時だけ恋人を演じればいい。
それだけのはずが……。
「偽装でも、恋人だろ?」
彼女の甘い香りに惹き寄せられて、抗えない――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる