彼は溺愛という鎖に繋いだ彼女を公私共に囲い込む

花里 美佐

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第一章 入社と出会い

正体ー2

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「ネックレスとても素敵です。ありがとうございます。俊樹さんのこと、おそらく私も好きです」

 下を向いて話す。

 彼は私の顔をつかんでじっと見つめた。

「さあ、デザートを食べて、バーへ移動しよう。じっくり話し合おうか」

 そう言うと、フォークを皿へ向けた。

 レストランを出て、最上階のバーへ連れてこられた。

 すごい景色。さすがにクリスマス。カップルが大勢いる。

 彼の顔を見ると、係の人が席を案内してくれる。奥の窓際。

 カクテルを頼むと、彼は私の手を握りながら話し出した。

「菜摘。業務部の仕事は新村君に大分前から引き継ぎ内容を精査させている。彼の案に従ってやってもらうつもりだ」
 
 ずるい。私が言い返せないように、最初から巧を引き入れたのね。

「どうして、そうなるの?嫌だと言ったはずです。私、業務部の仕事が大好きなのに。知ってるでしょ、俊樹さん。意地悪」

 私が上目遣いに言うと、ハアとため息をつかれた。

「菜摘。小悪魔ぶりはやめてくれ。そんな風に見られたらこっちが腰砕けになる。いいかい、君は僕の秘書であり、政策秘書だ。分かっていると思うが君には普通の秘書がやらない業務をやらせてきた。それは君の能力を僕のために貸してもらうためだよ」

「だから、それが嫌だとは言っていないでしょ。秘書と業務部の仕事を両方させてください」

 彼は私の両手をつかんで自分の膝へ引っ張った。

「菜摘。よく聞け。これは秘密だが、俺の本名は氷室俊樹。氷室商事の次男だ。永峰は母の旧姓。社長はいとこだ。父が氷室商事の社長だから、いずれ氷室へ帰る。ここにいるのは一時のことだ。しかも、役員になるのは前から決まっていたことなんだ」

 私はびっくりして、目が丸くなるほど驚いた。どういうこと?氷室商事ってこの会社より大きい会社でしょ?え?次男?

「何それ?嘘ついて騙してたの、私のこと……」

「そうじゃない、落ち着いてくれ。三橋と氷室は遠縁だ。元々取引がある。この会社には父の意向もあって入ったんだ。もちろん、三橋の会長や社長も了承している。業務部にいたのも理由があるが、それはおいおい説明する。俺のものになったらね」

 私は立ち上がって一歩下がった。彼は驚いた。
 
「話がおかしい。理解できません。私、そんなつもりじゃない。俊樹さんがそんな大きな会社の人だなんて、他へ戻るとか……」

 パニックになっている私を彼は抱きしめて、荷物とコートを片手で持つと、私の手を引いてバーを出た。

 エレベーターに乗せられるとすぐに壁に押しつけられた。

 びっくりして顔を上げたら彼の顔が近づいてきた。
 
 目をつむるとキスされていた。

 息をしたらすぐに深いキスになった。

 チンという音がして、ドアが開いた。
 
 すると、私の手を引いて、奥の部屋の前まで来ると、カードキーを入れてドアを開ける。

 押し込められて、またキスされた。

 身動きひとつできやしない。
 
 一度離れたがまた、角度を変えてキスをする。

 腰が砕けてずるずる下がる私を足を入れて拘束する。
 
 私はなすすべもなく、彼に堕ちた。
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