社内捜査は秘密と恋の二人三脚

花里 美佐

文字の大きさ
上 下
51 / 56
第五章 二人の決意

互いの嫉妬~賢人side~ー3

しおりを挟む


「なんか、冷たい感じの美人ですね、北村さんって。お仕事できる人だからあそこへ配属になったんでしょうけど、秘書はむりですね。愛想が悪すぎます」

 清水が俺に言う。あの冷たさは絶対お前のそのしゃべりのせいだ。想像以上に何か怒ってる?まずい。連絡しなかったからか?いや、あいつだって連絡よこさないじゃないか。何なんだよ。

 俺はイライラしてそれ以降仕事もそれが抜けない。話しかけてくる担当者がおびえているのを見てようやく気づいた。

 夕方になり、秘書室の面々に連れて行かれたおしゃれな飲み屋には俺だけでなく、若手の企画室のメンバーも呼ばれて来ていた。

 実は数人が秘書と交際している。どうしても仕事上接点も出来るし、企画室のメンバーもイケメン揃い。それはどうしたってそういうことになる。

 よって数人はカップルなわけで、後から来た梶原や福原は囲まれている俺が困っているのを知りながらニヤニヤと見ている。梶原は既婚者、福原を連れてきたのは秘書連中を彼に頼むためだったが、福原が乗り気でないので困ってしまった。

 やっと秘書連中が帰って、男三人で別のところで飲み直した。梶原は奥さんが妊娠中なので先に帰った。福原は相模とひとつしか歳が違わない。福原に斉藤さんをみてもらっている。

「斉藤さんは関根さんと付き合っているらしいですね。関根さんはうちでも有名人ですからね。まあ、彼女がいるのは想定内ですけど、せっかく来た女性スタッフが売約済みは悲しいですね。でも仕事は出来ますよ。推薦されただけはありますね。というか、関根さんの彼女なんだから当たり前ですかね」

「そうだな。彼女は頭が回る」

「確かに会話していてもそれは感じます」

「……北村さんはどうだ?」

「彼女、クールビューティーですよね。なんていうか、たまーに笑顔を見せるんですよね。それが印象的で……話しかけたくても相模が囲っていてなかなか難しい」

「……」

「今日も多分ふたりで飲みに行ってますよ。自慢してましたから、相模の奴。いいよなー、俺も斉藤さんが嫌とかじゃないですけど、北村さんの指導担当だったら今頃鈴村さんと差しで飲んでませんよ。あはは」

「……」

 こいつ、すっかり出来上がって俺の顔色をうかがう余裕もないようだ。里沙が相模と差しで飲んでいると聞いて、すぐに全額払うと福原を解放した。里沙に急いで電話をかけるが出ない。

 そうだ、位置情報アプリがあった。俺は里沙に知られると怒られるので最近使っていなかった。

 里沙はとにかく人前でベタベタするのが嫌いだし、束縛されるのもあまり好きじゃない。結婚しても自分の部屋はきちんとほしいとか、自分の時間が欲しいとか言う。

 要は干渉されるのがあまり好きじゃないんだろう。サバサバしているのがあいつのいいところだが、恋愛中はこちらが不安になるくらいさっぱりしすぎだ。

 アプリがあったからこそ、あの事故を未然に防ぐことが出来たから、恋人同士になったしこのままにしようと言ったら、余計な追跡はしないという約束をさせられた。

 まあ、俺もそういうことをされたらいい気持ちにはならないので、その時は約束した。だが、今日は追跡せずにはいられない。福原の話が正しければ、里沙と相模がどこかで一緒にいると思うだけで頭がおかしくなる。

 アプリを立ち上げると里沙は割と近いところにいることがわかった。まあ、本社の周りは飲食店が多い。ところが追いかけていくと映画館にいるようだ。二人でまさか映画を見ているとか?俺は怒りで頭が割れそうだった。酒も入っていたので余計だ。

 問題は何の映画を見ているのかがわからない。だから、彼女がいつ出てくるのかもわからない。とりあえず、電話の返事がない理由はわかった。

 映画の時間表を見ていたらそろそろ終わる映画がありそうだ。ぞろぞろと出てくる人達がいる。俺は水を飲みながら椅子に腰掛けてそれを見ていた。すると、電話がなった。里沙だ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

独占欲強めな極上エリートに甘く抱き尽くされました

紡木さぼ
恋愛
旧題:婚約破棄されたワケアリ物件だと思っていた会社の先輩が、実は超優良物件でどろどろに溺愛されてしまう社畜の話 平凡な社畜OLの藤井由奈(ふじいゆな)が残業に勤しんでいると、5年付き合った婚約者と破談になったとの噂があるハイスペ先輩柚木紘人(ゆのきひろと)に声をかけられた。 サシ飲みを経て「会社の先輩後輩」から「飲み仲間」へと昇格し、飲み会中に甘い空気が漂い始める。 恋愛がご無沙汰だった由奈は次第に紘人に心惹かれていき、紘人もまた由奈を可愛がっているようで…… 元カノとはどうして別れたの?社内恋愛は面倒?紘人は私のことどう思ってる? 社会人ならではのじれったい片思いの果てに晴れて恋人同士になった2人。 「俺、めちゃくちゃ独占欲強いし、ずっと由奈のこと抱き尽くしたいって思ってた」 ハイスペなのは仕事だけではなく、彼のお家で、オフィスで、旅行先で、どろどろに愛されてしまう。 仕事中はあんなに冷静なのに、由奈のことになると少し甘えん坊になってしまう、紘人とらぶらぶ、元カノの登場でハラハラ。 ざまぁ相手は紘人の元カノです。

処理中です...