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第五章 二人の決意
互いの嫉妬~賢人side~ー3
しおりを挟む「なんか、冷たい感じの美人ですね、北村さんって。お仕事できる人だからあそこへ配属になったんでしょうけど、秘書はむりですね。愛想が悪すぎます」
清水が俺に言う。あの冷たさは絶対お前のそのしゃべりのせいだ。想像以上に何か怒ってる?まずい。連絡しなかったからか?いや、あいつだって連絡よこさないじゃないか。何なんだよ。
俺はイライラしてそれ以降仕事もそれが抜けない。話しかけてくる担当者がおびえているのを見てようやく気づいた。
夕方になり、秘書室の面々に連れて行かれたおしゃれな飲み屋には俺だけでなく、若手の企画室のメンバーも呼ばれて来ていた。
実は数人が秘書と交際している。どうしても仕事上接点も出来るし、企画室のメンバーもイケメン揃い。それはどうしたってそういうことになる。
よって数人はカップルなわけで、後から来た梶原や福原は囲まれている俺が困っているのを知りながらニヤニヤと見ている。梶原は既婚者、福原を連れてきたのは秘書連中を彼に頼むためだったが、福原が乗り気でないので困ってしまった。
やっと秘書連中が帰って、男三人で別のところで飲み直した。梶原は奥さんが妊娠中なので先に帰った。福原は相模とひとつしか歳が違わない。福原に斉藤さんをみてもらっている。
「斉藤さんは関根さんと付き合っているらしいですね。関根さんはうちでも有名人ですからね。まあ、彼女がいるのは想定内ですけど、せっかく来た女性スタッフが売約済みは悲しいですね。でも仕事は出来ますよ。推薦されただけはありますね。というか、関根さんの彼女なんだから当たり前ですかね」
「そうだな。彼女は頭が回る」
「確かに会話していてもそれは感じます」
「……北村さんはどうだ?」
「彼女、クールビューティーですよね。なんていうか、たまーに笑顔を見せるんですよね。それが印象的で……話しかけたくても相模が囲っていてなかなか難しい」
「……」
「今日も多分ふたりで飲みに行ってますよ。自慢してましたから、相模の奴。いいよなー、俺も斉藤さんが嫌とかじゃないですけど、北村さんの指導担当だったら今頃鈴村さんと差しで飲んでませんよ。あはは」
「……」
こいつ、すっかり出来上がって俺の顔色をうかがう余裕もないようだ。里沙が相模と差しで飲んでいると聞いて、すぐに全額払うと福原を解放した。里沙に急いで電話をかけるが出ない。
そうだ、位置情報アプリがあった。俺は里沙に知られると怒られるので最近使っていなかった。
里沙はとにかく人前でベタベタするのが嫌いだし、束縛されるのもあまり好きじゃない。結婚しても自分の部屋はきちんとほしいとか、自分の時間が欲しいとか言う。
要は干渉されるのがあまり好きじゃないんだろう。サバサバしているのがあいつのいいところだが、恋愛中はこちらが不安になるくらいさっぱりしすぎだ。
アプリがあったからこそ、あの事故を未然に防ぐことが出来たから、恋人同士になったしこのままにしようと言ったら、余計な追跡はしないという約束をさせられた。
まあ、俺もそういうことをされたらいい気持ちにはならないので、その時は約束した。だが、今日は追跡せずにはいられない。福原の話が正しければ、里沙と相模がどこかで一緒にいると思うだけで頭がおかしくなる。
アプリを立ち上げると里沙は割と近いところにいることがわかった。まあ、本社の周りは飲食店が多い。ところが追いかけていくと映画館にいるようだ。二人でまさか映画を見ているとか?俺は怒りで頭が割れそうだった。酒も入っていたので余計だ。
問題は何の映画を見ているのかがわからない。だから、彼女がいつ出てくるのかもわからない。とりあえず、電話の返事がない理由はわかった。
映画の時間表を見ていたらそろそろ終わる映画がありそうだ。ぞろぞろと出てくる人達がいる。俺は水を飲みながら椅子に腰掛けてそれを見ていた。すると、電話がなった。里沙だ。
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