社内捜査は秘密と恋の二人三脚

花里 美佐

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第五章 二人の決意

互いの嫉妬~賢人side~ー2

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 俺は彼女に放っておかれている。初めて女性と付き合って相手に振られるんじゃないかとおびえているんだ。

「はー」

 陽樹が外出したら、京子さんが俺の前に来た。

「今日、彼女も誘われてましたよ」

「はあ?」

「うふふ。お気を付けて」

「……あの、京子さん。里沙はあそこでどうですか?大丈夫です?」

「自分で確認してくればいいでしょう。どうして行かないんですか?」

「行かないんじゃなくて行く時間がないんですよ!」

「それは残念ですね。まあ、里沙さんは優秀ですから大丈夫でしょう。手取り足取り教えてくれる同僚もいるようですしね」

 は?聞き捨てならない。何だと?手取り足取りって何だそれ?俺の顔がこわばっているのを見た京子さんは口を押さえて笑っている。夫婦揃って性格が悪すぎる!

 俺は嫌な予感がして確認するために企画室へ行くことにした。

「鈴村さん。秘書に何も言わずに勝手に行動してはだめですよ。清水さんにきちんと確認してから企画室へはお出かけ下さい」

「……」

 京子さんは俺に恩があるんじゃなかったのか?企画室へ異動させてもらって喜んで俺に頭を下げていたくせに……。

「わかりましたよ!」

「……お静かに!」

 ドアをバターンと閉めて出て行くと京子さんの怒り声。自分の役員室へ戻り、担当秘書の清水さんの顔を見た。彼女は二年目のまだ若い秘書。俺は秘書の統括もしていたようなものなので、若い子も指導して欲しいと担当にさせられた。

「清水さん、少し企画室へ行ってくるが後を頼む」

「え?企画室に行くんですか?私も行きたいです!」

「行きたいですって君は何もすることないだろ?」

 するとジロッと俺を睨んでいる。

「皆さんに、鈴村さんの秘書になったとご挨拶に行くんですよ。あちらとはお付き合いしないといけませんし……あちらの担当さんが誰になるのか聞いてこないと」

 確かにそれも一理ある。

「じゃあ、行こう」

 そう言って、ふたりで企画室へ向かった。里沙はどこだ?……いたぞ。奥の方で誰かと一緒にパソコンを見ている。

「わー、鈴村さんおめでとうございます」

 わらわらと俺が育ててきた可愛い部下達が周りに寄ってきた。皆、優秀でこの会社を担うブレーンになる。室長を譲った梶原が来た。

「お疲れ様です」

「どうだ?何か問題は?」

「いえ、全くありません」

「さすがだな。全く来られなくてすまなかった。だが、後任が梶原だからそうしたんだ」

「何かあればこちらから伺いますから、営業の方主体になさって下さい」

「ありがとう。助かるよ」

 俺は入っていくとまず斉藤さんに声をかけた。

「斉藤さん。どうですか?」

 困った顔を上げた彼女は苦笑い。

「内容は財団担当なのでわかるんですけど、このシステムが難しくて。ちょっと、というかかなり大変です」

「斉藤さんならそのうち慣れます。あなたの周りをよく見る眼が欲しくてここへ来てもらったんです。期待してます。よろしくお願いします」

「……頑張ります」

 後ろをついてきた梶原に清水さんが聞いた。

「鈴村取締役の担当は誰ですか?」

「梶原がやってくれるのか?」

「いいえ。何でもわかっている鈴村室長に付けるなら、育ててもらった方がいい。秘書室と同じ考え方でいきます。相模を付けますので、育ててやって下さい。ああ、相模は今、北村さんの指導もしているので一緒にやっていくことになると思います」

 俺は里沙の隣で手取り足取り教えているのが相模だとわかった。清水さんが俺より先に走って相模の所へ行った。

「相模さん。私、鈴村室長の秘書になったので、よろしくお願いしまーす」

 清水が頭をかしげてニコッと相模を見た。

「ああ、そうなの。よろしくね」

 相模が返事をした。

 里沙が俺に気づいて目を大きく見開いた。俺は里沙に笑顔を見せた。ところが彼女は俺を無視して、清水をじっと見ている。まずい。二人が立ち上がり、俺と清水に向かって頭を下げた。

「鈴村さん。僕はまだ未熟ですので、何かあれば何でも言って下さい。北村さんは僕が指導しています。よくご存じかと思いますがよろしくお願いします」

「あなたが、北村さん?よろしくね。私、鈴村さんの秘書になりました清水です」

「はい。どうぞよろしくお願いいたします」

 里沙は俺と目を合わせようとしない。

「北村さん、慣れたかな?」

 すると、ようやく俺のことを冷たい目で見ながら答えた。

「そうですね。相模さんが丁寧に教えて下さいますので何とかやっています」

「いやあ、北村さん、嬉しいなあ」

 ニヤニヤと嬉しそうに彼女を見ている相模を見て嫌な予感しかしない。里沙は会釈をするとすぐに座りパソコンを見ている。居心地が悪すぎる。俺はがっかりして戻ってきた。どういうことだ、これは……。

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