社内捜査は秘密と恋の二人三脚

花里 美佐

文字の大きさ
上 下
22 / 56
第二章 恋しい人

後始末ー2***

しおりを挟む
 

 私はお茶を飲みながら、呟いた。

「終わったのね。お疲れ様。たまにこれからもここへ来ると、これからもあなたに……鈴村さんと偶然会えたりするかな?」

 顔も上げず呟く私に、辛そうな彼の声が聞こえた。

「……里沙」

「ごめんなさい、独り言だから……良かったわね、とりあえずお仕事の目的は達成出来て。関係者以外は誰にも知られずうまくいったじゃない。私もあなたを忘れてあげればいいのよね」

「里沙、やめろ」

「何か間違ってる?だってそうでしょ?私だけずっとあなたの名前も知らなかった。一番近くにいたつもりだったけど、結局利用されてただけ?」

 一人蚊帳の外だったかもしれないという悲しみで、次から次と出てしまう言葉を制御することが出来なかった。寂しかった。彼を忘れたくなかった。それどころか……。

 彼は私の手からグラスを取り上げると、コースターに載せて、遠くへ置いた。

 そして、私を自分の方へ向けると目を見て言った。

「里沙、すまない。話すのが遅くなってしまった。後始末に追われて君のことが後になってしまった。でも俺は……」

 私は彼の口の前に手を置くと、言った。

「いいの、わかった。もう、お別れなんだもの……色々ありがとうございました」

 私はよろけながらも立ち上がって彼に頭を下げた。すると、彼に抱き寄せられた。

「そんな顔をさせたかったんじゃない。帰る前にきちんと君と話したかった。里沙、俺は君に惹かれてる」

 その言葉を聞いて、彼にしがみついて泣いてしまった。

「里沙、泣かないでくれ。君は俺のことを……」

「そんなこと聞くの?あなたの素性を知る前から私は……」

 泣き濡れた目で彼を見上げた。彼は私を見て、涙を親指でなぞって拭くと、そっと唇をなでキスを落とした。私は離れたくなくて身体を寄せてキスをねだった。すると、タガが外れたかのように彼のキスが深くなった。

「……あ、ああ」

 口づけの音がする。身体を寄せ合い、止まれない。

「……里沙……ここではだめだ。おいで」

 身体を離して耳元に唇を寄せそう言うと、私の手を引いてあの出口から通りへ出た。通りを渡ったところにシティホテルがあった。

「ここでもいいか?もう待てない」

 そう言われて、小さくうなずいた。すると、フロントへ彼は行って手続きをするとすぐに私の手を握ってエレベーターに乗った。

 エレベーターの扉が閉まるとすぐにまた抱き寄せられキスされた。そのまま部屋へなだれ込み、キスをしながらベッドへ。あっという間に服を脱がされた。

「綺麗だ、里沙……好きだよ」

「私も……好きなの……もうずっと前から……」

「どれだけ君をこうしたかったか……これからしっかりと教えてやる」

 上から彼がキスをしていく。手はせわしなく暴くように動いている。好きだという気持ちが快感を拾う。感じすぎて震えてしまった。彼はそんな私を見て嬉しそうに言う。

「可愛い」

 彼の指でいってしまった。ビクビクッとして彼の腕をぎゅっとつかんだ私を見て、彼は覆い被さる。

「……里沙……入るよ」

「……あ、ん」

 お互い一線を引いていたのに、ひとつになった瞬間、彼は本来の姿を見せた。獰猛な獣のようだった。強く抱かれて何もわからなくなる。ただ、声を上げ続ける。彼はうなり声をあげて私を抱き続ける。

 彼が好きだからこんなに感じるのか、よくわからない。初めての快感が体中を巡る。頭が真っ白になる。

「……里沙、君は身体も最高だ。もう離してやらない。待ったかいがあった……」

 身体の位置を変えてまた彼が入ってくる。すぐにトップスピード。もうずっと感じすぎてわけがわからない。

「ああ、待って……あん、あー!」

「もっていかれる……里沙、お前どこまで……」

 身体がてっぺんにとどまったままだ。はじめて彼の余裕のない目を見た。いつもどこか壁を作っていた人。でもそんな本当の彼を待ち望んでいたのは、他ならぬ自分だったのかもしれなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

独占欲強めな極上エリートに甘く抱き尽くされました

紡木さぼ
恋愛
旧題:婚約破棄されたワケアリ物件だと思っていた会社の先輩が、実は超優良物件でどろどろに溺愛されてしまう社畜の話 平凡な社畜OLの藤井由奈(ふじいゆな)が残業に勤しんでいると、5年付き合った婚約者と破談になったとの噂があるハイスペ先輩柚木紘人(ゆのきひろと)に声をかけられた。 サシ飲みを経て「会社の先輩後輩」から「飲み仲間」へと昇格し、飲み会中に甘い空気が漂い始める。 恋愛がご無沙汰だった由奈は次第に紘人に心惹かれていき、紘人もまた由奈を可愛がっているようで…… 元カノとはどうして別れたの?社内恋愛は面倒?紘人は私のことどう思ってる? 社会人ならではのじれったい片思いの果てに晴れて恋人同士になった2人。 「俺、めちゃくちゃ独占欲強いし、ずっと由奈のこと抱き尽くしたいって思ってた」 ハイスペなのは仕事だけではなく、彼のお家で、オフィスで、旅行先で、どろどろに愛されてしまう。 仕事中はあんなに冷静なのに、由奈のことになると少し甘えん坊になってしまう、紘人とらぶらぶ、元カノの登場でハラハラ。 ざまぁ相手は紘人の元カノです。

処理中です...