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第二章 恋しい人
後始末ー2***
しおりを挟む私はお茶を飲みながら、呟いた。
「終わったのね。お疲れ様。たまにこれからもここへ来ると、これからもあなたに……鈴村さんと偶然会えたりするかな?」
顔も上げず呟く私に、辛そうな彼の声が聞こえた。
「……里沙」
「ごめんなさい、独り言だから……良かったわね、とりあえずお仕事の目的は達成出来て。関係者以外は誰にも知られずうまくいったじゃない。私もあなたを忘れてあげればいいのよね」
「里沙、やめろ」
「何か間違ってる?だってそうでしょ?私だけずっとあなたの名前も知らなかった。一番近くにいたつもりだったけど、結局利用されてただけ?」
一人蚊帳の外だったかもしれないという悲しみで、次から次と出てしまう言葉を制御することが出来なかった。寂しかった。彼を忘れたくなかった。それどころか……。
彼は私の手からグラスを取り上げると、コースターに載せて、遠くへ置いた。
そして、私を自分の方へ向けると目を見て言った。
「里沙、すまない。話すのが遅くなってしまった。後始末に追われて君のことが後になってしまった。でも俺は……」
私は彼の口の前に手を置くと、言った。
「いいの、わかった。もう、お別れなんだもの……色々ありがとうございました」
私はよろけながらも立ち上がって彼に頭を下げた。すると、彼に抱き寄せられた。
「そんな顔をさせたかったんじゃない。帰る前にきちんと君と話したかった。里沙、俺は君に惹かれてる」
その言葉を聞いて、彼にしがみついて泣いてしまった。
「里沙、泣かないでくれ。君は俺のことを……」
「そんなこと聞くの?あなたの素性を知る前から私は……」
泣き濡れた目で彼を見上げた。彼は私を見て、涙を親指でなぞって拭くと、そっと唇をなでキスを落とした。私は離れたくなくて身体を寄せてキスをねだった。すると、タガが外れたかのように彼のキスが深くなった。
「……あ、ああ」
口づけの音がする。身体を寄せ合い、止まれない。
「……里沙……ここではだめだ。おいで」
身体を離して耳元に唇を寄せそう言うと、私の手を引いてあの出口から通りへ出た。通りを渡ったところにシティホテルがあった。
「ここでもいいか?もう待てない」
そう言われて、小さくうなずいた。すると、フロントへ彼は行って手続きをするとすぐに私の手を握ってエレベーターに乗った。
エレベーターの扉が閉まるとすぐにまた抱き寄せられキスされた。そのまま部屋へなだれ込み、キスをしながらベッドへ。あっという間に服を脱がされた。
「綺麗だ、里沙……好きだよ」
「私も……好きなの……もうずっと前から……」
「どれだけ君をこうしたかったか……これからしっかりと教えてやる」
上から彼がキスをしていく。手はせわしなく暴くように動いている。好きだという気持ちが快感を拾う。感じすぎて震えてしまった。彼はそんな私を見て嬉しそうに言う。
「可愛い」
彼の指でいってしまった。ビクビクッとして彼の腕をぎゅっとつかんだ私を見て、彼は覆い被さる。
「……里沙……入るよ」
「……あ、ん」
お互い一線を引いていたのに、ひとつになった瞬間、彼は本来の姿を見せた。獰猛な獣のようだった。強く抱かれて何もわからなくなる。ただ、声を上げ続ける。彼はうなり声をあげて私を抱き続ける。
彼が好きだからこんなに感じるのか、よくわからない。初めての快感が体中を巡る。頭が真っ白になる。
「……里沙、君は身体も最高だ。もう離してやらない。待ったかいがあった……」
身体の位置を変えてまた彼が入ってくる。すぐにトップスピード。もうずっと感じすぎてわけがわからない。
「ああ、待って……あん、あー!」
「もっていかれる……里沙、お前どこまで……」
身体がてっぺんにとどまったままだ。はじめて彼の余裕のない目を見た。いつもどこか壁を作っていた人。でもそんな本当の彼を待ち望んでいたのは、他ならぬ自分だったのかもしれなかった。
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