社内捜査は秘密と恋の二人三脚

花里 美佐

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第一章 すべてのはじまり

調査仲間-4

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「急だけどね。明日、スケジュール午前中空けてもらっていいかな?僕ね、ちょっと外出するから……」

「……え?あ、はい。どちらへ?」

「うん、そう、本社へね。少し打ち合わせがあってね、監査のことで……」

「本社のどちらへ?」

「……それはまだちょっとね。内密だから、君にも言えないんだ。とにかく、明日は朝から直行するから、君はスケジュールのほう調整頼むよ。これから出来るのはやっておいて……営業一部の打ち合わせだけだったよね、今のところ」

「……はい、明日午前中はそれだけですね」

「じゃあ、それを明後日以降にしておいて。頼むよ」

「かしこまりました」

 頭を下げて席へ戻る。何かあったんだわ。こんなこと、初めてだもの。

 秘書に内密って何?専務の行き先を聞かれたらどうやって答えたらいいんだろう。

 ため息をつきながら席に戻った。そっとガラスの向こうの鈴木さんを見ると、いない。ん?

 何気なく、フロアへ出て鈴木さんの机の周りを見るときれいに片付けられている。ホワイトボードを見ると、別室で監査準備と書かれている。どこにいるんだろ?

『地下のことはどうなったんでしょう?あとで教えて下さい。あと、どこにいるんですか?』

 鈴木さんにメールをした。

『なんだ?何かまた変なことしているんじゃないだろうな。大人しくしていろ』

 何なのよ、このメール。失礼しちゃう。一体誰のお陰で書類の置いてある棚がわかったと思ってんのよ!頭にきて返信するのをやめてしまった。

 翌日。

 早速斉藤さんと約束をしてランチに来た。斉藤さんとふたりで少し通りを曲がった地下のお店に昼休み入った。

 会社の人が誰もいなさそうな店。こんなところ、よく知ってるなあ。さすが、営業部所属。

「それにしても見られたのが北村さんで良かったよ」

「すごいタイミングだった。鈴木さんのことも偶然知ったんだけど、斉藤さんたちに遭遇したのも偶然。びっくりだわ」

「私は偶然少しおかしいと思うことがあって、それを関根課長に話したの。そしたら課長もおかしいと言って、書類を探しに行ったのよ」

「鈴木さんが何かを探っているのはわかったんだけど、私はそれがどこから来てるのかさえ知らなかったの。でも、斉藤さん達が現れて出所がどうやら二部らしいということはわかった」

 あ、しかめっ面してる。まあ、そうだよね。知られたくなかったんだろうけど、しょうがないじゃないの。私は明るく言った。

「それで、関根課長と昨日書類見つけられた?」

「……あ、うん。そうね、見つけられたというか、きちんと見ている時間がなかったから抜き出してきたの。溶解されてしまわないように、それらしきところを、ね」

「私達も一緒よ」

 ふたりで目を合わせる。小さな声で話した。

「ねえ。二部の誰のことをターゲットにしているか教えてもらったらだめ?そしたら、私もその関係の書類だけ洗うようにするからさ」

 小さい声で聞いた。

「誰にも言わないでね」

 そう言うと、携帯に二人の名前を書いて、消した。もしかして、その二人って初日に地下で見た二人?

「……どうしたの?」

「その人達の写真ってある?」

「うーん。ちょっと待って……」

 携帯の画像を探してくれている。

「あった。見えるかな、これで……」

 旅行の全体写真だ。部で行ったんだね。

「左から2番目が峰山さん。右から3番目が長田さんだよ」

 間違いない、長田さんは昨日地下で見た人のひとりだ。

「実はね。二人に会う前日、長田さんらしき人をあそこで見かけたの。ふたりで段ボールから書類を出して話してた。もうひとりがもしかすると峰山さんなのかもしれない。書類を見て話している内容が……」

 私も携帯に文章を書いて斉藤さんに見せた。斉藤さんは青くなって両手で口元を押さえている。

「これ本当?どう考えてもまずいじゃない。関根課長に話さないと……」

「待って。峰山さんかどうかがわかんないの。違う人ならもっとまずいでしょ」

「……で、鈴木さんもそれを探ってるんだよね」

「たぶんね」

「ねえ、私達でお互いの情報を交換して探っていこうよ。関根課長には私から話しておく」

「うーん。ちょっと待ってね。私は守秘義務があって、確たる何かがない限り業務については話せないの。だから、もう少し待って欲しい」

「わかった。お互い監査までになんとかしようとしているわけだから、あと一ヶ月もないよ」

「……そうだね。あ、時間だ。そろそろ戻らないと」

「うん。じゃあ、何かあったら連絡して」

「わかった。お互い気をつけようね」

 そう言って、会社へ戻った。

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