この恋、腐れ縁でした。

氷室ユリ

文字の大きさ
上 下
108 / 131
第六章 見えないところで誰かがきっと

51.ドクターストップ(1)

しおりを挟む

 新堂さんの体調に変わりはなく、順調にまた一年が過ぎた。春が来れば四年が経過した事になる。指折り数えて五年の時を待つ私達。残るはあと、十六月!
 ついにカウントダウンが始まった!……のだが、油断しているとこういう事が起きる。それは自分にだ。

「ユイ、どうだ、喉の具合は」
「うん……あんまり」
 今の時期、乾燥注意報が発令されない日はないくらい、空気はカラカラだ。小まめに潤さないとお肌も喉も張り付くように乾燥する。
 でもどうやらこれは、乾燥のせいではないようだ。夕方になって痛みが酷くなった。

「ちょっと見せてみろ。口開けて」
 口の中を覗いて彼が言う。「咽頭が腫れてきてるな……これは少々こじれるかもしれない」
「え~!怖い事言わないでよ……頑張って予防してたのに。何で?」
「ここのところ寒暖差が激しかったし、仕方ないよ」

「そうだ、ちょうど近所から大根を一本貰ってたな。摺り下ろして飲め」
「それ、あんまり好きじゃな~い。イヤっ」
「イヤじゃない、飲、め!作ってやるから」
 この剣幕にノーと言える人がいたら名乗り出てもらいたい。「うぇ~ん……っ」

 大人しくダイニングで、その不味い飲み物を待つ事数分。一口含めば想像通り辛くてヒリヒリして吐きそうだ。
「余計に悪くなりそう!」
「何か言ったか?それ飲んだら、薬を出してやるから飲むんだ」
「薬は飲むよ。でも、これ全部はムリ!」コップにたっぷりと注がれた液体。

「しょうがないな……なら半分でいいから」彼がようやく折れてくれた。
 ああ助かった……。

「熱計ってみろ」
「さっき新堂さん、私のおでこ触って大体分かったでしょ。いいよ」
「微妙なところだから言ってるんだ」有無を言わさず体温計を渡される。
 不服ながらも計測を終えて確認する。「七度、八分だね」言いながら彼に見せる。
「高温期にしても少々高い。少し出て来たな」

「……今日はもう寝るわ」
「そうだな。熱が上がるようだったら対処するが、今は休んだ方がいい」

 その日は喉の薬だけを飲んで早めに就寝した。私はよく生理前の時期に体調を崩す。そして今回もそんな展開となりまるで学習能力(?)がない!


 翌朝。痛みで寝付けず何度も目が覚めて、全然眠った記憶なし。喉も相変わらず良くなっていない。けれど熱は下がっていた。食欲も普通にある。

「ますます痛い……。完全に風邪だわ」
「今日は仕事か?」
「うん。昼から夕方まで。今週の火曜は前半忙しいから行かないと」
「大丈夫なのか?熱が下がったからって無理するなよ」
「喉痛いだけだし、大丈夫よ。何だったら自分の仕事終わったら早退する」
「そうしろ。迎えに行くから」
「ありがと」

 幸い出勤を止められる事はなく、家を出たのだが……。

「何で雨降ってるワケ?」
 通りに出たところで雨が降り出し、震えながらバスを待つも来そうもない。時間を気にした私はこんな体調の中、二十分ほど歩いて駅に辿り着いた。

「何だ、私ってば案外元気かも?」電車に乗り込んで思う。
 喉は猛烈に痛かったけれど、これなら大丈夫そうだ。いつもは感じない眠気が襲うのは……寝ていないせいだと自分に言い聞かせる。

 会社に着いて昼食を摂ってから仕事が始まる。遅番とは別で今日は夕方には帰れる。

「ああ……喉が痛い!」
「朝霧さんったら、風邪?年明け早々大変~!」家の近所に住んでいる同僚の彼女だ。
「昨日から痛くて」
「新堂先生、治してくれないの?」当然やれるだろうとばかりに聞かれ、「いくら医者でも魔法使いじゃないんですから!」と強めに返した。
 診ただけで治せるとか、一発で治る薬があるなどと思っているのだろうか?

 知りたがりの彼女は相変わらず根掘り葉掘り聞いてくる。せっかちで心配性でちょっと変わった人だ。

「もう帰って、朝霧さん。ここまでやってくれたら大丈夫だから。ありがと、体調悪いのに」こう言ってくれたのはリーダーだ。
 お言葉に甘えて予定通り早退する事にした。猛烈に眠くてミスをしそうなので!

 電話すると、新堂さんはすでに近くにいたようで(!)、すぐに会社の前に黒ベンツが現れた。

「新堂さんったら、本当に魔法使いだったりして」先ほど自分が口にしたセリフを思い返して苦笑する。
「何だって?」もちろん彼は知る由もない。「ううん、こっちの話!」
「それで体調は大丈夫か?」
「うん。相変わらず喉が激痛。のど飴舐めすぎて気持ち悪い!それに何だか眠くて」
「食事は?」
「小さいお弁当買って、全部食べれた」

 彼は無言で頷いた。無表情だ。何を考えているのか分からない。

「ねえ新堂さん……」私は不安になった。「何だ」
「私の風邪、移してたりしてないよね?」口数の少ない彼に、体調が悪いのではと勘ぐってしまう。
「俺は元気だが。どうして?」彼が私の方をチラリと見てくる。
「何だか、いつもと様子が違うように見えたから」

 こんな言葉はスルーされ、新堂さんが車窓から空を見上げている。
「……なあ。おまえが家を出た時、雨降って来たろ」
 唐突に話題を変えられて少々戸惑った。「え?あ、ああ……そうそう、降って来た」
「バスで行ったんだろ?」
「それがさぁ、こういう時にバスが来ないのよね。待ってたら昼ご飯食べる時間なくなっちゃう!」

「……つまり、歩いて行ったって事か」
「うん、そうだけど……あのねっ!案外元気だったの、全然疲れなかったし」
「そうか」
 怒られると思ったが、彼はそれ以上何も言わなかった。


 翌日は休みだったので、ゆっくり過ごして体を休めた。けれどやっぱり眠れず。こんなに眠いのにベッドに入ると眠れない。
 その日も一日中、喉の痛みは依然として変わらず。何てしつこいの!

 それでもその翌日には徐々に緩和されてきた。

「まだ腫れてるな。熱は?」
「六度八分。でも激痛ってほどじゃなくなったわ」
「今日の仕事はまた、どうしても行くのか?」
「最近人手不足で、遅番が二人体制になってるの。私が行かないと、後輩の彼女一人になっちゃう」
「誰かに代わってもらうとかできないのか」
「今日はリーダーが休みなのよ。今さら無理だわ」さすがに当日変更は厳しい。

 またも無表情の彼が私を見つめる。あと一押しか。

「熱はないでしょ?先日より全然楽だから」仕事もそんなに忙しくないし、と続ける。
「帰りは夜だろ?夜から冷えるって言うし……」
「厚手のコート持ってくから!」
「当然だ。行くなら送迎してやる」
「ありがと、新堂先生!」ようやく下りた出勤許可に大いに安堵した。

 この時は本当に元気だったのだ。日中の猛烈な眠気以外は。


 ところがこの日会社に行って一転する。

「鼻水が止まらないっ。……ちょっとゴメン!」鼻を押さえて何度も席を立つ。
「大丈夫?朝霧さん。風邪、酷くなった?」今日も近所の彼女が出勤している。
「ここへ来たら急に……でも大丈夫です」
「今日忙しくないし、ゆっくり仕事しな」

 作り笑いで頷きながら、今の体調について考える。どうもいつもと違う。風邪ではないようなサラサラの鼻水が、下を向いただけで垂れてくる始末!

「それじゃ、私帰るわ、お先!」元気良く近所の彼女が帰って行った。
「お疲れ様でした~……」鼻を啜りながら答える。「んもう。代わってあげようか?の一言でもほしいものだわ、薄情者!」
 大丈夫です、なんて言わなきゃ良かったと後悔した。

 こうして一人また一人と帰って行き、ついに後輩の彼女と二人になった。
 彼女はコミュニケーション力に少々問題ありの子で、あまり話さない。それでも私を気遣ったのか色々と先取って仕事してくれた。

「……何とか乗り切った」
 呆然としながら会社を出て、くしゃみを連発。「ああ疲れる!」
 顔を上げると、通りに見知った車が停まっていた。

「やっぱり悪化したんだろ」
「新堂さんっ!……来てくれてたの」この日ばかりは有り難さを感じた。
「五分前にね。さあ乗って。やっぱり冷えて来た」
「……ありがと」

 車の中はとても快適だった。しかし鼻水は止まらず。

「随分と鼻声になったな。今度は鼻に来たか」
「それがさぁ。何か変なのよね……っ」
 症状を話すと、彼も首を傾げる。とにかく帰ってから診察をという事になった。
「体の水分、全部こっちに来てるんじゃないかってくらい出るんだけど!」


 自宅へ着いて早速診てくれる。そして出された結論がこれだ。
「何かのアレルギー症状のようだ」
「会社行った途端よ?こんなの初めて!」
「今の体調と、その場所の何かが反応したんだろう」

 風邪の悪化ではなかったという事か。そんな訳で鼻炎の薬を貰って飲む。

「熱は昼と同じか。それ飲んだら、少し眠気が出るかもしれない」
「それは大助かり!」思わず口に出てしまった。「何だって?」
「だって最近、起きてる時は猛烈に眠いのに、ベッドに入ると眠れなくて」
「だったら好都合だな。今晩は眠れるよ」

「はい、寝ます!だって明日は朝から……」話している途中で彼が口を挟む。「仕事は休めよ」きつめの口調ながら私は反論。「無理よ。また例の彼女と二人なの」
「そのシフトは一体何なんだ?おまえはそいつのお守り役か何かか?」
「違うけど。たまたまよ。私だってこんな時に体調崩すとは思ってなかった!」
 ずっと順調だったのだから!

 ベッドに入りしばしウトウトするも、やはり寝つきが悪かった。朝方になって、猛烈に咳をする自分に驚いて目が覚めた。

「新堂さん?新堂さぁ~ん!」
 起きてみると彼の姿が見当たらない。書斎を覗くも、仕事用のカバンは置いたままだが車がなかった。
「出かけたのか……。声かけられても、聞こえてなかっただけかもね」

 いつから咳き込んでいたのか分からないが、胸の辺りが異様に重い感じがした。
 小刻みに咳を繰り返しながら朝食を摂り、鬼の居ぬ間にとばかりに出勤する。

「昨日よりマシだけど、まだ鼻水がっ」
 昨日は散々会社のティッシュを失敬したので、今日は抜かりなく持参して身構えていたが、本日のメインはどうやら鼻水ではなく咳のよう。
 目まぐるしく変化する症状について行けない!

「あら朝霧さん。まだ風邪治らないの?」ボスが直々に私の元にやって来て聞いてくる。
「ええ……まあ」
「あなた、何だか連日顔を見るけど。お休みしたら?」

 簡単に言うが、こっちだってできるならしている。社員の勤務状況も把握していないのか?悪気はないのだろうが、時々こういう空気を読まない発言をするから困る。
 適当にボスをあしらって仕事を続けた。

 それにしても眠い。ここのところずっと朦朧とした状況で仕事をしている。どこかでヘマをしていないか不安だ。
 そしてこんな予想は的中してしまう。

「先日朝霧さん、珍しくミス連発してたけど。聞いた?よっぽど具合悪かったのね」
「え!連発?初耳です!そうでしたか……ごめんなさい」
 午後に出勤した本日遅番のリーダーからこんな指摘をされて慌てる。
 そんな気はしていたが、連発とあってはさすがに落ち込む。聞いたところによると、どれも大事には至らず対処できたらしいが。

「それにしても凄い咳ね……。悪化してるじゃない。連絡くれたら代わってあげたのに!もういいから早く帰って。新堂先生に連絡してあげる。えっと番号は……」
「ああっ、大丈夫です、自分で連絡します!ありがとうございます」
 リーダーの彼女も新堂さんの事は知っている。だからって電話くらい自分でする!
 真面目そうなこの人までも、彼とお近づきになりたいと思っていたりするのか。
 
 新堂和矢の魅力恐るべし!と私が勝手に妄想を膨らませていると、ボスがやって来て話に加わる。
「そうなのよ、朝霧さんたら朝からずっと咳き込んでてね。心配してたの」
「朝霧さん!帰りな!死んじゃうよ?」これは今年部長になりたてで、気合十分の別グループの社員さんだ。ボスに頭が上がらない事もあり便乗してくる。
 それにしてもそこまで言う?何て大袈裟な!これしきで朝霧ユイが死ぬものか。

「最終日なのに、こんな中途半端の出勤でスミマセン」今日は月末の最終日。
「いいのいいの、体が一番!早く治してね」
「なになに!?誰が倒れたの!」

 こうしてどんどん大袈裟な展開となり、皆に廊下まで付き添われエレベーターに乗せられた。
「全く……一々大騒ぎが好きな人達!」
 ようやく解放されて一階エントランスに到着。すると、正面玄関に見覚えのあるシルエットが見えた。

「……新堂さん?ケホケホっ」
「来たか」
 わざわざ車から降りてここまで来てくれたようだ。彼を見てホッとしたのか、途端に咳が酷くなる。それを見た彼が、すぐに側に来て背中を擦ってくれた。
 その腕にしがみ付いて一頻り咳き込む。
「ごめん、新堂さん、私……無理して、ケホケホっ」

「無理に喋るな。もう帰れるんだろ?さあ行こう」
 彼に支えられて、近くのコインパーキングに収まる黒ベンツの元に向かう。

「このまま病院に行くぞ」
「はぁい。コホコホ……」
「……。いつからそんな咳をしている?」彼が車を走らせながら横目で私を見る。
「う~ん、どうだろう。朝方この咳で目が覚めて……」
「早朝に用事があって出かけた。声をかけた時は静かに眠っていたが……」

「全然気づかなかった。やっと眠れた頃ね、きっと。それ何時ごろ?」
「何だ、昨夜も眠れてなかったのか?」
「時々変な夢見てたから、寝てるとは思うんだけど」
「俺が出たのは五時過ぎくらいだ。その後から始まったって事か……しまったな」
「何が?ケホケホ……」

 彼はそれ以上何も話さなくなった。これはかなりご立腹とみえる。
 マズイ、非常にマズイ!


 そして病院でも私語は一言も発せず、淡々と検査が進められた。とても口を挟める雰囲気ではなく、私も神妙な面持ちで指示に従った。
 目的の検査を終えて受付で彼を待つ。

「帰ろう」現れた彼が言った。
「良かった。入院って言われるんじゃないかと……」
「あと少しでそうなったかもな」
 グサリと来ました、そのお言葉!

「また熱が上がってきた。その咳は風邪の症状ではない」
「え?熱上がってるのに風邪が悪化したんじゃないの?」
「軽度の喘息だな。つまりアレルギー疾患が悪化したんだ」
 彼はその後、鼻も喉も乾いている事、気管支や肺の呼吸音から、疑いの余地もないと説明してくれた。

「その咳を一度聞けば、誰でも分かるけどな。それよりも炎症の度合いが知りたかった」
 私には分からなかったが?これは絶対に嫌味だ。
「新堂さんがいない間に抜け出したみたいになっちゃって……本当にごめんなさい。今回ばかりは私も無茶したなって思ってる。反省してます」
 車内にて、咳の合間に弁明する。
「もう喋るな。せっかく気管に薬剤を噴入したんだから。鼻で静かに呼吸してろ」

「はい……」
 彼をチラリと見るも、ニコリとも笑ってくれない。


 家に着いて、寝室ではなく個室の方のベッドに寝かされる。

「横になると咳が出やすいから、少し起こしておく」
「うん。その方が楽だわ」
「すぐに薬が効くだろう。それまで辛抱しろ」
「ありがとう」

 何かあったら呼べ、と言い残して彼が出て行った。
 今回の薬は強めのものらしく睡眠不足解消を期待したのだが、やはり思うように眠れなかった。

 夜になって軽く食事を摂り、そのままベッドへ戻る。会話はなし。鼻水は落ち着いたが相変わらず咳が止まらない。
 様子を見に来てくれた彼に訴える。「新堂さん、咳が止まらなくて眠れないよ……」
「分かってる。夕方に飲ませた薬と咳止めの薬は併用できないんだ。あと……そうだな、二時間待て」
「そっか。そういう事なら分かった」

 こんなに咳き込んでいるのに何も対処してくれないから、お仕置きでもされているのかと思った。そんな訳はない、子供じゃあるまいし?
 苦しさのあまり自虐的になっている。今は何も考えないようにしよう。


 こうして念願の二時間が経過。咳止めのシロップがどんなに有り難かった事か……。
 ようやくようやく、私は眠りについたのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

あなたの嫉妬なんて知らない

abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」 「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」 「は……終わりだなんて、」 「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ…… "今日の主役が二人も抜けては"」 婚約パーティーの夜だった。 愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。 長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。 「はー、もういいわ」 皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。 彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。 「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。 だから私は悪女になった。 「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」 洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。 「貴女は、俺の婚約者だろう!」 「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」 「ダリア!いい加減に……」 嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?

アマレッタの第二の人生

ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』 彼がそう言ったから。 アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。 だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。 「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」 その瞬間、アマレッタは思い出した。 この世界が、恋愛小説の世界であること。 そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。 アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。

天才少女は旅に出る~婚約破棄されて、色々と面倒そうなので逃げることにします~

キョウキョウ
恋愛
ユリアンカは第一王子アーベルトに婚約破棄を告げられた。理由はイジメを行ったから。 事実を確認するためにユリアンカは質問を繰り返すが、イジメられたと証言するニアミーナの言葉だけ信じるアーベルト。 イジメは事実だとして、ユリアンカは捕まりそうになる どうやら、問答無用で処刑するつもりのようだ。 当然、ユリアンカは逃げ出す。そして彼女は、急いで創造主のもとへ向かった。 どうやら私は、婚約破棄を告げられたらしい。しかも、婚約相手の愛人をイジメていたそうだ。 そんな嘘で貶めようとしてくる彼ら。 報告を聞いた私は、王国から出ていくことに決めた。 こんな時のために用意しておいた天空の楽園を動かして、好き勝手に生きる。

シングルマザーになったら執着されています。

金柑乃実
恋愛
佐山咲良はアメリカで勉強する日本人。 同じ大学で学ぶ2歳上の先輩、神川拓海に出会い、恋に落ちる。 初めての大好きな人に、芽生えた大切な命。 幸せに浸る彼女の元に現れたのは、神川拓海の母親だった。 彼女の言葉により、咲良は大好きな人のもとを去ることを決意する。 新たに出会う人々と愛娘に支えられ、彼女は成長していく。 しかし彼は、諦めてはいなかった。

悪役令嬢が残した破滅の種

八代奏多
恋愛
 妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。  そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。  その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。  しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。  断罪した者は次々にこう口にした。 「どうか戻ってきてください」  しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。  何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。 ※小説家になろう様でも連載中です。  9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

処理中です...