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エピローグ
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◇ ◇ ◇
困難を乗り越えて、私達はやっと心から通じ合う事ができた。この最強の絆は、そうそう解ける事はないだろう。
ところで問題の〝大嫌い〟が〝大好き!〟に変わった瞬間はいつだったのだろう。
「ねえ?」問いかけるも、相変わらず無表情の彼に怖気づいてしまう。
いい加減このポーカーフェイスにも慣れたいところだが、なかなか難しい。
「……やっぱりいいや」
「何だよ、言えよ。気になるだろ」
「やめとく!どうせ答えてもらえないだろうし……」
左手で長い髪を弄びながら言い返す。
今でもスーパーロングは健在だ。あれからまだ切っていない。長いと楽なのだ。どれだけ伸びても気にならないので!
「聞いてみなきゃ分からないだろ?」
そう言った彼は、先ほどの無表情はどこへやらの眩いばかりの笑顔を称えて、私の髪に触れている。
「それじゃ聞くけど。最初に出会った頃、私のお母さんのこと好きだったでしょ」
この質問によほど意表を突かれたのか、彼の肩がピクリと動いた。
図星か……。
いつまでも答えない彼をしばらく見つめていたが、私はこう切り出す。
「あなたも案外、分かりやすい反応するじゃない。怒ったりしないよ。だって私のお母さんだもん?美人でスタイル良くて、一目惚れしちゃっても仕方ないわ」
すると私が同調した事にほっとしたのか、ようやく彼が答えた。
「本当に、優しくて綺麗な人だよな」
「そんな事じゃないかと思ってたわ。だって、あなたの態度、あまりに違ってたから!」仲も見た感じとっても良さそうだったし?
「そうだったか?」
この返答には、自覚無し?!と大いに驚かされたが……。
「そうよ!私には乱暴だったでしょ、口調も怖かったし。大っ嫌いな医者のイメージそのもの!気づいてない訳?」
「それはそれは!だからおまえは、俺に敵対心剥き出しだった訳だ」
「まさに……、最悪の出会いってヤツよね」
「最悪から始まれば、後は上がって行くのみさ」
これには、確かにそうだと納得する。
彼が組んでいた長い脚を組み替えた。こんな仕草さえも絵になる。見惚れていた私の顔を、彼もじっと見つめてくる。
「ミサコさんとおまえは、本当に瓜二つだな。今のおまえはあの頃の彼女そっくりだ」
「顔色の悪さも……?」彼にとっての母の印象は、心臓を患っていた青い顔だ。
そんな気がして、こんな事を言ってしまう。
「いや……、それはどうかな」
答えを濁されたので、実際のところは分からない。
「昔、良く言われたわ。そっくりな親子ねって。だから、もしかして私の心臓も……」
心臓の病気は遺伝する?不意に不安を感じて胸元に手を持って行く。
「だからお母さんは、あなたに私を……」託した?
〝昔、約束したんだ。幸せにするってな〟彼はこんな言葉を私に打ち明けた。
幸せにするというと普通は結婚をイメージするけれど、母とこの人の話だ。もしかしたら全然違う意味なんじゃ……?
こんな事を思った時、彼は真剣な表情で言った。
「心配するな。おまえの心臓は、とても強いと思うよ。それと」
「ホント?それと、何?」
「例えそうなっても、俺がいれば何の問題もない」
やっぱりだ。幸せというのは、病気を治してもらえるという事か。
それにしても、この人の言葉はなぜこんなに私を安心させてくれるのだろう。
私は笑顔を取り戻して、堪らず彼に身を寄せた。
しばしの沈黙の後、彼が話し始めた。
「始めは、そんな気持ちでおまえと接していた」
そんな気持ち……好きになった人の娘として、という事か。
「だがおまえは、いつでも俺の予想を覆す行動を取って……興味が尽きなかったよ。いつの間にか、そんなおまえに夢中になっていた」
それは私だって同じだ。あり得ない言動ばかりのあなたから、目が離せなくなった。
この人が気になり出した時から、きっと私の恋は始まっていたのだ。
「この俺を振り回すとは……。全く、十も年下だとは思えんね」半ば呆れたように呟く。
「ふふっ!恐れ入ったか!私ってば、濃縮された人生を送っているもので?」
体を離してこう説明する。
「なら、その濃縮分を換算すると、今いくつなんだ?」
「う~ん、そうねぇ……。二百歳くらいかな」
「それじゃ老婆を通り越して、妖怪だな!」
「ちょっと?酷くない?それ!」思わず彼の方を睨みつける。
「でもさ。おばあちゃんになっても、一緒にいてくれるんでしょ?」
「ああ。妖怪になっても一緒にいてやるよ」
これには堪らずに爆笑する。「残念だけど、妖怪になるつもりはないから!」
私達は大いに笑った。
こんな平穏な日々がいつまでも続けばいい……。でも、例えこれからどんな試練が待ち受けていようと、きっと二人なら乗り越えられる気がする。
どんな事でもかかって来い!
◇ ◇ ◇
困難を乗り越えて、私達はやっと心から通じ合う事ができた。この最強の絆は、そうそう解ける事はないだろう。
ところで問題の〝大嫌い〟が〝大好き!〟に変わった瞬間はいつだったのだろう。
「ねえ?」問いかけるも、相変わらず無表情の彼に怖気づいてしまう。
いい加減このポーカーフェイスにも慣れたいところだが、なかなか難しい。
「……やっぱりいいや」
「何だよ、言えよ。気になるだろ」
「やめとく!どうせ答えてもらえないだろうし……」
左手で長い髪を弄びながら言い返す。
今でもスーパーロングは健在だ。あれからまだ切っていない。長いと楽なのだ。どれだけ伸びても気にならないので!
「聞いてみなきゃ分からないだろ?」
そう言った彼は、先ほどの無表情はどこへやらの眩いばかりの笑顔を称えて、私の髪に触れている。
「それじゃ聞くけど。最初に出会った頃、私のお母さんのこと好きだったでしょ」
この質問によほど意表を突かれたのか、彼の肩がピクリと動いた。
図星か……。
いつまでも答えない彼をしばらく見つめていたが、私はこう切り出す。
「あなたも案外、分かりやすい反応するじゃない。怒ったりしないよ。だって私のお母さんだもん?美人でスタイル良くて、一目惚れしちゃっても仕方ないわ」
すると私が同調した事にほっとしたのか、ようやく彼が答えた。
「本当に、優しくて綺麗な人だよな」
「そんな事じゃないかと思ってたわ。だって、あなたの態度、あまりに違ってたから!」仲も見た感じとっても良さそうだったし?
「そうだったか?」
この返答には、自覚無し?!と大いに驚かされたが……。
「そうよ!私には乱暴だったでしょ、口調も怖かったし。大っ嫌いな医者のイメージそのもの!気づいてない訳?」
「それはそれは!だからおまえは、俺に敵対心剥き出しだった訳だ」
「まさに……、最悪の出会いってヤツよね」
「最悪から始まれば、後は上がって行くのみさ」
これには、確かにそうだと納得する。
彼が組んでいた長い脚を組み替えた。こんな仕草さえも絵になる。見惚れていた私の顔を、彼もじっと見つめてくる。
「ミサコさんとおまえは、本当に瓜二つだな。今のおまえはあの頃の彼女そっくりだ」
「顔色の悪さも……?」彼にとっての母の印象は、心臓を患っていた青い顔だ。
そんな気がして、こんな事を言ってしまう。
「いや……、それはどうかな」
答えを濁されたので、実際のところは分からない。
「昔、良く言われたわ。そっくりな親子ねって。だから、もしかして私の心臓も……」
心臓の病気は遺伝する?不意に不安を感じて胸元に手を持って行く。
「だからお母さんは、あなたに私を……」託した?
〝昔、約束したんだ。幸せにするってな〟彼はこんな言葉を私に打ち明けた。
幸せにするというと普通は結婚をイメージするけれど、母とこの人の話だ。もしかしたら全然違う意味なんじゃ……?
こんな事を思った時、彼は真剣な表情で言った。
「心配するな。おまえの心臓は、とても強いと思うよ。それと」
「ホント?それと、何?」
「例えそうなっても、俺がいれば何の問題もない」
やっぱりだ。幸せというのは、病気を治してもらえるという事か。
それにしても、この人の言葉はなぜこんなに私を安心させてくれるのだろう。
私は笑顔を取り戻して、堪らず彼に身を寄せた。
しばしの沈黙の後、彼が話し始めた。
「始めは、そんな気持ちでおまえと接していた」
そんな気持ち……好きになった人の娘として、という事か。
「だがおまえは、いつでも俺の予想を覆す行動を取って……興味が尽きなかったよ。いつの間にか、そんなおまえに夢中になっていた」
それは私だって同じだ。あり得ない言動ばかりのあなたから、目が離せなくなった。
この人が気になり出した時から、きっと私の恋は始まっていたのだ。
「この俺を振り回すとは……。全く、十も年下だとは思えんね」半ば呆れたように呟く。
「ふふっ!恐れ入ったか!私ってば、濃縮された人生を送っているもので?」
体を離してこう説明する。
「なら、その濃縮分を換算すると、今いくつなんだ?」
「う~ん、そうねぇ……。二百歳くらいかな」
「それじゃ老婆を通り越して、妖怪だな!」
「ちょっと?酷くない?それ!」思わず彼の方を睨みつける。
「でもさ。おばあちゃんになっても、一緒にいてくれるんでしょ?」
「ああ。妖怪になっても一緒にいてやるよ」
これには堪らずに爆笑する。「残念だけど、妖怪になるつもりはないから!」
私達は大いに笑った。
こんな平穏な日々がいつまでも続けばいい……。でも、例えこれからどんな試練が待ち受けていようと、きっと二人なら乗り越えられる気がする。
どんな事でもかかって来い!
◇ ◇ ◇
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