大嫌いは恋の始まり

氷室ユリ

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第六章 まだ見ぬ世界を求めて

  何がいちばん大切か(2)

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 二人で外へ出て、空を見上げる。
 いつの間にか真夏とは違う風が吹いている。変わり映えのない毎日の中で、季節の移ろいだけが私に時の流れを感じさせる。

 もう夏が終わろうとしていたのか。そして私も……。

「風、気持ちいいね……」
「ああ。ここ一帯は風の通り道なんだ。海からの向かい風が良く吹く」
「この場所、どうやって決めたの?」
 やや小高い場所に建っているため、ここからは街のほぼ全体が見渡せる。以前住んでいた街のビル群とは違う長閑な街並みだ。

「貴島の所みたいな、静かで自然いっぱいの土地を探したんだ」
「あそこみたいに海は見えないけど、確かにいい所ね」
 視界の一番奥で地平線に沿って光る線が見える。海が太陽光を反射しているのだ。
 この丘がもっと高ければ、海も良く見えた事だろう。

 ぐるりと見渡していると、庭に停まった黒のセダン車を発見した。
「あれ?車、ベンツじゃないのね」
「おいおい、今気づいたのか?この間乗ったろ」
 確かにあれで病院に連れて行ってもらったが、よく覚えていない。

「きっと、何にも見えてなかったんだと思う……」魂の抜け殻にも程がある!
「まあいい。買い換えたんだ。俺は気に入ってるんだが、どうかな」
「アウディ……何で?意外!」
 出会って以来、ベンツ以外の車に乗っているこの人を見た事がないというのに!何せレンタカーまでベンツだった。

「色々迷ったが、無難だろ。近所にカーショップもあったし。話の分かるディーラーマンがいてね」
「ええ、ステキな車ね」
「良かった、気に入ってもらえて」
 アウディ・クワトロ。彼の好む高級大型セダン車だ。

 新堂さんが車を購入した時の事を話してくれた。二千万近い金額を一括払いで、と言った途端、店員の態度が急変した事などなど。

「ああ、それ分かる。でも私の場合は不審感が増したってだけだけどね」
「不審感って?」
「だって!若い女が一千万や二千万を一括払いなんて、あり得ないでしょ」
「ヤクザの女かもって思われたとか?」
「それもある」

 私達は顔を見合わせて笑った。こんなに笑ったのはいつ以来だろう。

 こんな話をしながら夕方まで外にいた。本当に久しぶりだった、こんな普通の時間を過ごしたのは。

「そろそろ中に入ろう。久しぶりに動いて、疲れただろう?」
「少しね。でも、楽しかった」
「な?いくらだって、楽しめるだろ?」
「ふふっ……ええ、そうね」


 その日、脱衣所にて問いかける。

「新堂さん。私、綺麗?私の体って、魅力ある?」これは、ずっと前から聞きたかった事だ。
「もちろんさ。とても綺麗だよ」
 私の体をタオルで拭いていた手を止めて、彼が答えてくれた。
「……こんな体になっても、そう思う?」
「どんな状態であろうと、ユイはユイだ。俺のお気に入りのね」

 こんな事を言った後、私の額にキスをしてくる。それに答える事ができずに、俯いてしまった。

「どうした?」
「私、本当に治らないの?新堂さんに治せないケガなんてないでしょ。どうして……!」
「ユイ……」
 新堂さんが困っている。また分かり切った事を聞いて困らせてしまった。
「ごめんなさい」

「あなたと、もっと……結ばれたかった。でもそれはもう無理なのよね。だって私は何も感じないもの……っ」何て大胆な事を言っているか!
 だが、もう二度とできないと言われると無性にしたくなる。

「……明日の朝、マキが来るそうだ。朝早いから、もう休め」
 彼は私の言い分に一切触れずに、冷たくこう言い放った。
「ええ……そうね」

 着替えを終えて、寝室に連れて行かれる。

 新堂さんの顔を覗き見るも、何も表していない。昔に良く見たあの無表情だ。
 どうして引き止めてくれないの?私がこのまま死んでしまっても、いいと思っているのか。私はこんなにもあなたの事が愛しいのに……!

 ようやく彼が口を開いた。「ユイ。いよいよ明日、お別れのようだ。今までも別れの場面は経験しているが、今回は永遠の別れだな」
「……っ!」
 枕元でそう言われて、私は声にならない声を上げる。
 こんな語り方をする彼を、あまりにも残酷だと思った。新堂さんには、悲しみの色が全く見られない。

 私は涙を止める事ができずに、涙で滲んだ目に彼の姿を焼き付けた。

 やっぱりやめた、そう軽く言い放てたならどんなに楽だろう……。自分で決めた事とはいえ、この人との永遠の別れは悲しすぎた。
 けれど、キハラ譲りの強情さは容易には曲げられない。

 そのまま私は、泣き疲れて眠ってしまったのだった。


 翌朝。鳥のさえずりが朝を知らせる。

「おはようございます、ユイさん」
「マキさん……!もう来てたの」
 目が覚めて最初にこの人を見るのは二回目だ。
 この人のバイクと衝突事故を起こした時の事を思い出す。あの時も私は、絶望の淵に立たされていた。けれど今とは全く別物だ。

「お早い方が、よろしかったんですよね?」穏やかな表情で述べるマキ。
「え……ええそうよ。ねえ、新堂さんはどこ?」
 彼の姿が見当たらない事に不安を感じる。
「新堂先生なら、今しがた外出されましたよ。見ていられないと言ってね」

「そんな……!ねえ、呼び戻してくれない?」
「なぜです?もう用はないでしょう。これからあなたは、死ぬんですから」
 マキは、怪しげな機械を私の頭に取り付けながら言った。こちらもまた、彼に負けないくらいの冷酷さで!

 体の自由が利かないため、抵抗もできない。
「ちょっと待ってよ、まだ心の準備が……」
「何の準備もいりませんよ。あなたはただ横になっていればいいんですから」

「待って、お願いだからっ!」私は泣きながら叫んでいた。

「……ユイさん。あなた、本当に死にたいんですか?」
 改めて聞かれるも、答えられない。
「本当はもうそんな気は、とっくにないんじゃありませんか?」
「いいえ!私にはもう、生き続ける資格なんてないのよ」
「そうでしょうかね。私個人の意見ですが、あなたにはまだまだ、生きる権利があると思いますが」

「ここまで醜態をさらして、周りに迷惑をかけて生きてたって辛いだけだわ」
「醜態をさらして周りに迷惑をかけるのも、生きるって事なんじゃないですか?」
「あなたはそこに、生きる価値を見出せる?そんな事のどこに意味があるっていうの!ただ虚しいだけじゃない……っ」

 私の言い分に、マキが目を細めた。少し置いて静かに語り始めた。
「価値があるかないかを決めるのは、あなたじゃない。そうやって、何でも勝手に決めつけるのはエゴだ。生きる価値は、全ての命にある」

 いつから溢れ出したのか、涙がとどまる事なく流れ続けている。

「防衛医大に勤めていた時、某国の視察先で会ったある男性の話をしましょう。彼は戦地に赴き、国のために戦った一人です」
 私は悔し涙を流したまま、マキの話に耳を傾ける。
「運悪く彼の隊に向けて砲弾が落ち、隊員達が犠牲になりました。生き残ったのは彼一人。それも彼は、今のあなたのように、体のほとんどが使えない状態となった」

「彼には、恋人も家族もいませんでした。肉体面のケアは医療機関がしてくれるが、心を支える人間はいなかった」
 マキは続ける。
「国からは莫大な慰謝料が出ましたが、そんなものは彼の生きる糧にはならなかった」

「それで、その人は……?」
「自分だけ助かった事を悔やんで絶望する彼を、私は見過ごせなかった」
「手に、掛けたの?」安楽死させたというのか。
「私も同じ立場なら、それを望んだでしょうから……」マキはただこう答えた。

「自分だけのためには、生きられない人もいるんです」
 自分だけ生き残った事が許せない、その気持ちは私にも良く分かる。

「私もその一人です。妻を亡くした私が生きて来れたのは、遺志を継いだから。やるべき事があるからです」
 こんな時にまたも驚きの発見だ。「……奥さん、亡くなってたの」
「妻の想いを、この世界に伝え続けたいんですよ。私が生きている限りね」マキは穏やかな顔で宣言した。

「話が反れましたが……。もし彼に支えてくれるパートナーがいたら。生きる目標を持てたなら、あんな選択をする必要はなかったのでしょうね」
 マキはとても哀しそうな顔をした。

「いいですか、ユイさん。それに引き替え、あなたには献身的に支えてくれるパートナーがいるんです。その人は、あなたの死を望んでいるのですか?」

 これを聞いて、私の脳裏に異国の地で出会った老婆が語った言葉が浮かんだ。
〝あなたを大切に思ってくれている人を、大事にしなさい〟

「私は一人じゃない……」
「そうでしょう?」マキは当然だと言わんばかりの顔だ。
「それでも!……それでも、あの人の人生まで奪いたくない。このままじゃ……」
 彼は自分のやりたい事もできずに終わってしまう。何のために別々に生きる道を選んだのか。これでは逆効果だ!

「他人の人生はそう簡単には奪えませんよ。特に新堂先生のような方は、自らの意に反して、そういう事を許すとは思えませんがね!」マキがどこか皮肉めいた口調で言った。
「自らの意に反して……か」
 私の口からごく小さな笑いが零れた。
 確かにあの人は、そんな事に流されるような人間ではない。

 これをきっかけに、強張っていた神経が急速に緩んで行くのを感じた。

 そうか。誰かのために生きてもいいのか。自分のためじゃなく彼のために。彼がそれを望んているのなら……。
 新堂さんの言葉が過ぎる。〝決まってるだろ、おまえが大切だからだ。一緒に生きてほしいんだ〟これが彼の真実の言葉なら。

 これまで文句一つ言わずに、こんな我がまま放題の私に付き添ってくれた彼を、信じてみよう。

「私、あまりに自分勝手だった……。あの人の気持ちを、ずっと無視して……!」
 マキが私の次の言葉を待っている。
「今すぐ謝りたい……私、新堂さんと生きていたい!」
「ようやく認めましたね」

 しかし、そう言いつつも私の頭に取り付けた機器を外そうともしない。

「マキさん、頭が痛いっ、何をしてるの!」妙な圧迫を脳に感じる。
「途中で止める事はできないんですよ」
「え……?そんな!」
 慌てて起き上がろうとするも、この体が動くはずもない。

「ご安心なさい。あなたはまた目覚めます。明日には、今の弱いあなたから生まれ変わってね」マキがウインクをする。
「本当ね?ああ……しん、ど、う、さん……」
 何かの薬を注射され、私の意識は次第に朦朧として行く。

「信じてください」
 こんなマキの声が微かに耳に届いた後、私は深い深い眠りに落ちて行った。



 何日目の朝なのか定かではない。私はマキの宣言通り目を覚ました。

「おはよう、ユイ」
「……新堂さん。ああ、新堂さん!私、生きてる?」
「もちろんだ。ここは天国じゃないよ、おまえの使ってるいつもの部屋だ」

 新堂さんが枕元に体を寄せて、そっと私を抱きしめた。
「俺と生きる事を選んでくれて、ありがとう、ユイ……」
 されるがままとなりながら、まずはこれを伝えよう。
「新堂さんが私に選択肢をくれた事、嬉しかったよ」

 頭ごなしに死ぬなと叱るのではなく、私の意思を尊重してくれた。何て心の広い人だろう。でもそれはきっと、とても辛い事だったはず。

「新堂さん……ごめんなさい、今まで本当に、たくさんたくさん、ごめんなさい!」
 いいんだ、と彼が静かに笑う。
「昨夜のあなたは、出会った頃に戻ったみたいだった。でもそれは……私がそうさせてしまったのね」そうしないと耐えられないからだ。

「ユイ」不意に名を呼ばれ、「何?」と答える。
「勘違いしてると困るので言っておくが」
「何を?」
 首を傾げていると、彼がニヤリと笑った。そして予想外の事を言った。
「俺はおまえに死ぬ事を許可した覚えはないぞ?死なせるつもりはさらさらなかった」

「マキ教授には感謝だな。こういう展開が待っているとは……俺は本当に運がいい」
「どういう事?だってマキさんは本当に私を……」手に掛けようとしていたはずだ。
「もしユイが説得に応じなくても、今みたいに目覚めたって事だよ。ただそれは……」
 そんな事をしたら、私はさらに心を閉ざす。あるいは一生……。

 私の気持ちを代弁するように彼が続ける。「お互いに、生き地獄ってヤツだな」
 とんだ博打ではないか……。「何て人なの!」

 ともあれ、マキさんには本当に感謝だ。
「私、あの人のこと死神って呼んでたんだけど……撤回しなきゃね」
 マキさんは私の命の恩人だ。生き方には色々あるという事を教えてくれた。
「近いうちに、札束持って挨拶に行くか」
 こんな新堂さんらしいセリフに、思わず笑った。

「ああそうだ、ユイ。左腕、動かしてみろ」
「え……左手?」
 目を向けてみると、いつの間にか包帯が綺麗に巻かれている。
 状況が飲み込めない中、恐る恐る力を入れて持ち上げてみる。

「え!」
 動かなかった肘から下が、動いたではないか。
「指はどうだ、動かせるか?」

「あ!動く……、動くわ!新堂さん!でも、どうして?」
「元通り動かせるようになるには、まだまだリハビリが必要だがね」ぎこちない動きをする私の左手を見つめて言う。
 どうやら私が眠っていた間に手術をしてくれたらしい。
「俺はこのオペで、感動的な事実を目の当たりにしたよ」

 左手が動かせる事に夢中になっていた私は、彼の言葉も耳に入らない。

 そんな私に構わず、新堂さんが話を続ける。
「通常傷ついた神経は、自然に再生する事はない。つまり、自然治癒はあり得ないと言われているんだが……」
 真剣な調子で語る彼に、ようやく意識が向いた。
「あり得ない事が、起こったって事?」

「おまえの腕は、自ら再生しようとしていた。ユイが死を選んだあの時も、おまえの体は生きようとしてたんだ」
「私の体が……生きようとしてた?」
「そうだ。こんな奇跡が起こるんだ、まだ全てを諦めるのは早いと思わないか?」
 大きく頷きながら伝える。「全部新堂先生のお陰。やっぱりあなたは治してくれた!」

 奇跡。それを起こしてくれたのはあなたよ……。心の底から言葉にならない想いが湧き上がる。

「そんな事言ってると、私ってば欲深いから、もっと奇跡を期待しちゃうわよ?大丈夫なの、新堂先生?」
「ああ。ユイと一緒なら、どんな奇跡も起こせそうだからな」
「うふふっ!」

 私達はお互いを確認し合うように、強く抱き合ったのだった。


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