大嫌いは恋の始まり

氷室ユリ

文字の大きさ
上 下
42 / 117
第二章 いつの間にか育まれていたもの

  ハイエナの功能(2)

しおりを挟む

 目の前に広がるのは殺伐とした砂漠地帯。照り付ける強烈な太陽光に、思わず目を細める。
 立ちはだかるテロリスト達は、頭から布を巻き付けてその表情を隠している。

 風に巻き上げられた砂が時折視界を遮る中、エリックが私の前に立って囁く。
「(ユイ、君だけでも逃げるんだ)」
「(冗談でしょ!あなたは私の依頼人よ?報酬を先払いでいただいたからには、必ずあなたを逃がすわ)」

 向けられたカラシニコフを前にこんなやり取りをしていると、リーダー格の体格の良い男が英語で言った。
「(東アジアの小娘!こんな場所に拳銃持ってのこのこやって来たお前は、一体何者だ?)」
 この男だけは顔を覆ってはいなかった。自信に満ち溢れた顔を見せつけるように!

「(良かった、英語なら分かる。私はユイ・アサギリ。友人を助けに来ただけよ)」
 一歩前に出て、隣のエリックを支えながらそう言うと、男の顔色が変わった。
「(Y・アサギリだと?……別人か)」男は何やら小声で言っている。
「(良く聞こえないんだけど?言いたい事があるなら、はっきり言いなさいよ!)」
「(威勢のいいお嬢さんだな)」

 たくさんの銃口が向けられている中、無謀にも交渉を試みる。
「(彼だけは解放して。私が代わりに残るから)」
「(ユイ!何を言ってるんだ?僕達、せっかく会えたのに)」
「(バカ!こんな所で会えたって嬉しくない!それに今あなたは私の依頼人。いい加減、自覚してよね?)」

 私達のこんな会話を、目を細めて眺めていた男が言う。
「(Y・アサギリ。お前にどんな価値がある?」

 どう答えて良いか分からず黙り込む私に、男が続ける。「(そこの多少名の知れたコソドロよりも、我々に貢献できる特技でもあるなら考えてやろう)」
「(コソドロとは!言ってくれるね、ロリコン野郎!ユイ、アイツには気をつけろよ)」

 エリックの言い分に小さく頷いてから、私は改めて男との交渉に意識を集中させる。
「(私の特技か……。ひと通り何でもこなせるけど!強いて言うなら、射撃かしら?)」
「(そうかそうか!ならば見せてもらおうじゃないか)」
 男はなぜか納得したように何度も頷き、自分の所持していた短銃を投げて寄越した。
「(こんなんじゃダメ。私のコルトを返して)」

 透かさず言い返し、一旦受け取った拳銃を投げ返す。

「(何してるんだ!せっかく武器が手に入ったのに……。バカだな!)」
 嘆くエリックに、吐き捨てるように答える。
「(こんな状況で銃一つ手に入れたところで、ムダな悪あがきよ)」
 言いながらも男から目を離さないでいると、仲間に何か指示を出したのが見えた。
 私達はその様子を黙って見守る。

「(いいだろう。返してやる。もしおかしな行動を取ったら、その時は分かってるな?)」
 男が周囲を見渡して言った。
 それはつまり、ハチの巣という事だ。重々承知!私は両手を広げて頷いた。

 少しして、仲間の一人が私のコルトを手に戻ってきた。
 相棒の姿を一目見ただけで、全身に力がみなぎるのを感じた。

「(これでいいか?)」
「(十分だわ)」弾丸数や状態を素早くチェックした後に答える。
 コルトは私の左手にピタリとフィットした。まるで生きているように熱を帯びるその姿に、師匠キハラを思わずにはいられない。

「(それで、何を狙えばいい?)」勝手に撃ち放って、敵に誤解を与えるのも愚かだ。
「(そうだな……)」
 男が手頃な的を見つけるために、辺りを見渡す。
 そしてその視線は、高く掲げられた旗のところで止まった。風が強いせいで威勢良くはためいている。
「(あれがいい。あのたなびく旗を撃ってみろ)」

 それは恐らくこの組織のシンボル。かなり年季の入った布地のようだ。
 そんな事を思いながら、指定された的をじっと見つめる。横では、エリックが不安そうに私と旗を交互に見ている。
 私は最後にもう一度男を見た。その口角の吊り上がった表情は、笑っているようにも見える。

 ……何か企んでいる顔とみた。
 意を決して、ゆっくりとコルトの銃口を的に向けて構える。

「(外すなよ、ユイ!……おお、神よ!)」エリックが神頼みを始める。
 ちょっと?神に頼む必要なんてないわよ、朝霧ユイは決して獲物を逃がさないんだから!そう心の中で反論する。

 コルトは二度火を吹いた。
 弾は、旗を留めていた上下のヒモに当たり、切り離されて空高く舞い上がった。
 周囲からはどよめきの声が上がる。
「(何て事だ、ユイ!外したのか……!)」エリックの嘆きの声が横で響く。

 旗はカラシニコフを構えて立つ男達の方に向かい、その一人にバサリと覆い被さった。ちょっとした混乱となり、その間だけ銃に狙われる威圧感から解放された。
 けれど私は動かず、ただ男の反応を待つ。

「(上出来だ!気に入ったよ、Y・アサギリ!)」男は満面の笑みだった。
 エリックは予想外の敵の反応に驚いている。
「(一体どうなってるんだ?)」

「(見て、あの旗。あれだけの年季の入り方よ?あんなボロボロの状態でも使い続けるって事は、相当大事にしてるって事じゃない)」
 エリックが目を瞬きながら旗を見つめる中、解説を続ける。
「(そもそも!組織のシンボルを容易く撃ち抜けなんて、普通言わないでしょ!)」
 男にも聞こえるように、後半はわざと声を張り上げた。

「(その通りだ。試して悪かった。だがこれでお前の賢さも証明された)」
 男が続ける。「(そこのコソドロ、どこへでも行くがいい!お前はもう用済みだ)」

「(エリック、早く行って。どうか無事に逃げて……!)」私は彼の背中を押した。
「(ユイ!君は?僕一人逃げるなんて、卑怯な事できないよ)」
 私は毅然と首を横に振る。
「(大丈夫。私も後から脱出する。足、お大事にね)」そう小声で伝える。

 エリックはしばらく私を凝視していたが、ビッコを引きながら、ゆっくりと私から遠ざかり始めた。
 その様子を、敷地の外に出るまで見守る。
「機会があれば、また会いましょう、エリック・ハント……!」

 エリックの姿が視界から消えるまで、それほど時間は要しなかった。砂煙が巻き上がり、時には数メートル先さえも見えなくなるからだ。

「(それで。Y・アサギリ!)」
 リーダー格の男が声を上げた。まだいくつもの銃口は向けられたままだ。

「(これからどうするか、お前が決めろ)」
「(あら!選択肢をいただけるのね。嬉しいわ)」
「(我々の仲間になるか、このまま捕虜として生活するか)」
「(あなた達を皆殺しにして、私が一人勝ちするっていう選択肢はないの?)」

 私のコメントを聞き、男は高笑いを始めた。
「(つくづく面白い小娘だ!大いに気に入ったよ。どうだ?お前を捕虜にしておくのは惜しい。仲間にならないか)」
「(もう牢屋はたくさん。もちろんお仲間にしてくれるなら、その方が助かるわ)」

 私の答えに頷いた後、男は再びコルトを奪おうとした。
「(何するの!)」瞬時に抵抗する。
「(お前を百パーセント信用したつもりはない。武器を持たせる訳には行かない)」

 もう二度と手放さない……。命の次に大切なこの相棒を!
 私は必死に考えた。考えた末にポケットの石を思い出す。これだ!
「(ねえ。もう一度交渉しましょうよ)」と話を持ち出す。「(これ。何だか分かるでしょ。これと私のコルト、交換しない?)」例の石を男に差し出して見せる。

「(そ、それは!なぜお前が持っている?いつの間に……!今朝、金庫を確認した時はちゃんとあったぞ)」男が取り乱し始める。
「(そんな訳ないでしょ……。もう三日も前からここにあるわ)」
「(それではやはりあのコソドロだな!アイツめ!すり替えてやがったのか)」
 彼の去った方角を睨みつけて言う。

 今の今まで気づかないとは!どうりで騒いでいない訳だ。

「(ブツはここにある、もういいじゃない!彼を追い駆けたら許さないわよ?これは返すから、私のコルトを取らないでっ)」
 何とも無茶苦茶な交渉だが……エリックにロリコンと命名された男に、上目遣いで訴えてみる。

 するとこれが、意外にもあっさり通ってしまったのだ。どうやらコイツ、本当にロリコンだったらしい。
 日本人は小柄だから、年齢よりも若く見られる傾向にある。小柄な私は相当幼く見えているに違いない。

「(それと私の名前はユ、イ!〝ワイ〟じゃないから)」〝Y〟と呼び続ける男に向かって堪らず訴えた。
「(おお、済まん。時に、お前はY・アサギリを当然知っているよな?)」
「は?誰の事よ……。確かにアイツも、イニシャルはYだったけど。まさかねぇ」
 思わず日本語で答えてしまう。

 義男を思い浮かべたがすぐに否定した。こんな遠く離れた国で、どうしてヤツの名前が出てくるのか。

「(ヨシオ・アサギリ。射撃の名手であり、最高級の武器を提供してくれる、我らの味方だ!)」
 この言葉には耳を疑った。
 しかしこの段階では、同姓同名の可能性だってある訳で……。

「(Yが、オリンピックに出場するという噂が広まった時は、我々も色めき立ったよ。結局、出場は叶わなかったようだが)」と男が続ける。

 確かに義男は射撃の腕を見込まれて、様々な大会への出場要請があったし、何度か出場していた事がある。その証拠に、家には多くのトロフィーやら賞状が飾られていた。オリンピックの件は、確か二番手の警察官が出場する事になったと聞いた。
 後ろ暗い経歴や数多くの犯罪疑惑を持つ男を、国の代表として晴れの舞台に立たせる訳には行かないだろう。

「何て事……。アイツって、そんなに有名人だったの?ウソでしょ!」
「(お前はヨシオの娘だな?その愛用銃を見てピンときたんだ。もしや、とね)」
「え?」
 これは師匠キハラにもらったもので、ヤツは関係ないはずだ。

「(お前がここに現れた時点で、我々の関心はすでにお前に移っていた。あんな気取ったコソドロよりもな!)」
 見張りの者全てを撤去して、私がどう出るか試したという訳か。
「(二世が必ずしも優秀とは限らないからな!まさか女とは予想外だったが……)」
 男の視線が、私を上から下まで舐め回すように移動する。

「(射撃の腕は文句なしだ。機転も利くようだし?あんなコソドロよりも、宣伝効果も抜群だ!今後、大いに我らの役に立ってくれ)」
「何よ……宣伝効果って!」

 こんな具合に、何とも複雑な心境のまま、テログループの仲間入りを果たしたのだった。



 時間は刻々と過ぎて行く。一刻も早く脱出しなければならない。

 炊事班に任命された私が食事に毒を盛るのは簡単だった。料理というものを生まれて初めてやった私だから、毒無しでも百パーセント無害かは不明だが!
 そんな微妙な味付けに、ここの連中は不満一つ言わなかった。単なる味覚オンチかもしれない。

 隙を見ては銃弾をこっそりかき集めて、そこから鉛を削り取って粉末状にする。調理場で一人になった隙にそれを混ぜ込むのだが、誰も気付く様子はない。
「お宝をすり替えられて、三日も気づかないようなヤツ等よ?」
 お間抜けなテロリスト集団で、本当にラッキーだった。

 とにかく連中を弱らせる事に専念した。何しろ敵は多勢。話はそれからだ。

 そんな計画がトントン拍子に上手く行った。次第に連中には、慢性の腹痛やら貧血等の症状が現れ始め、仕事に支障が出始めた。
 こんな状況になり、外からやって来た私は真っ先に疑いの目を向けられる。

 そろそろ潮時だ。さあ、どうやって暴れてやろうか?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ハレマ・ハレオは、ハーレまない!~億り人になった俺に美少女達が寄ってくる?だが俺は絶対にハーレムなんて作らない~

長月 鳥
キャラ文芸
 W高校1年生の晴間晴雄(ハレマハレオ)は、宝くじの当選で億り人となった。  だが、彼は喜ばない。  それは「日本にも一夫多妻制があればいいのになぁ」が口癖だった父親の存在が起因する。  株で儲け、一代で財を成した父親の晴間舘雄(ハレマダテオ)は、金と女に溺れた。特に女性関係は酷く、あらゆる国と地域に100名以上の愛人が居たと見られる。  以前は、ごく平凡で慎ましく幸せな3人家族だった……だが、大金を手にした父親は、都心に豪邸を構えると、金遣いが荒くなり態度も大きく変わり、妻のカエデに手を上げるようになった。いつしか住み家は、人目も憚らず愛人を何人も連れ込むハーレムと化し酒池肉林が繰り返された。やがて妻を追い出し、親権を手にしておきながら、一人息子のハレオまでも安アパートへと追いやった。  ハレオは、憎しみを抱きつつも父親からの家賃や生活面での援助を受け続けた。義務教育が終わるその日まで。  そして、高校入学のその日、父親は他界した。  死因は【腹上死】。  死因だけでも親族を騒然とさせたが、それだけでは無かった。  借金こそ無かったものの、父親ダテオの資産は0、一文無し。  愛人達に、その全てを注ぎ込み、果てたのだ。  それを聞いたハレオは誓う。    「金は人をダメにする、女は男をダメにする」  「金も女も信用しない、父親みたいになってたまるか」  「俺は絶対にハーレムなんて作らない、俺は絶対ハーレまない!!」  最後の誓いの意味は分からないが……。  この日より、ハレオと金、そして女達との戦いが始まった。  そんな思いとは裏腹に、ハレオの周りには、幼馴染やクラスの人気者、アイドルや複数の妹達が現れる。  果たして彼女たちの目的は、ハレオの当選金か、はたまた真実の愛か。  お金と女、数多の煩悩に翻弄されるハレマハレオの高校生活が、今、始まる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー 庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。 そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。 しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

九戸墨攻

不来方久遠
キャラ文芸
 三日月の円くなるまで広しと言われた陸奥領の南部氏は、本家の三戸を中心に一戸・二 戸と続き、九戸まで九つの戸に分かれて統治されていた。後に北の鬼と怖れられる事にな る九戸政実は、若気の至りから柿を盗み、罰として寺に預けられていた。そこで、元は武 士であった住職の薩天和尚によって、文武両道を叩き込まれた。

処理中です...