大嫌いは恋の始まり

氷室ユリ

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第二章 いつの間にか育まれていたもの

15.ピアノの音色

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 あれから早二ヵ月が経ち、私のケガも全快。外はすっかり秋の空気へと入れ替わった。
 そんなある夜、新堂さんが部屋にやって来た。

「これ。差し入れだ」
 彼が差し出して来たのは、高そうな赤のボトルワイン。新堂さんも赤がお好きなようで、二人で飲むのは決まって赤ワインだ。
「ありがとう!時間通りね。待ってたわ、入って」

 ワインを受け取り、彼を招き入れる。
 海外からの依頼で今晩日本を発つ予定の新堂さん。その前に立ち寄ってくれる事になっていた。

 キッチンにて早速いただいたワインを開けにかかるも、コルク栓を抜くのに一苦労だ。
「私がやろう」
 そんな私に代わり、彼があっさり開けてくれた。
「あ、ありがと……」
 未だにこの人の紳士な姿に慣れず、ただただ呆然としてしまう。

「傷はもういいんだろ?もしかして、左腕に力が入らないとか……」
「いいえ!それはないって、前にも言ったでしょ」
 そう言って新堂さんに左手を差し出す。

 彼が首を傾げながら右手で掴んできたので、「そっちの方がいいかも」と左手を掴み直した。
 そして思い切り握る。疑っているなら、私の左手の健在ぶりを教えなければ!
「イタタっ……!痛いじゃないか!」解放された左手を擦って彼が訴えた。
 自慢じゃないが、私の利き手の握力はかなりある。新堂和矢のゴッドハンドにケガでもさせたら大変!

「全く……。おまえがそんな容姿でなければ、間違いなく男と思うところだ」
「小さくて悪かったわね!」
「指摘する箇所がおかしいと思うが?」珍しく新堂さんが突っ込みを入れた。
「私のカラダ、確認済みなんでしょ?新堂先生!私は残念ながら女なの」
 相変わらず私は、自分が女だという事に不満を持っている。

 新堂さんはしばらく、ただ無言で私を見つめていた。
 そんな視線を無視して、グラスを二つ持ってリビングに移動する。彼がワインのボトルを持って後に続く。
 しばし、ワインを傾けながら他愛のない会話を続ける。

 不意に彼がピアノに目を向けた。ゆっくりと立ち上がり、新堂さんがピアノに近づいて行く。
「えっ!もしかして、何か弾いてくれるの?」思わず期待を込めて聞く。
 あの日聞きそびれて以来、初のチャンス到来だ!彼はどこかピアノを避けているようで、今まで一度も話題にすら上がっていなかった。

「もちろんユイ、弾けるんだろ?」
「猫踏んじゃったくらいなら弾けるよ」
 習った事はない。簡単な曲なら音を探って片手で弾ける程度だ。
 そんな心の声が聞こえたように「最高級のピアノが、もったいない!」と彼が言う。
「あら。立派なインテリアじゃない。この寂しい空間に何か置きたいと思ってたの。存在感あるでしょ?」

 私もグラスを手にピアノの所に移動する。
「なら!もったいないから何か弾いてよ、新堂さん?」どうしても聞きたい。
「本当は封印していたんだが……。仕方ないな、そこまで言うなら」
 そう言いつつも鍵盤の先に向かった指は、それに触れる事を躊躇っているようだ。

 私は何も言わずに、じっと見守った。
 しばらくすると、何事もなく静かにメロディを奏で始めた。その細い指が器用に動く様子に見惚れてしまう。
 それはどこか物悲しい曲で、どこかで聞いたような気がしたが思い出せない。

 曲が終わって、彼が鍵盤から両手を離した後に尋ねる。
「どうして封印してたの?」
「自分に才能がないと分かったのでね。その道を断念した時に封印したんだ」彼がピアノを見つめたまま答える。
「その道って、新堂さん、ピアニストになりたかったの!?」

 この告白には大いに驚いたが、音楽の道に進んだ方が良かったんじゃないかと勝手に思ってしまう。威圧的な医者になるよりは?
 音楽家には変わり者が多いとも言う。どこまでも変わり者の新堂和矢を前に、つい笑いそうになる。

 その笑いを堪えて続ける。「それこそ、もったいないわ!こんなに上手なのに」
「上には上がいるのさ。プロフェッショナルを目指すのは、容易ではないって事だ」
 今の演奏は十分プロ並みだったと思うのだが?
「でも、あなたは今、医学のプロじゃない」
 医学のプロフェッショナルにだって、簡単になれたはずがない。

 私の言葉に、彼が軽く眉と口角を上げてから首を横に振った。この反応は謙遜しているのか?
「新堂さんらしくな~い!否定するなんて?」
 無表情の彼を前に、一応こう突っ込みを入れておく。

「だけど、ピアノは十数年ぶりって言ったよね……?」
 ここに楽譜はない。彼は今何も見ずに弾いた。譜面を暗記しているという事になる。
「覚えてるもんだな、自分でも驚いてるよ」
「……私のために、封印を解いて弾いてくれたのね」
 返事は当然ない。

 否定されない事をいい事に、私は横に座って彼の肩にそっと頭をもたせかけた。
「弾きたくなったら、いつでも来てね」
「ありがとう」今度は素直に礼が返ってきた。
 嬉しさが募って、心がほんわか温かくなった気がした。

 けれど、こんな和やかな時間はもうすぐ終わってしまう。

「最近、いつも時間が取れなくて悪いね」彼が腕時計を気にし始めた。
「これから発つんでしょ。相変わらずお忙しそうね、新堂先生は」
 体勢を戻そうとした私をチラリと見る。「でもまだ、あと少しは大丈夫だ」このままで。そう言葉が続くのかは分からない。
 それでも、この場所が心地良くて動けずにいた。

「勢いついでに、もう一曲弾くか」
「嬉しい!」予想外の展開に本気で喜ぶ。

 私は隣りに座ったまま、彼の指が再び鍵盤を滑るように動くのを眺めた。

 次に弾いたのはワルツだ。大抵ワルツといえば楽しい曲のはずだが……。
「ねえ?どうすればワルツがこんなに悲しい曲になる訳?」演奏を終えた彼に言う。
「悲しくなったのか?」
 彼の目を見て頷く。

「もうすぐ、しばしの別れだしな!」今度はおどけた感じで返された。
 最近やっと覚えた。この人のこの言い方が冗談だという事を。これまで散々ドキリとさせられてきたセリフの数々!
「話をすり替えないの!そういう事じゃなくて……」

 気づくと、彼が私をじっと見つめている。

「なっ、何?」
「私がピアノをやめたのは……」彼がそこまで言って口籠もる。「限界を感じた?」と代わりに続ける。
「そう。表現の問題だ。どうやっても、明るく晴れやかな表現ができない。それが致命的だと言われた」

 やっぱり彼には、普通の人間の感情というものがないのかもしれない。楽しい曲も、この人の手にかかれば悲しみの曲になってしまう?
 だが私は思った。これはこれで悪くないと。

「表現って人それぞれじゃない?逆に言えば、これはあなたにしかできない表現って事よ。世界でたった一つ。ここにしかない。私は好きよ」
 この最後の言葉だけは、彼を真っ直ぐに見て言った。本心からの言葉だから。
 残念ながら、ちゃんと伝わったかは不明だが。

「……そろそろ、行かなければ」彼が立ち上がった。
 立ち上がった彼が、ポケットに手を突っ込んで何かを取り出した。
「これ、ユイに、持っていてもらいたい」
「何?」

 差し出されたのは部屋の鍵のようだが、それは前に渡された事のある宿泊用マンションのとは形が違う。防犯対策を施した最新式の型のものだ。

「どこの鍵?」薄々分かってはいたが、あえて尋ねた。
「私の部屋のだ」
 やっぱりね、と思いつつも、「何で私が?!」と当然の反応。
「これからしばらく、留守にするので。何かあったら対応してもらいたい」
「何よそれ……。私、管理人って事?」
 部屋探しは手伝ったけれど、私は不動産屋じゃない!

「ある意味……管理人よりもおまえの方が頼りになりそうだ」
 これまた意味不明な発言。褒められているのか貶されているのか全くもって不明!
「……ダメか?」
 そう言った新堂さんの表情が何だか悲しそうで、私は思わず首を横に振っていた。
「そんな事ないよ」
 両手を差し出して、彼からスペアキーを受け取る。

「私のも、あなたに預けてあるしね。分かったわ」
「助かるよ」
「でも私だって不在がちだから、いつも対応できる訳じゃないからね?」
「ああ。分かってる」
「まあ……気が向いたら、郵便物くらいは部屋に運んどいてあげるわ」
 彼は何も言わなかったけれど、笑顔だった。

 カッコいい……。そんな珍しい表情に、つい見惚れてしまう。

「では、もう行くよ」
「あ!ええ。気をつけて」
 不意打ち的な声を受けて、胸がドキンと大きく脈打った。

 そして彼はと言うと、いつものようにあっさりと部屋を出て行ったのだった。



 新堂さんが日本を発ってふた月が経った頃、思い立って寒空の中、彼のマンションに足を運んてみた。

 あれから一度も連絡を取っていない。もしかしたらもう帰国しているかも……そんな事を考えつつ、敷地内に到着する。
 地下駐車場を覗いてみるも、彼の愛車はなかった。

 エントランスに回って中に入る。

「すっご~い……。これじゃ、留守にしてるのバレバレじゃない!」
 郵便受けには、封書と共にチラシが押し込まれてパンパンだ。ほとんどが不動産売却の際は当社へ!というような内容のチラシ。それは私の所も同じだが。
「気に入ってる部屋を売却する訳ないじゃない!」
 ブツクサ言いながら、不要な物を併設された廃棄物用スペースへ投げ入れる。

 必要な郵便物だけを持って、部屋へ向かった。
 初めて使うスペアキーは、シリンダーに吸い込まれるように入った。

「お邪魔しまぁ~す……」
 許可を取ってあるとは言え、主不在の部屋に入るのはやはり緊張する。
 カーテンが閉まっているため、室内は薄暗くて足元が良く見えない。

「イタっ!何っ?」足元に転がっていた何かに躓いた。
 手探りで照明のスイッチを探り当てて点けて見ると、床には医学書やら辞典やらの書籍が山積みになっていた。
「ちょっとぉ……。ちゃんと書斎があるのに、何でこんなとこに積んでるのよ!」

 引越しの際に最も力を入れたのが、書斎スペースのセッティングだった。仕事がはかどりそうだとあんなに喜んでいたのに!
 顔を上げてさらに呆然。脱いだ衣類はソファに散乱し、辛うじてソファーの上に引っ掛かっている状態だ。
 恐る恐るキッチンへ向かうと、やはりコップが……。

「信じられない……。世界的ドクターよ?新堂和矢は!」
 思わず手にしていた郵便物を握り締めていた。
「いっけない!グチャグチャにしちゃったじゃない……」
 急いでテーブルに置いて、シワを伸ばそうと上から力を込める。

 一枚一枚丁寧にそうして行きながら、差出人を確認する。

 届いた手紙で最も多いのは様々な国からのエアメールで、子供の文字と思われるものもある。次に多いのは、全国の養護施設からのもの。
 そして大学病院から下町のクリニックまで、大小様々な医療施設から。
「本当にあちこちから依頼が来るのね」
 この郵便物を見る限り、彼が無免許とは到底思えない。

 新堂さんのまだ見ぬ一面を垣間見た気がした。彼は本当に、たくさんの人を救っているのだという事を。
 そしてこの、部屋の散乱状態も含め……。

 床に積まれた重そうな本を数冊テーブルに上げて、シワになった手紙の上に乗せた後、
再び室内を見渡した。
 散らかっている大半の物は紙の類ではあるが、それにしても凄まじい有様だ。

「これじゃまるで、泥棒にでも入られたみたいよ?」
 ため息をつきながら、一番近くにあった一枚を拾い上げて眺める。どうやら英語で書かれた論文のようだ。
「専門用語が多すぎてチンプンカンプン!」

 解読を諦めて窓際に向かい、カーテンを勢い良く開ける。
 私は散らかった部屋が大っ嫌いだ。母が整理整頓好きだったせいもある。
「お母さんに見せてやりたいわ!」

 頼まれた訳でもないが、見るに見兼ねて部屋を片付け始めた。
 衣類を纏めて洗濯機に詰め込み、乾燥まで全自動で回す。次にシンクに放置された食器を、これまた食器洗浄機に放り込む。
「こんな簡単な事が、どうしてできないのかしらね~」

 日の光によって部屋は次第に暖められて、ようやく心地良い空間へと生まれ変わった。
 窓から空が小さく見えている。その乾いた冬の空は、とても綺麗な青色をしていた。


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