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【参】巡ル探偵
②
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月原山道を北上する。
道は舗装されていない。ゴロゴロと砂利が散らばる道には、ハイヤーの轍が深く刻まれている。夜中に小雨が降ったのか、轍が所々水溜まりになっていた。気を付けて歩かねば、足を挫きそうだ。
左手は山、右手は月原川。そう広くもない土地に、無駄なく田畑が配置されている。水を貼った田んぼでは、若稲が漣のように揺れていた。
しばらく行くと、左手の山につづら折れの細道が見えた。昨晩通った、来住野家へ向かう道である。目を凝らすと、木々の間に小さく三角屋根が見えた。
そこを通り過ぎ、さらに北上する。
この辺りまで来ると、轍も薄くなり、随分と歩きやすくなった。相変わらず空は灰色だ。しかし、堪えるように雨粒を落とさないのは、祭りを待っているようでもある。
二十分も歩いただろうか。田んぼが途切れ、周囲を雑木林が覆いだしたところに、石段が見えてきた。道が大きく右に湾曲しているため、正面に聳えている。
石段の前に立つ。その脇に真新しい石碑が立ち、表面にこう刻まれていた。
『月原信仰之霊場 月扇山善浄寺』
昨晩、多摩荘の史津から聞いた。月原洞窟の天狗伝説に乗っかり、商売をしていると。この石碑なんかも、その一環だろう。
最近設置されたと見える鉄製の手摺りを支えに、年季の入った石段を上っていく。石段の数はそう多くはない。しかし、年月の経過で少なからずすり減っている。なるほど、手摺りは不可欠だろう。
石段を上り切ると、古めかしい山門が迎えた。反り返った銅葺きの屋根と、複雑な装飾の軒が圧巻である。そして横に、これまた真新しい立札があり、寺の歴史なんかが綴ってあった。
仁王像の間を通り奥へ行くと正面に、山門に見劣りしない古さの本堂が構える。境内はそう広くはないが、あちこちに小さな祠が置かれていた。そのそれぞれに山門と同様、神様仏様の由来を書いた立札が添えてある。
朝のお勤めは終わったのだろう。境内は静かなものだった。その中を、作務衣姿の年増の女が、竹箒で掃き清めていた。得意の人当たりの良い笑顔で、零は彼女に挨拶した。
「おはようございます」
「へえ、ようお参りくださいました」
観光客にしては早い時間だ。戸惑ったように、女は手を止めた。
「昨晩から、多摩荘にお邪魔になっておりまして、折角のお祭りですので、その由来を学んでから楽しみたいと、お伺いしました」
「はあ。天狗伝説の説法は、十時からとなっております。それまで、資料館でもご覧になってお待ちくださいまし」
案内された資料館は、本堂の裏手にあった。六畳ほどの頑丈なコンクリート造りで、鉄枠の硝子窓がはまっている。
「貴重な資料ですので、このような建物で保管しております。お手に触れずにご覧くださいまし」
彼女はそう言うと、頭を下げて出て行った。
零は周囲を見渡した。そこには、絵巻物が額装されて展示されている。
添えられた説明によると、天文元年、焼き討ちやら一揆反乱が横行していた、不安定な時代である。当時の領主であった淺埜氏の双子の兄弟による相続争いから天狗のお告げ、そして予言通りの大洪水、村人の蜂起までが描かれているという。
所々絵の具は剥げ、紙は破れているものの、往年の美しさを十分に感じられた。零は何巻かに分かれた絵巻を、順番に眺めていった。――そして、目を止めたのは、一揆に勝利した村人が、領主の息子を処刑する場面である。
御堂の梁に注連縄を掛け、そこに白装束の男を吊るしている様子が、印象的に描かれていた。
零は思い出した。朝見た写真。遠目でぼやけていたが、こんな感じに見えた。
――生贄。
人々の狂信というのは恐ろしい。特に、不幸な目に遭った事柄に対する畏怖をその行為に込める場合、儀式という大義名分を立てて、罪悪感を心の中から一切捨て去ってしまう。
それは、最も人間らしく、同時に、最も人間として恥ずべき行為であると、零は強く思っている。理性という諸刃の剣の振るい方によっては、人間は恐ろしく愚かになるのだ。
「――よくご覧くださいました」
そこに現れたのは、住職である久芳正善である。歳は四十過ぎだろうが、いまいちよくわからない。頭髪がないというのは、印象に関する判断を鈍らせるものだ。真面目を絵に描いたような顔立ちで、剃り跡が青々とした頭を下げた。
「妻から、天狗祭りにお越しになったと聞きました」
すると、先程の作務衣の女が細君か。僧侶とはいえ、明治以降、婚姻は自由とされている。寺の名跡を世襲する場合も多い。この住職も、その道を選んだのだろう。
「天狗祭りについて、何でお知りになりましたか?」
犬神零は、問い掛ける正善の表情を注意深く探る。昨日の今日だ、彼が探偵であり、天狗の伝承を猜疑心を持って調べに来ているとは気付いていないだろう。零は表情を崩した。
「ミーハーで申し訳ないのですが、花沢凛麗さんのファンでして。引退されてから、こちらで奉納舞をされるとファン仲間から聞きまして、是非にと」
「それはそれは。最近はそれ目的の方も大勢お見えですので」
正善は目を細めた。
「きっかけが何にしろ、信仰に興味を持たれるのは、とても大事な事です。――人の過ちは全て、御仏に生かされているという自覚を失ったところにございます。もうしばらくしましたら、不束ながら説法を行いますので、是非本堂へお越しください」
資料館には、絵巻物の他に、寺の由来や歴史などを、写真を添えて紹介したものが展示してあった。それに一通り目を通すと、零は資料館を出た。
するとその奥、本堂に隠れ裏山に迫る場所に、石塔があるのに気付いた。随分古そうだ。そこにも立札があり、天文元年の大洪水で亡くなった人々の慰霊碑とある。納骨堂にでもなっているのだろうか、一番下の段だけ大きい。
そこに手を合わせてから、零は本堂へと向かった。
説法の時間が迫っているのだろう、境内にはそれなりに参拝客がいた。背広姿の紳士、シャツにスカートの婦人など、観光客とみられる姿が多い。
その中に、異質な人物があった。お遍路よろしく白装束を纏い、首に輪袈裟を掛けている。白髪混じりの髪を結い上げた顔は品が良く、なかなかの美人である。しかし、指先で数珠の珠を数えながら、ブツブツと何やら唱える異様さに、観光客たちは距離を置いていた。
すると、作務衣の細君が彼女の元に駆け寄った。
「夢子様、本日もご大儀でございます。さ、いつものお席へどうぞ」
……零は眉を寄せた。昨日志津から聞いた、水川産業の社長夫人である、水川夢子があのお遍路らしい。確か、来住野十四郎の叔母とも言っていた。善浄寺に心酔し、通い詰めているという話だが、細君の対応を見ると、毎日のように来ているようだ。
水川夢子が本堂横の寺務所へ消えた頃、本堂の戸が開き、久芳正善住職が現れた。
「本日はよくお参りくださいました。ただ今より、月原洞窟信仰の説法を行います。説法の終わりには、寺務所にて茶席をご用意しておりますので、是非ごゆるりとなさってください」
「――与志子ちゃん、あのね……」
寺務所の奥の、住居部にある居間である。座卓に置かれた湯呑を手に取り、水川夢子は作務衣の女を見上げた。
「今朝、多摩荘のご主人から、うちの旦那に電話があって。……妙な探偵が、うちの実家を探りに来てるみたい」
「えっ、また?」
作務衣の女――久芳与志子は、盆を抱えたまま夢子の向かいに腰を下ろした。彼女は、水川産業の社長である水川信一郎と、水川村村長の滝二郎兄弟の妹である。つまり、水川夢子とは義理の姉妹なのだ。
「ところがね、先月来た山高帽の男とは別の人みたいなの。女物みたいな着物を着た色男だって」
すると、与志子はハッと息を飲んだ。
「さっき見ました。朝早くやって来て、資料館を見てた、あの男……」
義理の姉妹とはいえ、実家の格式が違う。与志子は夢子に対し、へりくだった態度を取る。その上、神経質な性格だから、いつもビクビクしているように見える。
「おかしな人だなとは思ったんです。でも、全然知りませんでしたわ。申し訳ございません……」
「そんなの分からないわよ。……旦那の話だと、どうもあの双子姉妹から依頼を受けてるようでね」
「それは、つまり……」
「あの子たちも気付いてるかもしれないわね、……私たちの計画に」
道は舗装されていない。ゴロゴロと砂利が散らばる道には、ハイヤーの轍が深く刻まれている。夜中に小雨が降ったのか、轍が所々水溜まりになっていた。気を付けて歩かねば、足を挫きそうだ。
左手は山、右手は月原川。そう広くもない土地に、無駄なく田畑が配置されている。水を貼った田んぼでは、若稲が漣のように揺れていた。
しばらく行くと、左手の山につづら折れの細道が見えた。昨晩通った、来住野家へ向かう道である。目を凝らすと、木々の間に小さく三角屋根が見えた。
そこを通り過ぎ、さらに北上する。
この辺りまで来ると、轍も薄くなり、随分と歩きやすくなった。相変わらず空は灰色だ。しかし、堪えるように雨粒を落とさないのは、祭りを待っているようでもある。
二十分も歩いただろうか。田んぼが途切れ、周囲を雑木林が覆いだしたところに、石段が見えてきた。道が大きく右に湾曲しているため、正面に聳えている。
石段の前に立つ。その脇に真新しい石碑が立ち、表面にこう刻まれていた。
『月原信仰之霊場 月扇山善浄寺』
昨晩、多摩荘の史津から聞いた。月原洞窟の天狗伝説に乗っかり、商売をしていると。この石碑なんかも、その一環だろう。
最近設置されたと見える鉄製の手摺りを支えに、年季の入った石段を上っていく。石段の数はそう多くはない。しかし、年月の経過で少なからずすり減っている。なるほど、手摺りは不可欠だろう。
石段を上り切ると、古めかしい山門が迎えた。反り返った銅葺きの屋根と、複雑な装飾の軒が圧巻である。そして横に、これまた真新しい立札があり、寺の歴史なんかが綴ってあった。
仁王像の間を通り奥へ行くと正面に、山門に見劣りしない古さの本堂が構える。境内はそう広くはないが、あちこちに小さな祠が置かれていた。そのそれぞれに山門と同様、神様仏様の由来を書いた立札が添えてある。
朝のお勤めは終わったのだろう。境内は静かなものだった。その中を、作務衣姿の年増の女が、竹箒で掃き清めていた。得意の人当たりの良い笑顔で、零は彼女に挨拶した。
「おはようございます」
「へえ、ようお参りくださいました」
観光客にしては早い時間だ。戸惑ったように、女は手を止めた。
「昨晩から、多摩荘にお邪魔になっておりまして、折角のお祭りですので、その由来を学んでから楽しみたいと、お伺いしました」
「はあ。天狗伝説の説法は、十時からとなっております。それまで、資料館でもご覧になってお待ちくださいまし」
案内された資料館は、本堂の裏手にあった。六畳ほどの頑丈なコンクリート造りで、鉄枠の硝子窓がはまっている。
「貴重な資料ですので、このような建物で保管しております。お手に触れずにご覧くださいまし」
彼女はそう言うと、頭を下げて出て行った。
零は周囲を見渡した。そこには、絵巻物が額装されて展示されている。
添えられた説明によると、天文元年、焼き討ちやら一揆反乱が横行していた、不安定な時代である。当時の領主であった淺埜氏の双子の兄弟による相続争いから天狗のお告げ、そして予言通りの大洪水、村人の蜂起までが描かれているという。
所々絵の具は剥げ、紙は破れているものの、往年の美しさを十分に感じられた。零は何巻かに分かれた絵巻を、順番に眺めていった。――そして、目を止めたのは、一揆に勝利した村人が、領主の息子を処刑する場面である。
御堂の梁に注連縄を掛け、そこに白装束の男を吊るしている様子が、印象的に描かれていた。
零は思い出した。朝見た写真。遠目でぼやけていたが、こんな感じに見えた。
――生贄。
人々の狂信というのは恐ろしい。特に、不幸な目に遭った事柄に対する畏怖をその行為に込める場合、儀式という大義名分を立てて、罪悪感を心の中から一切捨て去ってしまう。
それは、最も人間らしく、同時に、最も人間として恥ずべき行為であると、零は強く思っている。理性という諸刃の剣の振るい方によっては、人間は恐ろしく愚かになるのだ。
「――よくご覧くださいました」
そこに現れたのは、住職である久芳正善である。歳は四十過ぎだろうが、いまいちよくわからない。頭髪がないというのは、印象に関する判断を鈍らせるものだ。真面目を絵に描いたような顔立ちで、剃り跡が青々とした頭を下げた。
「妻から、天狗祭りにお越しになったと聞きました」
すると、先程の作務衣の女が細君か。僧侶とはいえ、明治以降、婚姻は自由とされている。寺の名跡を世襲する場合も多い。この住職も、その道を選んだのだろう。
「天狗祭りについて、何でお知りになりましたか?」
犬神零は、問い掛ける正善の表情を注意深く探る。昨日の今日だ、彼が探偵であり、天狗の伝承を猜疑心を持って調べに来ているとは気付いていないだろう。零は表情を崩した。
「ミーハーで申し訳ないのですが、花沢凛麗さんのファンでして。引退されてから、こちらで奉納舞をされるとファン仲間から聞きまして、是非にと」
「それはそれは。最近はそれ目的の方も大勢お見えですので」
正善は目を細めた。
「きっかけが何にしろ、信仰に興味を持たれるのは、とても大事な事です。――人の過ちは全て、御仏に生かされているという自覚を失ったところにございます。もうしばらくしましたら、不束ながら説法を行いますので、是非本堂へお越しください」
資料館には、絵巻物の他に、寺の由来や歴史などを、写真を添えて紹介したものが展示してあった。それに一通り目を通すと、零は資料館を出た。
するとその奥、本堂に隠れ裏山に迫る場所に、石塔があるのに気付いた。随分古そうだ。そこにも立札があり、天文元年の大洪水で亡くなった人々の慰霊碑とある。納骨堂にでもなっているのだろうか、一番下の段だけ大きい。
そこに手を合わせてから、零は本堂へと向かった。
説法の時間が迫っているのだろう、境内にはそれなりに参拝客がいた。背広姿の紳士、シャツにスカートの婦人など、観光客とみられる姿が多い。
その中に、異質な人物があった。お遍路よろしく白装束を纏い、首に輪袈裟を掛けている。白髪混じりの髪を結い上げた顔は品が良く、なかなかの美人である。しかし、指先で数珠の珠を数えながら、ブツブツと何やら唱える異様さに、観光客たちは距離を置いていた。
すると、作務衣の細君が彼女の元に駆け寄った。
「夢子様、本日もご大儀でございます。さ、いつものお席へどうぞ」
……零は眉を寄せた。昨日志津から聞いた、水川産業の社長夫人である、水川夢子があのお遍路らしい。確か、来住野十四郎の叔母とも言っていた。善浄寺に心酔し、通い詰めているという話だが、細君の対応を見ると、毎日のように来ているようだ。
水川夢子が本堂横の寺務所へ消えた頃、本堂の戸が開き、久芳正善住職が現れた。
「本日はよくお参りくださいました。ただ今より、月原洞窟信仰の説法を行います。説法の終わりには、寺務所にて茶席をご用意しておりますので、是非ごゆるりとなさってください」
「――与志子ちゃん、あのね……」
寺務所の奥の、住居部にある居間である。座卓に置かれた湯呑を手に取り、水川夢子は作務衣の女を見上げた。
「今朝、多摩荘のご主人から、うちの旦那に電話があって。……妙な探偵が、うちの実家を探りに来てるみたい」
「えっ、また?」
作務衣の女――久芳与志子は、盆を抱えたまま夢子の向かいに腰を下ろした。彼女は、水川産業の社長である水川信一郎と、水川村村長の滝二郎兄弟の妹である。つまり、水川夢子とは義理の姉妹なのだ。
「ところがね、先月来た山高帽の男とは別の人みたいなの。女物みたいな着物を着た色男だって」
すると、与志子はハッと息を飲んだ。
「さっき見ました。朝早くやって来て、資料館を見てた、あの男……」
義理の姉妹とはいえ、実家の格式が違う。与志子は夢子に対し、へりくだった態度を取る。その上、神経質な性格だから、いつもビクビクしているように見える。
「おかしな人だなとは思ったんです。でも、全然知りませんでしたわ。申し訳ございません……」
「そんなの分からないわよ。……旦那の話だと、どうもあの双子姉妹から依頼を受けてるようでね」
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