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二章 後輩冒険者

女王激怒

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「それで、国防任されてるのに突撃するのか?」
俺は当たり前のことを女王に聞く。
「そこなの、私達は離れるわけにはいかないの。まぁやろうと思えば出来るけどあまり知られたくないの。それに勇者達を国境に貼り付けにはできてるのだから賢者様の負担も少しは減ってると思うの。」
クイーンの表情がコロコロ変わる。

「その通りだな、でも釘付けにされたせいで俺たち入れなくなってるよな?」
向こう側には数百の大砲と数万の兵士、それに勇者と思われる若者が50人くらいこちらの様子を見ている。

「それは問題ないの、ここから少し行ったところに経済開発協力の一環として兵の半分を地下採掘に行ってもらってるのすでに国境も超えて、賢者様の山にも差し掛かってるからそこからいくといいの。」
しれっととんでもないこと言ってるよこの人。
「あのさ、それって立派な国土侵略行為だよね?」
「あそこは賢者様の私有地、しかも賢者様はしっかりゴブリンの里を教皇国から独立させてこちらと同盟を結んでいるし、勇者が召喚された時に真っ先にこの案をゴリちゃんに頼んでたらしいから、合意の上で問題ないの。」
あそこは賢者の私有地だったのか、初耳だわ。



「じゃあそちらは問題なく救出に行けるな、となると勇者の救出か」
俺の呟きにクイーンが反応する。
「?それはどういうことなの?まさか賢者様をいじめた勇者達を保護するの?」
やっちまったよ。
ゴゴゴゴと言わんばかりに髪の毛が逆立つクイーンが俺を睨みつける。
「まて、奴らは400もいるんだ。それが全員ゴブリンを殺したわけでもないし、みんなが危険な奴らではない。ましてや協力してくれる奴がいるならこちら側に引き入れるべきだろう?」
俺の言ってることは間違ってないはず。
「いや、ダメ、そんなのコウタ様でも許せない」
困ったな、こいつ説得するのは骨が折れる。
彼女が賢者の事で妥協した事を見たことがない。
俺が困っているとクイーンの魔力の変化に気づいたコウマがやってくる。
もしこのまま他の天狗達も来たら、きっと勇者も来てしまう。
今クイーンに勇者を合わせていけない。 

「コウマ!とりあえずお前は俺のメイドだけ置いて早く賢者のところに迎えにいってくれ!」
コウマは俺の意図することを理解してくれたらしく足早に去っていった。

俺が考えてることは俺がクイーンを足止めして連れて来た賢者に説得してもらう。
そのためにもう1つやらないといけないことをする。

「テメェは絶対出てくるんじゃねぇぞ!」
俺は誰もいない場所に叫んだ。もちろん適当に叫んでるわけではない。
実は神龍をクイーンに見られたらごまかしがきかないとのことで離れて待機してもらっていたのだ。

「その様子からしてすでに保護というか同盟的な関係の勇者がいるようですのね。賢者様を虐めるものそれに味方するものみんな殺す。」
そう言ってクイーンが魔力を解放する。
地面が膨れ上がる。

「これは、あんたのスキルか?なかなかやばいスキルを持ってるみたいだな?」
俺は出来るだけ戦いたくないので会話で引き伸ばさないか試みる。
「そう、私のスキル、軍隊(レギオン)は魔力で私の子供達を作り出せるの」
そう言って地中からはゴブリンは普通のゴブリンではなくゴブリン最上位種、ゴブリンキングが出てきた。
その数4体。が彼らの放つ魔力は一般的なキングとは違う。
俺がクイーンを見つめると彼女は目を見開いたまま口角を上げて笑う。
「その子達は普通と違うの。彼らが持てる限界まで魔力を渡してあるの。コウタ様には魔法が効かないから魔力は身体強化にしか使えませんの。」
生物が魔力を全て身体強化に使うと3倍以上の強化が見込めると言われている。
「さぁ、やっちゃうの!賢者様の敵に加担する奴は許さないの」
4体のゴブリンキングが襲い掛かってくる。
今回、もしかしたら殺されるかもしれないなぁとか思いながら、俺は構えをとった。

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