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二章 後輩冒険者

Sランクへの不信感

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その日はもう少し進んだところで休むことになった。天狗族の中に亜空間倉庫のスキルを持っている奴がいて、彼がテントや食料を運んでくれるから、すごい楽だ。
が天狗族に料理ができる人が少なく、基本的に携帯食料を温めて食べているらしい。
けど今回はメイドのフーロがいるので、天狗族の分も料理を作ってもらっている。
フーロは俺のところに来るまで料理した事ないと言っていたが、もう他人に振舞っても喜ばれる腕前くらいには上達していた。
今日はもともと持って来ていた、天狗族の携帯食料の一つ、ちまきを温め直したものと、味噌汁になった。
味噌汁というのは味噌という豆から作った天狗族の伝統調味料をお湯に溶かし具と一緒に煮て作るスープだ。
味噌汁はヒノモトの国のニンジャ、サムライも好んで食すとか。
自分の部族の伝統料理が出てくると思わなかったのか味噌汁はかなり盛り上がった。

夜は見張りを交代でやりながら、テントで休んでいる。テントは大きいサイズのが天狗女子、天狗男子、俺とフーロの3つある。あとは3つ小さなテントがある。それは天狗の夫婦とカップル達のものだ。天狗達のルールで夫婦とカップルは個室を用意するのが普通らしい。魔法のパフォーマンスはストレスや不満が疲労や風邪とかよりも影響するので、遠征中だから、接触を制限するのは良くないという考えらしい。

フーロも寝て、そろそろ俺も寝に入ろうとした頃、別の布団で寝ているアミルが布団から出て来た。トイレだろうと思いほっておいたが、テントをどんどんテントから離れていく。アミルはテントの集まる場所から少し離れた開けた場所に止まった。俺は気になったので追いかけてみた。


「何しているんだ?」俺の声に反応して振り向くアミル。
「追いかけてきてくれましたね。実は私どうしてもコウタさんに確かめたいことがあったんです。」不敵な笑みを浮かべている。
「確かめたい事?聞きたいことがあるなら言ってみろ、できる限り答えるから。」
アミルが真剣な表情になる。
「私はSランク冒険者の貴方に憧れてきました。でも正直言ってあなたの実力が信じられないんですよね。どうみても強そうに見えないんです。今日あなたを見てきましたがあなたが動くべきところだとしても戦ってませんでした。だから少しお手合わせできませんか?」
確かに俺は殆ど戦闘に参加していない。理由は天狗達の方が対処するのが速い事と俺のスキル魔導アーマーが、攻撃に向いていないことだ。別に魔法や投擲でも戦えないことはないが、遭遇戦とかだとどうしても出遅れる。ならいっそ参加しないで終わった後の行動をスムーズにした方がいいというのが俺の考えだ。ちなみにコウマはあんたは最後尾守ってるんだから前の戦闘に参加する必要ないと言われているのでノータッチなのもある。
「あ、別に貴方に勝てるからやるってわけではなく、貴方レベルの実力を持つものはAランクにも沢山います。ではなぜ実力の近い彼らと違いSランクなのか。そこが知りたいんですよ。」アミルは真剣に真っすぐを俺を見据えている。腹括って少し本気でやるか。
「確かに俺は天災のウィザや、最恐のクリスティーナの様な常識外れな技は持ってない。だけどな、格下に Sランクに相応しくないとか言われるほど、弱いつもりもねぇ。いいだろう、相手をしてやる。」俺はいつもの鎧の形状を変えマントをつける。
「それは闘技場のイベントでいつもきている奴ですね、新聞に載ってました。てことは本気で相手してくれるんですね!こちらも頑張ります。」アミルが短剣を両手に持ち構えた。
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