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第1章

呆れ

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レイアさんを避けるようにして後ろを覗くと立った状態のまま身体を土の塊でガッチリと固定されて手と顔だけ出している状態で拘束された男がこちらをというかレイアさんを睨みつけている。
俺が後ろの方が気になっているのがわかったのかレイアさんが横に退いてくれた。

そして近づいた俺に男は
「そいつらがいきなり俺達をこんなふうにしたんだ!なぁおじさん?気をつけた方がいいぜ、俺たちの二の舞になっちまうぜ?」
と不敵な笑みを浮かべながら言った。

その言葉が後ろにも聞こえたのか、背後から殺気の様な目に見えないが感じることのできる何かを当てられる。

「なぁこのままだとまずいぜ、まずは俺を解放しくれ。それで味方を増やして奴らに対抗するんだよ。」
今度は俺にしか聞こえない声で言った。
ちなみにこいつの仲間らしき奴らは周りにいるがみんな下を向いて沈黙している。

さらに後ろからくる何かの圧力が強くなるのを感じた。

下を向いて何も喋らない奴らは微かに震えている。


ここまで圧をかけられて振り向かないのもどうかと思い振り返るとレイアさんが笑顔で立っている。
「我々と彼どちらが正しいと思いますか?」俺にそんな問いを投げかけてくる。 

「正しい?」
俺が聞き返すと彼女はうなずいて答える。
「そうです。彼の言葉を正しいと信じ、我々と戦いますかと言うことです。」
「何故そうなるのか、わからないのですが?」
その言葉に後ろの男が怒鳴り声をあげるが気にしない。

「いえ、彼の発言を聞いて何やら考えているようでしたので、我々の事を疑っているのかと。それにここ数日貴方達異世界人を見てきましたが、貴方達は集団としての結束が極めて強いと感じてます。貴方が彼の言葉を無条件に信じてしまうと考えても不思議ではないでしょう?」

「確かにそうです、ですが根底から間違えていますね。俺たち異世界人は団結が強いのではなく突出した個を嫌い、恐怖し、恐怖に耐えきれなくなるとそれを排除する様な集団です。だから我々は周りに合わせようとし平均になろうとする。みんな団結して見えるのはそのためですね。あとは元々こいつらは俺以外全員同じ所属だったてのもあると思います。」

「ものすごく生きづらい世界ですね。」
「そう。みんながみんな腹に何か抱えて生活してる。それを汲み取り触らない様に接しなければならず、実に生きづらい世界です。」

俺は一瞬後ろの男に目線を移し、
「まぁ正直言って、この男を信用することはないですね。」
「なんだと?!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる男の方に向き直り、目線を合わせるためにしゃがみ込む。

「まずお前と俺は初対面だろ?それにこの小部屋の入り口でお前らが人を殺そうとしたまで聞いている。それの真偽は知らんが普通警戒すると思わないか?」
「はぁ?てか、俺らよりもずっと人殺してる軍人が人殺しで信用できないとか、笑える。」
「は?」
「だってそうだろう?まだ殺した事がない俺より、散々殺してきたであろうこいつらを信じるってのはちょっと矛盾してませんかねぇ?」
態勢はさっきのままだが、明らかに調子付いた感じで聞いてくる男。

また視線を変えた時、捕らえられた男達を挟んで後ろにいた騎士達が彼の言葉に微妙な表情をしているのが見えた。

「何を勘違いしているか知らんが、俺の言っている信用できるかは殺した人数なんてものじゃないぞ?」
「え?」
意味が分からないといった表情の男、元々どんな解釈をしたのか知らないが。

「俺が言いたいのは、お前らの様にいきなり力を手に入れて舞い上がり、感情の昂りに任せて殺人を行おうとした、直情的な考え方が信用ないといったのだ。それに軍人は元より騎士様なんてのは、国の為、民の為と大義名分がある。お前らの幼子がありを踏み潰す時の様な気分で人は殺さない。」

「………俺の復讐が、……子供の遊びだと?」
男がプルプルと震えている。
おそらく怒っているのだろう。
「そうだ、一時の感情を整理できないなんて、幼子と同じだ。」
俺がバッサリと言い切るとしばし無言になりバッと顔を上げて俺を睨みつけて叫んだ。

「いちいち偉そうに、ふざけんじゃねぇ!」
男は俺の顔面に向けて手のひらを開き強烈な光を放った。
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