上 下
22 / 43
学内実戦実習編

蛇竜の恐怖

しおりを挟む
蛇竜とは古より生きる、竜種の1つで、八岐大蛇や地方の水神はこの蛇竜種であることが多い。
神として崇められるほどの力を持つ竜蛇を使役するには相当の妖力を消費するので契約できるものなど限られてくるのだが。
「時間を稼げばあいつは勝手にガス欠を起こす。逃げるわよ!」
生贄になりかけた男学生のチーム4人は目くらましの閃光を使いその場を離れる。
動き出しと同時に蛇竜が、尻尾を横に薙ぎ払う。直撃こそ避けたがここは森の中。
薙ぎ払われた木々の一本が男子学生に直撃し下敷きにする。
ものすごい悲鳴をあげる男に気づくが彼らに男子学生を救出逃げるほどの時間は残されてない。
チームリーダーが残った2人に合図を送り1枚の術札を取り出す。
女子学生は身体強化の術を使い蛇竜の周りを動き回り撹乱する。しかし蛇竜もただ圧倒されるわけではなく、カウンターとして彼女に竜蛇の尾が叩きつける。
彼女は男が埋もれている木にぶつかる。
男子学生はそれで動けるようになったが女子学生はピクリとも動かない。
「おい!死ぬな!」
男子学生が女子学生を担いで逃げようとする。
「馬鹿野郎!周りを見ろ!」
リーダーの声に顔を上げる。
そこには大口を開けて2人まとめて飲み込もうとする蛇竜の姿。
「うおぉぉぉぉ」
隙を伺うっていた、別の男子学生が蛇竜目掛けてタックル。これはうまく決まったらしくバランスを崩した。
「よし!逃げるぞ!」リーダーの声と共にメンバー全員光を放ちそのまま消えた。
おそらくリーダーが実習開始時に支給された緊急脱出術式を使ったのだろう。
あれはパーティメンバーとしてリンクしているもの全員を強制でフィールドの外に出すものだ。


「チッ、逃げられたか。あーあ、無理して舐めたのに損じゃん。さて、次の獲物は、いや、もういいよね?これから私を無碍にした、あの糞男を殺しにいくよ!道中出てきた人は食べていいからね!」雨宮の声を聞き、竜蛇彼女に付き従うように後ろからついていく。
彼女たちは薄暗くなったフィールドに消えていった。

緊急脱出術式の先は校舎内の一角、襲われた男子学生とカウンターをもらった女子学生は傷だらけで他も蛇竜のプレッシャーから解放されぐったりしている。
「無事か?お前らがこんなに早く帰ってくるなんて一体何があった?!」
彼らの教官が脱出先のポイントになっている部屋に飛び込んでくる。
そこにはボロボロの2人と体力切れで横たわる2人とみんな倒れているため教官はさらに取り乱した。

「生きてるよ~」
タックルをかました男が手を振ってアピールする。
「あぁ、木が飛んできた時とっさに貼った結界術で致命傷は避けた。少し結界術を習得していて本当に助かったよ。」
「全く、今は怪我してるから、あまり言わないつもりでいたが次あんなことしたらタダじゃおかないからね!」
ボロボロなのに説教を始める女子学生。
終いには泣き出してしまい、落ち着くまで時間がかかった。

「そろそろいいか?一体何があったんだ?いつも最終日までしっかり残れるお前らが1日目で帰ってくるなんて」
「蛇竜を使役している女に襲われました。彼女は色仕掛けで男を誘い込み、それで骨抜きにして、蛇竜の妖力を保持するために生贄にしているようです。こいつの話だともうかなりの数喰われてるらしいです。」
教官の顔つきが真剣になる。正直教官の中でも式神使役科の生徒はあまりいい評判がない。その上で色仕掛けって最近こんな事あったな、とか教官の頭の中によぎる。
「で、彼女の名前はわかったりするか?」
「雨宮蓮菜です。」
出てきた名前は、想像どうりの最近タイムリーな女の名前だった。
「わかった。部隊を組んでこっちで対処する、君たちは休みたまえ。」そう促し教官は彼らを医務室に向かわせる。ひとりになった教官は盛大にため息をつき、学園長へ報告に向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

人形の中の人の憂鬱

ジャン・幸田
キャラ文芸
 等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。 【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。 【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

狐火郵便局の手紙配達人

烏龍緑茶
キャラ文芸
山間の町外れ、霧深い丘の上に立つ「狐火郵便局」。夜になると青白い狐火が灯り、あやかしの世界と人間の世界を繋ぐ不思議な郵便局が姿を現す。ここで配達人を務めるのは、17歳の少年・湊(みなと)と彼を助ける九尾の狐・あかり。人間とあやかしの橋渡し役として、彼らは今日も手紙を届ける旅に出る。 湊は命を救われた代償として、あやかし宛の手紙を届ける配達人となった。彼が訪れるのは、座敷童や付喪神が住む不思議な異界。手紙に込められた人々の想いや未練、感謝の気持ちを届けるたび、湊は次第に自分自身の生きる意味を見出していく。

あやかし探偵倶楽部、始めました!

えっちゃん
キャラ文芸
文明開化が花開き、明治の年号となり早二十数年。 かつて妖と呼ばれ畏れられていた怪異達は、文明開化という時勢の中、人々の記憶から消えかけていた。 母親を流行り病で亡くした少女鈴(すず)は、母親の実家であり数百年続く名家、高梨家へ引き取られることになった。 高梨家では伯父夫婦から冷遇され従兄弟達から嫌がらせにあい、ある日、いわくつきの物が仕舞われている蔵へ閉じ込められてしまう。 そして偶然にも、隠し扉の奥に封印されていた妖刀の封印を解いてしまうのだった。 多くの人の血肉を啜った妖刀は長い年月を経て付喪神となり、封印を解いた鈴を贄と認識して襲いかかった。その結果、二人は隷属の契約を結ぶことになってしまう。 付喪神の力を借りて高梨家一員として認められて学園に入学した鈴は、学友の勧誘を受けて“あやかし探偵俱楽部”に入るのだが…… 妖達の起こす事件に度々巻き込まれる鈴と、恐くて過保護な付喪神の話。 *素敵な表紙イラストは、奈嘉でぃ子様に依頼しました。 *以前、連載していた話に加筆手直しをしました。のんびり更新していきます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

青い祈り

速水静香
キャラ文芸
 私は、真っ白な部屋で目覚めた。  自分が誰なのか、なぜここにいるのか、まるで何も思い出せない。  ただ、鏡に映る青い髪の少女――。  それが私だということだけは確かな事実だった。

午後の紅茶にくちづけを

TomonorI
キャラ文芸
"…こんな気持ち、間違ってるって分かってる…。…それでもね、私…あなたの事が好きみたい" 政界の重鎮や大御所芸能人、世界をまたにかける大手企業など各界トップクラスの娘が通う超お嬢様学校──聖白百合女学院。 そこには選ばれた生徒しか入部すら認められない秘密の部活が存在する。 昼休みや放課後、お気に入りの紅茶とお菓子を持ち寄り選ばれし7人の少女がガールズトークに花を咲かせることを目的とする──午後の紅茶部。 いつも通りガールズトークの前に紅茶とお菓子の用意をしている時、一人の少女が突然あるゲームを持ちかける。 『今年中に、自分の好きな人に想いを伝えて結ばれること』 恋愛の"れ"の字も知らない花も恥じらう少女達は遊び半分でのっかるも、徐々に真剣に本気の恋愛に取り組んでいく。 女子高生7人(+男子7人)による百合小説、になる予定。 極力全年齢対象を目標に頑張っていきたいけど、もしかしたら…もしかしたら…。 紅茶も恋愛もストレートでなくても美味しいものよ。

処理中です...