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EXTRA FILM 3rd ※三章の幕間
最果てより訪れし使者
しおりを挟むガイヤァルは、インフェクターの反抗勢力。ハスターに組みする怪異も裏切り者とみなし、日夜処刑に出向いていた。
「ガイヤァルくん、追い詰めたはずなんだけどね。上芭生くんが居眠りしちゃったせいで、見逃しちゃった」
「構いはしない。この辺にまだ居るはずだ。貴様達は、建物上部から地上を探してくれ。わたしは引き続き街中を迂回しつつ、やつを探す」
裏切り者である以上、ハスターの一派として仕えるサンダルフォンやスレンダーマンと、対峙することになってしまった時に備え、ルンペイルとベルフェゴールが共に行動していた。
しかし、肝心のターゲットに逃げられてしまい、追跡を続けるべく二方向からの捜索で、今度こそ対象を捕え処刑するために行動を再開した。
閉店して、ネオンライトが淋しく点滅している街路を歩くガイヤァル。そこに、車のライト程に眩しい光が当てられる。手で視線に割り込む光を遮り、ライトをかざしている方へ向き問いかけた。
「何者だ!!」
「これはこれは、【蒼炎の先駆者】。いいえ、ガイヤァルと言うべきですか?お初にお目にかかる。私の名は都越江 久遠。実は貴方にお手伝いしてもらいたいことがあります」
白衣を着た、如何にも科学者といった風貌の男性。都越江 久遠と名乗る彼は、ガイヤァルの存在を知っていて、接触を持ちかけてきた。
怪異の処刑で忙しいと、久遠の頼みを断わる。すると、頭上から空気が乱れるのを感じ取ったガイヤァルは、トンファーを構えながらバックステップで回避した。何かが、明らかに狙いを定めて降ってきた。
砂煙を掻き分けて、ソレは姿を現した。手に持っている得物は漆黒の槍で、クルクルと指で回しながら身体の周りを一周させて、持ち手を握り締めてガイヤァルの鼻っ柱を目標に定めた。
「コイツは……!?」
「紹介しよう。アンディレフリード、通称アンリード。私が造った、対怪異専用の戦闘兵器さ。彼女はフロンティア────、最も。君達上級怪異ともなれば、この存在は混乱を招く他ないだろうがね」
久遠の言うことは正しかった。
ガイヤァルは、フロンティアという未知の存在。アンリードから、微かに怪異の気配と人間の匂いを感じ取っていたからだ。しかし、フロンティアの先ほどの一撃からは、一切の殺気を。感情が赴くままに繰り出されたものではない、機械的な攻撃手法でしかない感覚を覚えていた。
「君に拒否権はないのだよ。私の頼みとは────、ここで彼女と戦って貰うことだからね」
「っ!?」
「……行きますよ…………?」
槍先が揺れる刹那。ガイヤァルが防戦に構えたトンファーの交差地点に、フロンティアの一閃が通過する。交差地点をぶらさずに、一閃を斥け膝蹴りを当てる。衝撃は加わるが、ダメージを受けた様子はないフロンティアは、崩れた体勢のままガイヤァルに手を伸ばす。
そして、地面に叩きつけ反動で飛んで行った槍を踵で蹴り、頭上に持ち上げてキャッチすると、そのまま押さつけているガイヤァルの脳天に突き刺した。地鳴りが起きるほどの力で放つ一撃を、ガイヤァルは首を曲げて躱し右脚をフロンティアの服部に突き入れ、巴投げをした。
「…………っ。やりますね」
「この強さ……、危険すぎる。決めたぞ!貴様はここで、わたしが倒すっっ!!」
久遠の思惑に乗ってしまうガイヤァル。
しかし、二体の戦いは肉眼で置い切れるものを越え、車道へと飛び出す。時速60kmは出している車を次々と、蛇縫いで追い抜いていきながら斬撃や火球を撃ち合い戦う両者。
対向車線に出たフロンティアに、クラクションを鳴らしていた車が激突した。ボディに磔にされていたフロンティアは、運転手が人を轢いてしまったとあたふたしていることに、関心もなく肘を曲げて手をつき上体を起き上がらせる。
折れたわけでもない身体の形状が、元に戻るまでの義務的動作のように首をバキバキと鳴らし、何事なかったように車のバンパーを踏み台にして飛躍した。そのまま、ガイヤァルのもとまで一気に跳躍して槍再び取り出して、振り回しながら強襲をかける。
(こ、こいつ。闘いの中で、学習しているのか。インフェクターというものを…………?)
「どうしました?わたしはまだ、倒れていませんよ。それに……」
足を取られたガイヤァル。宙に浮いた体を槍で叩きつけられ、高架下に叩きつけられた。追撃を重ねてくるフロンティアの方へ向き直ると、ガイヤァルは目を見張った。
なんと、フロンティアは飛び降りてきたタイミングで、四体に分身して襲いかかってきたのだ。その一体一体が、先程まで相手していたフロンティアと同等の強さ。それだけでない、これは幻や残像なんかではなく、すべてが本物のフロンティアであった。
「くはっ────、か、はぁ…………」
「どうやら、ここまでのようですね。わたしはまだ、煮え滾ってもきませんが、そろそろ大詰めといかせていただきましょう」
初見の分身。いや、分裂攻撃に圧倒されてしまったガイヤァルに、四方向で包囲しているフロンティアが一斉に槍を前に突き立てる。そして、上空に体をひねらせて一斉に飛翔する。
まるで、太陽と月が重なる日蝕の時を思わせるように、フロンティアは一つの存在へと戻っていき、槍は光放つ邪槍に変わっていた。真夜中だというのに、花火でも打ち上がったくらいに眩い閃光を放ち、フロンティアは必殺の一撃を繰り出す。
「出力は40%に抑えてあります。見せてください、インフェクターの真の力を────」
───闘争の果て、導く勝利の栄光。
邪悪なる槍からは、とても放たれそうにない金色の槍撃が、膝をついているガイヤァルを襲う。
そこへ、久遠がようやく追いつき、双眼鏡で拡大してガイヤァルを観察する。地上を穿つであろう槍撃を睨み、立ち上がったガイヤァル。トンファーを重ね合わせ、ロッドへと変形させ手を天高く伸ばした。
「天を遍くホルスッ!!死を呼ぶネフティスッ!!そして、我が神名たる主人【黒烏】よッッ!!三羽一体の力で、愚鈍なる傀儡に閉幕の狼煙を与え給え!!!!」
───星が占めす狩猟の陽ッッッ!!!!!!
地面に杖を突き立て、杖から出た巨大な布陣から三羽の神鳥が飛び出し、フロンティアの放った閃光に飛び込んでいった。花火が弾ける音と同じく、空を揺らしながら二つの光がぶつかり合う。
一羽が閃光を突き破り、フロンティアの中心を突き抜ける。その拍子に消滅したフロンティアの一撃、拮抗していた残りの二羽も、分かれた二つを啄むように攻撃して地面に叩き付けた。
上半身と下半身が離れ離れになった、フロンティアの残骸は怪異同然に消滅していく。しかし、塵のように霧散していくのではなく、灰が風に乗って飛ばされるように消えていった。
すると、騒ぎを聞きつけた目撃したと、人間達が野次馬の如く橋の上に集まっていた。その時、歌が聴こえてきた。綺麗で透き通った美声を聴いた途端に、虚ろな目になる人間達。そして、何かの糸に操られているように車に乗り込むもの。歩いてその場を離れるもので、溢れかえっていた。
やがて、人間は一人も居なくなったところで、美声の主がガイヤァルの近くにやって来た。隣にはベルフェゴールが、欠伸をしながら着いてきていた。そう、ルンペイルの歌の力で、フロンティアとの戦闘を見ていた人間に暗示をかけて人払いをしたのであった。
明日になったら、揃って変な夢を観たでかたがつくだろうと笑って説明していると、全員の後頭部に槍先を刺し向けられる。それが、フロンティアの分裂した三体が集まったインフェクターを取り囲んでいたと、ガイヤァルは気付くのが遅れた。
「そうか……。合点がいったよ。貴様────、命持たずの存在なのだな?」
「左様です。わたし達アンリードに、生命なんてものは存在しません。この身完全に朽ち果てぬ限り、何度でもお相手しましょう」
ガイヤァルが答えに辿り着いたのに対し、賞賛を送るのは先ほどガイヤァルによって真っ二つにされたフロンティアだった。恐ろしいことに、外傷は一切残っておらず、戦闘開始前の時と変わらぬ姿に戻っていた。
「いや、そこまででいいよフロンティア。君は間違いなく、私達が造ったアンリードの最高傑作だ。データは充分に取れた、もう帰ろう」
「はい───、MyMother」
久遠の言葉を号令に、分裂していたフロンティア達も一斉に武装解除して、久遠の近くへ向かい撤退するのであった。ガイヤァル達は、五体の影が完全に消えるまで、そこを動くことは出来なかった。
□■□■□■□■□
翌日になり、裏切り者の怪異の始末を終えた後。噂観測課と一戦交えた、ルンペイル達とともに、他のインフェクターにアンリードという存在を共有した。
「へぇー、そいつはまた面倒そうな連中が現れたもんだ。ともあれ、対策の必要は当面はないと、自分は思うけどね」
「そうだな。ヤツら、オレの前にも現れてデータがどうとかって言っていた。解析に時間がかかるらしいぜ」
アンリードは、アスモダイオスの前にも現れていた。
同じように戦闘を仕掛け、データ採取した時点で逃げいて行ったのだ。目的はなんなのかまでは不明だが、インフェクターにとっては些事なことであった。怪異とも人間とも取れない、命持たずの存在。アンリードについて、ガイヤァル達が触れることはなかった。
その決定打は、スケープゴートがオラクルカードを一同が、向かい合っているテーブルに投げ、突き刺さった絵柄を見つめて説明した内容だった。
「ダイヤモンドダスト。《思い出に残る特別な時間》、または異なる世界を意味しているわ。つまりは、こちらの向かう道とは交わらないということよ」
突然の乱入者については、ここまでにして次なる作戦を考えるインフェクター達。
アンディレフリード。彼女達の目的とは一体───。都越江 久遠は、何故インフェクターと接触したのか。その答えは、もう一つの《意味ない》が解明してくれるであろう。
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