意味が分かったとしても意味のない話

韋虹姫 響華

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記者の記録

枯葉が勿体ないです

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    最近、この学園に魔法少女が居るらしいという情報を聞いた私は一人校内の見学許可を貰って生徒の一人一人を見て回ることにした。
    魔法少女というと人知れず悪と戦うヒロインというイメージを持ち合わせていた私は、可能性として考えられるのはまず運動部だった。しかし、陸上部くらいしかこの学園で女性が多くないことが判明した。

「え?魔法少女?おじさん、新聞記者ではないにしてもヤバくない?」
「何それ?あたし達、大会控えてるんで練習の邪魔しないでくれます?」

    陸上部。テニス部。バスケ部。野球部のマネージャーまで聞き込みをしたが、タレコミが嘘なのかと疑うくらいに誰も知らない。それどころか白い目で見られてばかりだ。
    もしかしたら、魔法少女は文化系の部活や帰宅部の人間がなっているのかもしれない。そうして次に向かったのは家庭部。

「はい。魔法少女……?に関してならオカルト部に聞いてみては?」
「困りますね記者の方。生徒たちも魔法少女だなんて信じていないのですから」

    煙たがられて門前払い。仕方なく家庭部部長さんに教えてもらったオカルト部へと足を運んでみたが、これはこれでハズレの予感がした。

「おぉ!!なんと!うちの学園に魔法少女ッ!!記者さんもそのスクープを狙っている……という感じではありませんね?」

    そう言ってオカルト部部長が暗い部屋の黒板を指さす。そこには大きな字で私が魔法少女を追っている本当の目的が書かれていた。
     なぜ、彼女達がを知っているのか分からないが私は聞かずにはいられなかった。すると、部員の一人が中庭にそれらしい人達が最近現れるようになって、購買部のようなことをしているというのでその情報を頼りに中庭へと向かった。

     中庭には、確かに清掃のおばちゃんのような格好をして箒で通路を掃き掃除している二人の人間が居た。私は勇気を振り絞ってその二人に声をかける。

「魔法少女?それを追う、不思議な組織?そんな話聞いたことありますか先輩?」
「いいや、さっぱりですね……はい」
「あ、でもでも♪先輩は見てのとおりちっちゃいですからねぇ?」

    OLに居そうなテンションの女性が、先輩と慕っている人をまるで子どものように抱き上げた。まさか、この低身長な彼女が魔法少女だとでもいうのか。私のこの疑問に熱を持ち始める前に、低身長な彼女は抱き上げている手を叩いて逃れて購買の小屋の方へ逃げるように走っていった。
    このまま彼女を追いかけて、本当に魔法少女であれば写真に収めることが出来る。そして、私が追い求めている噂観測課に出逢えるかもしれない。

「はいはい、枯葉に落ち葉が勿体ないですからねぇ~♪ささっと回収して、今日は帰りますよ~~、はい♪」

    すると、自分の身長と同じくらいの大きめのバケツを持ってきて掃き掃除で集め始めた。一瞬でも魔法少女かもしれないと期待した私が馬鹿だった。どうもこの人達も魔法少女や噂観測課は関係ないらしい。諦めて帰ろうとしたその時、呼び止めて焼き上がったトウモロコシを食べていけとホイルに乗せて手渡して来た。
    季節ではないとは思うが美味い焼きトウモロコシを食べながら、購買部の人達と談話することになった私は、つい気持ちが嬉しくなった勢いで噂観測課の存在を話してしまった。この事は私の会社内でもトップシークレットになっている情報で、理由は知っていることがバレるとという噂が絶えず、現実に口外した人間は漏れなく失踪や交通事故で全員この世を去っている。

「あ……、あ~~~~っ……」
「ん~~~っ?先輩?言っちゃます?」
「そうですね、はい。貴方が探している魔法少女かどうかは知りませんけど、今日も昼間に。それこそ、貴方とちょうどすれ違いくらいでおっぱいがボンッと出ていると小麦色に日焼けしたが此処へ来たんですよ……はい」
「だから、ひょっとしたら記者さんがお探しのその噂ナンタラ課って人の関係者かもしれないなぁって。まぁわたし達はここの臨職だから?分からないけどねぇ~♪」

    魔法少女を追って此処へ来た二人の女性。間違いなく、それは私が探している噂観測課の人間と読んでいたもの達と似ている容姿をしているという情報を話していた。急いでトウモロコシの残りを食べて、車へと急いで向かった。移動中にスマホで同じ部署の部下に連絡すると、朝方に褐色肌のギャルがよく目撃されている場所を突き止めたと言っていた。恐らくは、同じ人物がそのギャルでその子は組織の関係者に間違いない。
    私はこの辺を探して見ることにした。しかし、いくら探してもそれらしい人物を見つけることが出来ずに帰還することになり編集長にこっぴどく叱られるのであった。

✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳

「あ~~、なんだってあの乳壁女に擦り付けるようなことやって記者対策なんかしねぇといけねぇですか……はい」
燈火ともしびちゃんのこと先輩呼びするの、普通のはずなんだけど疲れたわ♪それよりも、これでわたし達の方は終わった訳で……ん?」

    記者に自分達が観測課の人間であることをバレずに済ませるために、わざわざ学園の臨職に成りすまして約一週間も中庭に仕事しに来ていたことにどっと疲れが来てへたり込んでいるところに、熱い視線を感じた茅野かやのが入り口の方に目を向けると衝撃を受けたように目を見開いている男性が立っていた。
    隣に校内を案内している教頭先生が心配そうに様子を窺っていると、手に持っていた荷物を全て教頭に預けてこちらに走ってきた。そして、ベンチに泥のように横たわっている燈火を抱き上げて応援団顔負けの大声を上げた。

「マァァァ────イ、ハニィィィ!!??どうしてぇ!君が、ここにぃぃぃ!?!?!?」
「あー、うるせぇですぅ~。って家小路いえのこおじ。そっちこそ何で此処に?はい?」
「わたしか?わたしはな……、このッ!学園にぃッ!特別授業で、来週の火曜日にッ!来ることになってッ!居るん、だァァァァァ!!!!」

    中庭の木々が揺れて、せっかく片付けた道に落ち葉が沢山落ちた。それほどの爆音を発せられる家小路はある意味で怪異に近い存在なのかもしれないと茅野は思ったのであった。

    その後、夫婦で仲良く掃き掃除をして中庭を綺麗にして帰宅した家小路家の晩御飯は、しゃぶしゃぶとなり温野菜の美味しさについて朝まで語り明かしていたと知ることになるのだが、それはまた別のお話。
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