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メインストーリーな話
トレジャーハンターとカウンターハンター
しおりを挟む館の壁を背景に桃を手に持つ、神木原 麗由の姿があった。パシャリパシャリと、シャッター音を鳴らして撮影する女性。茅野 芳佳はにへらにへらと口を開いて、あらゆる角度から撮影していた。
「いいわよ麗由ちゃんっ♪もっと頂戴♪」
「こ、こうでしょうか……?」
「もっと頬に寄せて、そう!片目はウィンクする感じよ。────、そうよそれそれっ!!」
桃色の髪にグラデーションをつけるような、桃の持つ天然の色合いを最大限に引き出した一枚をシャッターに収めたい茅野は、更に桃を追加で麗由に持たせて数枚撮影後、今度は麗由の衣装もチェンジして撮ろうと言い出して、麗由に着替えて欲しい衣装を渡して更衣室へと向かわせた。
数分してから、更衣室から戻ってきた麗由。本人は物凄く着こなしを気にしていると、茅野はコスプレ撮影に燃えるカメラマンかのように、目を燃え上がらせて麗由を絶賛した。
「いいわよ麗由ちゃん♪今の貴女は天使だわ♪奮発して買った甲斐があったわね、その水着メイド服」
「そ、そうでしょうか?なんと言いますか……、こう───、出るとこ出ている感じが、その……あまり落ち着かないのですが?」
「辰上君が見たらきっと、鼻の下を伸ばして喜ぶわよ?」
「───ッ!!??芳佳様!!綺麗に撮ってくださいっ!!」
辰上 龍生の名を聞いた瞬間、麗由の表情から羞恥の気配は消え失せ、茅野の指定してきたポーズを見事にこなし始めた。両腕を伸びした状態で手を後頭部に置き、二つの桃を画角に収まるように背を向ける。
(すると、麗由ちゃんのたわわと桃に挟まれた麗由ちゃんが撮れちゃうのよね~~♪)
「な、何やってるんですか茅野先輩?」
「何って、辰上君に麗由ちゃんのグラビア写真集を作って上げようと思ってね……、ん?」
いつもの会話と同じテンションで、かけられた声に答える茅野の動きがピタリと止まる。同時に、茅野がカメラを向けていた方向を見ようと、こちらへ向かって来る声の主。茅野は麗由に、その水着は今度見せるから隠れるように目で合図を送って、カメラから手を離して声の主に向かって言葉を発した。
「あら辰上君、どしたの?今日って調査で現地直行じゃなかった?」
「いや、そうですけど。今、車取りに来ただけですよ。それよりも、麗由さんのグラビアがどうって?」
麗由が姿を隠したはいいけど、ついポロッと言ってしまった言葉をしっかりと覚えていた辰上。それにカメラまで持っていては、今更誤魔化しきれないと冷や汗をかきながら、あははとせせら笑う。
すると、明らかに何かを企んでいる顔をしている茅野の後ろ。すなわち、麗由が隠れた木陰の方へと足を進め、麗由に一体どんな格好させたのかと確認しに向かった。慌てて止めようとする茅野の制止を振り切って、木陰の中へ身を乗り出して確認するが、そこに麗由の姿はなかった。
辺りをキョロキョロとする辰上の頭上を背後から、日傘がささる。振り返ると、いつものメイド服に身を包んだ麗由が立っていた。
「どうかなさいましたか龍生様?」
「え?あ、あぁ……なんか、茅野先輩が麗由さんを撮っていたから。それに、グラビア写真にして僕に送るとか……?」
「うふっ。日傘を持ったわたくしを撮っていただいていたのですよ?まぁ……、その前は……ふふっ♪秘密です♡」
麗由の思わせぶりな態度に、辰上はタジタジな横でいつの間に着替えたのだろうと、一人驚いている茅野であった。
やがて、怪異調査のために現地直行するべく、車へと乗り館を後にした辰上。ホッと胸を撫で下ろす茅野は、麗由に一体どうやって着替えたのかを尋ねた。更衣室は、向かうだけでも走っても二、三分は掛かってしまう。すると、麗由はメイド服の背中のフックを外して、その場で脱ぎ綺麗に畳んでベンチにメイド服を置いた。
そう、麗由は水着をメイド服の中に着たまま、更衣室から直ぐに着れるように持ってきていたメイド服を着ていたのだった。
「こんな出来るお嫁さんをもらうとなっては、辰上君もラッキーな子ねぇ♪ほら、続き撮るわよ麗由ちゃん♪」
「はいっ!ともに創りましょう!龍生様が釘付けになる、最高のグラビアをっっ!!!!」
こうして、噂観測課の内勤業務であった二人の時間は、『麗由のメロメログラビア写真』という名前の辰上龍生にだけ向けられた写真集を作る情熱に注がれていくのであった。
□■□■□■□■□
車を走らせること、途中トイレ休憩を挟んで六時間。
「あのですね……。これ、私がメインのお話なんですよね?なんだって、後輩が愛されているって話が導入編に入るんですかね?次回は、家小路さんと私の夫婦の仲睦まじいストーリーでオープニング飾ってもらいましょうかね?…………はい」
誰に向けた独り言なのかも、定かではないが目的地に無事到着した燈火。
現地で待たせている、先日の電話主が待つポイントまで向かい手を振って、到着を合図する。途端に砂埃を巻き起こして、猛スピードで燈火のところへ向かってきて、いきなり怒鳴り声を上げた。
「お前ッ!!丸1日も遅刻する奴があるかよッ!!ったくよぉ、こっちはお前が断られたトレードの代わりに来てやってるってのによぉ?」
「そんなに皺寄せて怒らないでください。ただでさえ、プロポーションだけなら最高に可愛いのに、それさえもなくなってしまったら、唯の怪異退治の専門家になっちまいますよ……はい?」
そのマイペースさが、今回依頼する予定だったトレードという噂観測課のメンバーに、拳骨の二つ返事で断られた原因なのではないかと、更に怒りの火を灯して言い返す。
「はいはい。依頼主にして、遅刻をかましたことは謝りますよ、はい。ですがいいんですか?ディフィートさん、貴女が1番欲しがっていた例の耳寄り情報。教えてあげなくてもいいんですよ?……はぁい?」
「お前、敵だったら今ここで首斬り落としてるぞ?」
舌打ちをして、肩から気を落としながら燈火の横に立つディフィート。
ようやく怪異調査を開始出来ると、調査道具の入ったトランクを開ける。すると、中からヘルメットを取り出して手渡す燈火。それを渋々被るディフィートにツルハシを渡して、調査現場まで歩いた。
調査依頼が来たきっかけは、最近この辺で洞穴が見つかり財宝を狙って探索に出た人達が、相次いで行方不明になっているというのだ。今は立入禁止の柵を設けて、進入を制限しているが原因が不明であると、噂観測課が出向くことになった。
「だいたいよ?それって土地型の怪異が出た訳でもないんだろ?なら、お前一人でもいいんじゃねぇのか?」
「んんッ!!」
「っ!?そ、そうだな……。それだと本末転倒だもんな。あたしがファイヤーボールの依頼を受けたんだしな」
「そうですよ。なんなら、ディフィートさん一人で昨日のうちに解決してくれてもよかったんですよ?はい、着きましたね例の洞穴」
見るからに真新しい洞穴。こんなところに、金銀財宝なんかあるわけないと思いつつも、ツルハシを肩に担いで向かう二人。中は真っ暗で、足先すらまともに見えない程の暗闇が広がっていた。
燈火はヘルメットのヘッドライトを点ける。すると、足元に光が反射するのが見えてその場に屈んだ。それに遅れてヘッドライトに手を当てたディフィートは、気付くことなくぶつかって背の低い燈火を越えて前に転げ落ちて、尻もちをついた。そんなディフィートを見向きもせずに、物体を拾い上げるとディフィートの足元。その床が開いて、ディフィートは更に真っ暗な地下へと姿を消した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────────────ッ……………」
「あれ?ディフィートさん?どこ行っちゃったですか?これ、銀貨ですよ、はい。それも結構な年代物の?お───い、ディフィートさぁ~~~ん?…………おっ?」
真下から、ザバァンと小さく音が聞こえたことで、ディフィートが真下に落ちてしまったことを確信する燈火であったが、足元にヘッドライトを向ける限りでは、何処にも下へ降りられそうな箇所は見当たらない。
一体どうやって、床下に入ったのか。つま先で床をツンツンと小突きながら、慎重に奥へと進んでいくが、一本道で下に降りている感じはなかった。しかし、突如として足場が崩れ落ちて、その土砂崩れに巻き込まれて燈火も落下してしまった。
落下した先で、瓦礫の下敷きになるのを回避した燈火は、周辺を見渡す。
そこは、文明が確かにあったような遺跡の中であることに気が付いた。レンガ細工で作られた壁に、一定間隔で立てかけられている松明。これは金銀財宝も嘘ではないかもしれないと、期待をしつつも腰に閉まっていた二丁拳銃を取り出して、警戒を始める。
突然として現れた洞穴。そこに隠れていた古代遺跡となれば、本格的に怪異である可能性が出てきたからである。ダメもとで耳に着けていた通信機で、ディフィートに呼びかけてみるが、やはり繋がらなかった。
「はぁ……、繋がるなら最初からそれ使えですからね……はい」
「侵入者───、発見ダ───」
「おっと?早速お出ましですか?───はいっ!」
燈火の背後から、槍が差し向けられる。
飛び跳ねるようにして、一撃を躱し振り向き様に発砲する。槍を持つ腕が弾け飛んで、後ろへと仰け反る敵影。怪異、【スケルトン】である。
こういった遺跡に棲みつきやすい、比較的に下級な怪異に無駄弾を使わないように、スライディングで脚払いして浮き上がった体を裏蹴りで撃破する。しかし、更に背後から【スケルトン】が飛び出してきた。姿勢を前傾にしながら、口で発砲した方の拳銃をリロードして、駆け抜ける燈火。
ハードルを飛び越えるように、まず最初の一体を抜かして次に現れた【スケルトン】の背中で滑って、ついた勢いを殺さずに二丁拳銃のトリガー。その下にあるもう一つのトリガーを引いて、ダガーナイフが銃身から生えてくる。二丁拳銃をツインダガーに変えて、斬りかかる燈火の一撃に沈黙する。それに続いて、腰に付けていた時計を追い越した後続に投げつける。
パチンッ!!───────ボォォォンッッッ!!!!
燈火の指鳴らしを合図に投げた時計が、爆発を起こして【スケルトン】達を一網打尽にした。
「ふっ……、こんな感じで戦う私も……どうですかね?───、はい?まだ居るですかぁ?」
一息付く間もなく、次々と【スケルトン】が燈火のもとへ集まってくる。まるで、この遺跡そのものが燈火を異物と見なしたように【スケルトン】が群がってくる。
本来、【スケルトン】は集団で活動する怪異として生まれることはなく、たまたま棲みついた場所に同居することはあれど、人間や動物の死体が怪異になる性質上、同時多発的に発生して共闘することは珍しい。
(というより、ほぼ有り得ないです。これは……、コイツらを操っている司令塔が居るはずです……はい)
「侵入者───、侵入者───、侵入者───」
「隙有りだぜぇ♪」
「なっ!?【トレジャーハンター】ですか?ぐあっ!!??」
不意を突かれた【トレジャーハンター】の一撃に、吹き飛ばされて壁に叩きつけられる燈火。体勢を立て直す余裕すら与えない【スケルトン】の群れが、容赦なく向かってくる。
拳銃を構えると、銃身に紐が巻きついて取り上げられてしまった。ダガーナイフをしまっていたせいで、ロープを切ることが出来なかったのだ。一気に窮地に立たされてしまったその時、燈火の背後にある壁にヒビが走った。
「待たせたなファイヤーボールッ!!真打登場ってやつだッ!!走れ、【最後の審判・真】ッ!!」
壁を突き破って現れたディフィート。彼女の怪異、その一体【最後の審判・真】は、言葉を聞いて一人で飛翔する剣。瞬く間に、燈火を囲んでいた【スケルトン】を蹂躙すると、ディフィートが開いている手に吸い寄せられるように、飛行して向かい手に納まった。
カッコよく剣を構えるディフィート。しかし、その全身はズブ濡れで水が滴っていたせいで、燈火はそっちが気になって目線が向いてしまっていた。
「よっしゃ、いくぜ!!ドゥームズッ────デックションッッッ!!??」
「あ~~、……えっ?ディフィートさん、もしかして…………?」
「ズズズズゥ────ッ!!えへへ……っ、風邪、ひいてゃってゃ……」
「は、はいぃ────────ッッ!!!!????」
勢いよく走って、【トレジャーハンター】に向かってドゥームズデイを振りおろそうとした矢先、クシャミをして手元が狂い攻撃を外してしまった。
そのことに燈火がリアクションするのと、同時のタイミングでべチッとデコピンのような反撃を受けて、燈火の横に戻ってきたディフィートであった。鼻水を垂れ流しながら、愛剣を杖代わりにして立ち上がると、燈火の肩に手を置いて言った。
「すまん。出直そうッ!!」
「はぁ……、そうなると思いましたよ……はい。ちょっとドゥームズデイ貸してください。私でも壁に穴空けるくらいなら出来るはずです」
悠長に、待ってくれている【トレジャーハンター】と【スケルトン】達。そんななか、位置についてスイカ割りでもするような容量で燈火が、「唸れドゥームズデイッ!!はい……」と素振りをする。
唯の金属音が木霊し、壁には一ミリも傷がつかない。燈火は、躍起になって何度も何度も壁にドゥームズデイを叩きつけると、ディフィートが「それ、直してもらったばかりだから」と涙を流して、止めに入った。そして、本人には不調でも愛剣に命じれば、壁くらいなら破壊出来ると指示を出してなんとか壁を破壊して、光が指す抜け道が見えてきた。
一気に駆け抜けて、逃げ帰るように光の方へと走る二人。しかし、それを許す【トレジャーハンター】達ではなく、後を追って来ていた。さっきまでは、呑気に待ってくれていたのに、執拗いと燈火は下瞼を人差し指で下げて「べぇー」と言いながら、挑発をかけた。
「登ってこれねぇみたいですね、あいつら」
「ん、でもなぁ~トレギャーヒャンラーの方は、ちぎゃうみたいだじょ」
「ええ?何とかしてくださいよ。私、あいつに武器取られて対処法ないんですから……はい」
(というか鼻ずまり凄すぎですね、はい)
クシャミを必死に耐えながら、愛剣に向かってくる【トレジャーハンター】を撃破するように、差し向けるディフィート。すると、一瞬で懐を取ったドゥームズデイは、使い手に操られているも同然の斬込みで追い詰めた。
「ガァァァァ…………」
「いいじょお、ドゥームルレイ!!戻っれこい」
「こんな情けねぇディフィートさんが見れるのも、ここだけかもしれないですね……はい」
撃破してもらった礼も言わずに、壁をよじ登って地上に出た燈火。
やがて、ディフィートの手を掴んで地上へ引き上げると、こじ開けた穴がみるみるうちに塞がってしまった。周辺を確認すると、結構離れた場所に二人が来た洞穴の入口がある、小山があった。これは、本格的に怪異討伐のための作戦を立てる必要があると判断した二人は、野営することにした。
なんとかして車まで戻ってきた二人は、テントを敷き寝る準備に入った。焚き火を起こし、温かい飲み物を飲み、就寝する。しかし、車のシートを倒して眠りに落ちようとする燈火と相対して、ディフィートは車の窓をどんどんと叩いて訴えかけていた。
「おがしいだろ!!なんで、風邪引いてるあたしがテントでお前が車内なんだよっ!!ふざげんらぁ!!」
「あ~もう、うるさいですね……はい」
今なら聴こえる通信機を使って、車外にいるディフィートに向けて返答した。
『風邪が車内に充満したら、私まで風邪引くです。だから、今晩はテントで我慢してください。はい、おやすみです……』
顔面の穴という穴から、涙と鼻水と涎を零して嗚咽するディフィートを無視して、燈火は眠りにつくのであった。
これが後に、《カウンターハンター燈火》と呼ばれることになるのだとか、ないんだとか───。
── つ づ く ──
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