小学生の働き方改革

自然と隣にいる

翌朝、翔はいつものように早めに家を出て学校に向かって歩いていた。朝の涼しい風が心地よく、彼は少しだけ軽い気持ちで足を進めていた。学校の近くまで来ると、見慣れた姿が視界に入った。杏奈が校門の近くで誰かを待っているように立っていた。翔は少し驚きながらも、足を止めて声をかけた。「おはよう、杏奈。誰か待ってるの？」杏奈は翔の声に気づいて振り返り、笑顔で答えた。「おはよう、翔くん。うん、実は翔くんを待ってたの。」「俺を？」翔は少し驚いた様子で尋ねた。「うん、昨日一緒に帰ってくれてありがとう。今日は一緒に学校に行こうと思って待ってたの。」杏奈は少し恥ずかしそうに言った。翔はその言葉に心が温かくなり、自然と笑顔がこぼれた。「そっか、ありがとう。じゃあ、行こうか。」二人は並んで校門を通り抜け、教室へ向かった。道中、杏奈は昨日の授業のことや、家での出来事を話してくれた。翔も時折相槌を打ちながら、彼女の話に耳を傾けた。教室に到着すると、クラスメイトたちがすでに席についていた。翔と杏奈はそれぞれの席に座り、授業の準備を始めた。授業が始まると、杏奈は翔に何度か質問をし、翔も丁寧に答えていた。昼休みになり、二人は一緒にお弁当を食べることにした。杏奈は自分で作ったお弁当を取り出し、翔に見せた。「これ、私が作ったんだ。昨日の夜、少し頑張ってみたの。」杏奈は少し誇らしげに言った。「すごいね。俺も料理は好きだけど、なかなかここまでできないよ。」翔は感心したように答えた。「翔くんも料理するの？」杏奈は興味津々に尋ねた。「うん、母さんが病院にいるから、自分でやらなきゃいけないことが多いんだ。最初は苦手だったけど、少しずつ慣れてきたよ。」翔は笑顔で答えた。「そうなんだ。お母さん、早く元気になるといいね。」杏奈は優しい声で言った。「ありがとう、杏奈。そうだね、早く元気になってほしい。」翔は感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。昼休みが終わり、再び授業が始まった。二人は授業に集中しながらも、お互いに助け合うことで少しずつ距離を縮めていった。学校生活が少しずつ変わり始め、翔は新しい友達との絆を感じながら、前向きに日々を過ごしていった。

放課後、再び校門を出ると、杏奈が翔の隣にやってきた。二人は自然と一緒に帰ることになった。「今日は授業がたくさんあってちょっと疲れたね。」杏奈が話しかける。「そうだね。でも、ちゃんとついていけたみたいで良かった。」翔は微笑みながら答えた。しばらく歩いていると、杏奈がふと気になったことを尋ねた。「翔くん、普段は学校が終わった後、何をしているの？」翔は一瞬ためらったが、正直に答えることにした。「実は、俺、仕事をしてるんだ。」「仕事？まだ小学生なのに？」杏奈は驚いた表情を浮かべた。「うん、母さんが病気で入院しているから、その入院費を少しでも賄うためにね。ネットでできる仕事とか、いろいろやってるんだ。」翔は淡々と答えた。杏奈はしばらく黙って考えた後、心配そうに言った。「大変だね。でも、学校の勉強と両立するのって、すごく大変じゃない？」「まあ、確かに大変だけど、やるしかないからね。お母さんのためにも頑張ってるんだ。」翔は力強く答えた。「翔くん、本当に偉いね。私も何か手伝えることがあったら言ってね。」杏奈は優しい笑顔で言った。翔はその言葉に感謝し、少し照れながら答えた。「ありがとう、杏奈。でも、今のところは大丈夫だよ。気持ちだけで十分励みになる。」二人はその後も会話を続けながら歩き続けた。杏奈は翔の強さと優しさに感銘を受け、翔もまた、杏奈の理解と支えに感謝の気持ちを抱いていた。「ここまで一緒に帰れて嬉しかった。ありがとう、翔くん。」杏奈が自宅近くに到着すると、翔に向かって言った。「こちらこそ、一緒に帰ってくれてありがとう。明日もまた一緒に帰ろうね。」翔は手を振りながら答えた。「うん、また明日ね。」杏奈も手を振り返し、家に向かって歩き出した。翔は一人になってからも、杏奈との会話を思い出しながら歩いた。彼女の優しさが心に染みわたり、少しずつ学校生活が楽しくなり始めている自分に気づいた。