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14 光は訪れる。今は待て
しおりを挟む透明の机に「カン」とそのプラスチックの安っぽくて赤いカップを置いたら、ベッドのサマーブランケットにくるまった。
その机には、子供のころ芳樹と貼ったシールが、角や脚にくっついているけど、当たり前すぎて気に留めなかった。……といえばウソになる。
それから眠りに落ちていた。昼過ぎに目が覚めると、汗でぐっしょりになっていて、今日は予定もなく、何をしようか頭が勝手にシュミレートしてるけど身体は動かない。
安心を手に入れた私の心を震わせるものは、未来にある気がする。明るい未来を望んでいるからなお、今が暗く見えるのか。
本気でパワフルに動ける、存在になりたい。
そう思って、だけど今向いている面では中の炎が見えない。
夢見て何かを待つのは悪いことかな。
芳樹に対しての特別な感情は、離れていても変わらない。だけど、会ってしまうと素直に見つめられない。
彼が自分を知らない街に連れて行ってくれるのではと、ずっと、ずっと、いつのまにか何年も期待していた。
彼といるだけで島を踏み台にしている快感があったことは否定できない。
それからして、今までのしていた人任せを、これから自分でどうこうする気力ももうなかった。
私は芳樹に期待されてるのだろうか。でもできないことはもうしない。人の望むことが自分の想いと同じだと思い込む前に立ち止まって考えるようになった。
そして天国の住人に味方されるようなベクトルを大事にしないと、痛い目を見る。
「まだ、……鳴くまでまとう」
大切な瑞々しさも、感覚も、書き留めておけばよかろうと、後になって脂ものれば、綺麗な声で堂々と歩けるでしょう。
「ヴーヴー」
芳樹から電話だ。
「なに」
「雪芽の靴を思い出して、声が聴きたくなった。…それだけ」
「あ、ありがと」
そういえばお互いの靴の持ち主は逆になったんだっけ、元に戻ったんだっけ。
茂る緑を風が振り回しても、雲のように流れていくことはなかった。
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